
資産管理会社は、不動産や有価証券等の資産の管理を目的とする会社です。
富裕層の節税対策で設立されるケースが多くみられます。
資産管理会社には節税をはじめとした様々なメリットがあると同時に、会社という形態ならではのデメリットも存在します。
メリット・デメリットの両方を把握した上で、資産管理会社を設立するか否かの検討が必要です。
今回は資産管理会社の概要や設立するメリット・デメリット、資産管理会社の設立を検討するべきケースの例を紹介します。
なお、資産管理会社は富裕層に人気のある節税対策の1つです。
その他の富裕層向け節税対策については以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
資産管理会社とは

資産管理会社とは、不動産や有価証券等の資産の管理を目的とする会社です。
富裕層の節税対策で設立されるケースが多くみられます。
資産管理会社はあくまで資産の管理のみが目的であり、その他の事業活動は基本的に行いません。
法人が保有する不動産の家賃収入や株式の配当収入等が資産管理会社の収入源になります。
資産管理会社を設立するメリット

資産管理会社を設立するメリットを3つ紹介します。
資産にかかる税額を抑えられる
資産管理会社を設立する最も大きなメリットは、資産にかかる税額を抑えられる点です。
厳密には、現在保有している資産にかかる所得税額が高額な場合は、資産管理会社を設立した方が節税になる可能性が高いといえます。
資産管理会社の設立が節税につながる主な理由は以下の3つです。
所得税と法人税の税率の違い
所得税は所得額が一定額を超えるとより高い税率が適用される超過累進課税制度を採用しています。
税率は5%から45%の7段階に区分されており、所得額が増えるほど税負担が重くなる仕組みです。
一方、法人税率は年800万円以下の部分と年800万円超の部分の2区分のみであり、最高で23.2%です。
法人住民税や事業税等を加味した実効税率は約30%であり、所得税の税率よりも低く設定されています。
所得額が高い場合、資産管理会社を設立した方が適用される税率が低くなり、手元に残せるお金が増えるのです。
経費にできる範囲
個人よりも法人の方が経費にできる範囲が広く設定されています。
経費計上できる範囲が広がり収入から差し引ける額が増えれば、その分課税対象となる所得額が少なくなり、節税につながるでしょう。
法人のみが経費計上できる支出として以下の例が挙げられます。
- ・法人名義の生命保険料
- ・社宅家賃
- ・出張日当
- ・役員の退職金
- ・自身に対する役員報酬
赤字の繰り越し期間の違い
個人事業主の場合、赤字の繰り越し期間は最長3年です。
一方で法人は赤字を最長10年間繰り越せます。
赤字の繰り越し期間が長いため、赤字を無駄にせず有効活用できる可能性が高いです。
所得の分散ができる
家族や親族を会社の役員にすれば、役員報酬の支払いという方法で所得の分配ができます。
社長である本人に所得が集中するのを防ぎつつも世帯収入を上げることが可能です。
また、社長の手元に残る現預金を減らせるため、相続税の節税効果も期待できます。
生前贈与のうち相続開始前7年以内に行われたものは相続税の対象になりますが、法人が払う役員報酬は生前贈与とみなされません。
給与所得が増える分所得税が発生してしまいますが、贈与税や相続税よりは税額を抑えられる可能性が高くなります。
相続対策にもなる
資産管理会社の設立は相続対策としても効果的です。
前項で「所得の分散によって社長の手元に残る現預金を減らせるため、相続税の節税効果が期待できる」と紹介しました。
しかし資産管理会社には、相続対策につながる理由が他にも複数存在します。
- 相続対象となる資産を減らせる
- 資産管理会社に不動産や株式等の資産を移せば、対象の資産は相続対象から外れます。
- 社長である被相続人が亡くなっても名義は法人のままです。
- 対象の資産について遺産分割の必要がなくなる・課税対象の財産を減らせる等の効果を得られます。
- 相続に伴う手続きを減らせる
- 資産管理会社が保有する財産は相続対象になりません。
- そのため相続の発生による名義変更手続きや登記費用の支払い等も不要です。
資産管理会社設立のデメリット

