
事業継続力強化計画とは、中小企業等が策定する防災・減災の事前対策に関する計画です。
医療の提供を安定して続けるためには防災・減災対策が必須であり、その第一歩として事業継続力強化計画の策定が挙げられます。
事業継続力強化計画には認定制度が存在し、認定を受けることでさまざまな優遇措置を受けられます。
優遇措置の1つに税制優遇もあるため、節税の観点からも事業継続力強化計画の策定および認定は必須といえるでしょう。
今回は事業継続力強化計画について、クリニック・医療法人向けに解説します。
クリニック・医療法人におすすめの優遇税制については以下の記事もご覧ください。
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CONTENTS
事業継続力強化計画の概要

事業継続力強化計画とは、中小企業等が策定する防災・減災の事前対策に関する計画です。
現在および将来行う災害対策について記載するもので、防災・減災対策の第一歩としての位置づけにあります。
事業継続力強化計画で策定する内容
中小企業庁の「事業継続力強化計画 策定の手引き」によると、事業継続力強化計画の策定手順は5つのステップに分けられます。
各ステップで策定する内容について解説します。
事業継続力強化の目的の検討
最初に行うべきなのが、事業継続力の強化を図る目的の検討です。
目的もなく何となく計画を策定するのでは軸や方向性が定まらず、自院に合う計画を策定できない恐れがあります。
「そもそも何故、事業継続力の強化をするべきなのか」「事業継続力強化計画を策定しないとどうなるのか、どのような事態を避けるために策定する計画なのか」
このように、まずは目的を明確にしましょう。
災害等のリスクの確認・認識
続いて、災害等のリスクの確認および認識を行います。
災害等のリスクを確認する上で便利なのがハザードマップです。
自院や関係施設の所在するエリアで災害が起きた場合に、どのような事態が起こりうるかを確認しましょう。
中小企業庁による手引きでは、発生し得るリスクについて以下4つの切り口から考えるよう案内されています。
- ・ヒト(人員)
- ・モノ(建物、設備、インフラ関連)
- ・カネ(リスクファイナンス)
- ・情報
初動対応の検討
災害発生時の初動対応として以下の3つが求められます。
- ・人命の安全確保
- ・緊急時体制の構築
- ・被害状況の把握および情報共有
これらの取り組みをどのように行うか、具体的な方法を検討しましょう。
ヒト、モノ、カネ、情報への対応
「災害等のリスクの確認・認識」で、自然災害等の発生時に起こり得るリスクについて4つの切り口から検討しました。
それらのリスクに対する備えとして、事前にどのような対策をするべきか検討します。
リスク発生後の対応というよりは、考えられるリスクを回避するために行う対策について考える工程です。
平時の推進体制
事業継続力強化計画は緊急事態発生後ではなく、防災・減災の事前対策に主眼を置いたものです。
そのため平時の推進体制についても策定する必要があります。
手引きの中でも「事業継続力の強化は計画だけでなく、平時の取り組み(訓練)が大切」と明記されています。
平時の推進体制に関して留意するべき要素は以下の3つです。
- ・平時の推進体制に経営層が関与し、経営層の指揮下で事業継続力強化計画を実行
- ・訓練および教育を年1回以上実施する
- ・年1回以上、計画の見直しを行う
事業継続力強化計画とBCPとの違い
BCPとは事業継続計画のことで、自然災害や感染症リスクに見舞われても事業を継続するために策定する計画です。
事業継続力強化計画はBCPの一種であり、前述のように防災・減災の事前対策に主眼を置いています。
事業継続力強化計画は中小企業のための取り組みやすいBCPの位置づけにあります。
医療機関における事業継続力強化計画のポイント
事業継続力強化計画の策定が行われなければ、自然災害等の発生時に甚大な被害が予想されます。
医療機関での防災・減災が不十分であれば、医療を提供できない状態に陥る可能性が高いです。
有事で医療ニーズが高まる中で医療機関の機能がストップしてしまう事態は絶対に避けるべきです。
したがって、医療機関は事業継続力強化計画を策定し、防災・減災のための十分な対策を行う必要があります。
医療機関における事業継続力強化計画のポイントを2つ紹介します。
