死後でも間に合う相続税対策とは?節税ポイントと注意点を解説!

2024.10.15

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「相続税の節税対策」と聞くと、生前贈与や養子縁組のように生前に行う方法を思い浮かべる人が多いかもしれません。

しかし実は、本人の死後に実施できる相続税対策も多く存在します。

死後に行える節税対策について知っておけば、相続税の負担を最小限に抑えられるでしょう。

ただし、節税効果を得るためには、節税方法そのものだけでなく注意点も知っておく必要があります。

 

今回は、死後にできる相続税対策と注意点について詳しく解説します。

 

生前に実施できる相続税の節税対策については以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

死後に実施できる相続税の節税対策

死後に実施できる相続税の節税対策方法を5つ紹介します。

控除制度を漏れなく適用する

控除制度の活用は税負担を最小限に抑えるために欠かせない要素です。

特に相続税の控除制度は控除額が非常に大きいため、適用対象となる制度の有無を漏れなく確認する必要があります。

 

相続税の控除制度の例を5つ紹介します。

 

  • 配偶者の税額軽減
  • 被相続人(亡くなった人)の配偶者は、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか大きい方の金額まで非課税となる制度です。
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  • 未成年者控除
  • 相続人が未成年の場合に、相続税の額から一定額を控除できます。
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  • 相次相続控除
  • 相続発生から10年以内に二次相続が発生し、一定の要件を満たす場合に適用を受けられる制度です。
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  • 贈与税額控除
  • 生前贈与等で納めた贈与税がある場合に、当該贈与税の額を相続税額から控除できます。
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  • 小規模宅地等の特例
  • 相続によって取得した宅地等が一定の要件を満たす場合に、相続税の計算に用いる評価額を減額できる制度です。
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適用対象となる控除制度があっても、自動で適用されるわけではありません。

控除の適用を受けるためには相続税の申告時に一定の手続きを行う必要があります。

葬式費用や債務を遺産総額から差し引く

葬式費用や被相続人の債務は、相続財産から控除可能です。

つまり相続税の額を抑えるためには、葬式費用や債務を忘れずに差し引く必要があるといえます。

 

特に見落としがちなのが葬式費用です。

以下のような費用は相続財産から控除できます。

  • ・遺体や遺骨の搬送費用
  • ・火葬、埋葬、納骨等のためにかかった費用
  • ・お通夜にかかった費用など、葬式の前後に発生した通常葬式にかかせない費用
  • ・葬儀の飲食代(料理代)
  • ・読経や戒名にかかった費用、お布施
  • ・葬儀場までの交通費
  • ・運転手への心付け
  • ・お通夜や葬式の手伝いをしてくれた人に渡すお礼
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一方、以下のようなお金は控除できないためご注意ください。

  • ・香典返しにかかった費用
  • ・墓地や墓石の購入費
  • ・墓地の借入にかかった費用
  • ・初七日や四十九日などの法要にかかった費用

土地の評価を見直す

相続税の払い過ぎを防ぐためには適切な財産評価を行う必要があります。

特に重点的な見直しをするべき財産のひとつが土地です。

相続財産の中でも土地は評価が難しく、以下のように様々な要素によって評価額が変わる可能性があります。

  • ・土地が四角形ではない
  • ・土地の面積が一定以上の広さである
  • ・土地が道路に面していない、接している道路に路線価がついていない
  • ・前面道路の長さが一定未満である
  • ・ハザードマップで危険地域に指定されている土地である
  • ・その他有効活用しにくいと判断される理由を持つ

 

本来の評価額よりも高い額で計算・申告をしても、税金の払いすぎに関する指摘は受けられません。

相続税額を最小限に抑えるため、土地の評価には注意しましょう。

 

なお、土地の評価は複雑で難易度も高いため、専門知識のない人が行うのは容易ではありません。

土地の適切な評価のためには、相続税や不動産の評価に強みを持つ専門家に依頼するのが安心です。

土地を分筆して評価額を下げる

相続税の節税において、土地の分筆は有効な手段となります。一つの大きな土地を複数の小さな土地に分筆することで、それぞれの土地に対して評価減の特例や補正が適用できる可能性が高まります。

