クリニック開業時の保健所立入検査とは?流れとチェック項目、対策について解説

2024.11.17

保健所立入検査とは、医療機関が法令に則った適切な医療を担っているかを確認するために行う検査です。

すべての医療機関に対して定期的に実施されるもので、開業時には必ず行われます。

保健所立入検査をスムーズに終えるためには、検査の概要やポイントを押さえた上で対策をするのが効果的です。

 

今回はクリニック開業時の保健所立入検査について詳しく解説します。

 

クリニック開業時に押さえるべきポイントについては以下の記事もご覧ください。

 

 

 

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CONTENTS

医療機関の保健所立入検査とは

保健所立入検査とは、医療機関が法令に則った適切な医療を担っているかを確認する目的で行う検査です。

保健所立入検査は以下の2種類に大別されます。

  • 1.病院や診療所等に対して行われる検査
  •  医療法第25条第1項に基づくもので、都道府県が実施主体
  •  
  • 2.特定機能病院等に対して行われる検査
  •  医療法第25条第3項に基づくもので、国が実施主体

一般的なクリニックの開業時に行われる保健所立入検査は1に該当します。

クリニックを開業する際は「開設許可申請」を提出しますが、申請から実際の開設までの期間に検査が入るケースが多いです。

クリニック開業時のほか、年に1回~数年に1回程度のペースで定期的に実施されます。

保健所立入検査のチェック項目

続いて、保健所立入検査でチェックされる主な項目を紹介します。

人員配置の状況・スタッフの管理状況

人員配置の状況やスタッフの管理状況に関するチェック項目の例は以下の通りです。

  • ・医療従事者数の標準数と実際の数に不足がないか
  • ・労働契約書を締結しているか
  • ・労働時間や就業規則など労働基準法を遵守しているか

1つの医療機関に必要とされる医療従事者の標準数と実際の医療従事者数に不足があると指摘対象になります。

また、クリニック開業にあたり雇用主となる以上、労働基準法の遵守も必須です。

医薬品の管理体制

医薬品は種類によって保管方法のルールが異なります。

立入検査においてチェックされる医薬品の種類とそれぞれの保管ルールは以下の通りです。

  • ・麻薬:専用の鍵付き金庫に入れ、常に在庫状況を確認できるよう麻薬帳を作る
  • ・毒劇物:専用の鍵付き保管庫で保存する
  • ・冷所保存品:専用の冷蔵庫で保存し、随時温度をチェックできる状態にする
  • ・向精神薬:鍵付き保管庫で保存する

文書の記録・管理体制

医療機関で必要とされる文書が正しく記録・管理されているかもチェックされます。

チェック対象となる書類の例を紹介します。

  • ・診療所開設届
  • ・院内感染や医療安全に関する指針
  • ・カルテ
  • ・X線装置など各種装置の備付届
  • ・X線装置の定期測定記録など各種検査記録
  • ・処方箋の控え
  • ・医療従事者の本人確認書類の写し
  • ・職員研修の記録書類
  • ・職員の健康診断書

個人情報の管理体制

必要な書類が記録・保存されているかだけでなく、管理体制が整っているかもチェック項目です。

以下の要素がチェックされます。

  • ・利用目的の特定および公表の有無
  • ・各種情報の監督体制
  • ・個人データの取り扱い
  • ・個人情報に関する相談および苦情の受付体制

院内掲示の有無

医療機関に対する保健所立入検査では、院内掲示の有無が確認されるケースも多いです。

患者に対して必要な情報が適切に伝わるよう、以下の情報を掲示する必要があります。

  • ・診療時間
  • ・休診日
  • ・クリニックの管理者および医師の名前 
  • ・部屋の使用用途(診察室、レントゲン室、処置室等)
  • ・個人情報の管理体制に関する明示

医療安全管理体制

医療に係る安全管理について、以下の要素が満たされているかがチェックされます。

  • ・指針の整備
  • ・委員会の開催
  • ・職員研修の実施
  • ・改善のための方策(事後報告等)

放射線設備の管理体制

放射線設備を有する場合、放射線設備の管理体制もチェック対象です。

主なチェック項目として以下の例が挙げられます。

  • ・放射線管理区域
  • ・敷地の境界等における防護措置の有無
  • ・放射線障害の防止に必要な注意事項の掲示
  • ・各種設備や器具
  • ・通報連絡網の整備