被害軽減のために策定する計画である旨を意識する
「災害対策」と聞くと、災害発生後の復旧作業をイメージするかもしれません。
しかし事業継続力強化計画は災害発生後の復旧ではなく、あくまでも防災や減災に主眼を置いたもので、事前対策を主とします。
何のために策定する計画であるかを意識しなければ、策定目的に合わない内容になってしまう恐れがあるため注意しましょう。
医療業界ならではのリスクや影響を考える
緊急事態の発生によって起こり得るリスクや影響は、業界・業種によって異なるものも存在します。
医療機関が事業継続力強化計画を策定する際は「医療業界ならでは」という観点でリスク等を考える必要があります。
事業継続力強化計画の認定後に受けられる税制優遇

事業継続力強化計画には「事業継続力強化計画認定制度」が存在し、認定を受けた中小企業はさまざまな優遇措置を受けられます。
優遇措置の1つとして税制措置が存在するため、事業継続力強化計画は節税の面からも策定するべきといえるでしょう。
この章では事業継続力強化計画の認定後に受けられる税制優遇について詳しく解説します。
事業継続力強化計画認定制度で受けられる税制優遇
事業継続力強化計画の認定を受けることで受けられる税制優遇は「中小企業防災・減災投資促進税制」と呼ばれます。
自然災害等による影響の軽減につながる機能を有する一定の減価償却資産を取得した場合に16%の特別償却を適用できる制度です。
青色申告書を提出し、一定の要件を満たす中小企業者等が対象となります。
適用対象期間は認定を受けた日から1年間です。
期間中に対象の減価償却資産を取得し、かつ、事業の用に供する必要があります。
また、税務申告書に「対象設備の償却限度額の計算明細書」の添付が必要です。
事業継続力強化計画の認定を受けるまでの流れ
事業継続力強化計画の認定を受けるまでの流れは3つの工程に大別されます。
- 事前確認および準備
- まずは事業継続力強化計画の認定制度を利用するかの検討が必要です。
- 制度利用に向けた手続きを進める前に、適用対象者や対象期間、対象の設備についても確認しましょう。
- 計画の策定
- 中小企業庁による手引きや作成指針などの資料をもとに、事業継続力強化計画の策定を進めます。
- 計画の申請
- 計画の申請方法は原則として電子申請のみで、郵送による申請はできません。
- 「事業継続力強化計画電子申請システム」から事業継続力強化計画の申請・届出を行います。
申請内容の審査を経て事業継続力強化計画が認定されると、認定通知書が交付されます。
審査の標準処理期間は45日です。
新規申請の必要書類について紹介します。
- 申請書
- 電子申請システムに直接入力します。申請用計画策定補助ツールを用いた下書きの作成も可能です。
- チェックシート
- 紙で提出する場合に必要な書類です。
- 現在は電子申請が原則のためチェックシートを別途作成する必要はありません。
- BCP等の参考書類
- すでにBCP(事業継続計画)を策定している場合、参考書類として添付が必要です。
なお複数の医療機関と連携して策定する場合には、以下の書類も提出する必要があります。
- ・連携者に大企業がいる場合、当該大企業の同意書
- ・連携企業間での協定書がある場合は協定書の写し
まとめ
事業継続力強化計画とは、防災・減災の事前対策に関する計画です。
自然災害等の有事では医療ニーズが高まりますが、防災・減災対策が不十分では医療の提供がストップしてしまう恐れがあります。
このような事態を避けるためにも、医療機関における事業継続力強化計画の策定は必須といえるでしょう。
また、事業継続力強化計画には認定制度が存在し、認定を受けることで税制措置をはじめとした優遇措置の適用を受けられます。
対象の税制は「中小企業防災・減災投資促進税制」と呼ばれ、一定の要件を満たす設備を取得した場合に16%の特別償却を適用できる制度です。
計画の認定を受けた後一定期間内に設備の取得および使用をした上で、税務申告書に必要書類を添付する必要があります。
事業継続力強化計画認定制度は細かな要件が多く、当事者のみで完璧に対応するのは容易ではありません。
手続きを適切に進められるよう、専門家のサポートを受けるのが安心です。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士