
医療DX化とは、医療関係分野においてDX化を通じてサービスの効率化や質の向上を目指すことです。
近年、政府は医療業界のDX化を推進しており、直近数年分の工程表も提示しています。
医療DX化を実現するためにはさまざまなITツールの導入が必要であり、多大なコストが発生します。
このようなITツール導入の負担を軽減する目的で活用できるのがIT導入補助金です。
医療機関で導入するITツールにもIT導入補助金の対象になるものが多く存在します。
今回は医療機関におけるIT導入補助金の活用方法について解説します。
クリニックで使えるその他の助成金・補助金については以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
医療DX化とは

医療DX化とは、医療関係分野においてDX化を通じてサービスの効率化や質の向上を目指すことです。
厚生労働省の公式サイトでは、医療DXは以下5点の実現を目指して行うものと説明されています。
- ・国民の更なる健康増進
- ・継続的かつ高品質な医療等の効率的な提供
- ・医療機関等の業務効率化
- ・システム人材等の有効活用
- ・医療情報の二次利用の環境整備
「医療DXの推進に関する工程表〔全体像〕」から、医療DXは全国医療情報プラットフォーム構築を主な目的にしているとわかります。
実現を目指す施策として以下の例が挙げられます。
- ・マイナンバーカードと健康保険証の一体化
- ・医療機関、薬局間での共有やマイナポータルで閲覧できる医療情報を拡大
- ・自治体や介護事務所とも医療情報を共有
- (自治体が実施する介護、予防接種、母子保健等の事業の手続に必要な情報の連携)
- ・医療機関等のシステムを抜本的にモダンシステム化
IT導入補助金とは

IT導入補助金とは、経営課題の解決やDX化を目的としたITツール導入を支援するための制度です。
2024年12月時点で発表されている情報によると、補助額は最大450万円、補助率は2分の1から5分の4となっています。
IT導入補助金には全部で5つの申請区分が存在します。
- 通常枠
- 生産性の向上につながるITツールの導入費用を支援
- 複数社連携IT導入枠
- 10社(10者)以上の中小企業や小規模事業者等が連携した取り組み支援
- インボイス枠 インボイス対応類型
- インボイス制度への対応に特化した支援枠
- インボイス枠 電子取引類型
- 取引における発注者側が費用を負担してインボイス対応済の受発注ソフトを導入し、受注者側である中小企業等が無償で利用できるようにする場合を支援
- セキュリティ対策推進枠
- セキュリティサービスの利用料を支援
IT導入補助金の詳細は以下の記事をご覧ください。
なおIT導入補助金に限らず、補助金は必ず受給できるとは限りません。
補助金を受給できるのは審査に通過した場合のみとなります。
IT導入補助金はITツール導入の負担軽減に効果的とはいえ、IT導入補助金の利用を前提とするのは危険なためご注意ください。
医療機関におけるIT導入補助金の活用法

