
クリニック閉院時に特に課題となりやすい作業の1つが医療機器の処分です。
医療機器は産業廃棄物に該当し、一般的なゴミや粗大ゴミのような方法での廃棄ができません。
法律や規制で厳正な管理がされているため、処分の際はルールについてしっかり確認し必要な手順を踏む必要があります。
医療機器の処分方法は大きく3種類です。
それぞれ異なるメリット・デメリットをもち手続きの流れにも違いがあるため、どの方法が適しているか検討する必要があります。
今回はクリニック閉院時の医療機器の処分方法や、医療機器を処分する際の注意点について解説します。
クリニック閉院の流れについては以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
医療機器の処分方法3選|手続きの流れと費用の考え方

医療機器の処分方法は3種類に大別されます。それぞれ詳しく解説します。
廃棄処分
医療機器の処分方法として最も一般的なのが廃棄処分です。
産業廃棄物処理業者に依頼して処理してもらう方法ですが、医療機器の処理を専門としている処理業者に依頼するのが確実といえます。
医療機器を専門とする業者に依頼するべき理由として以下の3つが挙げられます。
- ①医療機器を処分するための運搬や撤去を安全に行うには技術が求められる
- ②医療機器の廃棄処分にはルールが多く、専門業者以外が適切に行うのは難しい
- ③感染性廃棄物の処分は「特別管理産業廃棄物処理業」の許可をもつ業者への依頼が義務付けられている
意図しない法令違反やトラブルのリスクを最小限にするため、最初から医療機器の廃棄を専門とする業者を選ぶのが安心です。
産業廃棄物処理業や特別管理産業廃棄物処理業の許可を得ていない業者に依頼してしまうと、廃棄した側(クリニック側)に責任が問われます。
これらの許可を得ている業者であるか、依頼前に必ず確認しましょう。
廃棄による処分手続きの大まかな流れは以下の通りです。
- 1.医療機器の廃棄処分を依頼する業者を探す
- 2.業者に見積もり依頼をし、費用に納得がいけば契約
- 3.クリニック側でマニフェスト(産業廃棄物管理票)を作成
- 4.業者に医療機器を回収してもらい、同時にマニフェストの交付も実施
- 5.廃棄処分が適切に完了した旨を証明する「マニフェストE票」を受け取る
医療機器を廃棄処分するメリットとして以下の2つが挙げられます。
- ・すべての医療機器を確実に処分できる
- ・他の処分方法に比べてクリニック側での手間が少なく済む
廃棄する場合の処分費用は医療機器の種類や量によって大きく異なるため一概にはいえません。
あくまで傾向ですが、大型の医療機器や特殊な処置が必要な医療機器が多いと高額になりやすいです。
買い取り業者へ売却
医療機器の状態や種類によっては買い取り業者へ売却できるケースもあります。
買い取り業者へ売却するメリットは以下の3つです。
- ・売却によって収益を得られる
- 特に購入から日が浅い医療機器や特殊な医療機器は買取金額がつきやすい傾向です
- ・買い取り業者によっては金額がつかない医療機器を無料で引き取ってもらえるケースがある
- ・まだ使える医療機器を廃棄せず別の医療機関で使い続けてもらえる
デメリットとして以下の3つが挙げられます。
- ・産業廃棄物処理の代行は認められないため、廃棄を依頼する場合は業者へ所有権の移転が必要
- ・買い取り対象になる医療機器はあまり多くない
- ・医療機器の買い取り業者の数は少なく、依頼先を探すのが難しい
上手くいけば医療機器の処分にかかるコストを抑えられますが、医療機器の売却はハードルが高く、スムーズに進まないケースも多いです。
なお、買い取り対象になり得る医療機器として以下の例が挙げられます。
- ・レントゲン装置、CT、MRIなどの画像診断系医療機器
- ・心電計や自動血圧計などの検査機器
- ・手術台
- ・ウォーターベッド
- ・超音波治療器、マイクロ波治療器
- ・AED
- ・人工呼吸器
- ・牽引装置
売却であれば処分費用が発生しないのはもちろん、前述のように収益が得られる可能性もあります。
買取価格がつかない医療機器でも無料で引き取ってもらえるケースが多いです。
メーカーに引き取ってもらう
医療機器の引き取りサービスを提供している医療機器メーカーに引き取ってもらう方法もあります。
