
オンライン診療とはスマートフォンやPCなどの端末を使用してオンラインで診察や薬の処方をする方法です。
医療DX推進の動きや新型コロナウイルス感染症の流行等の影響により、オンライン診療を導入するクリニックは増加傾向にあります。
オンライン診療にはメリットだけでなくデメリットもあり、すべての医療機関に適しているとは限りません。
また、導入にはさまざまな作業が必要で手間がかかるため、オンライン診療について理解を深めた上で導入を検討することが大切です。
今回はオンライン診療のメリット・デメリットや導入手順、オンライン診療の導入に利用できる補助金について解説します。
医療DXについては以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
オンライン診療導入のメリット

はじめに、オンライン診療導入のメリットを4つ紹介します。
患者さんの場所を問わず医療を提供できる
オンライン診療は医療機関に足を運んでもらう必要がないため、患者さんの場所を問わず医療を提供できます。
遠方に住む患者さんや、移動・通院が難しい事情をもつ患者さんにも等しく医療を提供できる点は大きなメリットです。
通院の負担をなくせる
前述のようにオンライン診療は患者さんの場所を問わず医療を提供できます。
医療機関に来てもらう必要がないため、通院の負担をなくすことが可能です。
また対面診療の場合、受付をしてから診療開始までの間や、診療が終わってからお会計までの間に待ち時間が発生します。
このような待ち時間も患者さんにとって大きな負担になる要素です。
オンライン診療では予約時間からほとんどズレることなく診療が始まるため、診療までの待ち時間がほとんど発生せずに済みます。
会計はシステムで自動的に行われるため、診療後の待ち時間はありません。
このようにオンライン診療であれば、移動面や時間面での負担をかけずに医療を提供できます。
院内感染のリスクを低減できる
院内感染のリスクを低減できる点も、オンライン診療の大きなメリットです。
院内感染により患者さんが急増する恐れや、医療従事者に感染して働けるスタッフが減ってしまう恐れ等を軽減できます。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により対面診療が難しくなったことを機にオンライン診療の実施要件が緩和されました。
2020年4月から、時限的・特例的な取扱いではあるものの、初診からオンライン診療が実施可能となったのです。
その結果オンライン診療を行う医療機関の数は急増。
2020年4月末時点ではオンライン診療を導入した医療機関の割合が9.7%であったのが、2021年6月末には16.0%まで増加しています。
出典:厚生労働省「令和5年1月~3月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果 4ページ目」
治療継続率の向上を期待できる
忙しくて通院の時間をとれない・通院のためにまとまった時間を確保するのが難しい等の理由から、治療を途中でやめてしまうケースは少なくありません。
オンライン診療であれば患者さんの場所を問わず医療を提供できますし、通院や待ち時間の負担も抑えられます。
仕事やライフスタイル等の理由で忙しい患者さんでも利用しやすいため、治療継続率の向上を期待できます。
オンライン診療導入のデメリット

続いて、オンライン診療導入のデメリットを3つ紹介します。
初診はかかりつけ医による診療が原則
厚生労働省による「オンライン診療の利用手順の手引書」では、初診からのオンライン診療について以下のように明記されています。
- “初診からのオンライン診療は、オンライン診療指針で定める例外を除き、原則として「かかりつけの医師」が行うことが求められます。”
出典:厚生労働省「オンライン診療の利用手順の手引書 8ページ」
※「オンライン診療指針で定める例外」はこちらのページに記載されています。
システムや設備の整備が必要
オンライン診療を実施するためにはシステムや設備の整備が必要です。
特にインターネット環境の整備が非常に重要であり、ネット回線や機器の変更が必要になるケースもあります。
対応できる症状に限りがある
オンライン診療では聴診や触診ができないため、対応できる症状に限りがあります。
また、血液検査やエコー検査等が必要な場合にも適していません。
診療科によってはオンライン診療の導入によるメリットが小さい可能性や、そもそも導入が難しい可能性がある点に注意が必要です。
オンライン診療導入の手順

オンライン診療導入の手順は大きく4つの工程に分けられます。それぞれの工程について詳しく解説します。
事前検討
オンライン診療の導入に向けて、事前に以下の事項について検討が必要です。
- ・現在どのようなニーズや課題を抱えているか、オンライン診療の導入によって解消されるか
- ・オンライン診療の患者の対応範囲、患者数
- ・オンライン診療の実施時間および予約可能時間
事前検討にあたって、他の医療機関や地域におけるオンライン診療の導入事例を確認することも大切です。
体制を整備する
オンライン診療を実施できるよう医療機関内で体制の準備が必要です。
必要な作業の具体例を紹介します。
- ・医師、看護師、スタッフ等の医療機関内における合意形成
- ・医療機関内における役割分担の明確化
- ・オンライン診療に関する研修の受講
導入準備・実施環境の構築
オンライン診療の導入に向けて準備を進めていきます。
導入準備・実施環境の構築の工程で必要な作業の例は以下の通りです。
- ・予算や費用の確認
- ・導入システムの選定
- ・必要な機器の導入
- ・(必要な場合)訪問看護事務所など関係機関との連携体制の構築
どのような作業が必要かはケースによって異なるため、ミスや漏れがないよう小まめに確認しながら進めましょう。
実施に向けて必要な手続きを行う
オンライン診療の実施に向けて必要な手続きとして以下の例が挙げられます。
- 各種届出の提出
- 地方厚生局(支局)に対して情報通信機器を用いた診療についての施設基準の届出が必要です
- 患者向け資料の作成
- 説明書、同意書、診療計画書、院内掲示等、患者向け資料の作成をする必要があります
- 予約管理体制の構築
- オンライン診療の診療枠の設定や、予約管理体制の整備・システム導入などが必要です
- 医療機関および関係者向けに業務手順の構築
- 保険証や医療証などの確認方法の構築
- 決済方法や処方箋、医薬品等の提供体制の構築
オンライン診療の補助金とは

オンライン診療の補助金制度により、オンライン診療に必要な機器やシステムの導入にかかる費用の一部について補助を受けられます。
ただし、2025年1月現在、オンライン診療の補助金の運営主体は国ではなく都道府県や市町村といった地方自治体です。
自治体によって制度の有無や要件・金額等が大きく異なるため、各自治体の案内をご確認ください。
一例として、今回は東京都の「令和6年度オンライン医療相談・診療等環境整備補助事業」について紹介します。
- 対象者
- はじめてオンライン診療を導入する医療機関
- ※一部の医療機関は対象外
- ※すでにオンライン診療を実施している場合は対象外
- 対象経費
- オンライン医療相談・診療等のために用いる通信機器等の初期経費
- ※リース料、保守費用、通信費等は対象外
- 基準額および補助率
- 基準額:40万円
- 補助率:2分の1
まとめ
オンライン診療の大きなメリットとして、通院や待ち時間の負担を抑えられる点が挙げられます。
院内感染リスクの低減や治療継続率の向上を見込める点もメリットです。
ただし、オンライン診療からの初診はかかりつけ医による診療が原則のため、手軽に利用できるとは限りません。
オンライン診療で対応できる症状は限られている点や、導入に手間やコストがかかる点にも注意が必要です。
オンライン診療を導入するにはさまざまな作業が必要なため、導入検討からオンライン診療の開始までには時間がかかります。
将来的にオンライン診療を導入しようと考えているのであれば、早めに情報収集や準備を行うことが大切です。
オンライン診療について理解を深め、必要に応じてスムーズに対応できるよう準備を進めておきましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士