
診療報酬改定DXとは、デジタル技術を最大限に活用し、医療機関等における負担を軽減させる目的の取り組みです。
診療報酬改定DXが進むことで、診療報酬改定に際して医療機関やベンダーにかかる業務負担やコストの削減が期待できます。
ただし、診療報酬改定DXを実現させるためには医療機関側でさまざまな作業を行う必要もあります。
医療機関側での動きについて事前に把握するためにも、診療報酬改定DXについて理解を深めておくのが理想です。
今回は診療報酬改定DXについて詳しく解説します。
医療DX化で活用できる補助金については以下の記事をご覧ください。
オンライン無料相談 受付中
CONTENTS
診療報酬改定DXとは

診療報酬改定DXとは、デジタル技術を最大限に活用し、医療機関等における診療報酬改定の負担を軽減させる目的で行われている取り組みです。
厚生労働省が中心となって進めている医療DXにおける施策のひとつとして挙げられます。
診療報酬改定DXの背景
前述のように、診療報酬改定DX推進の目的は診療報酬改定に際して医療機関やベンダーにかかる負担の軽減です。
診療報酬改定は原則として2年に1回実施されています。
現状、改定後の診療報酬が自動で反映される仕組みではありません。
そのため診療報酬改定が行われた場合、ベンダーが即座にソフトウェア改修や導入支援などの対応をする必要があります。
診療報酬改定による最終的な点数が確定するのは毎回3月頃であるものの、改定施行日は4月1日です。
そのため短期間でソフトウェア改修やテスト、導入支援などの膨大な作業をこなす必要があります。
同じシステムでも医療機関によって仕様が異なる可能性があり、その場合は個別対応が必要なためさらに労力を要します。
また、医療機関側は診療報酬改定の都度ベンダーに対して支払いが発生するため、コスト面での負担が大きいです。
このような状況を解消する手段として、診療報酬改定DXが進められています。
診療報酬改定DXのスケジュール
厚生労働省の資料から、診療報酬改定DXの大まかなスケジュールを紹介します。
令和6年度
医療機関の規模に関係なく、以下の3つが予定されていました。
- ・共通算定マスタの提供
- ・電子点数表改善
- ・施行時期の後ろ倒し
前述のように、以前は診療報酬改定時期がその年の4月1日でした。
しかし2024年から、改定時期が6月1日に変更となっています。
施行時期を2ヵ月後ろ倒しにすることで改修作業に充てられる期間が長くなり、作業量の平準化につながっています。
令和7年度
令和7年度は共通算定モジュールの試行運用が予定されています。
規模の小さい医療機関から試行運用を開始し、中規模病院、大規模病院へと拡大する予定です。
令和8年度
共通算定モジュールの本格的な提供が開始される予定です。
導入効果が高いと考えられる中小規模病院から提供を開始し、徐々に拡大していく予定とされています。
なお全国医療情報プラットフォームとの連携システムが搭載される予定です。
令和10年度以降
実情に応じて以下いずれかの取り組みが予定されています。
- ・共通算定モジュールの提供拡大
- ・標準型レセコンの提供
- (帳票様式・モジュールをレセコンに組み込む)
診療報酬改定DXの4大施策

診療報酬改定DXの施策として4つのテーマが掲げられています。それぞれ詳しく解説します。
共通算定モジュールの開発・運用
共通算定モジュールとは、各ベンダーが共通で利用できることを想定した電子計算プログラムです。
これまでは各ベンダーが独自に開発したシステムを利用していたため、診療報酬改定の都度個別の対応が必要でした。
共通算定モジュールの導入によりベンダーや医療機関を問わず共通システムを利用できるようになるため、作業負担やコストの軽減が可能です。
なお、診療報酬および患者負担金の計算だけでなく、次の感染症危機等に備えて情報収集できる仕組みも検討されています。
共通算定マスタ・コードの整備と電子点数表の改善
マスタとは診療行為や医薬品などのコードごとに、点数や金額などの情報を追加したものです。
従来の仕組みでは独自コードの開発や、診療報酬改定の都度ベンダーによるマスタの修正も必要でした。
共通算定マスタ・コードが整備されればマスタ関連の作業負担が大幅に軽減されます。
また、あわせて地単公費マスタの作成や運用ルールの整備も行われる予定です。
標準様式のアプリ化とデータ連携
標準様式のアプリ化とデータ連携関連として、具体的に以下2つの施策が予定されています。
- ・医療機関で作成する診療計画書や同意書など、各種帳票の標準様式をアプリ等で提供
- ・施設基準届出等の電子申請の推進に向けたシステム改修
書類関連の電子化が進むため、帳票作成および各種届出にかかる作業負担が軽減されるでしょう。
診療報酬改定施行時期の後ろ倒し等
診療報酬改定に際して多大な負担がかかる原因の1つとして、システム改修等に充てられる期間が短い点が挙げられます。
診療報酬改定施行時期の後ろ倒しをすることで作業に充てられる期間が延びるため、システム改修コストの低減が可能です。
その他の施策として、診療報酬点数表のルールの明確化や簡素化も予定されています。
診療報酬改定DXが医療機関にもたらすメリット

