経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、中小企業向けの共済制度のひとつです。
取引先の倒産などにより売掛金が回収できなくなり資金繰りがひっ迫した場合、無担保・無保証で借入ができます。
取引先の倒産による連鎖倒産や経営難を防ぐための制度です。
そんな経営セーフティ共済ですが、貸し倒れに対する備えとしてだけでなく、節税にも効果的な仕組みです。
今回は経営セーフティ共済が節税につながる理由や、経営セーフティ共済を活用する際の注意点について解説します。
法人・個人事業主の節税テクニックについて、以下の記事でも詳しく解説しておりますのでぜひご覧ください。
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経営セーフティ共済は節税対策に効果的
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は節税対策に効果的な制度です。
経営セーフティ共済の概要や、節税につながる理由について解説します。
経営セーフティ共済とは
経営セーフティ共済とは、取引先事業者の倒産による中小企業の連鎖倒産や経営難を防ぐための制度です。
企業が倒産すると売掛金などの債権が回収できなくなる可能性が高くなります。
そして規模の小さい中小企業は、1か所からの売掛金を回収できないだけでも経営面の大きな影響を受けます。
特定の取引先への売上に依存している中小企業も珍しくありません。
つまり、取引先事業者の倒産により売掛金が回収できなくなった結果、資金繰りが悪化して経営難や倒産に陥る恐れもあるのです。
経営セーフティ共済に加入することで、取引先事業者の倒産後すぐに借入れを受けられます。
無担保・無保証人で、回収困難となった売掛金債権等の額または納付された掛金総額の10倍の借入れが可能です。
取引先の倒産により売掛金の回収ができなくなった場合でも、共済の活用により資金繰りの悪化を防ぐことができます。
経営セーフティ共済が節税につながる理由
経営セーフティ共済が節税につながる理由は、経営セーフティ共済で支払った掛金が法人税法上の経費になるためです。
掛金を支出する分、課税対象となる所得を小さくできるため、節税効果を得られます。
なお、経営セーフティ共済の掛金は月額5,000円~20万円まで自由に選べます。
増額・減額ともに自由なため、経営状況に合わせた掛金額の調整も可能です。
経営セーフティ共済の加入方法
経営セーフティ共済の加入方法を紹介します。
基本的な流れは以下の通りです。
- 1.加入に必要な書類を用意する
- 2.契約申込書・掛金預金口座振替申出書・重要事項確認書兼反社会的勢力の排除に関する同意書に必要事項を記入する
- 3.必要書類を窓口へ提出し申請手続きを行う
- 4.中小機構から届く書類を受け取る。この段階で経営セーフティ共済加入が完了となる
経営セーフティ共済への加入手続きは、中小機構と業務委託契約を結んでいる団体または金融機関で行います。
会員となっていない委託団体または融資取引のない金融機関で手続きをする場合、特定の公的書類の提示が必要です。
必要な書類は法人と個人事業主で異なります。
法人の場合、以下の書類が必要です。
- ・商業登記簿謄本または登記事項証明書
3ヶ月以内に発行された原本 - ・法人税の確定申告書
決算書など添付書類も必要 - ・法人税の納付を証明する書類
納税証明書(その1)・法人税の領収書など
個人事業主の場合に必要となる公的書類として、以下の3つが挙げられます。
- ・所得税の確定申告書
決算書など添付書類も必要 - ・所得税の納付を証明する書類
納税証明書(その1)・所得税の領収書など - ・(白色申告の場合)確定申告書の作成時に用いた帳簿
申込書等は経営セーフティ共済の公式サイトから請求可能です。
なお、手続きを行う窓口によって必要な手続きや順序が異なる可能性があるため、事前にご確認ください。
経営セーフティ共済 節税以外のメリット
経営セーフティ共済は掛金を経費として計上できるため、節税につながると紹介しました。
しかし、経営セーフティ共済には節税以外にも大きなメリットがあります。メリットを2つ紹介します。
無担保・無保証人での借入が可能
経営セーフティ共済の大きなメリットが、無担保・無保証人での借入が可能な点です。
