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個人事業主が加入する国民健康保険の保険料は、社会保険に比べて「高すぎる」と感じやすいです。
「高すぎる」と感じる理由は複数ありますが、いずれも国民健康保険特有のルールや仕組みが原因です。
そんな国民健康保険料ですが、節税によって保険料の額を抑えられるケースがあります。
今回は国民健康保険料の節税方法について詳しく解説します。
国民健康保険料の追納について解説した以下の記事もぜひご覧ください。
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CONTENTS
国民健康保険と社会保険の違い
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国民健康保険と社会保険の比較表
項目 | 国民健康保険 | 社会保険 |
---|---|---|
運営団体 | ・市区町村 | ・全国健康保険協会 ・健康保険組合 |
被保険者 | ・社会保険や共済組合、後期高齢者医療制度に未加入の方 ・生活保護を受けていない方 | ・適用事業所に雇用される正社員 |
保険料の計算方法 | ・市区町村が前年の所得を基に算出 | ・会社が給与額を基に算出 |
保険料の負担 | ・全額を本人が負担 | ・会社と従業員で負担を分担 |
保険料の支払い | ・自分で直接支払う | ・給与から自動的に天引きされる |
扶養制度の有無 | ・ なし(加入者数に応じた保険料設定) | ・あり(一定条件で家族も保険適用。負担額は変わらない) |
国民健康保険と社会保険では運営団体から計算方法まで異なり、保険料の負担や支払い方法も大きく違います。特に扶養制度の有無が生活設計に影響するため、加入前に理解が必要です。
国民健康保険料が「高すぎる」と感じる理由
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国民健康保険料が「高すぎる」と感じる理由を3つ紹介します。
保険料全額を本人が負担するため
国民健康保険料は保険料全額を加入者自身が負担するため、社会保険料に比べて高いと感じやすいです。
前提として、国民健康保険と社会保険は保険料の計算方法が以下のように異なります。
- 国民健康保険:世帯の加入人数や前年の所得をもとに計算
- 社会保険料:給与額に応じて計算
保険料の算定方法は国民健康保険と社会保険で異なる上、適用される料率は自治体によって違います。
とはいえ、単純に保険料の総額だけで比較すると国民健康保険と社会保険に大きな違いがないケースも珍しくありません。
しかし、社会保険料は加入者と勤務先の労使折半となります。つまり、社会保険料の半分は勤務先である会社が支払う仕組みです。
加入者の負担分は保険料総額の半分となります。
前述の通り、国民健康保険料は加入者が全額負担する仕組みです。
そのため社会保険料よりも国民健康保険料の方が、加入者自身が支払う額が高くなります。
保険料の支払いを自分で行うため
社会保険料は毎月の給与から天引きされ、会社が代わりに納付する仕組みです。
自分では納付手続きをしない・支払われる給与は保険料等が控除された後の金額といった理由から、保険料をあまり意識しないケースも多いでしょう。
一方、国民健康保険は保険料の支払いを自分で行う必要があります。
納付方法は以下の5種類です。
- ・納付書での支払い
- ・口座振替による支払い
- ・クレジットカードでの支払い
- ・スマートフォンアプリでの支払い
- ・Pay-easy納付
口座振替以外の方法では、毎月自身で支払い手続きが必要です。
給与からの天引きと違って金額に対する意識が強くなるため、どうしても高いと感じやすくなります。
口座振替の場合でも、毎月保険料が引き落されて口座残高が減っていくため、保険料の額を実感しやすいでしょう。
扶養の概念がないため
社会保険では所得が一定以下の家族を扶養に入れることができます。
そして被扶養者の数に関係なく、支払う保険料は加入者である被保険者の分のみです。
一方、国民健康保険には扶養の概念がありません。一人ひとり国民健康保険に加入し、それぞれの保険料を納付する必要があります。
扶養する家族が多い場合、会社に勤めていた頃(社会保険に加入していた頃)より所得が少なくても、保険料の納付額が高くなるケースがあります。
個人事業主が加入できる健康保険の種類は4種類
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個人事業主が利用できる健康保険には、国民健康保険を含めて以下の4種類があります。
それぞれの特徴を表で確認しましょう。
加入できる健康保険の比較表
保険の種類 | 特徴 |
---|---|
国民健康保険 | ・他の健康保険に加入していない人が全員加入義務あり ・前年の所得に応じて保険料が変動 |
会社員時代の保険の任意継続 | ・退職前の健康保険を継続利用できる制度 ・ 退職翌日から20日以内に手続きで最長2年間加入可能 ・ 扶養家族の保険料は不要 |
国民健康保険組合の保険 | ・ 特定業界や職種限定の健康保険組合 ・ 文芸美術や東京美容国民健康保険組合など ・ 保険料は各組合で異なる |
家族が加入する健康保険 | ・年収130万円未満で両親や配偶者の扶養に入れる ・保険料の支払い義務はなし |
国民健康保険以外は加入条件が異なるため、まず自分が該当する保険を確認する必要があります。
個人事業主の場合、国民健康保険料はいくら?
