養子縁組は相続税対策に有効?メリットと注意点について解説!

2025.03.18

相続税の計算上、養子は実子と同じように扱われます。

養子縁組によって法定相続人が増えれば基礎控除額が増えるため、養子縁組は相続税対策として人気の高いテクニックの1つです。

 

ただし、養子縁組による節税対策には注意点も多く、必ずしも良い効果だけを得られるとは限りません。

養子縁組のメリットだけでなく注意点も把握した上で、実施するかの検討が必要です。

 

今回は相続税対策としての養子縁組について詳しく解説します。

 

その他の相続税対策については以下の記事をご覧ください。

 

 

 

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CONTENTS

養子縁組は相続税の節税対策になる

養子縁組とは、血縁関係のない他人同士で親子関係を成立させる法律行為を意味します。

養子縁組による養子は実子と同じように扱われます。

 

養子縁組が相続税対策になるのは、養子縁組によって法定相続人が増え、基礎控除額が増えるためです。

この章では相続税の基礎控除の仕組みや、養子縁組が相続に与える影響について解説します。

相続税の基礎控除の仕組み

相続税は、課税価格の合計額から基礎控除を差し引いた課税遺産総額に対して課せられます

相続税の基礎控除の計算方法は以下の通りです。

  • 基礎控除額=3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

 

課税遺産総額が基礎控除額以下であれば課税対象が存在しないため、相続税は発生しません。

また、税務申告も不要となります。

法定相続人とは

法定相続人とは民法で定められた、被相続人の財産を相続する権利を有する人です。

被相続人の配偶者および以下のうち最も順位の高い者が法定相続人となります。

  • 第一順位:子または孫(直系卑属)
  • 第二順位:親または祖父母(直系尊属)
  • 第三順位:兄弟姉妹または甥姪

 

たとえば亡くなった人に存命の子供がおらず配偶者と親が存命の場合は、配偶者と親が法定相続人となります。

一方で亡くなった人に配偶者、存命の子供、存命の親がいる場合、法定相続人となるのは配偶者と子供のみです。

 

また、法定相続人を数える際は以下の2点に注意する必要があります。

  • ・内縁関係の者は対象外
  • ・相続放棄をした者ははじめから相続人でなかったとみなされる

 

被相続人に配偶者がいない場合、最も順位の高い法定相続人で原則として均等に分けます。

配偶者とその他の法定相続人がいる場合の法定相続分は以下の通りです。

  • ・配偶者と直系卑属の場合:配偶者2分の1、子供等の直系卑属全員で2分の1
  • ・配偶者と直系尊属の場合:配偶者3分の2、親等の直系尊属全員で3分の1
  • ・配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者4分の3、兄弟姉妹全員で4分の1

養子は実子と同じ扱いになる

相続税の計算において養子は実子と同じように扱われるため、養子縁組をした場合は第一順位である子供が増えたものとみなされます。

養子縁組をすれば基礎控除額の計算に含められる法定相続人の数が増えます。

すなわち課税価格の合計額から差し引ける基礎控除額が増えるため、養子縁組は相続対策に効果的といわれるのです。

 

養子にできる人に特別な条件はありませんが、孫、子供の配偶者、自身の配偶者の連れ子などを養子にするケースが多くみられます。

養子縁組の種類

養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組の2種類があります。

 

普通養子縁組は養親・養子の同意によって成立する養子縁組です。

(未成年者を養子にする場合は家庭裁判所の許可が必要)

普通養子縁組の特徴として、養子縁組の成立後に実親との親族関係も継続する点が挙げられます。

養子となった子供は、養親と実親の両方の法定相続人になります。

 

