
立ち退き料とは貸主都合で立ち退きを求める際に支払う金銭です。
立ち退き料を受け取った借主側は、立ち退き料に対して何らかの税金が課せられます。
立ち退き料にかかる税金の種類は賃借人の形態や、立ち退き料の支払者が誰であるかによって異なります。
立ち退き料はまとまった金額で支払われることが多いため、立ち退き料にかかる税金も高額になりやすいです。
税負担をなるべく抑えるため、立ち退き料にかかる税金の節税対策を行うべきでしょう。
今回は立ち退き料にかかる税金について詳しく解説します。
不動産の貸主側の節税対策については以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
立ち退き料にかかる税金とは

立ち退き料とは貸主都合で立ち退きを求める際に借主に対して支払う金銭です。
立ち退き料には税金がかかりますが、発生する税金の種類は賃借人の形態や、誰から立ち退き料を受け取るかによって異なります。
この章では立ち退き料にかかる税金の種類について詳しく解説します。
所得税
立ち退き料を受け取るのが個人の場合は所得税が発生します。
所得区分は全部で10種類あり、そのうち立ち退き料が該当し得る所得区分は以下の3種類です。
- ・譲渡所得
- ・事業所得
- ・一時所得
それぞれに該当するケースの条件や具体例、所得の計算方法を解説します。
譲渡所得
- 譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
事業所得
立ち退き料が事業の休業による補てんとして充てられる場合は事業所得とみなされます。
主な例として、立ち退きの対象になった物件を店舗や事務所として用いていたケースが挙げられます。
事業所得の計算方法は以下の通りです。
- 事業所得=事業による総収入額-必要経費
一時所得
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外で、労務や役務の対価・資産の譲渡の対価といった性質をもたない所得です。
立ち退き料が譲渡所得と事業所得のどちらにも該当しない場合は一時所得として扱います。
引っ越し費用や家賃の差額、慰謝料・迷惑料などはすべて一時所得に該当します。
一時所得の計算方法は以下の通りです。
- 一時所得=総収入金額 -収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)
一時所得については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらもご覧ください。
法人税
立ち退き料を受け取るのが法人の場合は法人税が発生します。
法人税とは法人の所得に対して課せられる税金です。
個人の所得と違い、法人には所得区分がありません。所得の発生理由に関係なくすべて合算して税額を計算します。
法人税の税率は以下の通りです。
- 年800万円以下の部分:15%(適用除外事業者の場合は19%)
- 年800万円超の部分:23.2%
- ※資本金1億円以下の法人などの場合
なお、会計上の収入・費用と税務上の益金・損金は一部に相違があります。
法人税の計算に用いるのは、会計上の収入・費用から計算できる利益ではなく、税務上の益金・損金から計算する所得です。
収入と益金の違いや法人税申告書の作成方法については以下の記事をご覧ください。
消費税
立ち退き料を賃貸人ではない第三者から受け取る場合は消費税が発生します。
立ち退き料で消費税が発生するケースの代表例が、もとの賃借人が当該物件を転貸している場合です。
大家Aと賃借人Bが物件Xの賃貸借契約を結んでおり、賃借人Bが物件XをCに転貸している場合を例にします。
物件Xの立ち退きが必要な場合、大家Aから賃借人Bに立ち退き要請が行われますが、実際にはCに物件を明け渡してもらう必要があります。
しかし、大家Aと物件に居住しているCは直接の契約を結んでいません。
そのため立ち退き料はCと転貸借契約を結んでいるBから支払われます。
このように大家ではない別の人間が立ち退き料を支払う場合、立ち退き料は消費税の課税対象になる可能性があります。
なお、消費税の課税対象になるのは以下2つの要件を満たす場合です。
- ・日本国内の取引である
- ・事業者が対価を得て行う資産の譲渡や貸付、サービスの提供である
これらの要件を満たさない場合は、第三者によって支払われた立ち退き料でも消費税は課税されません。
立ち退き料が消費税の対象になるか否かの判断は難しいため、専門家に確認するのが安心です。
立ち退き料にかかる税金の節税方法と注意点

立ち退き料にかかる税金の節税方法と、節税対策を行う上での注意点を解説します。
【所得税】特例制度を活用する
立ち退きの理由によっては、所得税の特例制度の適用対象になる可能性があります。
前提として、立ち退き料は貸主都合で立ち退きを求める際に支払う金銭と紹介しました。
しかし厳密には、賃貸物件だけでなく持ち家でも立ち退きが発生するケースがあります。
例として、国や自治体による事業計画推進のために、対象地域内の物件所有者に立ち退きを要請するケースが挙げられます。この場合に立ち退き料を支払うのは国や自治体です。
立ち退き対象となる物件が持ち家であり、一定の要件を満たす場合には所得税の特例制度を活用できるケースがあります。
適用対象になる可能性のある特例制度について解説します。
公共事業に伴う立ち退きの場合
公共事業に伴う立ち退きで以下の要件をすべて満たす場合、最高5,000万円の特別控除の適用が可能です。
- ・売却した土地建物が固定資産である
- ・対象の資産について、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例の適用を受けていない
- ・最初に買取り等の申出があった日から6ヵ月を経過した日までに売却している
- ・公共事業の施行者から最初に買取り等の申し出を受けた者が譲渡している
居住用財産を売った場合
居住用財産(マイホーム)を売却した場合、最高3,000万円の特別控除が可能です。
ただし売却した物件について別の特例の適用を受けている場合は、居住用財産を売ったときの控除は対象外となるためご注意ください。
土地区画整理事業などのために土地を売却した場合
公益団体等が施行する特定土地区画整理事業などのために土地を売却した場合、最高2,000万円の特別控除を受けられます。
特定住宅造成事業などのために土地を売却した場合
特定住宅造成事業などのために土地を売却した場合、最高1,500万円の特別控除の適用が可能です。
租税特別措置法 第34条の2の要件を満たす場合に適用を受けられます。
農地保有の合理化のために土地を売った場合
農地保有の合理化を目的に認定農業者に土地を売却する場合、最高800万円の控除を受けられます。
経費を漏れなく計上する
立ち退きのために発生した費用は経費計上が可能です。
経費を漏れなく計上することで課税所得が少なくなり、所得税や法人税の節税につながります。
計上できる経費として以下の例が挙げられます。
- ・引っ越し業者に支払う費用
- ・引っ越しに伴う仮住まい費用
- ・新居の仲介手数料、敷金、礼金、火災保険料等
- ・旧住居と新住居の家賃の差額
- ・ネット回線や電話の移転費用
ただし、立ち退きに関連する支出のすべてを経費計上できるとは限りません。
発生事由が立ち退きであると明確なものや、領収書などの証憑書類を提示できる支出に限ります。
まとめ
立ち退き料は所得とみなされるため、所得税や法人税の課税対象になります。
立ち退き料がどの所得区分に該当するかはケースによって異なります。
所得税を正しく計算するためには所得区分について正確な判断が必要です。
また、立ち退き料が大家ではなく第三者から支払われる場合は消費税の課税対象になるケースもあるためご注意ください。
立ち退き料にかかる税金を抑えるためには、課税所得をなるべく減らすことが大切です。
具体的な方法として、適用対象となる特例の活用や経費を漏れなく計上することが挙げられます。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士