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国民健康保険料は計算式によって算出されます。
以下の計算式を基に、支払う保険料の目安を確認してみましょう。
国民健康保険料の計算式
国民健康保険料=①医療(基礎)分保険料+②支援分保険料+③介護分保険料
- ①医療(基礎)分保険料:医療費の財源となる基本的な保険料
- ②支援分保険料:後期高齢者医療制度を支えるための保険料
- ③介護分保険料:介護保険制度の運営に必要な保険料
各項目の負担割合を把握し、自分に適した保険料を計算してみましょう。
国民健康保険料は3つの要素で構成されている
国民健康保険は、「①医療(基礎)分」、「②支援分」、「③介護分」の3つの要素から成り立っています。なお、「③介護分」の負担は40~64歳の加入者に限定されます。
- 年齢ごとの保険料負担
- 39歳以下および65~74歳:介護分の負担なし
- 40歳になる月:その月から介護分保険料が追加
- 75歳以上:後期高齢者医療制度に移行し、75歳の誕生日の前月までは医療分と支援分の保険料を支払う
国民健康保険料の算出方式
それぞれの保険料は以下の方式で計算されます。
算出方式 | 特徴 |
---|---|
所得割 | ・ 前年の所得に応じて決まる保険料 ・ 所得が高いほど負担が増加 ・ 基礎控除後の金額に市区町村ごとの保険料率を掛けて算出 |
均等割 | ・ 世帯の加入者数に応じて計算 ・ 所得に関わらず1人いくらの形で課される ・ 家族が多い世帯ほど負担増 |
平等割 | ・全世帯が均等に負担する保険料 ・ 採用する自治体は少ない ・ 平等割の有無は保険料通知書や市区町村のWebサイトで確認可能 |
国民健康保険料の計算事例(渋谷区の場合)
渋谷区の国民健康保険料は、「①医療(基礎)分」「②後期高齢者支援金分」「③介護分(40~64歳対象)」の3つで構成されています。各保険料は、均等割額(加入者数に応じた定額)と所得割額(所得に応じた額)で計算され、世帯ごとに合算されます。
以下、渋谷区の令和6年度(2024年度)の保険料率を基に、具体的な計算例を示します。
保険料区分 | 均等割額 | 所得割率 | 世帯限度額 |
---|---|---|---|
①医療(基礎)分 | 49,100円 | 8.69% | 650,000円 |
②後期高齢者支援金分 | 16,500円 | 2.80% | 240,000円 |
③介護分 | 16,500円 | 2.36% | 170,000円 |
※所得割算定基礎額は、前年の総所得金額から基礎控除(43万円)を差し引いた金額です。
出典:渋谷区公式サイト
ケース1:38歳単身者、前年所得400万円の場合
- 所得割算定基礎額:400万円 - 43万円 = 3,570,000円
- ①医療(基礎)分:
- 所得割:3,570,000円 × 8.69% = 310,233円
- 均等割:49,100円
- 合計:310,233円 + 49,100円 = 359,333円
- ②後期高齢者支援金分:
- 所得割:3,570,000円 × 2.80% = 99,960円
- 均等割:16,500円
- 合計:99,960円 + 16,500円 = 116,460円
- ③介護分:該当なし(40歳未満のため)
年間保険料合計:359,333円 + 116,460円 = 475,793円
ケース2:45歳夫婦、前年世帯所得500万円の場合
- 所得割算定基礎額:500万円 - 43万円 = 4,570,000円
- ①医療(基礎)分:
- 所得割:4,570,000円 × 8.69% = 397,333円
- 均等割:49,100円 × 2人 = 98,200円
- 合計:397,333円 + 98,200円 = 495,533円
- ②後期高齢者支援金分:
- 所得割:4,570,000円 × 2.80% = 127,960円
- 均等割:16,500円 × 2人 = 33,000円
- 合計:127,960円 + 33,000円 = 160,960円
- ③介護分:
- 所得割:4,570,000円 × 2.36% = 107,852円
- 均等割:16,500円 × 2人 = 33,000円
- 合計:107,852円 + 33,000円 = 140,852円
年間保険料合計:495,533円 + 160,960円 + 140,852円 = 797,345円
国民健康保険料の早見表
以下に、渋谷区の令和6年度(2024年度)国民健康保険料の早見表をまとめました。これは、加入者が1人の場合の年間保険料負担額を示しています。年齢区分は、0~39歳または65~74歳(介護分なし)と、40~64歳(介護分あり)に分かれています。
令和5年の所得額 | 0~39歳または65~74歳(介護分なし) | 40~64歳(介護分あり) |
---|---|---|
100万円 | 13万1,093円 | 16万1,045円 |
200万円 | 24万5,993円 | 29万9,545円 |
300万円 | 36万0,893円 | 43万8,045円 |
400万円 | 47万5,793円 | 57万6,545円 |