特に、分筆によって不整形地や間口が狭い土地になる場合、形状による補正が適用され評価額が下がることがあります。また、分筆した土地ごとに異なる用途(居住用・事業用など)を設定することで、小規模宅地等の特例を最大限に活用することも可能です。

 

ただし、分筆には登記費用がかかるため、節税効果と費用のバランスを考慮する必要があります。相続税申告期限までに分筆登記を完了させることが重要ですので、早めの対応が望ましいでしょう。

死亡保険金・死亡退職金の非課税枠を活用する

死亡保険金や死亡退職金は被相続人名義の財産ではありませんが、みなし財産として相続財産に含める必要があります。

しかし、死亡保険金や死亡退職金には非課税枠が設けられています。

死亡保険金や死亡退職金の非課税枠を適切に活用すれば相続財産の計算に含める計算を減らせるため、相続税の節税が可能です。

 

死亡保険金や死亡退職金の非課税枠は以下の通りです。

  • 死亡保険金・死亡退職金の非課税枠=500万円×法定相続人の数

 

注意点として以下の3つが挙げられます。

  • ・非課税枠を利用できるのは、死亡保険金や死亡退職金の受取人が法定相続人の場合のみ
  • ・養子縁組をした場合に計算に含められる法定相続人の数には上限がある
  • ・すべての死亡保険金や死亡退職金が非課税枠の対象になるとは限らないため契約の確認が必須

相続財産を寄付する

相続税には寄付金控除の制度が設けられています。

相続財産を寄付した場合、寄付した財産は相続税が課されません。寄付によって課税対象となる相続財産を減らすのも、相続税の額を減らす方法として効果的です。

相続税の寄付金控除の適用を受けるには以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • ・対象の財産を相続税の申告期限までに寄付する
  • ・寄付した先が国、地方公共団体、その他特定の公益法人である
  • ・相続税の申告書に寄付金控除を受けるために必要な一定の書類を添付する

配偶者居住権を活用する

配偶者居住権は2020年4月から施行された制度で、被相続人の配偶者が自宅に住み続ける権利を保障しながら相続税の負担を軽減できる仕組みです。配偶者居住権を設定すると、居住用不動産の評価額が「建物の所有権」と「土地・建物の居住権」に分けられ、全体の評価額が下がる効果があります。

特に配偶者の年齢が高い場合、配偶者居住権の評価額は低くなるため、節税効果が高まります。また、配偶者以外の相続人(子ども等)に所有権を移しつつ、配偶者の居住を保障できるため、二次相続も見据えた対策として有効です。

ただし、設定には相続人全員の合意が必要であり、配偶者居住権の存続期間や利用条件などを明確にしておくことが大切でしょう。

配偶者の税額軽減を最大限に活用する

配偶者の税額軽減は、死後の相続税対策として非常に効果的な方法です。この制度では、配偶者が相続した財産のうち、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか大きい方の金額まで相続税が非課税となります。

 

この特例を利用するためには、法律上の配偶者であること、遺産分割が決定していること、そして相続税の申告期限(被相続人死亡日の翌日から10カ月以内)に申告することが必要です。ただし、子どもがいる場合は二次相続時の税負担が増える可能性があるため、一次相続だけでなく二次相続も見据えた計画が重要です。

配偶者控除と小規模宅地等の特例を併用することで、さらに大きな節税効果が期待できるでしょう。

死後に相続税対策を行う際のポイント・注意点

死後に相続税対策を行う際のポイント・注意点を3つ紹介します。

相続開始前7年以内の贈与は相続税の対象になる可能性がある

相続開始前7年以内に行われた贈与は相続税の対象になる可能性があります。

 

