勤務医がプライベートカンパニーを設立するメリットと注意点について解説!

2024.07.29

プライベートカンパニーとは、個人の保有資産や副業の収入等を管理する目的で設立する会社です。

サラリーマンをはじめとした給与所得者でも、給与以外の所得がある人はプライベートカンパニーを設立するケースが多くみられます。

 

勤務医のプライベートカンパニー設立にも、節税をはじめとした様々なメリットがあります。

しかし注意点を押さえずにプライベートカンパニーの設立をしてしまうと、かえって損をしてしまうリスクが高いです。

 

今回は勤務医がプライベートカンパニーを設立するメリットや、プライベートカンパニーを設立する際の注意点について解説します。

 

勤務医の節税対策として特定支出控除の活用もおすすめです。特定支出控除については以下の記事で詳しく解説しています。

 

 

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CONTENTS

プライベートカンパニーとは

プライベートカンパニーとは、個人の保有資産や副業の収入等を管理する目的で設立する会社です。

一般的には資産管理会社を指すケースが多いですが、近年は個人の節税目的で設立される会社全般を意味することが増えています。

 

プライベートカンパニーの主な目的は、法人ならではの税制メリットを得ることです。

そのため、会社として事業活動を行うことは重視されません。

 

プライベートカンパニーと似たイメージの会社としてマイクロ法人が挙げられます。

マイクロ法人はもともと社長1人の会社を意味する言葉です。

プライベートカンパニーとの違いとして、マイクロ法人は法人として事業活動を行うことを重視している点が挙げられます。

個人事業主としての活動に限界を覚えた・法人として活動して事業規模を拡大したい等の理由から、マイクロ法人を設立するケースが多いです。

 

プライベートカンパニーは事業活動を重視しないため、社長1人の場合でも一般的にはマイクロ法人と区別して扱います。

勤務医がプライベートカンパニーを設立するメリット

前提として、プライベートカンパニーを設立できるか否かに、勤務先の業種や個人としての活動内容は特に関係ありません。

そのため医療機関に勤める勤務医がプライベートカンパニーを設立することも可能です。

 

この章では勤務医がプライベートカンパニーを設立するメリットを2つ紹介します。

節税できる可能性がある

プライベートカンパニーの設立による最も大きなメリットが、節税できる可能性がある点です。

プライベートカンパニーの設立が節税につながる理由として以下の3つが挙げられます。

所得税と法人税の税率の違い

所得税は所得が一定額を超えると高い税率が適用される超過累進課税制度です。

税率は5%~45%の7段階に区分されており、所得が増えるほど税負担も重くなっていきます。

 

一方で法人税の税率は原則として23.2%です。さらに中小企業の場合は年800万円以下の部分は15%(適用除外事業者は19%)と、より低い税率が適用されます。

 

所得が高額な場合は、所得税よりも法人税の方が税額を抑えられる可能性が高いです。

個人よりも経費にできる範囲が広い

個人より法人の方が経費にできる範囲が広いです。

法人のみが経費計上できる支出として以下の例が挙げられます。

  • ・自身(社長)の役員報酬
  • ・出張日当
  • ・社宅家賃
  • ・授業員や役員の退職金
  • ・生命保険料 ※法人名義のもののみ

 

経費にできる範囲が広く経費計上額が増えやすい分、個人の場合よりも所得を抑えられる可能性が高くなります。

家族への給与を経費として計上できる

法人であれば家族への給与を経費として計上可能です。

 

個人事業主の場合も家族への給与を経費計上する方法がありますが、事前に手続きが必要な上、経費計上が認められないケースもあります。

一方で法人の場合、家族を従業員とするのに特別な手続きは必要ありません。

 

家族への給与を経費にできるため、個人の場合よりも経費計上できる額が増え、節税につながる可能性があります。

相続対策になる

プライベートカンパニーの活用により相続対策も可能です。

プライベートカンパニーの設立が相続対策になる理由を3つ紹介します。

相続税の課税対象になる財産が減る

プライベートカンパニーを設立して個人保有の資産を法人に移転すれば、相続税の課税対象になる財産が減ります。

課税対象額を少なくできるため、相続税の節税対策として効果的です。

相続発生後も法人名義のままで変更の必要がない

個人保有の資産をプライベートカンパニーに移転することで、相続税の節税だけでなく、相続における手間を抑える効果も得られます。

 

