所得税は所得が高いほど税率も高くなる累進課税制度を採用しているため、年収が高いほど所得税の負担も大きくなる仕組みです。
そのため、年収が高い人ほど税負担を抑えるための節税対策の重要性が高まります。
今回は、年収1,000万円の人がやるべき節税対策として、高所得者の方におすすめのテクニックを5つ紹介します。
サラリーマンの節税テクニックについて以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
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節税対策の前に|個人年収1,000万と世帯年収1,000万では税額が異なる
節税対策について具体的に見る前に、年収に関する前提条件の解説をします。
年収という言葉が指すものは、一般的に個人年収と世帯年収の二種類です。
そして、個人年収と世帯年収が同額であっても、課せられる所得税の金額は全く異なります。
所得税は累進課税制度を採用しており、所得額が大きくなるほど税率も高くなる仕組みであるためです。
例として、個人の年間給与額が1,000万円(個人年収1,000万円)の場合と、夫婦それぞれの年間給与額が500万円(世帯年収1,000万円)の場合それぞれの所得税額を計算します。
※今回は計算例を単純にするため、給与所得控除・基礎控除以外の控除制度の適用は無とします
給与等の収入金額が1,000万円の場合、適用される給与所得控除は1,950,000円です。
合計所得額が2,400万円以下の場合、基礎控除額は48万円となります。
したがって、所得額は以下のようになります。
10,000,000円-1,950,000円-480,000円=7,570,000円
課税される所得金額が6,950,000円 から 8,999,000円までの場合、税率は23%、控除額は636,000円です。
したがって所得税の額は以下のようになります。
7,570,000円×23%-636,000円=1,105,100円
続いて夫婦それぞれの年間給与額が500万円、世帯年収1,000万円の場合です。
給与等の収入金額が500万円の場合、適用される給与所得控除は収入金額×20%+440,000円で計算します。
5,000,000円×20%-440,000円=560,000円
今回の場合、給与所得控除は560,000円です。
基礎控除額は前述の例と同様に48万円となります。
したがって所得額は以下のようになります。
5,000,000円-560,000円-480,000円=3,960,000円
課税される所得金額が3,300,000円 から 6,949,000円までの場合、税率20%、控除額は427,500円です。
したがって、所得税額は以下のようになります。
3,960,000円×20%-427,500円=364,500円
夫婦の所得税額合計、すなわち世帯の所得税額合計は364,500円×2人=729,000円です。
このように、個人年収と世帯年収が同額でも、所得税の合計額が同じとは限らないのです。
この記事では、個人年収1,000万円を超える場合におすすめの節税テクニックを扱います。
年収1,000万円の人におすすめの節税対策
それでは、年収1,000万円の人におすすめの節税対策について具体的に解説します。
適用対象となる控除制度を漏れなく活用する
所得税の負担を最小限に抑えるためには、適用対象となる控除制度を漏れなく活用することが大切です。
所得税には、特定の要件を満たすことで所得から一定額を控除できる所得控除という制度があります。
前章の計算例で紹介した基礎控除や給与所得控除も所得控除の一種です。
所得控除には基礎控除のように自動で適用されるものもあれば、自己申告をしなければ適用されないものもあります。
適用対象となる所得控除をすべて活用し所得税額を最小限に抑えられるよう、所得控除についてしっかり理解しましょう。
適用対象となる人が多いものの見逃しやすい控除制度の具体例を紹介します。
医療費控除・セルフメディケーション税制
医療費控除は、自分や生計を一にする家族・親族のために支出した医療費が一定額を超える場合に活用できます。
セルフメディケーション税制は、ドラッグストアなどで自身が選択・購入した医薬品の合計額が一定額を超える場合に利用できる制度です。
医療費控除とセルフメディケーション税制はどちらか一方の適用しか受けられないため、有利な方を選びましょう。
特定支出控除
給与所得者の仕事に関する支出の自己負担額が一定額を超える場合に適用できる制度です。
転勤に伴う転居費用や仕事に関連する資格の取得費用など、さまざまな費用が該当します。
配偶者控除・扶養控除
配偶者控除は所得税法上の控除対象配偶者がいる場合、扶養控除は配偶者以外の控除対象扶養親族がいる場合に受けられます。
iDeCoやつみたてNISAを行う
