
太陽光発電によって発生する利益は、所得税や法人税の課税対象です。
太陽光発電はさまざまな経費がかかる上に税制優遇や控除制度も多く存在するため、上手く活用すれば節税できるケースがあります。
そして、太陽光発電によって一定以上の利益が発生した場合は確定申告が必要です。
太陽光発電によるメリットを最大化するためには、節税の仕組みと確定申告の注意点の両方を知っておく必要があるでしょう。
今回は太陽光発電における節税対策や、確定申告の注意点について詳しく解説します。
個人事業主や法人におすすめの節税方法については、以下の記事もご覧ください。
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太陽光発電の種類

前提として、太陽光発電は2種類のタイプが存在します。
種類によって仕組みや実施できる節税方法、優遇措置の内容が異なるため注意が必要です。
まずは太陽光発電の種類別に特徴を解説します。
自家消費型
自家消費型とは、得られた電力を自社(自家)で消費するタイプの太陽光発電です。
自宅や自社ビルの屋根に太陽光発電パネルを設置する方法は基本的に自家消費型に該当します。
余剰電力を売却する仕組みも存在しますが、発生した電力は自社・自家ですべて消費するケースが多いです。
収益の獲得よりも、電気代の節約や脱炭素化といった目的で導入するケースが多くみられます。
全量売電型
全量売電型とは、太陽光発電の設備によって得られた電力をすべて電力会社に売電する方法です。
全量売電型の場合、太陽光発電によって得た電力を自宅や自社では使いません。
全量売電型の太陽光発電は事業とみなされます。
そのため自家消費型に比べて税制優遇は少なく、節税方法や節税効果は限定的です。
太陽光発電によって発生する税金

太陽光発電によって発生し得る税金について詳しく解説します。
【法人の場合】法人税
法人税は法人の所得に対して課される税金です。
法人として太陽光発電を行い、売電により収益が発生した場合は法人税が課されます。
ただし法人全体としての利益が赤字の場合は法人税が発生しません。
法人税は申告納税方式のため確定申告が必要です。
法人税の申告および納付期限は原則として決算日の翌日から2ヶ月以内となります。
法人税の計算方法については以下の記事をご覧ください。
【個人の場合】所得税
所得税は個人の所得にかかる税金です。
太陽光発電による収益が発生しており、かつ、以下のいずれかに当てはまる場合は所得税が課されます。
- ・太陽光発電による売電所得が20万円を超えている
- ・太陽光発電による売電所得とその他の所得の合計が20万円を超えている
所得税も申告納税方式のため、納税者自身による確定申告が必要です。
所得税は、所得が一定額を超えるごとに高い税率が適用される超過累進課税という制度を採用しています。
所得税の仕組みについては以下の記事をご覧ください。
固定資産税
固定資産税は、土地・建物・償却資産等に課される税金(地方税)です。
太陽光発電において固定資産税がかかるケースとして以下の例が挙げられます。
- 1.太陽光発電の設備を設置するために土地を購入したケース
- 購入した土地に対して固定資産税が課されます
- 2.太陽光発電を10kW以上の産業用パネルを使用して事業として行うケース
- 3.10kW未満の住宅用パネルを使用しており屋根とパネルが一体化した物件であるケース
- 対象の物件が家屋として固定資産税の課税対象になる可能性が高いです
2のケースにおいて、産業用パネル部分にかかる税金は後述する償却資産税として扱われます。
ただし、太陽光パネルを設置している土地部分は通常の固定資産税の対象です。扱いが少し異なる点にご注意ください。
固定資産税と償却資産税の違いについては以下の記事をご覧ください。
太陽光発電を行うものの固定資産税は発生しないケースの例を紹介します。
- ・自宅の屋根に設置した架台に太陽光パネルを装着したケース
- ・自宅等の庭に10kW未満の太陽光パネルを設置したケース
太陽光発電の設備が固定資産税の対象になるか否かはケースによって異なるため、詳しくは税理士や自治体の担当者にご確認ください。
償却資産税
償却資産税とは、固定資産のうち土地と建物以外の事業用資産である償却資産にかかる税金です。
固定資産税の一種であり、固定資産のうち償却資産にかかる税金を限定的に償却資産税と呼んでいます。
事業用の太陽光発電設備は償却資産に該当し、償却資産税の課税対象になります。
毎年1月31日までに、その年の1月1日時点で保有している償却資産について自治体に申告が必要です。
償却資産税の納付は後日自治体から届く納付書を用いて行います。
太陽光発電で節税できる仕組み

