院内処方と院外処方のメリットとデメリットを徹底比較!

2024.11.13

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薬の処方方法には院内処方と院外処方の2種類があります。

院内処方と院外処方にはそれぞれ異なるメリット・デメリットがあり、医療機関の運営や利益を左右することもあります。

院内処方と院外処方の特徴を把握した上で、どちらの方法をとるか決めることが大切です。

 

今回は院内処方と院外処方のメリット・デメリットそれぞれを詳しく紹介します。

 

薬の処方方法は売上・利益に影響する要素のため、どちらを選ぶかによって事業計画書の内容も変わります。

クリニック開業時の事業計画書の作成方法については以下の記事をご覧ください。

 

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CONTENTS

院内処方のメリット・デメリット

院内処方は、診察した医療機関で薬を処方する方法です。

診察後にその場で薬を処方するため、患者側のメリットが大きい方法といえます。

 

以前は薬剤の仕入れと薬の売値の差である「薬価差益」によって医療機関側が利益を得られるケースもありました。

かつては医療機関側にも院内処方のメリットがあったといえます。

しかし、近年は薬価が安くなっているため薬価差益を得にくくなっています。

そのため、現在院内処方は医療機関にとってはメリットが小さい方法といえるでしょう。

院内処方のメリット

院内処方の主なメリットを4つ紹介します。

患者の会計が一度で済む・移動の手間がかからない

院内処方の大きなメリットは、患者の会計が一度で済むことです。

診察終了後に薬を処方し院内で会計を済ませるため、調剤薬局へ行く必要がありません。

移動の手間もかからず、患者にとって負担が少ない方法といえます。

薬を安価に提供できる

院外処方よりも院内処方の方が同じ薬でも保険点数が低くなるのが一般的です。

保険点数が低い分自己負担額も安くなる、つまり薬を安価に提供できます

院内処方は患者の金銭的な面での負担も軽減できる方法です。

薬の変更がしやすい

院外処方の場合、処方内容の変更が必要そうなケースであってもその場で医師に確認、相談ができません。

一方、院内処方は院内に医師・看護師・薬剤師がそろっているため、院外処方よりも連携が容易です。

そのため、薬の処方について必要があればすぐに相談することができます。

柔軟な対応により、患者に最適な処方ができる可能性が高くなります。

薬の受け取りが遅れる心配がない

院内処方の場合、薬の受け取りが遅れる心配がありません。

 

処方箋の有効期間は4日以内です。

期間を過ぎると医師への確認が必要になりますが、医師が不在等の理由によりすぐには確認がとれないケースがあります。

医師への確認に時間がかかれば、その分薬の受け取りも遅くなってしまいます。

 

院内処方であれば診察したその日に薬が処方されるため、薬の受け取りが遅れる事態は起こりません。

院内処方のデメリット

院内処方のデメリットを3つ紹介します。

薬の在庫用にスペースが必要

院内処方の場合、院内に薬の在庫用のスペースを確保する必要があります。

限られたスペースの一部を薬の在庫用に確保するのは、小規模なクリニックにとって大きな負担になるでしょう。

コストが増える

院内処方は院外処方よりもコストがかかる方法です。

院内処方によって発生するコストとして以下の例が挙げられます。

  • ・薬剤師の採用費や人件費
  • ・調剤関連機器
  • ・薬の購入費

前述のように、かつては薬価差益により医療機関側が利益を得られるケースもありました。

しかし、薬の仕入れ値の高騰により現在は薬価差益を得にくくなっています。

院内処方は医療機関側の利益が見込めずコストが増大する方法といえるでしょう。

在庫が残るリスクがある

医療機関側で仕入れた薬をすべて処方できるとは限りません。在庫が残るリスクもあります。

特に薬剤は使用期限が厳密であり、期限切れの薬剤を何らかの形で使うことはできません。

在庫リスクを抑える方法の1つとして仕入を減らすことが挙げられますが、在庫が少なければ処方できる薬の選択肢が狭まります。

結果として、患者に適切な薬を処方できなくなるリスクが高くなります。

院内処方は在庫リスクがあるものの、在庫リスクを警戒して仕入を減らすことも難しい点に注意が必要です。

院外処方のメリット・デメリット

続いて院外処方のメリット・デメリットを紹介します。

 