500万円 | 59万0,693円 | 71万5,045円 |
600万円 | 70万5,593円 | 85万3,545円 |
700万円 | 82万0,493円 | 99万0,493円 |
800万円 | 87万8,460円 | 104万8,460円 |
1世帯あたりの最高限度額 | 89万円 | 106万円 |
国民健康保険料を節税する方法
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前章で紹介したように、国民健康保険は社会保険に比べて加入者の負担する額が高くなりやすいです。
そのため「国民健康保険料は高すぎる」と感じるのも自然といえるでしょう。
そんな国民健康保険料ですが、制度を上手く活用することで節税できる可能性があります。
この章では国民健康保険料の節税につながる方法を3つ紹介します。
減免制度を利用する
国民健康保険には保険料の減免制度があります。減免制度を利用できれば国民健康保険料の減額が可能です。
減免制度を利用できるのは一定の要件を満たす場合に限られます。例として東京都新宿区の減免制度について紹介します。
- 均等割額の減額
- 前年の所得が一定以下の場合に均等割額が減額される制度です。減額割合は前年の所得額によって異なります。
- 一般減免
- 以下の要件を満たす場合に減免を申請できる制度です。
- ・災害、解雇、倒産、病気などによって生活が著しく困難になった
- ・預貯金など利用できる資産を活用しても保険料を納められなくなった
- 非自発的失業者の保険料軽減
- 会社都合によって退職した場合は保険料の軽減対象になるケースがあります。
要件は自治体によって多少の違いがあるため、詳しくは自治体の公式サイトや窓口等でご確認ください。
減免制度は国民健康保険料の節税に効果的ではあるものの、全員が利用できる制度ではありません。そのため、減免制度の利用を前提とするのは危険です。
自身が利用できる減免制度があるか必ず確認しましょう。
世帯分離や世帯合併を行う
世帯分離や世帯合併によって国民健康保険料を節税できるケースもあります。
前提として、国民健康保険料は以下の3つによって構成されています。
- 所得割:世帯の加入者全員の算定基礎額(所得額)に一定料率を乗じて計算する部分
- 均等割:「所定の金額×世帯の加入者数」で計算する部分
- 平等割:国民健康保険に加入する全世帯が平等に負担する金額
- ※平等割を採用していない自治体も多く存在します。平等割が設定されているかは自治体の公式サイトでご確認ください。
そして、年間保険料には上限が設定されています。
たとえば東京都新宿区の場合、令和6年度の保険料額の上限は106万円です。世帯に40~64歳の加入者がいない場合の上限額は89万円となります。
世帯分離をすれば一世帯の前年度の所得額合計および加入者が少なくなります。
結果として各世帯の国民健康保険料が安くなるため、保険料の負担を抑えられるでしょう。
反対に、世帯合併をした方が節税になるケースもあります。
前述のように、国民健康保険料には上限の定めがあり、上限を超える保険料を支払う必要はありません。
たとえば二世帯住宅でそれぞれの世帯が高額の保険料を支払っていれば、世帯合併によって保険料の上限に達する可能性が高いです。
二世帯それぞれで国民健康保険料を支払っていた場合と違い、上限を超えた分の納付が必要なくなるため、節税効果が期待できます。
世帯分離や世帯合併の利用可否や、どちらの方が節税効果が大きいかはケースによって異なるため、必ずご確認ください。
所得税の節税対策を実施する
所得税の節税対策を実施することで、国民健康保険料も節税できるケースがあります。
前項で、国民健康保険料は所得割・均等割・平等割から構成されていると紹介しました。
そして、所得税の節税対策によって所得額が少なくなれば、国民健康保険の所得割の算定基礎も少なくなります。
結果として、国民健康保険の所得割額が少なくなる、つまり国民健康保険料の節税効果を得られるのです。
国民健康保険の軽減にもつながる所得税の節税手段として以下の例が挙げられます。
- ・青色申告による確定申告を行い、青色申告特別控除の適用を受ける
- ・経費を漏れなく計上する
ただし、国民健康保険の保険料算定は所得控除前の所得で計算します。
そのため医療費控除や生命保険料控除などの「所得控除を漏れなく適用する」という方法では、国民健康保険の節税はできない点にご注意ください。
まとめ
国民健康保険は加入者が全額負担する・扶養の概念がないなどの理由から、社会保険料よりも負担が大きくなりやすいです。
しかし、減免制度の活用や世帯合併・分離などの方法により国民健康保険料を節税できるケースもあります。
また、所得税の節税対策として効果的な方法は、国民健康保険料の節税にもつながる可能性が高いです。
今回紹介した方法のうち、どの方法が効果的かは加入者の状況によって異なります。
自身に合わない方法を選んでしまうと、手間がかかるだけで節税効果は得られないという恐れがあります。
国民健康保険の節税効果を確実に得るためには専門家に相談するのが安心です。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士