医療経営士とは?概要と導入するメリット・デメリットを解説

2025.01.31

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医療経営士とは、医療機関のマネジメントに必要な医療や経営の知識、および経営課題を解決する能力を有することを証明する民間資格です。

医療業界の経営は特殊な面が多いため、医療業界の経営に精通した医療経営士に対する注目度や需要が高まっています。

 

医療経営士の導入にはさまざまなメリットがある一方、注意するべきデメリットも存在します。

医療経営士について理解を深めた上で、クリニックに導入するべきか十分な検討が必要です。

 

今回は医療経営士という資格について詳しく解説します。

 

クリニックの院長は医療の提供だけでなく経営や確定申告、税金についても考える必要があります。

開業医の確定申告・税金については以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

医療経営士とは

医療経営士とは、一般社団法人 日本医療経営実践協会が認定する民間資格です。

医療機関のマネジメントに必要な医療や経営の知識、および経営課題を解決する能力が問われます。

医療経営士が求められる背景

医療経営士が求められる背景として、医療業界が長らく抱えている「経営不在」の問題があります。

 

医療機関の管理運営の中心となるのは、院長である医師や歯科医師です。

医師や歯科医師は医療の専門家ではありますが、経営について知識・経験があるとは限りません。

医療分野を深めるだけでも多大な労力が必要な上、勤務医が経営を学ぶ機会はほとんどないため、経営面の知識やスキルを身につけにくいのです。

 

また、医療分野には長年「医療の目的はお金ではなく、人のために尽くすこと」という考えがありました。

お金に関することを持ち出すのは好ましくないという風潮により、経営に向き合わないのが一般的だったのです。

 

しかし近年は以下のような理由から、医療機関が経営について考える必要性が高まっています。

  • ・少子高齢化に伴う人口減少により患者数が減ることはあっても増える可能性は低い
  • ・診療報酬の引き下げにより医療機関の減収が進んでいる
  • ・医療機関を選ぶにあたってWebで情報収集をするのが当たり前になり、何もしなくても近所の患者が来るという状況ではなくなった

 

外部の経営コンサルタントにアドバイスやサポートを依頼するのも1つの手段です。

ただし医療業界の経営は特殊な面が多いため、一般的な経営に強い・詳しい人が適切な対応ができるとは限りません。

そのため、医療業界の経営に精通した医療経営士が求められるようになっています。

医療経営士資格の概要

医療経営士資格には1級、2級、3級と3つの等級があります。

いきなり上の等級を受験することはできません。

下位の等級に合格する必要があり、かつ、正会員の登録も必須です。

 

今回は医療経営士資格試験で最初に受験・合格する必要がある3級試験の概要を紹介します。

  • ・試験時間:70分
  • ・出題形式:五肢択一
  • ・問題数:50問
  • ・合格基準:総得点の6割程度
  • ・医療経営士3級像(到達レベル):「医療・医療経営に関する基礎知識、倫理/モラルを習得している。」
  • ・受験料:税込9,100円+システム利用料
  • ・試験会場:オンライン

医療経営士を導入するメリット

医療経営士の受験対象者は、医療従事者、医療関連サービス・企業に勤務する者、学生等です。

そのためクリニックの院長である医師が取得することも可能ではあります。

ただし、院長として医療の提供やクリニックの経営を行う中で、医療経営士の資格試験に向けた勉強をするのは難しい面もあります。

そのような場合は院長が医療経営士資格を取得するのではなく、医療経営士の資格をもつ人材を採用するのがおすすめです。

 

この章では自身が運営するクリニックで医療経営士を採用する場合のメリットについて解説します。

経営課題の発見・解決がしやすくなる

医療経営士を採用することで、クリニックが抱える経営課題の発見・解決がしやすくなる効果が期待できます。

 

「収益が伸び悩んでいる」「売上は出ているが赤字状態である」等、経営が上手くいっているか否かの判断自体は容易なケースも多いです。

しかし経営が上手くいっていない理由、すなわち経営課題を特定するのは容易ではありません。

経営の専門知識がない中で経営課題を探そうとしても、誤った判断をしてしまう恐れや、好ましい成果を得られない恐れがあります。

 

