クリニックを開業するためには数千万という高額な資金が必要であり、すべてを自己資金でまかなうのは容易ではありません。
そのため、クリニックの開業時には融資制度を活用するケースがほとんどです。
融資にはさまざまな種類があり、クリニック開業時に使える融資も複数存在します。
本記事では、クリニック開業時に使える融資の例や、融資を申し込む際のポイントを解説します。
クリニック開業にかかる費用については、下記の記事で解説しています。
創業融資の概要については、下記の記事で詳しく解説しています。
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CONTENTS
クリニック開業時に使える融資の例
クリニック開業時に使える主な融資の例は以下の4つです。
・日本政策金融公庫
・医師信用組合
・民間金融機関
・リース会社による貸付制度
それぞれの融資制度について詳しく解説します。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、創業支援や中小企業の事業支援などを行う政策金融機関です。
クリニックに限らず、開業・創業時に使う融資として代表的といえます。
日本政策金融公庫ではさまざまな融資制度を用意しており、多くの制度において比較的低金利・返済期間が長期という共通点がみられます。
クリニック開業にあたって利用できる融資制度は、主に以下の3つです。
新規開業資金
新たに事業を始める人または事業開始からおおむね7年以内の人が利用できる融資制度。
融資限度額: 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間: 設備資金が20年
運転資金: 7年
新創業融資制度
新たに事業を始める人または事業開始後に税務申告2期を終えていない人が利用できる融資制度。
融資限度額: 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
担保・保証人が原則不要な点が特徴
女性、若者/シニア起業家支援資金
新たに事業を始める、または事業開始からおおむね7年以内で、女性・35歳未満・55歳以上の人が利用できる融資制度。
融資限度額および返済期間は新規開業資金と同様、2年以内の据置期間がある点が特徴。
利率も低め。
このように、一言で日本政策金融公庫といっても、制度によって融資限度額や返済期間、利率などが異なるため、自身に合った制度を利用することが大切です。
医師信用組合
地域の医師信用組合が用意するクリニック開業向けのローンです。
医師信用組合のローンは、医師会に入ることが条件として設定されています。
一般的に融資制度は貸付金の用途が設定されており、必ずしも好きに使えるわけではありません。
しかし、医師信用組合のクリニック開業向けローンは用途が広く、ほかの融資制度よりも使いやすいケースが多いです。
自治体や医師会によって制度の詳細が異なるため、開業地の医師会で確認・相談する必要がありますすが、変動金利が多い傾向です。
民間金融機関
民間金融機関でも融資制度を多く設けています。
メガバンクから地方銀行までさまざまな金融機関で融資制度がみられますが、信用金庫や地方銀行のほうが、金利が低めの傾向です。
金融機関や制度の種類によって詳細が異なるため、入念な情報収集および比較検討が必要です。
なお、クリニック支援の融資制度を用意している民間金融機関もあります。
みずほ銀行が実施するみずほクリニックアシストが主な例です。
みずほクリニックアシストは開業時を含め、クリニックの設備資金や運転資金として利用できる資金を融資します。
融資限度額は1億円、最長15年間利用できます。
連帯保証人が原則として不要のため、申し込みしやすい融資制度です。
リース会社による貸付制度
医療機器のリース会社がクリニック開業資金の貸付制度を設けているケースもあります。
リース会社による貸付制度の代表例が、シャープファイナンス株式会社の開業支援ローンです。
シャープファイナンス株式会社の開業支援ローンは、担保ではなく事業性を重視した審査が行われます。
審査がスピーディーかつ、ほかの融資制度に比べて通りやすい傾向です。
ただし、リース会社による貸付制度は、医療機器のリースが必須条件かつ金利が高めです。
スピーディーに高確率で利用できる制度ではありますが、将来の資金計画も考慮して、トータルでの負担が小さい融資制度を選ぶ必要があるでしょう。
なお、リース会社では開業支援以外にも、医療機器の購入ローンや据置リースなど、資金運用に活用できるさまざまな制度を用意しています。
クリニック開業時に融資申し込みを行う際のポイント
クリニック開業時に限らず、融資を申し込む際に注意するべき点がいくつかあります。
特に大切なポイントは以下の3点です。
・説得力のある事業計画書を作成する
・入念な交渉・面接対策を行う
・融資のスケジュールや金額に注意する
注意点についてそれぞれ詳しく解説します。
説得力のある事業計画書を作成する
融資の審査通過率を高めるためには、説得力のある事業計画書の作成が大切です。
融資の成功率は事業計画書によって大きく左右されます。
まずは事業計画やクリニックのコンセプトなどについて精度を高める必要があります。
「こういうクリニックにしたい」「こういった理由から、このような理念を有している」など、クリニックの開業・運営を行う際の根本的な思いの明確化が必要です。
また、融資の申し込みを行う際は、資金の内訳を明確にする必要もあります。
クリニック開業資金を構成する項目の例は以下のとおりです。
物件の費用
敷金や仲介手数料など、物件取得に際して発生する初期費用
内装工事費
照明・空調・院内サイン工事
医療機器・備品代
診療科や手術の有無、対応範囲などによって必要な医療機器が異なるため、それぞれ細かく記載が必要
広告宣伝費
ホームページやDM・チラシの作成など
消耗品費
文房具などの事務用品や、診察券の費用など
運転資金
開業から数か月程度、売上が入らなくても運営できるだけの資金
採用費・研修費
採用サイトの制作費や人材紹介会社に支払う費用、研修費用など
事業計画書は記載が必要な項目が多いうえ、すべての部分で強い説得力および明確な根拠が求められます。
質の高い事業計画書を作成するためには、専門家のサポートを受けるのが安心です。
入念な交渉・面接対策を行う
融資の審査通過率を高めるためには、入念な交渉や面接対策を行う必要があります。
融資申し込みの際は、基本的に金融機関の担当者との面接が行われます。
面接の際に聞かれる質問の例を知っておくとスムーズな受け答えにつながりやすいため、事前にしっかりと準備しておくのが理想です。
交渉次第で融資内容が変わるケースもあるため、自身の理想や求める要素についてはしっかりアピールし、交渉する姿勢も大切です。
融資面接の際は、趣意書や事業計画書の内容に沿った質問がされます。
提出書類と受け答えの内容に矛盾を起こさないよう注意が必要です。
融資のスケジュールや金額に注意する
融資のスケジュールや金額については、しっかり事前の確認しましょう。
融資は申し込んですぐに入金されるわけではありません。
まず融資の申し込みから審査完了・融資の決定までにおおむね2週間程度、追加資料が必要な場合はさらに時間がかかります。
資金計画や開業準備を行う際は、融資のスケジュールを考慮する必要があります。
また、融資を受けられる場合でも、希望額満額が借りられるとは限りません。
そのため融資額を頼りにしすぎると、資金計画に大きな狂いが生じる恐れがあります。
多めの希望額で申し込むのが安心です。
まとめ
クリニックの開業資金を用意する際は、各種機関が実施している融資制度を活用するのが一般的です。
一言で融資制度といっても、期間や種類によって制度の詳細が大きく異なります。
さまざまな融資制度を比較検討し、自分に合った制度を利用することが大切です。
また融資制度の申し込み時には、事業計画書の作成や面接対策など、注意するべきポイントも複数存在します。
融資制度の注意点をしっかり押さえ、万全の準備をしたうえで、融資制度を申し込みましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士