クロス取引とは?節税対策としての活用方法とリスクを徹底解説

2024.10.14

クロス取引とは、1つの証券会社で同じ銘柄・数量の買い注文と売り注文を同時に出し、同じ価格で約定させる取引です。

活用方法によっては節税対策としても効果的な手法です。

 

ただし、クロス取引は禁止行為である不公正取引・仮装売買に該当する恐れがあり、リスクが高い方法でもあります。

 

この記事ではクロス取引について、節税対策としての活用法やリスクを中心に詳しく解説します。

 

株式投資の節税対策については以下の記事もご覧ください。

 

 

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CONTENTS

クロス取引の概要

はじめに、クロス取引の概要を解説します。

クロス取引とは

クロス取引とは、1つの証券会社で同じ銘柄・数量の買い注文と売り注文を同時に出し、同じ価格で約定させる取引です。

現物取引・信用取引に関係なく、同一銘柄の買い注文と売り注文を同時に行う取引はすべてクロス取引に該当します。中でも現物買い注文と信用売り注文を組み合わせるケースが多くみられます。

クロス取引のメリット

クロス取引の主なメリットは以下の3つです。

株価変動の影響を受けずに株主優待を取得できる

クロス取引の仕組みを活用すれば、株価変動の影響を受けずに株主優待を取得できます。

クロス取引により株価変動の影響を受けずに株主優待を取得するためのポイントは以下の2つです。

  • ・権利付最終売買日までに株式の現物買いと信用売りを同時に発注する
  • ・権利確定日を越えた後(権利落ち日以降)に信用取引の決済をする

 

買い注文は現物取引、売り注文は信用取引の理由は、権利確定日に現物株を保有していなければ株主優待を獲得できないためです。

現物買い注文、信用売り注文を組み合わせて権利確定日以降に信用取引の決済をすれば、株主優待の対象となります。

 

なお、信用売りの決済方法は以下の2種類があります。

  • ・反対売買
  • ・現渡し(現物株の返却によって信用売りした株を返却する方法)

クロス取引の場合は2つ目の現渡しによる決済が一般的です。

含み益と含み損が相殺される

買い注文と売り注文を同時に行なうことで、買いの含み益および売りの含み損の両方が発生します。

含み益と含み損が相殺されるため、リスクヘッジとしても効果的です。株価が上がっても下がっても、損失を最小限に抑える効果が期待できます。

節税効果を得られるやり方もある

クロス取引の活用方法によっては節税効果を得られる可能性もあります。そのため、節税目的でクロス取引を行う人も多いです。

節税対策としてのクロス取引の活用方法については次の章で詳しく解説します。

クロス取引を禁止・制限している金融機関も存在する

クロス取引は無条件に実施できるわけではなく、中にはクロス取引を禁止・制限している金融機関も存在します。

クロス取引のやり方によっては、禁止行為である不公正取引・仮装売買に該当する恐れがあるためです。

 

株式投資における仮装売買とは、ある特定の銘柄の売買が繁盛していると誤解させることを目的とした取引です。

同価格・同銘柄の買い注文と売り注文を同時に行い、取引数や売買高を膨らませる行為が該当します。

 

株主優待の獲得や節税を目的としたクロス取引は、仮装売買の意図がないとしても、やり方自体は仮装売買と共通しています。

仮装売買に該当する行為を防ぐため、クロス取引そのものを全面的に禁止している金融機関や、厳しい制限をかけている金融機関があるのです。

 

クロス取引に制約を設けている旨を明言している金融機関として、以下の例が挙げられます。

節税対策としてのクロス取引の活用方法

続いて、節税対策としてのクロス取引の活用方法を詳しく解説します。

なお、クロス取引による節税対策ができるのは個人のみです。
法人が節税目的で行うクロス取引は租税回避行為に該当するとして厳しく規制されています。

クロス取引による節税方法

クロス取引による節税方法は「株価が下がり損失が出ている銘柄を売却して損失を確定させた後に再び買い戻す」です。

損失が出ている銘柄の売り注文と買い注文を同時に行なうことで節税につながります。

 

