医療機関におけるBCP(事業継続計画)とは?策定のポイントを解説!

2025.06.13

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BCPとは企業が自然災害などの緊急事態に遭遇した場合に事業の継続や早期復旧ができるようにすることを目的に策定する計画です。

事業資産への損害を最小限に抑えつつ、中核となる事業の継続または早期復旧を可能とすることを目的とします。

 

自然災害等の発生時は医療ニーズが高まるため、医療を提供できる状態が強く求められます。

そのため医療機関におけるBCPの策定は必須といえるでしょう。

 

今回は医療機関におけるBCPの重要性や策定のポイントについて解説します。

 

適切なBCP策定を行うためには、中小企業等の支援に強みをもつ認定支援機関のサポートを受けるのが安心です。

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CONTENTS

BCP(事業継続計画)とは

BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害などの緊急事態に遭遇した場合に事業の継続や早期復旧ができるように策定する計画です。

緊急事態の発生時も重要業務が中断しないこと、中断してしまった場合も可能な限り短い時間で再開できることを重視します。

BCP(事業継続計画)の策定が必要な理由

医療機関でBCPの策定が必要な理由は、BCPの策定が自然災害等による影響の軽減に必須であるためです。

 

BCPを策定しない場合、緊急事態の発生により以下のような事態に陥る恐れがあります。

  • ・初動が遅れ適切な対策ができない状態が続き、事態が悪化する一方となる
  • ・事業の継続や再開ができず収益が得られないため、従業員の雇用を維持できない
  • ・対応の遅さにより顧客や取引先等からの信用を失う

 

また、自然災害等の緊急事態発生時は医療のニーズが高まりやすいです。

しかし医療機関がBCPを策定していなければ医療の提供が止まってしまい、結果として事態の悪化や混乱をまねく恐れがあります。

自然災害等により医療ニーズが高まっている中で医療を提供できない事態を防ぐためにも、医療機関のBCPの策定は必須です。

BCP(事業継続計画)策定の流れ

医療機関におけるBCP策定の流れは5つの工程に大別されます。

それぞれの工程について解説します。

基本方針の決定

最初に行うべきなのが基本方針の決定です。

基本方針は計画の策定や非常事態発生時における対応の判断基準となります。

各医療機関の理念を前提に、自院に合う方針を定めましょう。

組織づくりおよび管理体制の整備

BCP策定に際して行うべき組織づくりおよび管理体制の整備として、以下の3つが挙げられます。

  • ・平常時にBCPの運用や継続的改善に取り組む体制の整備(役割および責任の明確化)
  • ・災害対策本部の設置条件、本部体制、設置場所、本部の判断事項等の明確化
  • ・災害対策本部の設置場所が使用できない場合の代替場所の決定

被害想定

被害想定のステップで押さえるべき点は以下の3つです。

  • ・対象とする災害の内容
  • ・地域の被害規模
  • ・施設の被害規模

まずは地域防災計画等を調べ、人的被害や自院の受ける被害が最も大きいと想定される災害を対象としましょう。

行動計画を立てる

医療機関のBCPにおける行動計画とは、院内の各部門がするべき行動について明示化したものです。

「何を」「いつから」「いつまでに」実施するかを明確にする必要があります。

行動計画の策定により、非常時優先業務の選定や業務手順の具体化、医療機関全体の動きを俯瞰できる等のメリットを得られます。

災害時の対策を考える

BCP策定で考えるべき災害時の対策とは、考えられる被害とあるべき行動や実施すべき業務のギャップを埋めるためのものです。

災害時の対策を考える上で行うべきこととして以下の2つが挙げられます。

  • ・目標時間内に優先業務を復旧させるために必要な経営資源の洗い出し
  • ・災害時に必要な資源を補うための対策立案

医療機関におけるBCP(事業継続計画)策定のポイント

医療機関におけるBCP策定のポイントとして、決めるべき要素や考え方について解説します。

地域の中での位置づけ

厚生労働省が公開する医療機関向けBCPチェックリストの最初の設問は

あなたの病院は、地域防災計画や防災業務計画のなかで地域内での位置づけが明確ですか?