医療機関におけるIT導入補助金の活用法として5つの例を紹介します。
なお、IT導入補助金の対象になるのはIT導入補助金事務局に登録されているツールのみです。
ツールの導入に際してIT導入補助金の申請を前提とするのであれば、IT導入補助金の対象になるか事前に確認する必要があります。
IT導入補助金の対象になるツールは、IT導入補助金の公式サイト「ITツール・IT導入支援事業者検索」で調べられます。
オンライン診療ツール
オンライン診療に必要となるツールの導入はIT導入補助金を利用できる可能性が高いです。
そもそも、オンライン診療ツールを導入するメリットとして以下の3つが挙げられます。
- ・患者さんの場所を問わず医療を提供できるようになる
- ・通院の負担をなくせる
- ・院内リスクを低減できる
一般的なビデオ通話ツールでもオンライン診療をできますが、質の高い医療を提供するためには専用サービスを利用するのが理想です。
オンライン診療ツールは事業のデジタル化を目的としたツールに該当するため、通常枠の対象になります。
「IT導入補助金2024 公募要項 通常枠」の業種固有プロセスの例にも、オンライン診療システムが記載されています。
予約システム
予約システムも通常枠の対象です。
医療機関で予約システムを導入するメリットとして以下の例が挙げられます。
- ・時間帯予約と順番受付の両方を取り入れることで診療件数を最大化できる
- ・予約に関する電話対応の件数が少なくなる
- ・予約管理がしやすくなり業務効率化につながる
- ・Web予約受付の機能を使えば患者さんが診療時間外でも予約可能になる
- ・電子カルテやWeb問診ツールと連携できるシステムも多い
近年はWebで予約を受け付けるクリニックが増加傾向です。
またDX化の推進により、医療機関でITツールを活用する場面は増え続けるでしょう。
したがって、予約システムを導入するメリットは非常に大きいといえます。
電子カルテ
医療DXの推進に関する工程表によれば、2024年度末から標準型電子カルテα版の提供を開始し、徐々に本格実施する予定とされています。
また、前述した「全国医療情報プラットフォーム」の仕組みの1つに電子カルテ情報共有サービスが含まれます。
電子カルテの導入は、政府が力を入れている施策と考えられるでしょう。
電子カルテには以下のようにさまざまなメリットがあります。
- ・カルテの作成や閲覧などの作業を効率化できる
- ・過去の診療データや処方薬などのシステムを連携させて一元管理が可能
- ・カルテの書き間違いや紛失のリスクを抑えられる
- ・他の医療機関との共有や情報提供がしやすい
なおクリニックで使用しているPCのスペックによっては、電子カルテを導入するためにスペックの高いPCへの買い替えが必要なケースもあります。
このように電子カルテの導入には高額のコストがかかる可能性があるため、補助金を活用するのが良いでしょう。
レセコン
レセコンとはレセプトコンピュータの略で、文字通りレセプト(診療報酬を記載した書類)を発行できるコンピュータのことです。
レセコンもIT導入補助金の対象になります。
しかしレセコンは多くの医療機関で導入されている上、頻繁に買い替えが必要なものではありません。
新たにレセコンを買う明確な理由がない限り、レセコンの導入はIT導入補助金の対象外となってしまう可能性があります。
レセコンの導入に際してIT導入補助金を利用できるケースとして、以下の例が挙げられます。
- ・電子カルテの導入にあわせて互換性のあるレセコンに買い替える
- ・現在使用しているレセコンに明確な問題があると説明できる
- ・電子薬歴一体型やPOSレジ連携型など、より機能性の高いレセコンを導入する
医療デジタル画像管理システム
医療デジタル画像管理システムとは、内視鏡やレントゲン等で撮影した画像を電子データで保存できるシステムです。
医療用画像管理システムや、「Picture Archiving and Communication System」を略したPACSとも呼ばれます。
画像を電子データで保存することによって、以下のようなメリットを得られます。
- ・画像を保管するためのスペースが不要
- ・ほかの医療機関との共有や、訪問診療先での画像閲覧などが容易になる
- ・画像を探す手間がかからない
- ・紛失や汚れのリスクがない
- ・電子カルテや予約システム等と連携ができる
システムによって機能に多少の違いはありますが、いずれも医療DX化の面で非常に貢献するでしょう。
まとめ
IT導入補助金は、ITツール導入にかかる負担の軽減を目的とした補助金制度です。
近年推進されている医療DX化のためにはITツール導入が必須ですが、ツールの導入には高額のコストがかかります。
負担を抑えながらもDX化を実現させるためには、IT導入補助金をはじめとした補助金制度を活用するのが効果的です。
医療機関でIT導入補助金を活用できる例として、オンライン診療システム、電子カルテ、レセコン等が挙げられます。
ただし、IT導入補助金の対象になるのはIT導入補助金事務局に登録されているツールのみです。
IT導入補助金の申請を前提とするのであれば、導入を検討しているツールがIT導入補助金の対象になるか確認する必要があります。
IT導入補助金のポイントや注意点を押さえ、医療DXで上手く活用しましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士