医院承継でよくある失敗とは?事例と成功のためのポイントを紹介

2025.01.18

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近年、すでに運営されているクリニックを引き継ぐ事業承継(医院承継)による開業が増加傾向にあります。

クリニック継承による開業には、開業費を抑えられる・一定の売上が見込める等のさまざまなメリットがあります。

ただし、クリニック継承による開業は必ずしも成功するとは限らず、むしろ失敗事例も多い手法です。

クリニック継承を成功させるためには、失敗事例から失敗の原因を学ぶと同時に、成功のためのポイントを押さえる必要があります。

 

今回はクリニック継承のよくある失敗事例と、成功のために押さえるべきポイントを紹介します。

 

クリニックを事業承継によって開業するメリット・デメリットについては以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

クリニックの継承でよくある失敗の例

クリニックの継承でよくある失敗の例を4つ紹介します。

経営状態が悪い医院を承継してしまう

クリニック継承が失敗となる主な原因の1つが、経営状態が悪い医院を承継してしまうことです。

経営状態が悪い事業や会社の承継による失敗は、クリニックに限らずM&A全体で多くみられます。

 

経営状態が悪い医院とは、現時点で何らかの問題を抱えている医院ともいえます。

経営状態が振るわない原因はさまざまですが、多くの場合は医院承継によって経営者が変わっただけでは解消されません。

経営状態が悪い医院を継承してした場合、開業直後の段階から経営課題を解決するための施策が必要となります。

 

経営状態が悪い医院の承継による開業とは、マイナスからのスタートともいえるでしょう。

医院承継ならではのメリットが少なく、既に何らかの経営課題が存在しているのが確実なため、失敗の可能性が高くなります。

大幅な方針変更によりスタッフ・患者が離れてしまう

大幅な方針変更によりスタッフ・患者が離れてしまうという失敗事例も多いです。

 

医院承継による開業ならではの大きなメリットとして、スタッフや患者さんを引き継げる点が挙げられます。

スタッフを引き継げれば開業に向けて採用や人財育成をする必要がないため、人事関連の手間やコストを大幅に抑えられます。

また、患者さんを引き継げれば、開業直後の時点からある程度の収益が見込めるため安定しやすいです。

 

しかし個人クリニックの雰囲気や評価は、院長および診療方針に強く依存します。

医院承継によって院長が変わったという理由だけで人が離れるケースも少なくありません。

その上診療方針に大きな変化があれば、クリニックに対する好感度や信頼が失われ、さらに人が離れやすくなります。

建物や医療機器の修繕・更新に膨大なコストがかかる

建物や医療機器の状態を把握せずに医院承継をした結果、修繕や更新に膨大なコストがかかり、想定以上の支出となるケースも多いです。

 

医院承継のメリットとして、新規開業の場合に比べて設備投資などの初期費用を抑えられる点が挙げられます。

しかし引き継いだクリニックの建物や医療機器が老朽化している場合、修繕や更新、買い替えなどが必要です。

このように建物や医療機器の状態によっては医院承継の直後に膨大な支出が発生する恐れがあります。

トータルで新規開業の場合と同じぐらいの支出となり、医院承継ならではのメリットを得られないケースもあるでしょう。

買い手側に不利な条件で契約してしまう

クリニックに限らずM&Aで多い失敗事例の1つが、不利な条件での契約により後にトラブルが発生するケースです。

買い手に不利な譲渡条件として以下の例が挙げられます。

  • ・クリニックの状態に対して譲渡価格が著しく高い
  • ・支払い方法や支払い時期を売り手側が一方的に決める(買い手の希望が反映されない)
  • ・前院長の関与度合が強く、承継後の自由度が理想よりも著しく低い
  • ・承継対象となる資産の範囲が限られている
  • ・簿外債務やリスクなどの十分な説明がないまま債務が引き継がれる

トラブルの内容や程度によっては医院承継後のクリニック経営が上手くいかない恐れがあるため注意が必要です。

クリニックの継承を成功させるためのポイント

前章で紹介した医院承継の失敗事例は、いずれも原因が明確です。

そのためM&A成立前の段階で対策をすれば失敗のリスクをある程度抑えられるでしょう。

この章ではクリニックの継承を成功させるためのポイントを4つ紹介します。

多角的な視点から調査をする

クリニックの継承に限らず、M&Aを成功させるポイントの1つが多角的な視点から調査をすることです。

 