太陽光発電で節税できる仕組みを4つ紹介します。
減価償却費を計上できる
太陽光発電の設備は減価償却の対象であるため、減価償却費の計上が可能です。
太陽光発電設備の法定耐用年数は17年であり、設備の購入費は高額のため、長期間にわたって高額の減価償却費を計上できます。
高額の経費を計上できる分、大きな節税効果が期待できます。
関連する設備費や支出を経費計上できる
減価償却費以外にも、太陽光発電に関連する設備費や支出の経費計上が可能です。
経費計上できる支出の具体例を紹介します。
- ・太陽光発電設備の購入に際して契約したローンの利息部分
- ・設備のメンテナンスにかかった費用
- ・パワーコンディショナーの電気代
税制優遇や控除制度の適用を受けられる
太陽光発電設備の取得では、以下の税制優遇や控除制度の適用を受けられる可能性があります。
- 1.中小企業経営強化税制
- 青色申告の中小企業者が一定の要件を満たす資産を取得した場合に、特別償却または税額控除を受けられる制度です。
- 詳しくは以下の記事をご覧ください。
- 2.中小企業投資促進税制
- 要件を満たす新品の資産を取得して指定事業の用に供した場合に、当該固定資産の特別償却または税額控除を受けられる制度です。
- 以下の記事で詳しく解説しています。
- 3.カーボンニュートラルに向けた投資促進税制
- 一定の要件を満たす生産工程効率化等設備等の取得・製作・建設をした場合に特別償却または税額控除の適用を受けられる制度です。
- 適用要件が細かく定められているため、詳細は国税庁の公式サイトをご確認ください。
ただし、全量売電型で適用を受けられるのは2の「中小企業投資促進税制」のみです。
全量売電型と自家消費型で適用対象となり得る制度が異なる点に注意する必要があります。
【全量売電型のみ】消費税の還付を受けられる
全量売電型では、設備を購入し太陽光発電事業を開始した年度に消費税の還付を受けられる可能性が高いです。
多くの場合、太陽光設備の取得費が売電収入にかかる消費税を上回ります。
売上に係る消費税額から仕入れに係る消費税額を引いた額がマイナスになり、消費税の還付が発生するという仕組みです。
ただし、消費税の還付を受けられるのは原則課税の事業者のみです。
免税事業者および簡易課税の適用事業者は消費税の還付を受けられない点に注意する必要があります。
太陽光発電 確定申告の注意点

最後に、太陽光発電によって発生した所得の確定申告を行う際の注意点を2つ紹介します。
※今回は個人の所得税申告について取り上げています。
所得区分の正確な判断が必要
確定申告を正しく行うためには所得区分の正確な判断が必要です。
所得は発生要因や性質に応じて10種類に区分されています。
太陽光発電によって発生する所得は以下のいずれかに該当するのが一般的です。
- 事業所得
- 事業によって発生する所得が該当します。
- 一般的に、反復継続性や営利性の有無、事業として客観的に成立しているか等の基準から事業所得か否かを判断します。
- 雑所得
- その他の所得区分に該当しない所得はすべて雑所得となります。
- 副業による所得は雑所得に該当するケースが多いです。
事業所得と雑所得では所得の計算方法が異なるため、所得区分の判断を誤ると確定申告の内容も誤りとなってしまいます。
すべての支出を経費計上できるわけではない
「太陽光発電で節税できる仕組み」で、太陽光発電に関連する設備費や支出の経費計上が可能と紹介しました。
しかし、厳密にはすべての支出を費用として計上できるわけではありません。
太陽光発電に関連するものでも、以下のような支出は経費計上ができないためご注意ください。
- スーツやメガネ、腕時計などの服飾費
- 事業のために購入したものであっても経費計上は認められません。
- ただしメンテナンスの際に着用する作業着は経費として計上できる可能性が高いです。
- 一定額を超える修繕費
- 支出した年に全額を経費計上するのではなく、まずは固定資産として計上し、減価償却費を行う必要があります。
- 領収書等の資料が残っていない支出
- 証憑が残っていない支出は原則として内容に関係なく経費計上ができません。
まとめ
太陽光発電は自家消費型と全量売電型の2種類に分けられます。
該当するタイプによって収益の有無や発生する税金、実施できる節税対策等が異なります。
太陽光発電の効果的な節税を行うためには、節税テクニックだけでなく、太陽光発電そのものや税金についての深い理解が必要です。
太陽光発電に関する税務的なルールは複雑な部分が多く、専門知識のない人が正しく対応するのは容易ではありません。
適切な節税対策や正しい確定申告を行うため、少しでも疑問や不安があれば税理士に相談するのが安心です。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士