経営セーフティ共済に加入することで、取引先の倒産等により債権が回収困難になった際に共済金の借入を受けられます。
借入は無担保・無保証人で受けられるため、借入による負担が最小限で済みます。
借入までのスピードも速いため、資金繰りが悪化したときの備えとして効果的です。
中小企業や個人事業主のように規模が小さい場合、1か所からの売掛金を回収できないだけでも資金繰りが大きく悪化する恐れがあります。
資金調達に時間がかかれば事業が滞り、結果として経営難や連鎖倒産につながるケースも少なくありません。
保証人や担保が見つからず融資を受けられない事態も起こり得ます。
取引先の倒産により資金繰りの懸念が生じても、無担保・無保証人でスピーディーに借入できる仕組みがあれば安心です。
40か月以上の納付期間があれば掛金100%が戻る
経営セーフティ共済では、40か月以上の納付期間があれば掛金の100%が戻ってきます。
また、納付期間12か月以上の場合、全額ではありませんが8割以上が戻ります。
掛金は将来への備えではありますが、懸念する事態が起きた時には戻ってくるため、安心して払えるでしょう。
なお、解約手当金は解約理由によって3種類に分けられます。
経営セーフティ共済の契約者が任意で好きなタイミングに実施できる解約を任意解約と呼びます。
任意解約の場合の解約手当金支給率は以下の通りです。
- ・掛金納付月数12ヶ月未満:0%
- ・12ヶ月~23ヶ月:80%
- ・24ヶ月~29ヶ月:85%
- ・30ヶ月~35ヶ月:90%
- ・36ヶ月~39ヶ月:95%
- ・40か月以上:100%
契約者である個人事業主の死亡や法人の解散・分割にともない解約されたとみなす場合、みなし解約に該当します。
みなし解約の解約手当金支給率は以下の通りです。
- ・掛金納付月数12ヶ月未満:0%
- ・12ヶ月~23ヶ月:85%
- ・24ヶ月~29ヶ月:90%
- ・30ヶ月~35ヶ月:95%
- ・36ヶ月~39ヶ月:100%
- ・40か月以上:100%
最後に、12ヶ月分以上の掛金滞納や共済金の貸付における不正行為などがみられた場合、中小機構によって解約が行われるケースがあります。
このような解約を機構解約といい、解約手当金支給率は以下の通りです。
- ・掛金納付月数12ヶ月未満:0%
- ・12ヶ月~23ヶ月:75%
- ・24ヶ月~29ヶ月:80%
- ・30ヶ月~35ヶ月:85%
- ・36ヶ月~39ヶ月:90%
- ・40か月以上:95%
経営セーフティ共済の注意点
最後に、経営セーフティ共済の注意点を2つ紹介します。
解約手当金は課税対象
経営セーフティ共済は掛金を経費として計上できるため、節税につながると紹介しました。
しかし同時に、解約手当金は益金として扱われます。
そのため、解約する時期によってはかえって税負担が重くなる可能性があります。
経営セーフティ共済を解約するのであれば、所得が小さいタイミングで行う方が税負担を抑えられます。
解約のタイミングには注意が必要です。
開業から1年間は加入できない
経営セーフティ共済に加入できるの開業から1年以上経つ中小企業者(個人事業主および所定の規模以下の会社)です。
開業してすぐ加入できるわけではない点に注意する必要があります。
また、以下に該当する場合も経営セーフティ共済への加入ができません。
- ・住所や事業内容の頻繁な変更により継続的な取引状況を把握できない
- ・経理内容が不明
- ・共済金や一時貸付金などの返還を怠っている
- ・所得税または法人税の滞納がある
- ・機構解約を受けた経験があり、解約から1年以上が経過していない
経営セーフティ共済の加入要件について事前に確認が必要です。
まとめ
経営セーフティ共済は、取引先の倒産にともなうトラブルを防ぐための制度です。
掛金の全額を経費として計上できるため、所得税や法人税の節税につながります。
節税という面だけでなく、将来への備えになる点も大きなメリットです。
ただし、経営セーフティ共済の解約手当金は益金に該当し課税対象となるため、解約のタイミングには注意が必要です。
共済の加入要件も事前に確認する必要があります。
経営セーフティ共済について理解を深め、節税や将来への備えとして活用しましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士