失敗事例の「経営状態が悪い医院を承継してしまう」は、経営状態が悪いことを事前に把握していれば以下のような対策をとれます。

  • ・経営状態が悪く改善が見込めないクリニックを選ばない
  • ・事前に経営課題の解決策を検討し、入念な事業計画を立てた上でクリニックを継承する
  • ・経営状態の悪さや経営課題を指摘した上で、買い手にとって有利な条件での譲渡を交渉する

後のトラブルを防ぎ納得のいくクリニック継承をするためには、事前の十分な調査が必要不可欠です。

 

クリニック継承でチェックするべき要素として以下の例が挙げられます。

  • ・財務状況
  • ・簿外債務の有無や程度
  • ・診療圏や周辺環境(患者の数、患者の属性、ほかの医療機関など)
  • ・スタッフの雇用条件
  • ・就業規則
  • ・人事トラブルの有無
  • ・建物や設備の状況

 

なおM&Aでは売り手側に対してデューデリジェンス(DD)という調査を行うのが一般的です。

医療機関に対するDDについては以下の記事で詳しく解説しています。

 

 

譲渡契約の内容のすり合わせを徹底する

クリニック継承の契約を成立させる前に、譲渡契約の内容のすり合わせを徹底しましょう。

 

「買い手側に不利な条件で契約してしまう」でも紹介したように、不利な条件での契約はトラブルを引き起こす原因です。

売り手側とのすり合わせを怠れば、買い手側に不利な条件や、売り手側クリニックのリスクを見落としやすくなります。

契約成立後の条件変更は非常に難しいため、契約成立の前に徹底的な調査や交渉、十分な検討が必要です。

 

譲渡契約の内容はすべて確認し、納得した上で契約するのが理想です。

特に重点的に確認するべき事項として以下の例が挙げられます。

  • ・譲渡価格
  • ・支払方法、支払い時期
  • ・債務の引継ぎの範囲
  • ・物件、医療機器、設備等
  • ・競業避止義務の有無
  • (前院長に患者やスタッフを奪われてしまうのを防ぐために確認が必須です)

 

もし不明瞭な点や買い手側に不利と判断される点があった場合は都度確認をし、納得のいくまですり合わせをしましょう。

スタッフや患者と信頼関係を築く

スタッフや患者と信頼関係を築くことも大切です。

クリニック継承の失敗事例として「大幅な方針変更によりスタッフ・患者が離れてしまう」を挙げました。

しかし厳密には、スタッフや患者が離れる原因が必ずしも大幅な方針変更にあるとは限りません。

医院承継後にスタッフや患者が離れる主な原因は不信感です。

前院長に信頼を寄せていたスタッフや患者が、院長が変わることにマイナスの印象をもち、新しい院長を警戒するのは当然といえます。

そのような状態で方針の変更を進めてしまえば不信感をもたれやすく、クリニックから離れてしまう可能性が高くなります。

 

以上の理由から、医院承継の成立直後はスタッフや患者と信頼関係を築くことを優先するべきでしょう。

スタッフ一人ひとりと話し合う機会を作る、初対面の患者には挨拶と事業承継についての説明を丁寧に行う等の対応をするのが理想です。

専門家のサポートを受ける

クリニックの継承を成功させるためには、クリニックや医療機関の事業承継に強い専門家のサポートを受けるのがおすすめです。

 

M&Aを成功させるためにチェックするべき事項は多岐にわたる上、専門用語が出る場面も多く存在します。

M&Aの知識や経験のない人が完璧な対応をするのは非常に難しいのが事実です。

 

M&Aは仲介会社がサポートするのが一般的ですが、仲介会社は中立的な立場のため買い手に寄り添ったサービスは難しいケースがあります。

デューデリジェンスの依頼や契約内容について相談できる専門家を探しておくと良いでしょう。

まとめ

近年は医院承継によってクリニックを開業するケースが増えています。

クリニックの継承にはさまざまなメリットが存在する一方で失敗事例が多いのも事実です。

 

クリニック継承で失敗する原因として、事前の調査不足や、スタッフ・患者との信頼関係の構築不足などが挙げられます。

一概にはいえませんが、事前の対策が十分であれば失敗を防げたと考えられるケースも多いです。

すなわち失敗事例を参考にしつつ適切な対策をすれば、失敗のリスクを抑えられる可能性があります。

 

多くの失敗事例に共通する原因や、成功のためのポイントを押さえて、納得のいく医院承継を行いましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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