です。

BCP策定にあたり、まずは地域における災害対応において、医療機関である自院の位置づけが明確になっているかを確認しましょう。

組織・体制・人員関連

組織・体制・人員関連で整備するべき事項として以下の例が挙げられます。

  • ・災害対応について審議する常設の組織
  • ・災害対策本部の責任者、本部のサポート要員、役割分担、本部長不在時の代行者
  • ・災害時に使用できるインターネット回線
  • ・広域災害救急医療情報システム(EMIS)の整備、EMISを入力できる担当者の決定
  • ・必要な外部連絡先のリスト化
  • ・災害時に徒歩または自転車で通勤可能なスタッフの数
  • ・参集したスタッフを登録する体制

災害時の迅速な対応および医療提供継続のためには、組織の整備が欠かせません。

また、災害時に自院に来られないスタッフとの連絡手段やスタッフへの指示についても決める必要があります。

診療継続・避難の判断基準

BCPは事業の継続および早期復旧を目的としたものですが、被害の程度によっては診療継続を断念するべき事態もあります。

診療中断や避難の判断基準についてもBCPでの明記が必要です。

安全・減災措置

医療の継続または早期復旧を実現できるよう、災害等による被害を最小限に抑えるための措置も行う必要があります。

BCP策定に際して実施するべき措置として以下の例が挙げられます。

  • ・耐震診断や安全性診断
  • ・医療機器や什器備品の転倒および転落物の防止措置

耐震診断等で問題があれば、建物の耐震改修工事等も実施しましょう。

また、災害発生後に迅速な被災建築物応急危険度診断を受けるため、手順や体制を整える必要もあります。

ライフライン関連

医療機関で整備するべきライフラインとして以下の例が挙げられます。

  • ・自家発電装置
  • ・自家発電装置用の備蓄燃料
  • ・受水槽
  • ・貯水槽や井戸などの雑用水道
  • ・耐㟈対策措置が施された下水配管
  • ・ガス(通常のガス、医療ガスの両方)
  • ・食料品、飲料水
  • ・医薬品や医療材料の備蓄
  • ・外部固定アンテナを有する衛星携帯電話
  • ・無線等の代替通信設備
  • ・自家発電装置に接続されたエレベーター

定期的な点検や備蓄の確認、ライフラインの供給を優先的に受けるための契約等の整備も必要です。

診療関連

診療関連で決めるべき事項の具体例を紹介します。

  • ・外来診療統括者、入院統括者
  • ・被災後の患者受け入れの対応場所(重症度別)
  • ・部門間の連絡方法
  • ・固定電話等が使用困難な状況における通信手段や連絡方法
  • ・電子カルテが使用できない状況でも診療機能を維持する方法
  • ・入退院や外来受け入れ数を把握するための管理方法
  • ・災害発生時の防災センターの役割
  • ・遺体の安置場所および安置方法

近年は電子カルテの普及率が高まっていますが、災害時は使用できない恐れがあります。

また、平常時と同じ方法では連絡が取れない可能性も高いでしょう。

このように、通信に問題が発生していても診療を継続できるよう万全の対策を行う必要があります。

マニュアルの整備

BCPは災害時の対策全般をまとめたものであり、個別の状況について確認する手段としては使いにくい恐れがあります。

そのため災害時の対応について個別に指示するマニュアル(アクションカード)の整備も必要です。

マニュアルは一度作成して終わりではなく、訓練や研修を通じて適宜改善する必要があります。

避難時の対策

避難対策関連で決めるべき事項の例を紹介します。

  • ・浸水や建物の一部損壊等が起きた際に患者を避難させる場所
  • ・浸水や建物の一部損壊等が起きた際の避難経路
  • ・自助、共助それぞれの避難方法
  • ・避難時の応援体制(院外から応援者が駆けつけるための体制整備)
  • ・護送、担送、独歩別の入院患者リストの管理および確認方法
  • ・入院患者情報の管理および確認方法

有事の際は一刻を争うため、入院患者の家族と連絡がとれない状況でも避難や転院を行う必要が生じます。

家族に連絡がとれなくても避難等を行う旨について、事前に確認・同意を得ることも大切です。

まとめ

自然災害等の発生時は医療ニーズが高まります。

そのような状況下で医療機関の機能が停止してしまうと医療を提供できず、被害が急速に拡大する恐れがあります。

有事の際も医療の継続または早期復旧を行うため、医療機関におけるBCPの策定は必須です。

 

医療機関のBCP策定で注意するべきポイントは多岐にわたります。

今回紹介した内容や厚生労働省の資料を参考にしながら、時間をかけて丁寧にBCP策定を進めましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
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