診療報酬改定DXが医療機関にもたらすメリットを3つ紹介します。
システム改修関連の業務負担が軽減される
最も大きなメリットは、システム改修関連の業務負担が軽減されることです。
共通算定モジュールやマスタ・コードが提供されれば、ベンダーによる個別の対応が不要になります。
医療機関側もベンダーとのやり取りや改修後のシステムになれるまでの時間等を削減できるでしょう。
施策の1つである診療報酬改定施行時期の後ろ倒しが行われれば作業期間が延びるため、余裕をもって作業を進められます。
コスト削減の効果が期待できる
前述のように、医療機関側にかかる負担の1つはシステム改修の都度発生するベンダーへの支払いです。
診療報酬改定DXが進めば毎回のシステム改修作業が不要になるため、コスト削減の効果も期待できます。
なお、短期間でのシステム改修に対応するために一時的に残業や外注が増大するケースも多いでしょう。
このような事態が解消されるため、人件費の削減にもつながります。
診療費の計算が容易になる
従来の仕組みでは医療機関によって使用するシステムに違いがあるため、医療機関をまたぐ場合に他院との診療費の合算ができません。
それぞれの医療機関で個別に計算する必要があるため、二度手間になってしまう可能性が高いです。
また、患者さんは各医療機関で計算された診療費を支払い、自己負担限度額を超える部分については後日払い戻しを受ける仕組みです。
一時的とはいえ患者さんがお金を負担する必要があるため、金額によっては金銭的に多大な負担がかかる恐れがあります。
診療報酬改定DXにより共通算定モジュールや共通算定マスタ・コードが整備されれば、複数の医療機関での診療費を合算できます。
診療費の計算が容易になるため、医療機関と患者さん双方の負担を軽減できるでしょう。
診療報酬改定DXの注意点

最後に、診療報酬改定DXの注意点を2つ紹介します。
導入コストが高い
前章で診療報酬改定DXのメリットとして、コスト削減の効果が期待できる旨を挙げました。
確かにシステム改修の都度発生するベンダーへの支払いが不要になるため、トータルのコストは軽減されると考えられます。
しかし、新システムの導入時には多大なコストが発生します。
トータルのコストは抑えられるものの、高額の初期費用がかかる点には注意が必要です。
システム運用方法の刷新や人材育成が必要
診療報酬改定DXにより、使用するシステムや仕様が大きく変わります。
そのためシステム運用方法の刷新や人材育成が必要です。
新システムが院内に浸透し慣れるまでは、かえって負担が重くなる恐れがあります。
まとめ
診療報酬改定DXとは、デジタル技術を活用し、診療報酬改定にかかる負担を軽減させるための取り組みです。
共通算定モジュールの開発・運用をはじめとした4つのテーマが掲げられており、令和6年度から順次取り組みが進められています。
診療報酬改定DXにより、医療機関側は業務負担やコストの軽減が期待できます。
また、医療機関をまたぐ場合の診療費の計算が容易になる点も大きなメリットです。
注意点として導入コストがかかる点や、システム運用方法の刷新や人材育成が必要な点が挙げられます。
診療報酬改定DXについて理解を深め、計画的に作業や対応を進めていきましょう。
クリニック・医療法人専門税理士によるオンライン無料相談受付中
医療法人やクリニックの税務相談・節税対策はBIZARQ会計事務所にお任せください。
現在30分から1時間程度のオンライン無料相談を実施中です。

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士