前述のように、法人名義の財産は相続税の課税対象になりません。

たとえ代表者であり元保有者である個人が亡くなっても、財産の名義は法人のままで変わらないためです。

相続による財産の移転が起こらないため、対象の財産について名義人の変更手続きは不要となります。

遺産分割の手間が少なくなる

法人名義の資産は相続財産に含まれないため、遺産分割協議も不要です。相続財産が少なくなるため、遺産分割における手間も抑えられます。

不動産のような分割が難しい財産は、プライベートカンパニーに移転するメリットが特に大きいといえるでしょう。

勤務医がプライベートカンパニーを設立する際の注意点

勤務医がプライベートカンパニーを設立する際の注意点を3つ紹介します。

すべての所得を会社の収入にできるわけではない

「勤務医がプライベートカンパニーを設立するメリット」で、所得が高額な場合は、所得税よりも法人税の方が税額を抑えられる可能性が高いと紹介しました。

そのため、総所得が多い人はプライベートカンパニーを設立し、収入全額を会社のものとして計上できるのが最も理想的ではあります。

 

しかし実際のところ、すべての所得を会社のものにできるわけではありません。

会社で計上できるのは医療行為以外による収益のみです。勤務医でプライベートカンパニーの収入にできるものの具体例を紹介します。

  • ・医療コンサルティングの報酬
  • ・執筆、講演、セミナー登壇
  • ・不動産投資や株式投資
  • ・MS法人の業務

※MS法人については以下の記事をご覧ください。

 

 

医療行為のために医師を派遣することは法律で禁止されています。そのため、医療行為による対価を外注費として受け取ることはできません。

勤務先での診察や手術等、医療行為の対価はすべて給与所得とする必要があります。

 

医療行為以外の業務をほとんど担っていない場合は、会社のものとして計上できる収益が少なくなります。

結果として、プライベートカンパニーの設立による節税効果をあまり得られない恐れが大きいです。

会社設立や運営にコストがかかる

会社設立や運営には様々なコストがかかる点にも注意が必要です。

 

会社設立には最低でも以下のようなコストがかかります。

  • 株式会社の場合
  • 定款用収入印紙代:一律4万円 ※電子定款の場合は不要
  • 定款認証手数料:3万円~5万円
  • 謄本手数料:合計2,000円程度
  • 登録免許税:資本金の金額×0.7%または150,000円のうちいずれか大きい金額
  • 専門家報酬:5万円~10万円 ※専門家に依頼する場合のみ発生
  • 合計20万円~30万円

 

  • 合同会社の場合
  • 定款用収入印紙代:一律4万円 ※電子定款の場合は不要
  • ・定款認証手数料:0万円 ※合同会社では不要
  • 謄本手数料:合計2,000円程度
  • 登録免許税:資本金の金額×0.7%または60,000円のうちいずれか大きい金額
  • 専門家報酬:5万円~10万円 ※専門家に依頼する場合のみ発生
  • 合計7万円~17万円程度

 

続いて会社運営に際してかかるコストの例は以下の通りです。

  • 社会保険料:法人は社会保険の加入が義務付けられています。
  • 法人住民税:法人住民税の均等割部分は赤字でも納付が必要です。
  • 専門家報酬:法人税は複雑かつ高度なため、税理士に依頼するのが一般的です

 

プライベートカンパニーの設立による節税効果よりも、会社設立・運営によって増大するコストの方が大きくなるケースもあります。

勤務先への相談が必要

勤務医がプライベートカンパニーを設立する前に、勤務先への相談が必要です。勤務先から理解を得てから会社設立を進めましょう。

勤務先への相談が必要な理由として以下の2つが挙げられます。

副業に該当するため

プライベートカンパニーの運営は副業に該当します。

医療機関は副業を禁止しているケースもあるため、事前に条件を確認するためにも相談が必須です。

医療行為とそれ以外の報酬を分けてもらう必要があるため

勤務医がプライベートカンパニーを活用する場合、医療行為の報酬分を個人の給与所得とし、それ以外にかかる報酬を会社の収益にすることになります。

すなわち勤務先には、報酬の支払い方法を別にしてもらう必要があります。

 

勤務先への相談前に会社設立をし、設立後に報酬の支払い方法についていきなり相談するのではトラブルになる恐れが大きいです。

プライベートカンパニーの活用には勤務先の協力が必要なため、事前に相談し納得してもらうのが大前提となります。

まとめ

プライベートカンパニーの設立により、節税効果や相続対策等のメリットを得られます。

勤務医は所得や総資産が高額な傾向のため、プライベートカンパニーの活用による効果を期待できるでしょう。

 

ただし、所得のすべてをプライベートカンパニーの収益にできるわけではありません。

プライベートカンパニーの収益にできるのは医療行為以外にかかる報酬のみです。

他にもプライベートカンパニーの設立にはコストの増大や勤務先への相談が必要等、注意するべき点が複数存在します。

 

プライベートカンパニーのメリットと注意点の両方を把握した上で、設立するかを検討しましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
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