iDeCoやつみたてNISAのように、運用益が課税対象外となる制度を活用するのもおすすめです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは個人で積み上げる年金制度であり、掛金全額が所得控除の対象となります。
支出した掛金は預金や投資信託などに運用されます。
また積み立てたお金を受け取る際も、一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金等控除が適用されるため節税に効果的です。
つみたてNISAは支出額が控除対象になるわけではないため、iDeCoよりは節税効果が少なくなります。
しかし運用益が非課税であるため、一般的な方法で投資を行うよりも節税につながります。
iDeCoとつみたてNISAについては以下の記事で詳しく解説していますので是非ご覧ください。
一般的な株式投資で発生する税金を抑える方法も存在しますが、株式投資が節税につながるのは、利益が少ない、もしくは損失が出た場合のみです。
節税を目的に株式投資をはじめることはおすすめできません。
株式投資の節税については以下の記事で詳しく解説しています。
生命保険・地震保険に加入する
生命保険や地震保険に加入することで、所得税を抑えられる可能性が高くなります。
生命保険料や個人年金保険料の支出は生命保険料控除、地震保険料の支出は地震保険料控除の対象になります。
生命保険料控除・地震保険料控除はいずれも年末調整での適用が可能であるため、給与所得のみであれば確定申告の必要がありません。
節税効果が高く、手軽に実施できる点が大きなメリットです。
また、単純に節税につながるだけでなく将来への備えとしても強い効力を有します。
なお、生命保険料控除・地震保険料控除はいずれも控除額に上限があります。
支出額すべてが控除対象になるわけではない点に注意が必要です。
ふるさと納税を行う
ふるさと納税とは、好きな自治体に寄付を行うと、寄付をした自治体から返礼品を受けられる制度です。
寄付金額のうち自己負担額2,000円を差し引いた額が寄附金控除の対象となり、税額控除を受けられます。
寄付金から自己負担額を除いた額が税額から控除されるため、税負担そのものを抑えるというよりは、税金の前払いに近いイメージです。
しかし、寄付する自治体を選べる・返礼品がもらえるなど、税額控除以外にもさまざまなメリットが得られます。
なお、ふるさと納税の控除対象となるのは総所得等に一定率を乗じた金額であり、上限を超えた分は完全に自己負担となってしまいます。
節税目的で行う際は、上限額を超えないよう注意しましょう。
不動産投資を始める
年収が高い人の節税対策として、不動産投資もおすすめの方法です。
不動産投資による所得は不動産所得に該当します。
不動産所得の計算では、不動産の維持費・修繕費・管理費など、不動産関連の支出を経費として収入から控除します。
不動産投資では経費にできる支出が多いため、イメージしているよりも所得額を抑えられるケースが多いです。
また、不動産所得の損失は給与所得との相殺が可能であるため、不動産所得が赤字であれば所得税額を抑えられます。
なお、不動産投資と聞くと、「入居者の募集や対応が面倒」「やることが多くて、節税のメリットよりも手間がかかるというデメリットが大きいのでは?」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、不動産運用で発生するこれらの業務は管理会社への委託が可能です。
入居者関連の面倒な手続きはせず、家賃収入のみを得ることができるため、運用の手間はそれほど大きくないと言えるでしょう。
当然、管理会社への委託費用は経費として計上できます。
ただし、不動産投資には以下のような注意点も存在します。
- ・不動産の特徴やエリアによっては需要がなく、収入を得られない恐れがある
- ・想定を超える収入が発生し、かえって税負担が重くなるケースもある
- ・経費に該当する支出の判断は難しく、専門知識のない人が行うのはリスクが高い
不動産投資による節税を効果的に行うためには、無理に自身ですべて対応しようとせず、専門家に相談するのが安心です。
不動産投資については、以下の記事で詳しく解説していますので是非ご覧ください。
まとめ
所得税は累進課税制度のため、収入が高く所得額が大きい人ほど税負担が重くなります。
年収が高い人ほど、節税対策の必要性や重要性も強まるといえるでしょう。
今回は年収1,000万円を超える人におすすめの節税対策を5つ紹介しました。
それぞれ要件や得られる効果などが異なるため、人によって適した方法は異なります。
節税対策について理解を深め、自身に合ったテクニックを上手く活用しましょう。
自身に合うテクニックを活用し、効果的かつ確実な節税対策を行うためには、専門家である税理士に相談するのも1つの手段です。
節税について疑問や悩みをお持ちであれば、お気軽にご連絡ください。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士