特別損失とは?勘定科目と仕訳例、計上するメリットを解説!

2025.04.13

特別損失とは経常的な業務とは関係なく発生した損失のことで、損益計算書では例外的な取引として表示されます。

特別損失として計上する勘定科目に明確な定義はありませんが、性質上ある程度限りがあります。

 

特別損失は臨時的な損失で発生しても悪印象につながる可能性が低いため、節税対策に使われやすいです。

しかし特殊な性質を持つ以上、特別損失を計上する際は法人税法で損金として認められるか注意する必要があります。

 

今回は特別損失について詳しく解説します。

 

特別損失は損益計算書に表示される損失の1つです。損益計算書の読み方については以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

特別損失とは

特別損失とは、経常的な業務とは関係なく臨時的に発生した損失のことです。

損益計算書では経常利益の下に例外的な取引として表示されます。

 

臨時的な損失という性質上、毎期必ず発生するとは限りません。

そのため特別損失が損益計算書に全く載っていないケースも多く存在します。

特別損失に該当する勘定科目および仕訳例

特別損失に明確な定義やルールは存在しませんが、特別損失として計上する勘定科目はある程度決まっています。

特別損失に該当する勘定科目の具体例を7つ紹介します。

固定資産売却損

文字通り、固定資産の売却によって発生した損失に用いる勘定科目です。

固定資産の売却の発生頻度が低いため、取引に伴う損失を示す勘定科目は特別損失に該当します。

以下のケースを例に仕訳例を紹介します。

 

【例】期首に貸借対照表に記載された残存価額2,500,000円の機械装置を2,000,000円で売却した

  • 普通預金         2,000,000 / 機械装置  2,500,000
  • 固定資産売却損500,000

固定資産除却損

固定資産を売却ではなく廃棄や取り壊し等によって処分した場合に使用する勘定科目です。

前述した売却損と違い処分による対価は発生しないため、帳簿価額をそのまま損失として計上します。

 

【例】期首に帳簿価額800,000円の社用車を廃棄処分した

  • 固定資産除却損 800,000 / 車両 800,000

減損損失

減損損失は減損会計を行なった場合に利用する勘定科目です。

減損会計とは固定資産に投資した金額の回収が見込めない場合に、当該資産の価値を切り下げる会計処理のことです。固定資産の評価損の計上とも表現できます。

例えば特定の製品を生産するために機械を導入したものの、償却期間中に当該製品の生産を中止した場合、その機械に減損会計を適用します。

 

【例】帳簿価額400,000円の機械について、使用の見込がなくなったため減損会計を行なった

  • 減損損失 400,000 / 機械装置 400,000

なお、減損損失は原則として損金算入ができません。

法人税申告書の別表4で加算調整を行う必要があります。

投資有価証券売却損

売買目的有価証券、満期保有目的債券、関係会社株式以外の有価証券を売却して損失が出た場合に利用する勘定科目です。

 

【例】帳簿価額450,000円の持ち合い株(投資有価証券)を400,000円で売却した

  • 普通預金            400,000 / 投資有価証券          450,000
  • 投資有価証券売却損 50,000

災害損失

地震や台風などの自然災害によって発生した損失に対して使う勘定科目です。

 

【例】地震によって帳簿価額8,000,000円の建物が倒壊した

  • 災害損失 8,000,000 / 建物 8,000,000

盗難損失

盗難によって発生した損失を計上するために用いる勘定科目です。

被害額が少額の場合は「雑損失」として計上することもあります。

 

【例】帳簿価額1,000,000円の社用車が盗難に遭った

  • 盗難損失 1,000,000 / 車両 1,000,000

前期損益修正損

前期以前の損益を修正した場合に用いる勘定科目です。

 

【例】前期分の費用300,000円の支払い・計上漏れが発覚したため、当期に修正を行なった

  • 前期損益修正損 300,000 / 現金 300,000

 

なお「前期損益修正損」および「前期損益修正益」勘定を用いた修正ができるのは、以下いずれかに該当する場合に限ります。

  • ・金額が少ない等の理由で重要性が低い
  • ・中小企業である
  •  

決算修正については以下の記事をご覧ください。

 

営業外費用との違い

営業外費用は本業とは別の活動によって発生した費用のことです。

営業外費用に該当する勘定科目として以下の例が挙げられます。

 