以下のケースを例に紹介します。

  • ・当期、すでに株式Aの売却により株取引の利益30万円が確定している
  • ・取得価額100万円で現在も保有している株式Bが70万円に値下がりしている

この時点で確定しているのは、株式Aの売却による利益30万円のみです。

もし株式Bを売却すれば、100万円-70万円=30万円の損失が確定します。

株式Aの売却益と株式Bの売却損の合算により、株取引による所得は0になる仕組みです。

 

その後売却した株式Bを買い戻せば、保有している株式の状態は売却前と同じに戻ります。

しかし、株取引による所得は0として扱われるため所得税は課されません。

 

このようにクロス取引を上手く活用すれば、保有している株式の状態はそのままに、節税効果だけを得られます。

節税対策としてクロス取引をするリスク

クロス取引を上手く活用すれば、すでに確定している利益と売り注文によって発生する損失の相殺による節税が可能です。

しかし、節税対策としてクロス取引を実施するのには大きなリスクが2つあります。

不公正取引に該当する恐れがある

最も注意するべきなのが、クロス取引は不公正取引に該当する恐れがある点です。

不公正取引とは、市場の公正取引を阻害するような行為全般です。風説の流布や相場操縦、内部者取引などが該当します。

 

クロス取引は同一銘柄の株式について、同時期に同価格で売り注文と買い注文を行う行為と紹介しました。

この方法は、当該銘柄の売買が盛んに行われていると他者に誤解を生じさせる目的の「仮装売買」と共通しています。

実際には仮装売買の意図がなくても、やり方自体は仮装売買と同じであるため、不公正取引に該当するとみなされる恐れがあります。

想定していた売却損にならないケースがある

クロス取引による節税効果は、すでに確定している利益と、現在保有している株式の売却による損失の相殺によって得られると紹介しました。

その後同じ株式の買い注文を行えば、保有株式は売り注文を行う前の状態と同じになる仕組みです。

 

しかし、同じ特定口座で同一営業日にクロス取引を行うと、株式の取得が先に行われたものとみなされ、売却した株式の取得単価が平均化されてしまいます。

結果として、想定していた売却損にならないケースがあります。

確定していた利益と売却損の相殺により所得税を抑えるつもりが、思うような節税につながらない可能性が有り得るのです。

クロス取引によるリスクを避ける方法

クロス取引によるリスクを避ける方法を3つ紹介します。

売り注文と買い注文のタイミングをずらす

最も確実なのは、売り注文と買い注文のタイミングをずらす方法です。仮装売買とみなされる恐れがなくなります。

ただし、売り注文と買い注文を別々の日に行うため、厳密にはクロス取引ではなくなります。

取得価額の変動によっては想定していた節税効果を得られない可能性があるため注意が必要です。

立会外取引を利用する

立会外取引とは、証券取引所の通常の取引時間以外に行われる取引です。証券会社へ事前に申し込むことで実施できます。

取引時間外の注文であれば、特定の銘柄の売買が繁盛していると誤解させる目的の仮装売買とはみなされずに済みます。

 

ただし、立会外取引は手数料が高めです。節税効果以上に損失が発生する恐れもあるため注意する必要があります。

売り注文と買い注文を異なる特定口座で行う

取得価額の平均化を避けるための方法です。前項で紹介した「想定していた売却損にならないケースがある」を防げます。

 

取引に使う口座が異なるとはいえ、同一銘柄の株式について、同時期に同価格で売り注文と買い注文を行う行為に変わりはありません。

仮装売買とみなされるリスクが高いためおすすめはできません。

まとめ

クロス取引とは、同一銘柄の株式について同時期に同価格で売り注文と買い注文を行う行為です。

クロス取引を上手く実施すれば、株価の変動を受けずに株主優待を取得する、節税対策ができるなどの効果が期待できます。

 

ただし、クロス取引は仮装売買とみなされるリスクが高い行為です。

また、同一の特定口座で実施した場合は取得価額の平均化により、想定していた売却損にならない恐れもあります。

 

クロス取引を実施する際はリスクを避けるためのポイントを押さえることが大切です。

しかし、安全に実施しようとすると、期待していた効果を得られない可能性が高くなります。

クロス取引のメリットとリスク、安全策の実施において発生し得るコストなどを考慮した上で、クロス取引を行うかを検討しましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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