
営業外費用とは、主たる営業活動以外によって経常的に発生する費用です。
損益計算書では営業利益の下、営業外損益(経常損益の部)に表示されます。
主たる営業活動以外によって経常的に発生する費用は原則として営業外費用に該当します。
営業外費用に該当する勘定科目は幅広い上に判断が難しい部分もあるため、十分な理解が欠かせません。
特に、同じく主たる営業活動以外によって発生する「特別損失」との違いを押さえる必要があります。
今回は営業外費用について詳しく解説します。
損益計算書の読み方については以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
営業外費用とは

営業外費用とは、主たる営業活動以外によって経常的に発生する費用のことです。
定款に記載された事業目的のための活動を「主たる営業活動」といいます。
営業外費用に該当する勘定科目と仕訳例

前述のように、営業外費用は主たる営業活動以外によって経常的に発生する費用を指します。
定款に記載された事業に関するもの以外の活動で、かつ、経常的に発生する勘定科目が営業外費用に該当するイメージです。
この章では営業外費用に該当する勘定科目とそれぞれの仕訳例について解説します。
支払利息
支払利息は、借入金にかかる利息および信用保証協会に支払う保証料に用いる勘定科目です。
事業活動ではなく決済手段によって生じる費用のため、営業外費用に該当します。
【例】銀行に対して、借入金の元本返済分10,000円と利息500円をあわせて支払った
- 借入金 10,000 / 普通預金 10,500
- 支払利息 500
社債利息
社債利息は、社債を発行した際に、社債を保有する債権者に対して支払う利息です。
社債利息を計上するタイミングとして以下の2つが挙げられます。
- ・発行した社債に対する利息の支払いをした時
- ・期末、償却原価法による期間按分で割引額を帳簿価額に加算する処理をする時
- (社債を額面から割り引いた額で発行した場合に発生する処理です)
【例】額面100万円、年率3%、年2回払いの社債について普通預金から利息の支払いを行なった
- 社債利息 15,000 / 普通預金 15,000
貸倒引当金繰入
貸倒引当金繰入は、債権の回収不能(貸し倒れ)に備えて計上する貸倒引当金の設定時に用いる勘定科目です。
「貸倒引当金繰入額」とも呼びます。
本業以外の取引によって発生した債権に関する貸倒引当金繰入は営業外費用として扱います。
一方、本業に関する貸倒引当金繰入は販売費及び一般管理費として計上するのが原則です。
本業によるものか否かで表示区分が異なる点にご注意ください。
【例】決算仕訳として、貸倒引当金10,000円の繰入を行なった
- 貸倒引当金繰入 10,000 / 貸倒引当金 10,000
貸倒損失
貸倒損失は、回収不能が確定した債権を処理する際に用いる勘定科目です。
前述した貸倒引当金繰入と同様に、本業によるものか否かで表示区分が異なります。
【例】貸付金50,000円の回収不能が確定したため、貸倒処理を行なった
- 貸倒損失 50,000円 / 貸付金 50,000円
為替差損
決算時に外国の通貨や債権などを円換算し、帳簿価額よりも時価が下がっていた場合に修正のために使う勘定科目です。
【例】期末の売掛金残高500米ドルについて、取得時は1米ドル110円だったが、期末には1米ドル100円であったため修正を行なった
- 為替差損 5,000 / 売掛金 5,000
有価証券売却損
売買目的有価証券を売却した時、帳簿価額よりも売却価額の方が安価であった場合に使用する勘定科目です。
【例】帳簿価額700,000円の売買目的有価証券を650,000円で売却した
- 有価証券売却損 50,000 / 売買目的有価証券 50,000
有価証券評価損
決算時に保有している有価証券の評価額が帳簿価額よりも下がっている場合に使用します。
前述した売却損は売却時に、有価証券評価損は決算時に使用する勘定科目です。
【例】帳簿価額500,000円の売買目的有価証券について、決算時の評価額が480,000円であったため評価損を計上した
- 有価証券評価損 20,000 / 売買目的有価証券 20,000
売上割引
売掛金が早めに入金されたことで債権の一部免除をする場合に用いる勘定科目です。
【例】売掛金20,000円について期日よりも早めの入金があったため、1割の値引きを行なった
- 売上割引 2,000 / 売掛金 20,000
- 普通預金 18,000
雑損失
既存の勘定科目のいずれにも該当せず、重要性の低い費用に使う勘定科目です。
雑損失として処理されるものとして以下の例が挙げられます。
- ・現金過不足
- ・罰金、過料、反則金などの支払
- ・廃材処分費用
【例】現金出納帳と実際の残高の差額1,000円を雑損失で処理した
- 雑損失 1,000 / 現金 1,000
営業外費用と特別損失の違いとは