医療機器をメーカーに引き取ってもらうメリットは、医療機器の処分に関するクリニック側の手間が少なく済む点です。
事前に調整した日程で来てもらい、医療機器の回収を任せるのみとなります。
廃棄が必要な場合でも、廃棄業者への依頼や手続きはメーカー側に代行してもらえます。
メーカーに引き取ってもらうことのデメリットは、対応できるメーカーが限られている点です。
医療機器を回収できるのは、産業廃棄物収集運搬業や特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可を得ている業者に限ります。
これらの許可を得ていないメーカーに依頼してしまうと、クリニック側が責任を負うことになる恐れがあります。
医療機器の引き取りを依頼する前に、必要な許可を得ている業者であるか確認するのが安心です。
メーカー引き取りの費用は廃棄処分の場合よりも業者による違いが大きいため、費用を判断しにくい部分があります。
メーカー公式サイトの案内を確認し、不明点があれば事前に問い合わせて確認するのが安心です。
クリニック閉院時に医療機器を処分する際の注意点

続いて、クリニック閉院時に医療機器を処分する際の注意点を3つ紹介します。
法律・規制の遵守が大前提
医療機器の処分方法として複数の選択肢がありますが、どの方法をとる場合でも法律・規制の遵守が大前提です。
医療機器は産業廃棄物または特別管理産業廃棄物に該当し、廃棄物処理法によって処理方法が厳格に定められています。
法律の規定に従い、必要な手続きを漏れなく行うことが非常に重要です。
また、廃棄物処理法第3条では「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない」と定められています。
医療機器の処分を業者に委託した場合でも、法令違反やトラブルの責任は排出事業者にあるとみなされてしまいます。
業者に委託する場合、業者が必要な許可を得ているか・適切な方法で処理を行う、信頼できる業者かどうかの確認が必須です。
業者選びは慎重に行う
「法律・規制の遵守が大前提」でも触れたように、医療機器の処分を業者に委託した場合でも、法令違反やトラブルの責任はクリニック側にあります。
法律に則った適切な方法で医療機器を処分するため、処分を依頼する業者選びは慎重に行いましょう。
業者選びのポイントとして以下の5つが挙げられます。
- ・「特別管理産業廃棄物処理業」「特別管理産業廃棄物収集運搬業」等の許可を得ているか確認する
- ・医療機器の処分に関する実績や事例が豊富な業者を選ぶ
- ・法令順守を大前提としているか、処理方法が法律の基準を満たしているかを確認する
- ・複数の業者に見積もりを依頼して比較する
- ・依頼の前に質問や問い合わせを行い、対応や人となりを確認する
【売却の場合】細かな要素が査定額を左右する
医療機器に限らず、事業用の機器や什器備品の査定額は細かな要素によって変動する点を押さえることが大切です。
医療機器の査定額を上げるためのポイントとして以下の3つが挙げられます。
- ・汚れやホコリを落とし、なるべくきれいな状態で査定に出す
- ・付属品や説明書など医療機器本体の購入時にセットになっていたものを揃えておく
- ・処分する医療機器の数が多い場合、なるべくまとめて査定に出す
- (数が多いだけでも査定額が上がる可能性があります)
ただし、最も大切なのは日頃から小まめにメンテナンスをして良い状態を保つことです。
保存状態が悪い場合、査定直前の対応だけでは間に合わず、査定額のアップにつながりにくいでしょう。
クリニックの開業や医療機器の購入段階から医療機器を処分する時のことを考えて、日頃から丁寧に扱うのが理想といえます。
まとめ
医療機器の処分方法として、廃棄処分、買い取り業者への売却、メーカー引き取りの3つが挙げられます。
それぞれ異なるメリット・デメリットがあるため、自分のケースに合う方法を選ぶことが大切です。
いずれの方法を選ぶ場合でも、法律・規制の遵守は大前提です。
法令違反やトラブルの責任は排出事業者にあるとみなされるため、業者に委託する場合でも注意する必要があります。
法律・規制を徹底し、適切な方法で医療機器の処分を行いましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士