金(ゴールド)は所有しているだけでは税金がかかりませんが、売却時に利益が発生した場合は所得税の課税対象になります。
金の売却益がどのような所得に該当するかは条件によって異なります。そのため、所得税を正しく計算するにはどの所得に該当するかの確認が必要です。
また、売却時のちょっとした工夫によって金の売却益にかかる税金を抑えられる可能性もあります。
今回は金の売却時に税金がかかる条件や税金を抑える方法、金にかかる税金に関する注意点等を解説します。
所得税の仕組みについては以下の記事をご覧ください。
オンライン無料相談 受付中
CONTENTS
金(ゴールド)の売却益は所得税の課税対象になる
結論として、金の売却益は所得税の課税対象になります。そして、金の売却益がどの所得に該当するかは条件によって異なります。
所得の種類によって課税対象額や税額の計算方法が異なるため、どの所得に該当するかの正しい判断が必要です。
この章では金の売却益が該当し得る所得の種類ごとに、概要や該当する条件を解説します。
譲渡所得
譲渡所得とは資産の売却によって生じる所得です。金に限らず、不動産や高価な美術品など幅広い資産の売却益が該当します。
個人が保有していた金を売却した時に発生する利益は、譲渡所得に該当するケースが多いです。
譲渡所得の計算方法は以下の通りです。
- 1.資産の譲渡益を計算する
- 譲渡益=売却額-(取得価格+譲渡費用)
- 2.課税対象となる所得額を計算する
- 譲渡益-特別控除50万円=譲渡所得の額
- 資産の保有期間が5年以内であった場合、上記の式で計算した譲渡所得が課税対象額となります。
- 3.資産の保有期間が5年を超える場合、譲渡所得に2分の1を乗じる
- 譲渡所得の額×2分の1=課税対象となる譲渡所得
資産の保有期間が5年以内の場合は短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得と呼びます。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の両方がある場合、特別控除額は合わせて50万円が限度です。先に短期譲渡所得に該当する分から特別控除を適用します。
雑所得
雑所得は他の所得に該当しない所得のことです。
金の売却が以下2つの要件を満たす場合、売却益は雑所得に該当します。
- ・営利目的で継続的に金の売買をしている
- ・後述する事業所得の要件を満たさない
雑所得の計算式は以下の通りです。
- 雑所得=総収入額-必要経費
雑所得は原則として、給与所得など他の所得と合計して総所得金額を計算し、総所得金額に税率を乗じて税額を求めます。
しかし金投資口座や金貯蓄口座を用いた売買の場合は、実態としては金融取引とみなされるため、金融類似商品として源泉徴収による課税が行われます。
事業所得
事業所得は文字通り事業によって発生する所得です。
金の売買を事業として行っている場合、売却益は事業所得とみなされます。
事業所得の計算式は以下の通りです。
- 事業所得=事業による総収入金額-必要経費
金の売却で所得税がかからないケースとは
金の売却によって利益が出た場合でも、利益が控除額や必要経費以下であれば売却益に所得税はかかりません。
具体的には以下のケースが該当します。
- 譲渡所得:金の売却益が譲渡所得の特別控除である50万円以下の場合
- 雑所得:給与所得や退職所得以外の所得と金の売却益の合計が20万円以下の場合
- ※給与所得や退職所得以外の所得が20万円以下の場合は確定申告が不要のため
- 事業所得:事業による所得が赤字の場合
- ※青色申告の場合は確定申告を行うことで赤字の繰り越しができます。
金の売却時に実施できる節税対策
金の売却時に実施できる所得税の節税対策を3つ紹介します。
売却益が控除額以下になるように抑える
前章で、金の売却による利益が一定以下であれば所得税が発生しないと紹介しました。
したがって、金の売却益が控除額以下になるように抑えれば所得税の発生を避けられます。
例えば金を多く保有している場合、1年にすべて売却するのではなく、複数年に分けて売却するのが効果的です。
