
医療法人の設立準備に着手してから必要な手続きすべてが完了するまでに、最低でも半年はかかります。
医療法人を設立するには自治体に設立認可の申請をし、承認を得る必要があります。
設立認可ができる期間は原則として年2回です。医療法人設立に向けた準備は、設立認可の申請ができる期間に合わせて行うことになります。
今回は医療法人設立までの大まかなスケジュールや、手続きの流れについて解説します。
クリニックを医療法人化するための要件や手続きについては以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
医療法人設立にかかる期間

前提として、医療法人を設立するためには都道府県に設立認可の申請をして承認を受ける必要があります。
医療法人の設立認可の申請ができる期間は原則として年2回です。
申請期間に合わせて手続きを行う必要があるため、好きなタイミングで自由に設立できるわけではありません。
そして、医療法人の設立準備に着手してから認可が下り、設立に必要な手続きすべてが完了するまでに最低でも半年はかかります。
必要な手続きが多い上に審査のために待つ時間もあるため、トータルで長い期間がかかってしまうのです。
医療法人設立までの大まかなスケジュール

前述のように医療法人の設立認可の申請ができる期間は年2回であり、それぞれ本申請の受付期間は1週間程度です。
申請できる期間が明確に定められているため、医療法人設立のスケジュールは受付期間から逆算して設定することになります。
- 事前相談(仮申請受付期間の2ヵ月前あたりまで)
- 医療法人の設立準備を進めるにあたって、まずは保健所や厚生局へ事前相談を行うのが一般的です。
- 仮申請(仮申請受付期間の2ヵ月前頃から準備を始める)
- 医療法人の設立認可における申請書の受付期間とは、厳密には仮申請の受付期間を指します。
- 仮申請を行い必要に応じて修正をした後に本申請をする流れです。
- 仮申請の受付期間までに医療法人の基本事項の決定や書類作成等の準備を進めます。
- 本申請(仮申請受付期間の3~4ヵ月後が期日)
- 仮申請後に行われる予備審査の結果を基に、必要に応じて申請書類の補正を行います。
- 本申請の締め切りまでに必要書類を提出しましょう。
- 参考として、令和6年度の東京第1回は仮申請の受付期間が令和6年8月19日~令和6年8月23日、本申請書類の提出期日は令和6年12月27日でした。
- 設立認可(本申請締め切り後2ヵ月程度)
- 医療審議会での審査問題ないと判断されれば設立認可書が交付されます。
- その他各種手続き(設立認可書交付から1~2ヵ月程度)
- 設立認可書の交付後、医療法人の設立に向けて各種行政手続きが必要です。
- 法務局での登記申請や各種届出の提出などを行うことで、医療法人の設立が完了となります。
各工程の詳しい手続きについては次の章で解説します。
医療法人設立手続きの流れ