特別損失とは、経常的な業務とは関係なく臨時的に発生した損失です。
損益計算書では例外的な取引として、経常利益の下に表示されます。
特別損失に該当する勘定科目
特別損失に該当する勘定科目として以下の例が挙げられます。
- 固定資産売却損
- 固定資産の売却価額が帳簿価額よりも低い場合に使用する勘定科目です
- 固定資産除却損
- 固定資産を売却ではなく廃棄や取り壊し等によって処分した場合に使用します
- 投資有価証券売却損
- 売買目的有価証券、満期保有目的債券、関係会社株式以外の有価証券の売却価額が帳簿価額よりも低い場合に使う勘定科目です。
- 災害損失
- 地震や台風などの自然災害によって損失が発生した場合に使用します。
- 盗難損失
- 盗難によって損失が発生した場合に使う勘定科目です。盗難による被害額が少額の場合は、前述した営業外費用の勘定科目「雑損失」を用いて処理することもあります
- 前期損益修正損
- 前期以前の損益を修正する際に用いる勘定科目です
両者の違いは「経常的に発生するか否か」
営業外費用と特別損失はいずれも主たる営業活動以外によって発生する支出であり、性質が似ています。
両者を区別する基準は、経常的に発生するか否かです。
特別損失は突発的・臨時的に発生するものであり、発生しない事業年度も多く存在します。
営業外費用の発生要因は本業の活動ではないものの経常的であり、毎期発生するケースが多いです。
損益計算書の区分の違い
営業外費用は経常損益の部、特別損失は純損益の部に記載されます。
前提として、損益計算書に表示される利益には以下の5種類があります。
- 売上総利益
- 売上から仕入等の原価を引いた利益。粗利とも呼ばれる
- 営業利益
- 売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた利益
- 経常利益
- 営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を引いた利益
- 税引前当期純利益
- 経常利益に特別利益を足し、特別損失を引いた利益
- 当期純利益
- 税引前当期利益から税金を引いた利益。基本的に損益計算書の最下部に表示される
営業外費用は営業利益から差し引くもののため、表示場所は営業利益の下、経常利益の上です。
特別損失は経常利益から差し引くもののため、経常利益の下、税引前当期純利益の上に表示されます。
節税対策としての活用しやすさの違い
営業外費用と特別損失は、節税対策としての活用しやすさにも違いがあります。
特別損失は財務面での大きな影響を与えません。
経常的な活動とは別の理由で発生する突発的・臨時的な費用のためです。
特別損失によって税引前当期純利益が赤字になった場合でも、経常利益が黒字であれば対外的な信用が失われるリスクも低いです。
信用度に与える影響を抑えつつも高額の費用を計上できるという意味では、特別損失の方が節税対策に使いやすいといえるでしょう。
ただし、特別損失を計上する際は法人税法で損金として認められるか注意する必要があります。
そもそも特別損失は突発的、臨時的な支出で発生頻度が低いため、活用できるチャンスは少ないです。
ある程度コントロールしやすく損金算入が否認されるリスクが低いという意味では、営業外費用の方が節税対策に使いやすいといえます。
まとめ
営業外費用とは、主たる営業活動以外によって経常的に発生する費用です。
支払利息、社債利息、為替差損、雑損失など幅広い勘定科目が営業外費用に該当します。
営業外費用と特別損失はいずれも主たる営業活動以外によって発生する費用であり、区別しにくい面もあります。
両者の違いは経常的に発生するか否かです。
営業外費用の発生要因は本業以外ではあるものの経常的に発生します。
一方、特別損失は突発的・臨時的な費用であり、発生しない事業年度も多い点が特徴です。
適切な会計処理を行うため、営業外費用についての理解を深め、特別損失と区別するよう注意しましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士