相続税には「相続開始前7年以内に被相続人からの贈与によって取得した財産がある場合、当該財産の価額を相続財産に加算する」というルールがあります。

かつては相続開始前3年以内の分が加算対象でしたが、令和5年度税制改正により7年分に延長されました。

対象の生前贈与によって取得した財産を相続税の計算に含めなければ、追徴課税の対象になる恐れがあるため注意が必要です。

 

ただし、令和5年度税制改正によって延長された4年間の分については、総額100万円までは加算対象外となります。

 

詳しくは国税庁による「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」をご確認ください。

特例や控除制度は相続税申告が必要なケースが多い

死後に実施できる相続税の節税対策の1つとして「控除制度を漏れなく適用する」を紹介しました。

相続税の特例や控除制度は控除額が大きいものが多く、制度の活用によって相続税がゼロになるケースも多くみられます。

 

しかし、ほとんどの特例や控除制度は、制度を適用するために相続税申告が必要です。

仮に控除制度の適用によって相続税がゼロになる場合でも、相続税の申告をしなければ制度の適用をしていないものと扱われます。

つまり「相続税の納付義務があるにも関わらず申告・納付を怠った」ものとみなされてしまうのです。

相続税申告をしていれば避けられた納税が発生してしまうだけでなく、期限を過ぎたことによるペナルティも課されてしまいます。

 

特例や控除制度の適用を受ける場合は申告の必要性を確認し、申告要件がある場合は期限までに必ず申告書を提出しましょう。

専門家である税理士のサポートを受けるのが安心

相続税の節税対策は死後に実施できる方法も多く存在します。

しかし、いずれの方法も相続税に関する高度な知識が求められます。

たとえば土地評価の見直しは専門知識が必要不可欠であり、各種制度を活用するには適用対象であるかの正確な判断が必要です。

 

専門知識のない人が無理に節税対策や相続税の計算・申告を行うと、ミスや漏れが起こるリスクが高くなります。

税額を抑えられるどころか、誤りにより必要以上の税額を納めてしまう恐れや、過少申告によりペナルティを課される恐れがあります。

 

相続税の節税対策は、当事者のみですべて対応しようとせず、専門家である税理士のサポートを受けるのが安心です。

相続税申告の専門家に相談するタイミング

相続税の申告は複雑で専門的な知識が必要なため、早い段階で税理士などの専門家に相談することが重要です。理想的には被相続人の死亡後1〜2カ月以内に相談を始め、申告期限(10カ月以内)に余裕をもって準備を進めることをお勧めします。

 

専門家に相談する際は、被相続人の財産に関する資料(預金通帳、不動産の権利証、株式や保険の証書など)をできるだけ集めておくと、より具体的なアドバイスを受けられます。また、相続人全員で話し合いを行い、遺産分割の方向性を決めておくことも大切です。

 

専門家は単に申告書を作成するだけでなく、各種特例や控除の適用可能性を検討し、最適な節税プランを提案してくれます。相続税の申告は一度きりのため、後悔しないよう専門家の知見を活用しましょう。

まとめ

相続税の節税対策には、被相続人が亡くなった後に実施できる方法も多く存在します。

今回死後に実施できる節税対策を5つ紹介しましたが、それぞれ実施できる条件や具体的な方法が全く異なります。

自身のケースに適した節税方法を選ぶことが大切です。

 

相続税の節税対策には様々な注意点も存在します。

注意点を押さえずに節税対策を進めてしまうとミスや漏れ等のトラブルが発生し、かえって税負担が重くなる恐れもあります。

 

相続税の節税対策を適切に行うため、専門家である税理士へご相談ください。

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相続税には寄付金控除の制度が設けられています。

相続財産を寄付した場合、寄付した財産は相続税が課されません。寄付によって課税対象となる相続財産を減らすのも、相続税の額を減らす方法として効果的です。

 

相続税の寄付金控除の適用を受けるには以下の要件をすべて満たす必要があります。

  • ・対象の財産を相続税の申告期限までに寄付する
  • ・寄付した先が国、地方公共団体、その他特定の公益法人である
  • ・相続税の申告書に寄付金控除を受けるために必要な一定の書類を添付する
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吉岡 伸晃

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