医療法人の監査とは?目的と流れ、注意点について解説!

2024.07.31

平成29年4月2日以降に開始する事業年度から、一定以上の規模の医療法人は会計監査を受けることが義務付けられています。

 

会計監査の流れ自体に業種ごとの違いは特にありません。

医療法人に対する監査も一般企業に対する監査と同じように進みます。

 

一方、監査における注意点は業種によって違いがみられます。

医療法人の監査を適切に進められるよう、医療法人ならではの注意点を押さえることが大切です。

 

今回は医療法人の監査について詳しく解説します。

 

令和5年8月に施行された、医療法人の経営情報の報告義務化についても是非ご確認ください。

 

 

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CONTENTS

医療法人の監査とは

平成29年4月2日以降に開始する事業年度から、一定以上の規模の医療法人は監査を受けることが義務付けられています。

 

そもそも監査とは、組織の運営や各種活動が適切に行われているかを確認することです。

法人に対する監査は監査対象によって「会計監査」と「業務監査」の2つに大別されます。

 

  • 会計監査
  • 法人が作成した財務諸表等が適正な内容であるか・誤りがないか等を第三者が確認する監査
  •  
  • 業務監査
  • 会計以外の業務全般に対する監査

一定以上の規模の医療法人に義務付けられているのは、第三者による会計監査の方です。

監査対象となる医療法人

最初に紹介したように、会計監査が義務付けられているのは一定以上の規模の医療法人です。

すべての医療法人に監査が義務付けられているわけではありません。

 

具体的には、以下のいずれかに該当する医療法人に会計監査の義務が課されています。

  • ・最終会計年度にかかる負債の合計額が50億円以上、または収益の合計額が70億円以上の医療法人
  • ・最終会計年度にかかる負債の合計額が20億円以上、または収益の合計額が10億円以上の医療法人
  • ・社会医療法人債を発行している社会医療法人
  • ・地域医療連携推進法人 ※規模や条件を問わず、地域医療連携推進法人は必ず監査対象となります

監査の目的

監査の主な目的は、監査対象の法人が行う財務報告の社会的な信頼性を担保することです。

 

投資家や債権者等の利害関係者は、主に貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を参考に様々な判断を行います。

もし財務諸表の内容に誤りがあれば適切な判断ができず、損失を受けてしまう恐れがあります。

 

利害関係者が損害を被るのを防ぐため、影響力が強い組織に対しては会計監査が義務付けられているのです。

そして、規模が大きいと法人を取り巻く利害関係者が必然的に多くなるため、一定以上の規模の法人は監査対象とされています。

医療法人における監査の流れ

医療法人における監査の流れは大きく5つの工程に分けられます。

それぞれの工程について、大まかな流れや医療法人側がやるべき作業について解説します。

予備調査

予備調査とは、監査の実施に向けて、事前に法人の現状を把握するために行う調査です。

予備調査で行われる作業として以下の例が挙げられます。

  • ・内部組織の調査
  • ・現状の業務フローの確認
  • ・過去の会計処理の確認
  • ・関係者へのヒアリング

特に重視されるのが、監査への協力体制が整っているかという点です。

 

監査を受ける医療法人側が行うべき作業として、書類の用意や質問への回答等が挙げられます。基本的には監査人の指示に従う形です。

予備調査で何らかの改善点が見つかった場合は、経営管理体制の構築について提案を受けるケースもあります。

監査計画の立案

監査手続きの実施に向けて監査人側で監査計画の立案が行われます。

予備調査の結果等をもとに、リスクや重要性が高い箇所を重点的に監査するような計画を立てるのが一般的です。

計画立案の段階で医療法人側がやるべき作業は特にありませんが、監査人から何らかの指示があれば対応しましょう。

監査手続きの実施

立案された監査計画をもとに監査手続きが実施されます。

監査手続きで行われる作業の具体例は以下の通りです。

  • ・過去の財務諸表や帳簿、証憑等の実査
  • ・監査人による現場立会い
  • ・役員やスタッフに対する質問
  • ・取引先や利害関係者等の第三者に対する確認

 