前提として、院外処方の方が医療機関の収支面は有利です。

医療機関にとっては、院内処方よりも院内処方の方が選択するメリットが大きいといえるでしょう。

院外処方のメリット

院外処方の主なメリットは以下の5つです。

処方箋を発行する方が診療点数が高くなる

院外処方により調剤薬局で処方をする、つまり処方箋を発行する方が診療報酬の点数が高くなります

同じ処方内容であっても、院内処方の場合に発生する「処方料」と院外処方の「処方箋料」では、後者の方が点数が高くなるためです。

診療点数が高い分医療機関で得られる報酬も増えるため、院外処方の方が利益を得やすいといえます。

処方内容のダブルチェックができる

院外処方であれば、医療機関と調剤薬局の両方で処方内容の確認が行われます。

調剤ミスのリスクを抑えた、より安全な処方が可能です。

在庫面でのリスクやコストがなくなる

院外処方では、医療機関の施設内に薬剤の在庫を置く必要がありません

そのため在庫面でのリスクやコストがなくなります。

処方内容の選択肢が増える

院内処方の場合、スペースの都合等により用意できる薬剤の選択肢がどうしても狭くなってしまいます。

特にジェネリック医薬品の用意は難しく、高価な処方内容になってしまうケースもあります。

調剤薬局であれば薬剤の種類が豊富で、さまざまな処方内容に対応できます

ジェネリック医薬品の品ぞろえも多いため、薬代をより安価に済ませることも可能です。

処方内容の重複や過剰な処方を防止できる

院外処方は処方内容の重複や過剰な処方を防止する効果も期待できます。

理由として以下の2点が挙げられます。

  • ・医師は診療に集中、薬剤師が処方と調剤を担当という分業ができるためミスのリスクが下がる
  • ・患者が特定の調剤薬局を利用している場合、他の医療機関で発行された処方箋の内容も一括で確認できる

過剰投薬による患者側のリスクを軽減できるだけでなく、薬剤費の適正化にも効果的です。

院外処方のデメリット

続いて院外処方のデメリットを3つ紹介します。

患者側の金銭的な負担が重くなる

前節で院外処方のメリットとして「処方箋を発行する方が診療点数が高くなる」を挙げました。

院外処方の方が診療報酬の点数が高いため、医療機関側が得られる利益が増えます。

しかし診療点数が高ければ、その分患者が支払う金額は高くなります。

医療機関にとっては金銭的なメリットが大きい一方で、患者の金銭的な負担は重くなる方法です。

診療と薬の受け取りで2つの施設に行く必要がある

院外処方の場合、診療は医療機関で、薬の受け渡しは調剤薬局とそれぞれ別の施設で行われます。

そのため患者は診療と薬の受け取りで2つの施設に行く必要があります。

院外処方は金銭面だけでなく、時間や手間という面でも患者の負担が大きいといえるでしょう。

正しく処方したか・受け取ったかの確認が難しい

院内処方の場合は診察後に医療機関内で薬を渡すため、正しく処方したか・患者が薬を受け取ったかの確認が容易にできます。

一方で院外処方の場合、処方内容や受け渡しの様子を直接確認することができません

ミスの把握がしにくい点も院外処方のデメリットといえるでしょう。

まとめ

診察を行う医療機関で薬の処方も行う院内処方は、患者にかかる負担が少ない方法です。

患者にとってはメリットが大きい一方で、医療機関側は在庫リスクやコスト増大などのデメリットが多い方法といえます。

同じ処方内容でも、院外処方の方が診療報酬の点数が高くなる仕組みです。

在庫リスクを抱える必要がなくコストも抑えられるため、医療機関にかかる負担を軽減できます。

薬の選択肢が増える・処方内容の重複や過剰な処方を防止できる等、患者側にもメリットがあります。

ただし、患者にかかる金銭的な負担が増えることや、移動の手間・時間がかかる点は大きなデメリットです。

 

院内処方と院外処方は異なるメリット・デメリットがあり、患者と医療機関どちらの立場で見るかによって適した方法が変わります。

それぞれの特徴を押さえた上で、どちらの方法を選ぶか検討する必要があります。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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