放射線設備関連は、保健所立入検査の中でも特にチェック項目が多い要素です。

非常に細かい部分までチェックされるため、各種法令の確認や専門家への相談をしつつ適切に対応しましょう。

防火・防災体制

防火や防災体制の状況もチェックされます。

具体的なチェック項目の例は以下の通りです。

  • ・防火管理者
  • ・消防計画
  • ・防火訓練、避難訓練
  • ・防災および危険防止対策
  • ・点検報告
  • ・スプリンクラーや消火器等の設備

スプリンクラーや消火器の必要数は医療機関の規模や耐火構造によって異なります。

院内感染対策

院内感染対策に関するチェック項目として以下の例が挙げられます。

  • ・院内感染対策の状況
  • ・院内感染対策に関する指針の整備
  • ・院内感染対策に関する委員会の開催

院内感染対策を行うだけではなく、指針を文書に示すことや委員会の開催も必要です。

その他項目

立入検査でチェックされるその他の項目として以下の例が挙げられます。

  • ・有床クリニックの場合は給食設備の管理体制
  • ・使用期限を超過した医薬品が残っていないか
  • ・廃棄物処理は適切に行われているか、適切に行うための体制が整っているか
  • ・カルテの様式や記載事項が適切なものであるか

 

また現地調査とは少し異なりますが「看板等の広告やWebサイトに禁止事項に違反した不適切な表示がないか」もチェック対象となり得ます。

クリニック開業時の保健所立入検査の流れと対策

クリニック開業時の保健所立入検査の流れと対策について解説します。

保健所立入検査の流れ

保健所立入検査の大まかな流れは以下の通りです。

  • 1.管轄の保健所から担当者1~2名が訪問
  • 2.クリニック内を回りながら検査項目に沿って検査を行う
  • 3.検査後に問題箇所について口頭で指導される
  •  問題箇所が多い場合は文書で指導されるケースもあります
  • 4.指摘事項が多い・重大な問題があった場合は改善報告書を提出する

立入検査はクリニック開業時だけでなく、以降も定期的に行われます。

2回目以降の立入検査では、指摘を受けたことのある項目は特に厳しくチェックされるため注意が必要です。

指摘を受けた後すぐに改善し、適切な状態を維持しましょう。

保健所立入検査の対策

最後に、保健所立入検査に向けた対策を3つ紹介します。

事前に保健所の担当者に注意するべき事項を確認する

立入検査に向けて適切な対策をするためには、開業準備の段階で保健所の担当者に注意するべき事項を確認するのが良いでしょう。

クリニック開業時の保健所立入検査は開設許可申請の提出から開業日までに行われるため、申請書の提出前に確認するのが理想です。

指摘を受けやすい部分や開業時に注意するべきポイントのアドバイスをもらえるため、より適切な対策ができるようになります。

専門家の立ち合いを受ける

保健所立入検査の当日、行政書士やクリニック開業コンサルタントなどの専門家の立ち合いを受けるのもおすすめです。

立入検査はどうしても心理的負担がかかりやすいですが、専門家がすぐにサポートできる体制であればストレスの軽減が期待できます。

また、指摘や指導を受けた後の改善がスムーズに進めやすくなる点もメリットです。

指摘・指導が多い事項を確認しておく

クリニック開業時の保健所立入検査で指摘・指導が多い事項を事前に確認しておくのも大切です。

多くの都道府県では立入検査の実施状況や結果を公開しています。

資料の中で「指摘・指導状況」として、指摘・指導が多かった項目を紹介しているケースが多いです。

たとえば東京都の場合、「検査精度管理関係」の指摘が最も多かったと公表されています。

埼玉県では順守率の低かった項目として「災害危害防止対策」「感染性廃棄物処理」等が挙げられます。

クリニックを開業する自治体の資料に限らず、立入検査に関する報告書に目を通しておくのが良いでしょう。

まとめ

クリニック開業時には保健所による立入検査が必ず行われます。

立入検査でのチェック項目は多岐にわたり、細かな部分まで入念に検査されます。

検査により指摘・指導を受けた場合は速やかな改善が必要です。

 

指摘事項や指導事項が多いほど改善するべき要素も多くなり、クリニック開業までに必要な作業が増大します。

クリニック開業をスムーズに進めるためには、立入検査に向けて適切な対策をするのが理想です。

今回紹介した内容を押さえ、立入検査を意識したクリニック開業準備を進めましょう。

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吉岡 伸晃

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