ワンルームマンション投資は危険?節税の仕組みと注意点について解説!

2024.05.30

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ワンルームマンション投資は、所得税や相続税などの節税対策として人気がある方法の1つです。

ワンルームマンションは不動産の中でも価格が安い部類のため、始める際のハードルが低い投資手法といえます。

 

しかし、ワンルームマンション投資は他の不動産投資に比べて注意点が多く、やり方によってはかえって損失が出てしまう恐れが大きいです。

ワンルームマンション投資の節税効果だけでなく、注意点も把握した上で、実施するか否か判断する必要があるでしょう。

 

今回はワンルームマンション投資による節税の仕組みと注意点を詳しく解説します。

 

その他の不動産投資については以下の記事をご覧ください。

 

 

 

 

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CONTENTS

ワンルームマンション投資による節税の仕組み

ワンルームマンション投資で節税効果が得られる税金として以下の4種類が挙げられます。

  • ・所得税
  • ・住民税
  • ・相続税
  • ・贈与税

それぞれ節税の仕組みについて詳しく解説します。

所得税

所得税の節税につながる理由は、ワンルームマンション投資によって発生した赤字をほかの所得と相殺できるからです。

 

前提として、所得は10種類に区分されており、所得の種類によって課税制度が異なります。

サラリーマンが得る給与は給与所得、個人事業主の事業による所得は事業所得です。そして、ワンルームマンション投資による所得は不動産所得に該当します。

給与所得・事業所得(株式等の譲渡による事業所得を除く)・不動産所得はいずれも総合課税の対象であり、損益通算が可能です。

つまり、給与所得や事業所得が黒字でも不動産所得が赤字であれば相殺でき、課税対象所得を抑える効果が期待できるのです。

 

ワンルームマンション投資を含め、不動産所得は赤字が出やすいといえます。

理由として以下の2つが挙げられます。

  • ・減価償却費として高額の経費を計上できる
  •  ※減価償却費は実際の支出を伴わないため、キャッシュ面での負担はありません
  • ・減価償却費以外にも、不動産関連の様々な支出を経費として計上できる

住民税

住民税は課税所得に税率を乗じて計算する所得割と、一律同額で課せられる均等割の2つから構成されています。

一律で課される均等割の節税はできませんが、所得割は課税所得を減らせば節税が可能です。

 

前項で紹介したように、ワンルームマンション投資の赤字は給与所得や事業所得との損益通算ができます。

つまり、ワンルームマンション投資が赤字になり課税所得が減れば、所得税と同様、住民税の節税にもつながります。

相続税

ワンルームマンション投資が相続税の節税につながる理由は、不動産の相続税評価額は時価よりも下がりやすいためです。

 

相続税の対象になる遺産総額を計算する際、不動産は一定のルールに基づいて算出した評価額を用います。

土地・建物それぞれの評価方法は以下の通りです。

  •  
  • 土地
  • 路線価(主要な道路に面する宅地の1平方メートルあたりの価格)
  • 路線価が設定されていない宅地の場合は倍率方式(固定資産評価額に所定の倍率を乗じて計算する)
  •  
  • 建物
  • 固定資産税評価額

一般的に不動産の相続税評価額は、購入価額や時価よりも2~3割ほど下がります。

そのため、現預金のまま相続するよりも、同じ額の不動産を相続財産にする方が相続税を抑えられる可能性が高くなるのです。

贈与税

ワンルームマンション投資が贈与税の節税につながる仕組みは、前項で紹介した相続税と同じです。

贈与税の計算時も不動産価値は相続税評価額を用いるため、課税対象になる額が小さくなります。

現預金を贈与するより、同じ額の不動産を贈与した方が贈与税の金額を下げられる可能性が高いです。

ワンルームマンション投資で節税に適した人の特徴

ここまでの内容を整理し、ワンルームマンション投資が節税に適している人とそうでない人の特徴を確認しましょう。まず、投資に適しているのは、以下のような方々です。

  • ・年収が1,000万円以上の人
  • ・一時的に収入が増えた人
  • ・相続税や贈与税の負担を軽減したい人

各項目について詳しく見ていきましょう。

年収1,000万円以上の高所得者

おおむね年収1,000万円以上の方は、所得税や住民税の節税を目的としてワンルームマンション投資を検討する価値があるといえるでしょう。

課税所得(所得から控除を差し引いた額)が900万円を超えると、所得税率が33%となります。物件売却時にかかる譲渡税との税率差が大きくなり、節税のメリットが生じやすくなるのです。

