出張旅費規程を活用した節税対策とは?企業が押さえるべきポイントを解説

2024.10.16

出張旅費規程は、出張にかかる経費に関するルールを定めたものです。

出張旅費規程の作成は必須ではありません。しかし出張旅費規程を定めることで、交通費や宿泊費とは別に日当を支給できるようになります。

日当は損金計上が可能です。つまり、出張旅費規程の作成により損金計上できる額が増えるため、法人税の節税につながります。

出張旅費規程を上手く活用するためには、規程の作成および運用におけるポイントを押さえることも大切です。

 

今回は出張旅費規程を活用した節税対策や、企業が押さえるべきポイントについて詳しく解説します。

 

法人におすすめできるその他の節税テクニックについては以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

出張旅費規程が節税につながる理由

出張旅費規程とは、出張にかかる経費に関するルールを定めたものです。

出張旅費規程の作成は義務付けられておらず、出張旅費規程に関するルールや法律も特にありません。

そのため内容は会社によって異なり、またそもそも出張旅費規程が存在しない会社も多く存在します。

 

そんな出張旅費規程ですが、作成によって法人税の節税効果を得られる可能性があります。

節税につながる理由は、交通費や宿泊費とは別に日当を支給できるようになるためです。

 

出張旅費規程における日当とは、出張にかかる飲食費や雑費など各種支出の補てんや、出張の慰労を目的に支給する手当を意味します。

日当は法人の損金として計上可能です。計上できる損金が増えるため節税につながります。

出張旅費規程を作成する節税以外のメリット

出張旅費規程の作成には節税以外にもメリットがあります。メリットを3つ紹介します。

経費精算の手間を削減できる

出張旅費規程は、出張に関する経費精算の手間の削減に効果的です。

 

出張旅費規程を作成しない場合、出張経費は原則として実費精算となります。

出張の人数や回数が多い会社では、出張の経費精算だけでもかなりの作業量が発生してしまいます。

経費精算を行う経理や総務だけでなく、申請者である出張に行った従業員や役員にとっての負担も大きいです。

 

出張旅費規程を作成すれば、出張関連の経費を実費精算ではなく固定額を支給すると定めることも可能です。

出張先までの距離に応じて交通費を定めるケースや、政令指定都市か否かで宿泊費を定めるケース等がみられます。

出張に行く従業員や役員は、定められた固定額の範囲内に交通費や宿泊費が収まるよう個々に調整するイメージです。

 

固定額を支給する旨を定めれば、出張先や日数等の情報だけで簡単に経費精算ができるようになります。

従業員の手取りを増やせる

出張旅費規程を作成し日当を支給するようになれば、従業員の手取りを増やせます

 

日当は出張に際して必ず支給するものです。

出張に行く従業員や役員側にとっては、給与とは別で特別な手当が支給されたというイメージになります。

しかし日当は一般的な手当と違い、所得税や社会保険料の計算対象にはなりません。

出張の日当は給与には該当しないため、所得に対して課される税金の計算対象には含まれないのです。

 

出張旅費規程を作成して日当を支給すれば、税負担なく純粋に手取りだけを増やせます。

出張に関する明確なルールができるため管理しやすくなる

出張旅費規程は出張に関する経費のルールをまとめたものです。

出張に関する明確なルールができるため、出張旅費等の管理がしやすくなります

経費の管理がしやすくなれば、以下のようなトラブルのリスクを抑えられます。

  • ・出張旅費の精算について従業員から度々質問を受ける
  • ・出張に行く従業員に対して出張旅費について都度説明する必要性が生じる
  • ・従業員が出張旅費について正しく理解しておらず、誤った申請をする
  • ・必要以上に高額な交通費や宿泊費をかけてしまう
  • ・出張に関する経費についての誤解やわかりにくさが原因で従業員に不満が溜まる
  •  