医療法人設立手続きの流れについて工程ごとに詳しく解説します。
定款の作成等の準備作業
最初に行うのは定款の作成等の準備作業です。
まずは定款案の作成を行います。この段階で決めるべき事項の例は以下の通りです。
- ・医療法人の名称
- ・事務所所在地
- ・事業目的、法人設立の趣旨
- ・会計年度
- ・社員候補者
- ・役員候補者(理事長、理事、監事)
また、申請書とあわせて提出する添付書類の準備もできる部分から進めていきます。
なお、都道府県によっては医療法人設立説明会が行われるケースもあります。
設立説明会が行われる場合は、説明会に参加してから準備作業に着手するのが一般的です。
都道府県によっては設立説明会の参加が必須の可能性があるため必ず都道府県の案内をご確認ください。
一方で、設立説明会を開催しない都道府県も存在します。
たとえば東京都の場合、令和6年度は資料の掲載をもって設立説明会の開催に代えると案内されています。
設立総会の開催
設立総会とは医療法人の基本的事項を決定する総会です。
発起人全員による参加が必要とされています。
設立総会の後は以下の事項をまとめた議事録の作成が必要です。
- ・設立総会の開催日時および開催場所
- ・設立総会に出席した発起人
- (または医療法人設立時の役員の氏名・名称)
- ・設立総会の議長の氏名
- ・設立総会における議事案および結果
- ・議事録作成を行なった発起人の氏名または名称
設立認可申請書の作成
設立総会を開催し基本的事項が決まり次第、設立認可申請書の作成を進めます。
申請書の主な記載事項は以下の通りです。
- ・名称
- ・主たる事務所の所在地
- ・開設しようとする医療機関の名称および場所
- ・医療関係以外の業務を行う場合はその業務の概要
申請書の記載事項自体はシンプルですが、添付書類として以下の書類も用意・提出する必要があります。
- ・受付表(都道府県の公式サイトから様式のダウンロードが可能です)
・定款 - ・設立総会の議事録
- ・財産目録
- ・財産目録明細書
- ・財産の価額等の根拠資料
- ・役員、社員名簿
- ・就任承諾書
- ・医師免許証
- ・診療所等の概要
- ・施設等の概要
- ・周辺の概略図
- ・建物平面図
- ・物件の賃貸借契約書または登記事項証明書
- ・事業計画書
- ・予算書
- ・職員給与費内訳書
- ・実績表
- ・確定申告書
- ・診療所の開設届の写し
このように必要書類は多岐にわたり、自身での作成や取り寄せが必要な書類もあるため、早めに着手しましょう。
設立認可申請書原案の提出
設立認可申請書原案の提出が仮申請(事前審査)の申し込み手続きとなります。
なお、仮申請の段階では設立認可申請書の捺印は不要な点にご注意ください。
事前審査の実施
提出した設立認可申請書および添付書類をもとに事前審査が実施されます。
事前審査で質疑があれば回答しましょう。
事前審査の完了後、審査の結果を基に必要に応じて案文の修正・補正を行います。
医療法人設立申請書の提出
東京都の保健医療局公式サイト「医療法人設立の手引」によると、本申請時の注意点として以下の事項が挙げられます。
- ・議事録、役員就任承諾書、管理者就任承諾書に実印での押印が必要
- ・押印欄のある申請様式は原則として正本・副本とも原本が必要
- ・正本に原本が必要か写しでも良いかは書類の種類によって異なる
- ・必要書類一覧表(チェックリスト)の順にそろえて提出が必要
上記事項に注意し、設立申請書にも押印をした上で書類を提出しましょう。
医療審議会での審査・設立認可書の交付
本申請書類の提出後、医療の提供に関する重要事項の調査審議が行われます。
審査の結果問題ないと判断されれば設立認可が下り、設立認可書が交付されます。
医療法人の設立登記申請
医療法人の設立登記申請は原則として、設立認可書の交付から2週間以内に行う必要があります。
設立登記の完了後、都道府県に医療法人設立登記完了届の提出も必要です。
保健所への開設許可申請
医療施設を運営するためには、都道府県管轄保健所に病院や診療所等の許可申請をする必要があります。
原則として開設許可希望日のおおむね3週間前までに申請が必要です。
正確な期日および必要書類は自治体によって異なるため公式サイト等でご確認ください。
申請書の提出後、保健所による立入検査が行われます。
立入検査が完了し許可が下りれば診療所等の開設が可能になります。
保健所立入検査については以下の記事をご覧ください。
その他各種手続き
その他に必要な手続きとして以下の例が挙げられます。
- 保健所
- ・診療所開設届
- ・個人診療所廃止届の提出
- ・公費医療関連指定申請書の提出
- 厚生局
- ・保険医療機関指定申請
- ・施設基準届
- ・個人の保険医療機関廃止届
- 税務署
- ・法人設立届出書
- ・給与支払事務所等の開設届出書
- ・青色申告承認申請書
- 社会保険関係
- ・新規適用届
- ・被保険者資格取得届
- ・健康保険被扶養者(異動)届
- 労働保険関係
- ・労働保険関係成立届
- ・雇用保険適用事業所設置届
- その他
- ・法人口座の開設
- ・電気、ガス、水道等の契約
- ・各種名義変更手続き
まとめ
医療法人は設立準備の開始から設立まで最短でも半年程度はかかります。
設立認可ができるのは原則として年2回、1週間程度の限られた期間のみです。
医療法人設立に向けた準備は申請期間に合わせて行うことになります。
医療法人設立のためには、設立認可の申請に向けた準備をはじめ様々な作業が必要です。
提出書類も多岐にわたるため、余裕を持って作業を進めましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士