長期的に見れば、節税効果に加えて不動産投資自体の利益も得られるでしょう。そのため、資産家が税負担を抑える手段としてマンション投資は有効です。

一時的に大きな収入を得た人

個人事業主や副業を持つサラリーマンで、短期間に収入が急増した方もワンルームマンション投資を検討するとよいでしょう。

特に収入が大幅に増えた年にマンションを購入し、初年度の諸費用と増加分の収入を相殺(損益通算)すれば、税負担を軽減できます。

物件選びを慎重に行えば、2年目以降に節税効果が薄れても、マンション投資自体が利益を生み続ける可能性があります。

相続税や贈与税の負担を軽減したい人

相続税や贈与税の負担を軽くしたい方にも、ワンルームマンション投資は適しています。現金を不動産に変えて贈与や相続を行うことで、税負担を大幅に抑えられるためです。

ただし、今すぐ贈与を受けると、まとまった税額が発生するケースもあります。その場合、「相続時精算課税」制度を活用すると、2,500万円以下の財産について贈与税が非課税となります。

贈与者が亡くなった際には、受け継いだ財産全体を相続税の対象として一括納税する必要があるため、事前にしっかり計画を立てましょう。

年収別のワンルームマンション投資の節税効果

ワンルームマンション投資による節税効果は年収によって大きく異なります。

以下の表で年収帯別の節税効果をまとめました。

年収帯

節税効果

理由

500万円以下

限定的

所得税率が低いため、節税効果が小さい

500〜900万円

中程度

所得税率が上がるため、損益通算による節税効果が増加

900万円以上

大きい

所得税率がさらに高く、損益通算の効果が最大化される

節税効果の具体例

年収900万円のサラリーマンが3,500万円のワンルームマンションを購入した場合、初年度の節税効果は以下のようになります。

項目

金額

物件購入価格

3,500万円

年間家賃収入

148万円

諸経費(管理費・固定資産税等)

▲15万円

借入返済(金利部分)

▲100万円

減価償却費

▲70万円

実際の手取り

33万円

会計上の収支

▲37万円

節税効果(所得税+住民税)

約25万円

節税の仕組み

ワンルームマンション投資の節税効果は「損益通算」という仕組みによって生まれます。不動産所得が会計上赤字になると、その赤字分を給与所得から差し引くことができるため、課税所得が減少し、結果的に納税額が少なくなります。

特に初年度は減価償却費や諸経費が大きいため、会計上の赤字が生じやすく、節税効果が最大化されます。

年収別の具体的な節税額

例えば、不動産所得で50万円の赤字が出た場合:

  • 年収500万円以下:約5万円の節税
  • 年収500万円〜900万円:約10万円の節税
  • 年収900万円以上:約15万円以上の節税

これは所得税と住民税を合わせた金額であり、年収が高いほど適用される税率が高くなるため、節税効果も大きくなります。

ただし、節税だけを目的としたワンルームマンション投資は避け、物件の収益性や将来性も考慮した総合的な判断が重要です。

ワンルームマンション投資の失敗例3選

この章では、ワンルームマンション投資の失敗例を紹介します。

不動産投資で後悔しないためにも、ぜひ参考にしてください。

購入後に毎月数十万円の持ち出しが発生したケース

Hさんは、将来的な収入の不確実性と子供のための資産形成を考え、不動産投資を検討しました。知人の紹介で信頼できる営業マンから、好立地のワンルームマンションを購入。

収益性の低さが気になりつつも、年収2,000万円以上の高収入を背景に、減価償却費を活用した税還付による赤字補填の説明を受け、納得して数戸を購入しました。

最初の1年は還付金でカバーできましたが、2年目以降は還付額が激減し、月々十数万円の持ち出しが発生。

収支の悪化に気付き、再度情報収集を行った結果、ワンルームマンションの収益性の低さや減価償却期間の長さが節税効果をほぼ無意味にすることを知り、営業トークを信じてしまったことを後悔しました。