医療経営士は医療業界における経営のプロであり、医療機関における経営課題の発見・解決策の提案も専門分野の1つです。

そんなプロである医療経営士を自分のクリニックで雇えば、経営に関する内容をいつでも相談できるようになります。

結果として、経営課題を効率的かつ確実に見つけられるようになる上、最適な方法による解消ができる可能性も上がるのです。

医療業務に集中できる

医療経営士を雇えば院長である医師が医療業務に集中しやすくなります

 

個人クリニックの院長である医師や歯科医師は、医療従事者であると同時に経営者でもあります。

医療行為が本業ではあるものの、経営者である以上は経営関連の業務を避けられません。

経営状態や業務量によっては医療に割ける時間が理想よりも少なくなってしまう恐れもあります。

 

自身のクリニックで医療経営士を雇えば、経営に関する業務の大部分を医療経営士に任せられます。

院長が行うべき経営関連の業務が減るため、医療業務に集中しやすくなるでしょう。

人事分野の強化につながる

医療経営士を雇えば職場環境の課題やスタッフが抱える不満など、院長だけでは目が行き届かない場所も対応できる可能性が上がります。

そのため経営そのものだけでなく、人事労務面の強化にもつながるでしょう。

 

なお、医療経営士の2級では組織管理や組織改革、人的資源管理も出題範囲に含まれます。

そのため医療経営士2級以上の人は医療機関の人事についても高度な知識をもっていると判断できます。

最新の医療経営情報を得られる

医療経営士は3年ごとの更新手続きが必要です。

更新手続きの際は更新手数料の納付と正会員更新申請書の提出のほか、医療経営士の知識・スキルの維持等に関する課題もこなす必要があります。

(3級の場合は指定図書の精読、2級以上では複数の課題から1つを選択)

 

資格維持のために課題をこなす必要がある以上、医療経営士は定期的に最新情報に触れることになります。

そんな医療経営士を通じて医師も最新情報を得られるため、時代に適したクリニック経営をできる可能性が高いです。

医療経営士のデメリット・注意点

続いて、医療経営士のデメリット・注意点を2つ紹介します。

人数があまり多くないため採用しにくい

医療経営士の需要は高まっているものの、資格保有者の数があまり多くないため採用しにくい可能性が高いです。

 

医療経営士資格試験の第1回が実施されたのは2010年であり、比較的新しい資格といえます。

また、医療経営士3級試験の直近5回(第39回~第43回)の合格者数はそれぞれ350人~400人程度です。

資格試験が始まってからの年数の短さや合格者数の数から、医療経営士資格を持つ人はあまり多くないと考えられます。

登録手続きや資格の更新手続きが必要

医療経営士として活動するためには、正会員の登録手続きおよび3年ごとに資格の更新手続きが必要です。

医療経営士の有資格者を採用もしくはスタッフに資格取得をしてもらう場合、登録や更新に際してクリニック側がサポートをするのが理想です。

簡単とはいえ事務作業が発生する点や、手数料の支払いが必要になる点をあらかじめ把握しておく必要があります。

まとめ

医療経営士は医療機関のマネジメントに必要な医療や経営の知識、および経営課題を解決する能力を有することを証明する資格です。

近年医療機関が経営について考える必要性が高まっており、それに伴い医療経営士の注目度や需要も上がっています。

 

医療経営士の有資格者の雇用により、経営課題の発見・解決がしやすくなるでしょう。

院長が医療に集中できるようになる点や、人事分野の強化・医療業界の経営に関する最新情報を獲得しやすくなる点もメリットです。

ただし、医療経営士の有資格者の数が少ないため採用しにくい可能性がある点や、登録・更新手続きが必要等のデメリットがあります。

 

注意するべきデメリットが存在するとはいえ、医療経営士を雇うメリットは非常に大きいでしょう。

医療機関の経営にお悩みであれば、医療経営士の導入を検討してはいかがでしょうか。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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