医療法人側は書類の用意や質問への回答などを行う必要があります。

また、スタッフに対して監査が実施される旨の周知も欠かせません。

現場の混乱を防ぐため、監査のスケジュールや内容、当日やるべき作業等を事前に詳しく伝えましょう

監査意見の形成

監査手続きの完了後は監査意見の形成が行われます。

医療法人に対する監査では、以下2つの面から意見の形成が行われます。

  • ・各勘定科目について正確性が担保されているか
  • ・作成された計算書類等が法令に準拠しているか
  •  ※医療法人の場合は特に医療法人会計基準に準拠しているかが重要なポイントです。

 

監査意見の形成段階において、医療法人側でやるべき作業は特にありません。

意見表明・結果報告

監査人による意見表明および結果報告が行われます。監査意見には以下の4種類があり、いずれかの意見が表明されます。

 

  • 無限定適正意見
  • 財務状況について、すべての重要な点が適正に表示されている場合です。
  •  
  • 限定付適正意見
  • 一部に不適切な事項があるものの、財務諸表等全体に対してさほど重要性が高くないと考えられる場合が該当します。
  • 不適切事項の内容と、当該事項を除きその他は適正に表示されている旨の記載が行われます。
  •  
  • 不適正意見
  • 不適切な事項が発見され、かつ、当該事項が財務諸表全体に重要な影響を与える内容の場合です。
  • 監査報告書には「適正に表示していない」と記載されます。
  •  
  • 意見不表明
  • 何らかの理由で重要な監査手続きが実施できなかった場合、法人の財務状況について「適正に表示しているかどうかの意見をしない」旨が記載されます。

医療法人の監査に関する注意点

医療法人の監査に関する注意点を3つ紹介します。

医療業界の専門知識を持つ監査人を選ぶ

医療法人の監査であれば、医療業界の専門知識を持つ人を監査人として選びましょう

 

監査は全てを平等にチェックするのではなく、リスクの高い場所を重点的に確認します。

しかし誤りが起こりやすい場所は業界によって異なり、業界の知識がない状態で見極めるのは容易ではありません。

結果として、あまり重要性の高くないところの監査に力を入れてしまうケースが起こり得ます。

 

医療業界に詳しい監査人であれば医療法人で誤りが起こりやすい箇所の知識があるため、適切かつ効率的な監査が可能です。

監査を受けなければ罰則の対象になる

監査が義務付けられている医療法人で監査を受けずにいた場合、当該医療法人の理事等が20万円以下の過料に処されます

過料に処される行為の具体例は医療法第93条で定められており、監査義務の怠慢もその1つです。

会計監査の怠慢に限らず、罰則対象となる行為は絶対にやめましょう。

スムーズな監査のために準備をする

スムーズな監査を実現するに最も大切なのが事前準備です。

監査に向けた準備としてやっておくべき作業として以下の例が挙げられます。

 

  • 必要書類を整理しておく
  • 財務諸表や証憑など、監査で使う資料をすぐに確認できるよう整理しておくのが理想です。
  •  
  • ミスが起こりやすい部分の会計処理を特に注意する
  • 日頃から正しい会計処理をしていれば監査によって問題が発覚する恐れも少なく済みます。
  • すべての会計処理を正しく行うのが前提ですが、中でもミスが起こりやすい部分は特に注意しましょう。

医療法人の会計処理でミスが起こりやすい部分については以下の記事をご覧ください。

 

 

まとめ

監査の主な目的は、監査対象の法人が行う財務報告の社会的な信頼性を担保することです。

平成29年4月2日以降に開始する事業年度より、規模等について一定の条件を満たす医療法人は監査を受けることが義務付けられています。

 

監査の流れ自体に業種による大きな違いは特にありません。一般企業と同じように進みます。

監査をスムーズに進めるためには、監査を受ける側がやるべき作業について理解することや、事前準備をしておくこと必要があります。

 

今回紹介したように、監査は日々の正しい会計処理や事前準備の重要性が高いです。

しかし会計や税務の専門知識がない人が完璧な会計処理をするのは容易ではありません。

医療法人の会計処理に関する疑問や不安があれば、専門家である税理士に相談するのが安心です。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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