投資額に対してリターンが少なく不安を感じたケース

Kさんは、老後資金のための資産運用を検討し、株式投資の代替手段として不動産投資を学び始めました。

ワンルームマンション投資と1棟物の違いを理解したものの、自身の給与水準では1棟物は難しいと考え、ワンルームマンションを選択。

当初は月々の収支がトントンだったものの、単身向け物件の特性上、定期的な入退去や修繕費が発生し、長期的には赤字リスクが高まることを認識し将来に不安を感じました。

借入金が増えすぎて資金繰りに苦しんだケース

Oさんは、知人から「節税効果がある」「積立保険の代わりになる」と聞き、不動産投資の情報収集を開始。

当初は投資金額の大きさに不安を感じていましたが、ワンルームマンションなら手頃でフルローンも利用できることを知り、購入を決断しました。

営業マンから「リスク分散のために複数エリアで購入を」と勧められ、新築・中古を含め計5戸のワンルームマンションを購入。

しかし、CFはトントンか赤字になることが多く、より収益性の高い1棟物アパートへの転換を考えましたが、すでに借入金額が膨らみ、次の一手を打つ余裕がなくなりました。

失敗の共通点

これら3つの事例に共通する失敗要因は以下の通りです。

  • ・営業トークを鵜呑みにした
  • ・収益性の低いワンルームマンションを購入した
  • ・他の不動産投資手法と十分に比較検討しなかった

これから不動産投資を始めようと考えている方は、これらのポイントを念入りに確認し、慎重に判断することが重要です。

ワンルームマンション投資と他の節税方法の比較

ワンルームマンション投資以外にも、様々な節税方法が存在します。例えば、iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済は、掛金全額が所得控除となる人気の節税手段です。

 

また、医療費控除や寄付金控除などの各種控除制度も活用できます。これらと比較したワンルームマンション投資の特徴は、実物資産を保有しながら節税できる点と、将来的に家賃収入という安定したキャッシュフローが得られる可能性がある点です。

 

一方で、初期投資額が大きく、流動性が低いというデメリットもあります。節税効果だけを求めるなら他の方法が簡便ですが、資産形成と節税を両立させたい場合はワンルームマンション投資が選択肢となります。自身の資金状況やライフプランに合わせて、最適な節税方法を選択することが重要です。

ワンルームマンション投資の注意点

ワンルームマンション投資は上手く行えば節税効果が期待できますが、注意点も存在します。注意点を押さえなければかえって損失が出てしまう恐れが大きいです。

この章ではワンルームマンション投資の注意点を5つ紹介します。

【所得税・住民税】大きな節税効果を得られるのは短期間

所得税および住民税に関連する注意点として、大きな節税効果を得られるのは短期間という点が挙げられます。

 

ワンルームマンション投資を含む不動産投資が節税につながるのは、不動産経営は経費が大きく赤字が出やすいためです。

しかし、多額の経費が発生するのは購入直後のような限られた期間のみです。支出が落ち着けば計上できる経費が少なくなり、節税効果が薄れてしまいます。

特に耐用年数が過ぎて減価償却費を計上できなくなれば、不動産所得が黒字になる可能性が高いです。

黒字であれば税金が発生するため、かえって納税負担が重くなります。

 

とはいえ無理やり赤字状態にするのは避けるべきです。

確かに、赤字であればワンルームマンション投資にかかる税金は発生しません。

しかしワンルームマンション経営による利益もなく、金銭的負担がかかり続けるだけといえます。赤字状態が続くのは健全ではありません。

 

以上のように、不動産投資によって所得税や住民税の節税効果を狙える期間は限られています。

そのため、節税目的でワンルームマンション投資を行うのはおすすめできません。

基本的には収益性を重視し、経費が大きな年のみ節税を狙う程度に考えるのが良いでしょう。

【共通】需要・利回り共に低く売却が難しい

前項で「ワンルームマンション投資を節税目的で行うのはおすすめできない。基本的には収益性を重視するべき」と紹介しました。

赤字が出続ける状態となった場合、対象のワンルームマンションを所有し続けることが損失につながります。

このような場合、物件を手放す決断が必要となるでしょう。

 

また、ワンルームマンションを相続した後、相続人は対象の物件を売却するケースが多いでしょう。

不動産経営を続ける意思が強い場合や、不動産経営による収益が大きい場合を除き、換金する方が使い勝手が良いといえます。

 

しかしワンルームマンションはファミリー向け物件に比べ、需要・利回りが共に低い傾向です。

購入した時に比べて価値が下がるケースも多く、換金性が悪い資産といえます。

 

確かに税額は安く済みますが、それ以上の損失を被る恐れがあります。

ワンルームマンションは売却が難しいというリスクにも注意が必要です。

【相続税】相続の際にトラブルになる恐れがある

ワンルームマンションに限らず、相続財産に不動産があると相続の際にトラブルになる恐れが大きくなります

 

