【クリニック・医療法人向け】令和7年度税制改正の要綱を解説!

2025.06.12

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令和7年度税制改正では、医療機関に大きな影響を与える変更が複数行われました。

ルールに則った適切な経営や節税対策を行うためには、税制改正の内容について深い理解が必要です。

 

今回は令和7年度税制改正によって反映された、医療機関が押さえるべき変更点について解説します。

 

令和7年度税制改正の変更点の1つとして、医療機器等の特別償却制度の延長が挙げられます。

医療機器等の特別償却制度については以下の記事をご覧ください。

 

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CONTENTS

令和7年度税制改正で医療機関が押さえるべき変更点

はじめに、令和7年度税制改正で医療機関が押さえるべき変更点を4つ紹介します。

社会医療法人等の収入要件の見直し

令和7年度税制改正により、社会医療法人等の収入要件について2つの見直しが行われました。

 

1つ目は社会保険診療等に係る収入金額の割合を計算する際に、分子に「補助金等に係る収入金額」を入れるという変更です。

補助金等の多寡が要件の充足に影響を与えるのを防ぐ目的で導入されました。

 

2つ目の変更点は分母の扱いです。

税制改正による変更の前は、分母は全収入金額(事業収益の額)でした。

しかし医療保健業務の非営利性を確保する観点により、分母は医療保健業務による収入金額のみと変更されています。

 

今回の変更により、分子・分母はそれぞれ以下のようになりました。

 

  • 分子
  • 社会保険診療+健康診査 +予防接種+助産+介護サービス+障害福祉サービス+補助金等 に係る収入金額
  •  
  • 分母
  • 医療保健業務による収入金額
  •  

上記よって計算した結果が80/100よりも大きい場合は収入要件を満たすものとみなされます。

(オープン病院事業法人は60/100)

医療機器等の特別償却制度の延長

令和7年度税制改正により、医療機器等の特別償却制度の適用期限が2年間延長されました。

該当する制度を3つ紹介します。

医師及びその他の医療従事者の労働時間短縮に資する機器等の特別償却制度

医師や医療従事者の労働時間短縮につながる一定の機器等を対象とした特別償却制度です。

制度の適用を受けるには以下の要件を満たす必要があります。

  • ・「医師等勤務時間短縮計画」に基づき取得した機器等(未使用のものに限る)
  • ・取得価額が30万円以上
  • ・一定期間内に所定の手続きを行い使用開始する

特別償却割合は取得価額の15%です。

地域医療構想の実現のための病床再編等の促進に向けた特別償却制度

地域医療構想の実現に向けた病床の再編等を目的とした、病院用または診療所用の建物等の取得や建設を対象とした制度です。

特別償却の適用を受けるための要件として以下の2つが挙げられます。

  • ・地域医療構想調整会議において合意された具体的対応方針に基づくものである
  • ・病院用または診療所用の建物およびその附属設備である

特別償却割合は取得価額の8%です。

高額な医療用機器に係る特別償却制度

取得価格500万円以上の高額な医療用機器を取得した場合に特別償却を受けられる制度です。

高度な医療の提供に資するものまたは医薬品医療機器等法の指定を受けて2年以内の医療用機器が対象となります。

特別償却割合は取得価額の12%です。

 

なお、特別償却は厳密には節税ではなく、課税の繰り延べに近い仕組みです。

対象の設備等を取得した事業年度に計上できる減価償却費が増えるため、初年度の税負担は抑えられます。

一方で、初年度に高額の減価償却を行うため2年目以降の減価償却費は少なくなり、課税対象の所得が高額になります。

もちろん、高額の支出をした事業年度の税負担を抑えるという意味では有用な制度といえるでしょう。

とはいえ実質は課税の繰り延べであり、トータルの税額は変わらない点を押さえる必要があります。

医療・介護DXの推進に伴う措置

医療・介護DXの推進に伴う税制上の所要の措置として、以下の3つが発表されました。

  • ・社会保険診療報酬支払基金の業務範囲の見直し等の実施後も、法人税等の非課税措置を継続
  • ・国民健康保険団体連合会が市町村からの委託を受けて行う検診等に係る文書は印紙税の対象外
  • ・一定の要件を満たす予防接種等の実施事務等に係る文書は印紙税の対象外