  • 支払利息
  • 金融機関からの借入金にかかる利息や、信用保証協会の保証料などが該当します
  •  
  • 社債利息
  • 自社の社債を購入した債権者に対して支払う利息です
  •  
  • 為替差損
  • 保有する外貨等を決算時に円換算し、購入時よりも時価が下がっていた場合に修正のために使う勘定科目です
  •  
  • 売上割引
  • 売掛金が早めに入金された場合に債権の一部免除をすることを売上割引といいます。
  • 値引き分は同名の勘定科目である売上割引で計上します。
  •  
  • 雑損失
  • その他いずれの費用科目にも該当せず、かつ、重要性の低いものに用いる勘定科目です。

 

特別損失と営業外費用の違いは、経常的に発生するか否かです。

営業外費用の発生要因は主たる営業活動ではないものの、経常的に発生します。

業種によって発生する勘定科目に違いはあるものの、営業外費用がゼロのケースは少ないでしょう。

 

特別損失は前述のように経常的な業務とは関係なく発生する臨時的な損失を指します。

特別損失に該当する支出がゼロの事業年度も珍しくありません。

【参考】特別利益とは

特別利益とは経常的な業務とは関係なく臨時的に発生した収益です。

特別損失と同じく、損益計算書では経常利益の下に表示されます。

 

経常利益に特別利益を足して特別損失を引いた金額が税引き前当期純利益になります。

特別利益と特別損失をあわせて「特別損益」とも呼ぶこともあります。

 

特別利益に該当する勘定科目として以下の例が挙げられます。

 

  • 固定資産売却益
  • 固定資産売却損と反対に、固定資産の売却価額が帳簿価額より高い場合に用いる勘定科目です。
  •  
  • 投資有価証券売却益
  • 投資有価証券の売却価額が帳簿価額よりも高かった場合に用います。
  •  
  • 償却債権取立益
  • 前期以前に貸倒処理を行なっていた債権を回収した場合に用いる勘定科目です。

特別損失を計上するメリットとは?節税対策になるって本当?

法人の節税対策について調べるうちに「特別損失の計上は節税効果がある」と聞いたことがある人もいるでしょう。

この章では特別損失を計上するメリットや、節税対策になるか否かについて解説します。

課税対象となる所得が減る

特別損失の計上によって課税対象となる所得が減るため、節税対策に効果的といわれています。

 

特別損失に限らず、計上する支出が増えるほど所得が少なくなり税負担が減るのは前提です。

そして特別損失は一度に高額を計上できる可能性が高いため、大きな節税効果が期待できます。

所得に与える影響が大きいため、数ある支出の中でも特別損失は節税対策に効果的といわれるのです。

損失の計上額が多くても悪印象につながりにくい

特別損失は計上額が多くても悪印象につながりにくいです。

そのため評価が下がるリスクを避けながらも赤字決算による節税効果を得られるというメリットがあります。

 

特別損失は経常的な活動とは別の理由で発生する支出のため、融資審査ではあまり重視されません。

もし特別損失の計上によって赤字になったとしても、経常利益が黒字であれば問題ないと判断される可能性が高いといえます。

 

赤字でも融資を受けられる可能性があるケースについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

 

特別損失を計上する際の注意点

特別損失を計上する際は、法人税法で損金として認められるか注意する必要があります。

もし損金算入が認められなければ特別損失を計上しても節税につながりません。

 

特別損失で損金算入が認められないケースの代表例が減損損失です。

前述のように減損損失は固定資産の評価損とも表現できる費用であり、原則として損金算入が認められていません。

しかし、同じく固定資産に関する科目である「固定資産売却損」「固定資産除却損」は損金算入が可能です。

そのため誤って減損損失も損金算入してしまう恐れや、そもそも勘定科目を間違えてしまうケースも有り得るため注意する必要があります。

 

そもそも特別損失に該当する勘定科目はいずれも発生頻度が低く、節税対策には活用しにくいです。

不自然な点があれば損金算入が否認されるリスクもあるため、節税対策として無理やり計上しようとするのは避けましょう。

まとめ

特別損失とは経常的な業務とは関係なく臨時的に発生した損失です。

損益計算書では経常利益の下に表示されます。

 

「特別損失が節税対策に効果的」といわれる理由は、特別損失の性質にあります。

特別損失は1回の金額が高額になりがちなため、特別損失を計上した年は所得が少なく、もしくは赤字になりやすいです。

また、特別損失は計上額が多くても悪印象につながりにくいため、評価が下がるリスクを避けながらも節税効果を得られます。

 

特別損失は発生頻度が低いため見慣れず、処理方法に悩んでしまうケースもあるでしょう。

特別損失の計上について疑問や不安があれば、専門家である税理士のサポートを受けるのが安心です。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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