前章で、不動産の相続税評価額は購入時に比べて低くなりやすいと紹介しました。

そのため相続税の節税という観点だけで考えると、不動産購入は効果的な手段といえます。

 

ただし、不動産は簡単には分割ができません。そのため誰が相続するかで揉める恐れがあります。

売却による現金化も可能ではあるものの、共有名義の不動産を売却するには名義人全員の同意が必要となります。

 

相続人が多い場合や相続人同士のトラブルが予想される場合、遺産分割のしやすさを考慮して現預金のままにしておくのも1つの手段です。

【共通】将来のローンに影響する恐れがある

ワンルームマンション購入の際にローンを使うと、将来的に以下のような事態が起こり得ます。

  • ・ワンルームマンション投資が赤字の場合、不動産経営が赤字のために金融機関からの評価が悪くなり、追加融資の審査に通過できない恐れが大きくなる
  •  
  • ・ワンルームマンション投資が赤字の場合、不動産所得の赤字の分総所得も少なくなるため、新たなローンを組みにくくなる
  •  
  • ・借入残高や月々の返済額が大きいため、追加融資を断られてしまう

ローンを受けられるか否かは生活を大きく左右する可能性がある要素です。

将来ローンを利用する可能性が高い場合はもちろん、現時点では判断できない場合も、将来のローンへの影響を考慮する必要があります。

【共通】悪徳業者の勧誘電話に注意

悪徳業者の勧誘電話は不動産全体に共通する注意点ではありますが、ワンルームマンションは特に注意が必要といえます。

これまで紹介したように、ワンルームマンション投資は節税効果が期待できる一方で多数の注意点が挙げられる方法です。

しかし、不動産投資に関するデメリットを伝えずに勧誘する業者が少なくないのも事実です。

特にワンルームマンションは、ファミリー向け物件に比べて換金性が悪いという注意点があります。

このような事実を提示せず、メリットばかりを強調してワンルームマンションの購入を進めるケースがみられます。

業者から聞く旨い話に乗らず、注意点やリスクを考慮した上で、ワンルームマンション投資を実施するか否かを検討しましょう。

節税効果を最大化するための物件選びのポイント

ワンルームマンション投資で節税効果を最大化するためには、物件選びが非常に重要です。まず、建物部分の価値が高い物件を選ぶことで、減価償却費を多く計上できます。特に、土地に対して建物の割合が高い物件や、設備が充実している物件は減価償却費が大きくなります。

 

また、修繕や設備更新の必要性が高い中古物件は、実費経費の計上機会が多く、節税効果が高まる傾向があります。さらに、将来的な売却も視野に入れるなら、立地条件の良い物件を選ぶことで、売却時の利益確保も期待できます。

 

ただし、節税効果だけに着目すると収益性の低い物件を選んでしまう恐れがあるため、家賃収入の安定性や将来的な資産価値も含めた総合的な判断が必要です。専門家のアドバイスを受けながら、バランスの取れた物件選びを心がけましょう。

税目的のワンルームマンション投資成功のためのロードマップ

ワンルームマンション投資で節税効果を得ながら成功するためには、計画的なアプローチが必要です。まず、自身の年収や資産状況を正確に把握し、どの程度の節税効果が見込めるかシミュレーションを行いましょう。

 

次に、物件選びでは立地や築年数、価格だけでなく、建物と土地の価格比率や将来的な収益性も考慮します。購入後は、確定申告を正確に行い、適切に経費計上することが重要です。また、定期的に投資効果を検証し、必要に応じて物件の入れ替えや追加購入を検討することも大切です。

 

さらに、税制改正や不動産市場の動向にも常に注意を払い、状況変化に柔軟に対応できる準備をしておきましょう。節税だけを目的とせず、長期的な資産形成の一環としてワンルームマンション投資を位置づけることで、より安定した投資成果を得ることができます。

まとめ

ワンルームマンション投資は、所得税・住民税・相続税・贈与税の節税効果が期待できる手法です。

しかし、ワンルームマンション投資は他の不動産投資よりも注意するべき点が多く存在します。

方法によっては節税効果を得られないどころか、かえって大きな損失を被る恐れもあります。

 

ワンルームマンション投資を始める前に、注意点やリスクについても入念に確認しましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
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