ただし、金の価値は変動するものであり、購入時よりも価値が下がるリスクもあります。
金の売却を先送りにした結果、金の価値が下がり売却損が発生してしまうケースもゼロではありません。
売却損まではいかずとも、早めに売却した方が大きな利益を得られたというケースも考えられます。
実際のところ、売却によって利益が出るか否か、利益がどのぐらいの大きさであるかは売却時点では判断できません。
その上で、節税によるプラスよりも、先送りにした結果によるマイナスの方が大きくなる可能性が有り得る点は押さえる必要があるでしょう。
金を購入して5年超が経過してから売却する
金をはじめ譲渡所得に該当する資産の売却をする場合は、購入後5年超が経過してから売却するのがおすすめです。
金の売却益が譲渡所得に該当し、売却した金の保有期間が5年を超える場合は、特別控除を差し引いた後の額に2分の1を乗じた額が課税対象額となります。
金の売却益から特別控除50万円を引いた額が100万円の場合、金の保有期間が5年を超えるか否かで課税対象額が以下のように異なります。
- ・保有期間が5年以内(短期譲渡所得):100万円がそのまま課税対象所得になる
- ・保有期間が5年超(長期譲渡所得):100万円×2分の1=50万円が課税対象所得になる
節税という面で考えると、すぐに手放す必要がある場合を除き最短でも5年は保有した上で売却するのが効果的です。
購入時に受け取る「計算書」を紛失しない
金の売却益にかかる税金を最小限に抑えるには、購入時に受け取る「計算書」の保存が欠かせません。
金の購入時に渡される「計算書」を紛失してしまうと、金の取得価格を証明できず、売却金額の95%が売却益とみなされてしまうためです。
税額が必要以上に大きくなってしまうため、計算書を紛失しないよう注意しましょう。
なお、計算書は紙ではなく電子形式での保存も可能です。
金を売却したときの税金シミュレーション
金の売却時には、所有期間に応じて短期譲渡所得と長期譲渡所得の2つの所得計算方法が適用されます。
短期譲渡所得は、金の所有期間が5年以内の場合の所得を指し、長期譲渡所得は5年を超えて所有した場合に適用される所得です。
税金は売却時期によって変動するため、以下の条件をもとにシミュレーションを行います。
- ・購入時の金価格:1gあたり5000円
- ・売却時の金価格:1gあたり9000円
- ・売却量:①100gの場合、②1kgの場合
短期譲渡所得の場合
短期譲渡所得は、購入後5年以内に売却した金の利益に適用されます。譲渡益は以下の式で計算されます。
- 譲渡益 = 売却額 - (購入費用 + 売却費用)
この計算式を条件に当てはめた場合の結果は以下の通りです。
- ①100gの場合
- 90万円(売却額)-50万円(購入費用)=40万円
- ②1kgの場合
- 900万円(売却額)-500万円(購入費用)=400万円
①では譲渡益が50万円以下のため、所得税は発生しません。一方で、②の場合は譲渡益が400万円となり、特別控除の50万円を差し引いた350万円に対して所得税が課税されます。
長期譲渡所得の場合
長期譲渡所得は、購入後5年以上所有した金の利益に適用されます。この場合の譲渡益は以下の式で求められます。
- 譲渡益 = {売却額 - (購入費用 + 売却費用)} ÷ 2
条件を適用した場合の結果は以下の通りです。
- ①100gの場合
- (90万円 - 50万円)÷ 2=20万円
- ②1kgの場合
- (900万円 - 500万円)÷ 2=200万円
①では譲渡益が50万円以下のため、所得税は発生しません。一方、②の場合は譲渡益が200万円となり、特別控除の50万円を差し引いた150万円に所得税が課税されます。
ただし、短期譲渡所得に比べると200万円の節税効果が得られる点が大きなメリットです。
金にかかる税金に関する注意点
金にかかる税金に関する注意点を2つ紹介します。
相続や贈与によって金を取得した場合も税金がかかる
金の売却益に税金がかかるのは、自身で購入した金を売却した場合だけではありません。