続いて、資産管理会社設立のデメリットを4つ紹介します。
会社設立に手間やコストがかかる
資産管理会社に限らず、会社設立による大きなデメリットの1つが会社設立に手間やコストがかかる点です。
会社を設立するには以下のように様々な手続きを行う必要があります。
- ・会社の基本事項を決める
- ・定款を作成し、公証役場で認証を受ける
- ・資本金の払い込みを行う
- ・法務局で登記申請を行う
- ・会社設立後に必要な各種届出を遅滞なく行う
また、会社設立にかかるコストとして以下の例が挙げられます。
- ・定款認証手数料 ※合同会社の場合は不要
- ・定款用収入印紙代 ※電子定款の場合は不要
- ・謄本手数料
- ・登録免許税
上記は法定費用と呼ばれる、会社設立時に必ず発生するコストです。
法定費用だけでも、株式会社の場合は20万円程度、合同会社では7~10万円程度かかります。
会社設立の代行やサポートを専門家に依頼する場合は専門家報酬の支払いも必要です。
このように会社設立そのものに手間やコストがかかる点に注意する必要があります。
会社運営にコストがかかる
会社設立だけでなく会社運営にもコストがかかります。
会社ならではのコストとして以下の例が挙げられます。
- 社会保険料
- 法人は社会保険の加入が必須です。社長1人の会社にも加入義務があります。
- 法人住民税
- 法人住民税は個人にかかる住民税と違い、赤字でも納付義務があります。
- 法人住民税は法人税額が基になる法人税割と、法人規模に応じて計算される均等割から構成されており、後者の均等割は赤字の場合も納付が必要です。
- 専門家報酬
- 法人税はルールが複雑で申告・計算のためには高度な知識が必要なため、専門家である税理士に依頼するのが一般的です。
- そのため法人ではほぼ必ず専門家報酬(税理士報酬)が発生します。
資産の自由度が下がる
資産は法人の所有物になるため、社長本人でも自由には活用できなくなります。
資産の自由度が下がっても良いか、個人名義の資産ではなくなっても良いかの十分な検討が必要です。
名義変更の際に費用が発生する
個人から法人(資産管理会社)へ名義を変更する際には以下のように様々な費用が発生します。
- ・不動産取得税:固定資産税評価額×3~4%
- ・登録免許税:固定資産税評価額×2%
- ・消費税:資産の譲渡価格×10%
- ・専門家報酬
また、元の保有者であった個人には譲渡所得税がかかります。
資産管理会社の設立を検討するべきケースの例

最後に、資産管理会社の設立を検討するべきケースの例を2つ紹介します。
課税所得や給与収入が一定を超えている
「資産管理会社を設立するメリット」で、所得税の税率は所得額が増えるにつれて高くなると紹介しました。
そのため課税所得や給与収入が一定を超える場合、会社を設立した方が所得にかかる税額を抑えられる可能性が高いです。
具体的な目安として以下の2つが挙げられます。
- ・課税所得が900万円を超えている、もしくは超える見込みである
- ・給与による収入が年間1,000万円近くあり、給与所得以外にも不動産収入や投資による収益がある
ただし、前述のように会社設立や会社運営、資産の移転にはコストがかかる点に注意が必要です。
相続対象となる資産が多い
相続対象となる資産が多い場合も資産管理会社の設立を検討して良いでしょう。
資産管理会社は相続対策にも効果的と紹介しました。改めて、資産管理会社が相続対策となる理由をまとめます。
- ・法人が保有する資産は相続税の課税対象にならないため、相続税の節税効果を得られる
- ・遺産分割協議におけるトラブルのリスクを低くできる
- ・相続に伴う名義変更や登録免許税の支払い等の手間を抑えられる
- ・役員報酬の支払いという方法で所得の分配ができ、相続対象となる現預金を減らせる
まとめ
資産管理会社は不動産や株式等の資産を管理する目的で設立する会社です。
資産管理会社の設立によって、所得にかかる税金の節税や相続対策等、様々な効果が期待できます。
一方で会社設立・運営・資産移転等にコストがかかるといったデメリットがあります。
このように資産管理会社にはメリット・デメリットの両方があるため、必ずしも設立するべきとは限りません。
資産管理会社を設立するかどうかは慎重に検討した上で判断しましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士