出張旅費規程を作成すれば、トラブルのリスクを抑えられ、出張旅費の申請や精算が進みやすくなるでしょう。

出張関連の管理がしやすくなるため、業務効率化が期待できます。

出張旅費規程を作成する際のポイント

出張旅費規程を作成する際のポイントを3つ紹介します。

記載するべき内容を漏れなく盛り込む

出張旅費規程として適切な運用ができるよう、記載するべき内容を漏れなく盛り込むことが大切です。

内容に不備や不足があればルールとして正しく機能せず、かえってトラブルの原因になる恐れがあります。

 

記載するべき事項を6つ紹介します。

出張旅費規程の目的

当該規程がどのような目的で、どのような内容について定められたものであるかを記載する項目です。

文面の例を紹介します。

  • ・「この規程は、〇〇社の役員および従業員が、社命により出張する場合に支給する旅費に関して定めるものである」
  • ・「この規定は、就業規則第〇〇条に基づき定めるものである」
  •  就業規則に出張旅費や各種規程についての条文があれば、当該条文に基づく旨を記載しても良いでしょう。

規程の適用範囲

出張旅費規程の適用範囲は原則として全員です。全社員に対して適用される旨を明記しましょう。

出張の定義

どこまでが「外出」、どこからが「出張」であるか等、用語の定義も記載する必要があります。

「勤務地を起点に半径〇km以上」といった形式で記載するのが一般的です。

出張や出張旅費の申請および手続き方法

出張の申請方法や手続きのフロー、出張経費の精算手続きの期日等を決める必要があります。

申請や手続きについて定めなければ、出張経費の精算がかえって煩雑になってしまう恐れがあるため注意しましょう。

出張旅費の種類および金額

交通費、宿泊費、日当等が該当します。

 

交通費は「鉄道」「航空機」「船舶」「バス」「タクシー」のように項目別に作成することが大切です。

指定席の使用可否や航空機利用の条件、例外規定などを作成します。

 

宿泊費は上限を定めるのが一般的です。役員・管理職・一般社員のように、役職に応じて上限額を定めるケースが多くみられます。

緊急時の対応

出張先で交通事故や災害に遭った場合、海外で病気や通信障害等のトラブルが起きた場合など、緊急時の対応についても記載する必要があります。

社会通念上認められる適正な金額にする

出張旅費規程を定めれば、日当の支給や出張旅費の定額支給が可能と紹介しました。

しかし、規程に定めた内容であれば金額がいくらでも良いというわけではありません。

高すぎる日当や固定額の支給は損金算入が否認されてしまう恐れがあります。
日当や各種上限額は、社会通念上認められる適正な金額に設定しましょう。

 

日当や支給額の上限を決める際は、アンケートや集計資料等を用いるのが便利です。

たとえば産労総合研究所の「国内・海外出張旅費に関する調査」では、日当や宿泊料等のさまざまな平均値を確認できます。

出張旅費規程の存在・内容を社内全体に周知する

出張旅費規程を適切に運用できる状態にするためには、出張旅費規程の存在および内容を社内全体に周知する必要があります。

出張旅費規程が知られていなければ、運用できていないのと同じといえるでしょう。

 

たとえば役員や管理職のみに規程の存在を知らせており、一般社員には伝わっていない場合、一部の社員のみを対象とした規程とみなされます。

このような場合、役員や管理職等に支給した日当は損金算入が認められなくなる恐れがあります。

 

単に出張旅費規程を作成すれば良いわけではなく、全社員に周知して適切に運用できる状態にすることが大切です。

まとめ

出張旅費規程とは出張旅費に関するルールを定めたものです。

出張旅費規程を定めることで、出張に行った従業員や役員に対して日当の支給が可能になります。

日当は損金算入が可能なため法人税等の節税に効果的です。

また、支給される側は税負担なく手取りを増やせる、出張経費の精算の手間を軽減できる等のメリットもあります。

 

ただし、ただ出張旅費規程を作成すれば良いわけではありません。

記載するべき項目を漏れなく盛り込み、日当や各種上限額は社会通念上認められる適正な金額にする必要があります。

また、出張旅費規程の存在や内容を社内に周知することも大切です。

 

出張旅費規程を上手く活用し、節税をはじめとした様々なメリットを得ましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
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