特別養子縁組は実親との親子関係を断ち切る養子縁組です。

特別養子縁組には原則として実父母の同意が必要であり、最終的には家庭裁判所の許可を得る必要があります。

子供と実親との法的な親子関係は消滅するため、子供は養親に対する相続権のみを有することになります。

養子縁組を行うメリット

相続対策としての養子縁組には、基礎控除が増えること以外にもメリットがあります。

死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が増える

養子縁組の大きなメリットの1つが、死亡保険金や死亡退職金の非課税枠が増えることです。

死亡保険金・死亡退職金は被相続人名義の財産ではありませんが、みなし相続財産として計算に含める必要があります。

そしてみなし相続財産には、以下のような非課税枠が存在します。

  • みなし相続財産の非課税枠=500万円×法定相続人の数

 

死亡保険金や死亡退職金が非課税枠以下であれば、相続税の計算に含める必要がありません。

養子縁組によってみなし相続財産の非課税枠が増えるため、相続税の節税が可能です。

本来相続権がない人を相続人にできる

養子縁組をすれば実子の配偶者や代襲相続の発生していない孫など、本来相続権をもたない人を相続人にできます。

このように養子縁組は、被相続人の希望に沿った相続を実現する方法としても効果的です。

節税対策で養子縁組を行う際の注意点

相続税の節税対策を目的に養子縁組を行う際の注意点を3つ紹介します。

法定相続人に含められる養子の数には限りがある

普通養子縁組の場合、法定相続人に含められる養子の数に限りがあります

被相続人に実子がいる場合は養子1人、実子がいない場合は養子2人までです。

養子縁組により際限なく基礎控除額を増やせるわけではない点に注意する必要があります。

 

なお以下のいずれかに該当する場合は実の子供扱い(みなし実子)となります。

みなし実子には法定相続人に含めることのできる人数の制限はありません。

  • ・特別養子縁組により養子となった場合
  • ・被相続人の配偶者の実子で、被相続人と養子縁組をした場合
  • ・被相続人とその配偶者の結婚前に特別養子縁組によって配偶者の養子となり、結婚後に被相続人の養子となった場合
  • ・被相続人の実子、養子、孫等が死亡または相続権を失ったために、子供等に代わって相続人となった直系卑属

 

上記の通り、特別養子縁組であれば法定相続人に含められる人数に制限はありません。

ただし特別養子縁組は手続きが煩雑な上に条件も厳しいため、相続対策を目的に行われるケースは少ないといえます。

相続税が2割加算されるケースがある

被相続人が孫を養子にしており、孫の親(被相続人から見た子)が生存している場合、孫養子は相続税の2割加算の対象になります。

本来は親から子、子から孫の相続で相続税が2回発生するところが、孫養子では一代飛ばしになりトータルの相続税額が少なくなるためです。

2割加算の仕組みにより、相続対策を目的とした養子縁組がかえって税負担を増大させる恐れがあります。

 

ただし、法定相続人である子供が亡くなっており、その子供である孫が相続人となる場合(代襲相続に該当する場合)は2割加算の対象外です。

節税目的の養子縁組は否認される恐れがある

相続対策を目的とした養子縁組の場合、養子縁組が否認され、養子を法定相続人に含めることが認められない恐れがあります。

節税目的と判断される明確な基準はありませんが、以下のようなケースでは養子縁組が否認される恐れがあると考えられます。

  • ・相続発生直前の養子縁組
  • ・養子の相続割合が極端に少ない
  • (法定相続人を増やすことだけが目的の養子縁組とみなされるため)
  • ・養親が認知症を患っており意思能力が減退している等、養子縁組の意思が認められない

まとめ

養子縁組が相続対策になる理由は、養子縁組によって法定相続人の数が増えれば相続税の基礎控除額が増えるためです。

課税価格の合計額から差し引ける額が増えるため相続税の節税につながります。

養子縁組には他にも、みなし相続財産の非課税枠が増える、相続権をもたない人を相続人にできる等のメリットがあります。

 

このように養子縁組は相続対策に効果的ですが、普通養子縁組の場合は法定相続人に含められる養子の数に限りがある点に注意が必要です。

また、相続税が2割加算されるケースがある点や、節税目的の養子縁組は否認される恐れがある点も押さえる必要があります。

 

相続対策を目的に養子縁組を行う場合は、注意点を押さえて適切な方法で実施しましょう。

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吉岡 伸晃

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