いずれも医療・介護DXの推進に伴う法改正を前提とした内容です。

 

また、医療DXの推進に関する以下の対応も予定されています。

  • ・厚生労働大臣による「医療DX総合確保方針」、支払基金による「医療DX中期計画」の策定
  • ・支払基金を医療DXの実施主体とする観点に基づいた法人の名称、目的、業務規定等の見直し
  • ・現行の理事会体制の見直し、国や地方関係者の参画、医療DXの専門家の参画

社会保険診療報酬の非課税措置および医療法人の軽減措置の存続(検討事項)

令和7年度税制改正大綱の第三検討事項の中で、社会保険診療報酬の非課税措置および医療法人の軽減措置の存続について明記されています。

具体的な変更があったわけではなく現時点では検討段階ではあるものの、今後の動向に注目すべきでしょう。

令和7年度税制改正 すべての事業者に関係する変更点

続いて、医療機関を含むすべての事業者が押さえるべき変更点を4つ紹介します。

中小企業投資促進税制の延長

中小企業投資促進税制は中小企業等が一定の要件を満たす設備投資をした場合に、特別償却または税額控除の適用を受けられる制度です。

特別償却は取得価額の30%、税額控除は取得価額の7%とされています。

令和7年度税制改正により適用期限が2年延長され、令和9年3月31日までになりました。

 

中小企業投資促進税制については以下の記事で詳しく解説しています。

 

中小企業経営強化税制の延長および拡充

中小企業経営強化税制とは、一定の要件を満たす資産を取得した場合に、特別償却または税額控除の適用を受けられる制度です。

特別償却の場合は取得価額の全額を即時償却、税額控除は取得価額の7%(資本金3,000万円以下の場合は10%)となります。

 

令和7年度税制改正により、以下3つの変更が行われました。

  • 適用期限の2年延長(令和9年3月31日まで)
  • ・生産性向上設備(A類型)と収益力強化設備(B類型)の要件見直し
  • ・B類型の拡充として、一定要件を満たす場合に建物およびその附属設備も制度の適用対象に追加

 

中小企業経営強化税制については以下の記事をご覧ください。

 

法人税の軽減税率の特例の延長

法人税の原則的な税率は23.2%ですが、資本金1億円以下の法人の場合、所得800万円までの部分にはより低い軽減税率が適用されます。

現行制度では軽減税率15%が適用されているものの、こちらは特例による税率で、本則税率は19%です。

特例の税率である15%は令和6年度末で終了予定でしたが、令和7年度税制改正により2年延長となりました。

令和8年度末(2027年3月31日まで)は引き続き軽減税率15%の適用が可能です。

基礎控除および給与所得控除の引き上げ

所得税に関する大きな変更として以下の5つが挙げられます。

  • ・基礎控除を10万円引き上げ、最高58万円に
  • ・基礎控除額について、所得階層ごとに最高37万円の控除額の上乗せを実施
  • ・給与所得控除の最低保障額を10万円引き上げ
  • ・大学生年代の子等をもつ親等に対する特別控除の創設
  • ・扶養親族及び同一生計配偶者の合計所得金額に係る要件の引き上げ

控除制度が充実し働きやすくなったため、人材採用にも良い影響を与えると期待できます。

まとめ

令和7年度税制改正により、医療法人やクリニックの影響に大きな影響を与える変更が複数行われました。

節税対策の最適な進め方はその時の税制によって異なります。

ルールに則った効果的な節税対策を行うため、税制改正による変更点を必ず確認しましょう。

 

とはいえ、税制改正による変更点を押さえつつ節税対策も完璧にこなすのは容易ではありません。

確実な節税対策を進めるためには、専門家である税理士のサポートを受けるのが安心です。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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