
2025年1月時点では電子処方箋の義務化はされておらず、今後義務化される予定もありません。
しかし政府が電子処方箋の全国的な普及拡大を目指しているのは事実です。
電子処方箋にはさまざまなメリットが存在するため、義務化の有無に関係なく導入する価値が存在するといえます。
本記事では電子処方箋の導入の流れやメリット、電子処方箋の導入に際して利用できる補助金について解説します。
クリニックで使える助成金や補助金については以下の記事もご覧ください。
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CONTENTS
電子処方箋は義務化されるのか

結論として、電子処方箋の導入は2025年1月時点では義務付けられてはおらず、近いうちに義務化される予定もありません。
電子処方箋の導入はあくまでも医療機関の任意とされています。
ただし、政府が電子処方箋の全国的な普及拡大を目指しているのは事実です。
「電子処方箋の進捗状況について」では、2025年3月までにオンライン資格確認を整備した医療機関での電子処方箋の導入を目指している旨が記載されています。
電子処方箋導入の流れ

電子処方箋の導入に向けた準備作業は大きく4つの工程に分けられます。
それぞれの工程ごとに必要な作業の例や注意点を解説します。
事前準備
電子処方箋の導入における事前準備として以下の2つが挙げられます。
- ・システム事業者への見積もり依頼
- ・電子署名を行うための準備
システム事業者のスケジュールによっては対応に時間がかかる可能性があるため、早めに連絡しましょう。
システム事業者との相談が必要になる事項の1つが、どの電子署名方式を選ぶかです。
電子署名の方式によって導入するシステムの仕様等も変わるため、早い段階で決める必要があります。
その他にも、電子処方箋の運用に使用する端末の種類やメーカー名などを確認される可能性もあります。
電子署名を行うための準備の例は以下の通りです。
- ・HPKIカードの発行申請
- ・医療機関等向け総合ポータルサイトで発行申請完了の登録
電子署名を行うための準備は、電子処方箋の運用開始の約1~2ヵ月前までに行うのが目安となります。
システム事業者へ発注
システム事業者から提示された見積もりを確認の上、内容に問題がなければ発注をしましょう。
システム事業者のスケジュール等により、発注から導入までに時間がかかる可能性があります。
厚生労働省による資料では、運用開始時期の1ヵ月前までには発注を完了させるのが目安とされています。
システム事業者への発注とあわせて以下の作業も必要です。
- ・HPKIカード読取用のICカードリーダーの購入
- ・ポータルサイトで電子処方箋利用申請(発注・カードリーダーの購入手続き完了後)
導入準備
システム事業者から電子処方箋対応版ソフトウェアが提供されます。
ソフトウェアのアップデート作業の進め方は事業者によって異なるため、システム事業者と相談し、案内に沿って必要な対応をしましょう。
PCでの設定まで完了した後は、業務上の操作確認をします。
実際に電子処方箋用の機能を操作し、不明点や業務上の問題点がないか入念に確認が必要です。
PCの設定・操作確認の両方が完了次第、医療機関等向け総合ポータルサイトで電子処方箋の運用開始日を入力します。
最後に、電子処方箋の運用開始に向けて以下の2つが必要です。
- ・患者動線を含む業務フローおよび変更点の確認
- ・患者向け掲示の準備
電子処方箋補助金の申請
電子処方箋の導入時にかかった費用は電子処方箋管理サービス等関係補助金の対象となります。
補助金申請に際して以下の書類が必要です。
- ・システム事業者から受け取る領収書
- ・領収書内訳書
2点ともシステム事業者から受領します。
必要書類を受け取り次第、医療機関等向け総合ポータルサイトから補助金の申請をしましょう。
電子処方箋補助金について詳しくは後述します。
電子処方箋を導入するメリット

「電子処方箋は義務化されていないため今導入する意味はない」「手間がかかるだけでメリットはない」
このように考える人もいるかもしれません。
しかし、電子処方箋の導入にはさまざまなメリットがあります。今回は電子処方箋のメリットを3つ紹介します。
過去の処方データを確認できる
電子処方箋では、患者さんの過去の処方データを簡単に確認できます。
電子処方箋に対応している医療機関で、患者さんの同意がある場合に限りますが、2025年1月時点では過去3年分のデータが確認可能です。
患者さんの薬に関する情報を確認しやすくなるため、以下のような効果を期待できます。
- ・疾患、アレルギー、副作用などの情報を把握して適切な処方ができる
- ・別の医療機関で処方された薬との組み合わせ(飲み合わせ)についても考慮できる
過去の処方データを確認できることで、結果として医療の質の向上につながるでしょう。
疑義照会の削減につながる可能性が高い
電子処方箋の導入は、疑義照会(薬剤師が医師に対して処方箋の内容を問い合わせる行為)の削減につながる可能性も高いです。
疑義照会の原因として特に多いのが、項目不備や記入漏れといった形式的な不備です。
しかし電子処方箋ではシステム上で項目不備のチェックが行われるため、形式的な不備のリスクが低くなります。
疑義照会の数が減ればその分手間も少なくなり、業務効率化につながるでしょう。
患者側にもさまざまなメリットがある
電子処方箋の導入は患者側にもさまざまなメリットがあります。
- ・薬局での待ち時間が削減される
- ・処方箋紛失のリスクが低くなり、処方箋を探す手間や再発行の手間がなくなる
- ・重複処方がなくなり、薬代の負担軽減や過剰処方の恐れがなくなる等の効果がある
電子処方箋は処方に際して患者側にかかる負担を軽減する上でも効果的といえるでしょう。
電子処方箋導入時に利用できる補助金

- 初期導入
- 電子処方箋管理サービスのみを導入した場合に選択します。
- 同時導入
- 電子処方箋管理サービスと電子処方箋管理サービス新機能を同時に導入する場合に選択する申請区分です。
- 新機能導入
- すでに初期導入文の補助金申請・交付が完了しており、新たに電子処方箋管理サービス新機能の追加改修をした場合の申請区分です。
- ・大病院(病床数200以上):162.2万円
- ・大病院以外の病院:108.6万円
- ・診療所:19.4万円
- ・大型チェーン薬局(グループでの処方箋受付数が月4万回以上):9.7万円
- ・薬局:19.4万円
- ・大病院:200.7万円
- ・大病院以外の病院:135.3万円
- ・診療所:27.1万円
- ・大型チェーン薬局:13.8万円
- ・薬局:27.7万円
- 1.医療機関等向け総合ポータルサイトのトップページの「電子処方箋管理サービス」を選択
- 2.「オンライン資格確認・オンライン請求の各種申請について」を選択
- 3.ログイン後、遷移先のページの「補助金申請」を選択
- 4.ページの案内に沿って申請書フォームに必要事項を入力
- 5.必要書類をアップロードし、「送信」を選択
まとめ
2025年1月時点では電子処方箋の義務化はされていません。
電子処方箋の導入はあくまでも医療機関の任意となります。
しかし、電子処方箋の導入には医療機関側・患者側ともにさまざまなメリットがあります。
「電子処方箋管理サービス等関係補助金」の制度も設けられているため、早めに予定を立てて電子処方箋の導入を進めるのも良いでしょう。
電子処方箋の導入にはさまざまな作業が必要です。
手順をしっかり確認し、スケジュールに余裕を持って進めることが大切です。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士