相続や贈与によって取得した金を売却する場合も、売却益が発生すれば所得税が課されます。
相続や贈与によって取得した金を売却する際は以下の2点に注意が必要です。
- ・保有期間は相続や贈与によって取得した時ではなく、被相続人や贈与者が購入した時点から始まる
- ・取得価格として用いるのは相続や贈与時点の額ではなく、被相続人や贈与者が購入した時の価格
例えば被相続人が4年間保有していた金を相続し、その後2年経過してから売却した場合、保有期間は4年間+2年間=6年間です。したがって長期譲渡所得に該当します。
保有期間を2年として計算してしまうと、必要以上に税額を払うことになるため注意しましょう。
課税対象外でも確定申告をした方が良いケースもある
「金の売却で所得税がかからないケースとは」で紹介したように、売却益が控除額以下であれば所得税の課税対象外となります。
その他に申告が必要な所得がなければ、所得税の確定申告をしなくても問題はありません。
ただし、金の売却によって所得税が発生しなくても確定申告をした方が良いケースがあります。
具体例として以下の2つが挙げられます。
- ・他の控除制度の適用を受ける
- 医療費控除のように年末調整で控除できない制度の適用を受けるには確定申告が必須です
- ・事業所得が赤字になり、損益通算が可能
- 金の売買が事業であり事業所得が赤字の場合は、確定申告をすることで他の所得と損益通算ができます
なお、所得税の確定申告が不要な場合でも住民税の申告は必要です。
金の形状によって要件が異なる
金の売却時にかかる税金は、形状によって要件が異なる場合があります。特にジュエリーや仏具など、形状ごとに課税条件が変わるため、事前に確認しておくことが大切です。
以下では、それぞれの要件について詳しく解説します。
ジュエリー
金を使用したジュエリーの売却は、生活用動産の取引に該当します。この場合、1個または1組の売却益が30万円を超えた場合に課税対象となります。
ポイントは、取引全体の売却益ではなく、個々のジュエリーごとに売却益が30万円を超えるかどうかが判定基準になる点です。ただし、一般的には取得時の価格を売却時に超えるケースは少ないため、確定申告が必要となる状況は稀です。
ただし、購入時の計算書が紛失している場合には課税が発生するリスクがあるため、購入証明書の適切な保管が重要です。
仏具
相続税には「祭祀財産」と呼ばれる非課税の対象物があり、その中に仏具が含まれます。通常、仏具には相続税がかからないため、金の仏具を相続する際には税負担が発生しないケースが多いです。
しかし、非課税対象外となる例外も存在するため注意が必要です。たとえば、高齢になってから急に高額な仏具を購入した場合や、極めて豪華な純金製の仏具を所有している場合、相続税対策の意図があると判断され、課税対象となる可能性があります。
節税目的で購入したものであっても課税が免除されないケースがあるため、事前に確認し適切な対応を心掛けましょう。
金の形状によって税金のルールが異なるため、売却や相続を計画する際には、それぞれの要件を正しく理解することが重要です。
まとめ
金の売却によって発生した利益は所得税の課税対象です。
所得の種類によって課税対象額の計算方法が異なるため、自身のケースでは売却益がどの所得に該当するか確認する必要があります。
しかし、売却益が控除額以下であれば税金は発生しません。
そのため年間の売却益が控除額以下になるよう調整するのも1つの節税手段です。
また、金の保有期間が5年を超えてから売却すれば長期譲渡所得に該当するため、5年以内に売却した場合よりも税額を抑えられます。
金の売却益にかかる税金はちょっとした工夫により大幅に減額できる可能性があります。
今回紹介した内容を押さえ、金の売却における効果的な節税対策を実施しましょう。
節税に強い税理士によるオンライン無料相談受付中
法人・個人事業主の税務相談・節税対策はBIZARQ会計事務所にお任せください。
現在30分から1時間程度のオンライン無料相談を実施中です。
記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士