
「相続税対策には不動産の活用がおすすめ」という意見を見聞きした経験がある人も多いでしょう。
結論として、不動産が相続税対策になるのは事実です。
不動産の相続税評価額の仕組みや、不動産に適用される特例などを活用すれば、現金をそのまま相続する場合よりも税額を抑えられます。
しかし、不動産を活用した相続税の節税対策には注意点も存在します。
相続税対策の効果を最大限に発揮するためには、メリットだけでなく注意点についても十分な確認が必要です。
今回は不動産を活用して相続税の節税対策を行うメリットと注意点を解説します。
相続税の節税対策については以下の記事もご覧ください。
オンライン無料相談 受付中
CONTENTS
不動産で相続税の節税対策をするメリット

前述のように、不動産を上手く活用すれば相続税の節税対策が可能です。
この章では不動産で相続税の節税対策を行うメリットを4つ紹介します。
現金をそのまま相続する場合よりも課税対象額が少なくなる
不動産を活用するメリットとして最も大きいものが、現金をそのまま相続する場合よりも課税対象額が少なくなることです。
相続税の課税対象額を計算する際、不動産は時価ではなく相続税評価額を用います。
相続税評価額の計算方法は以下の通りです。
- 土地
- 路線価が設定されている場合は路線価方式、路線価が設定されていない場合は倍率方式で計算します。
- 路線価方式
- 路線価(主要な道路に面する宅地の1平方メートルあたりの価格)×土地の面積
- 倍率方式
- 固定資産評価額×倍率
- 家屋
- 固定資産税評価額をそのまま利用します
相続税評価額は時価の7割程度になるのが一般的です。
たとえば不動産を1億円で購入して相続した場合、相続税評価額は7,000万円程度になると考えられます。
現金のままでは1億円全額が相続税の課税対象になるため、同じ額の現金を相続するよりも不動産を相続した方が相続税の節税になります。
賃貸不動産はさらに評価額が下がる
不動産の相続税評価額は時価の7割程度になるのが一般的であると紹介しました。
こちらの「7割程度」は、そのほかの特例や、評価額が低くなる制度を全く活用していない場合の目安です。
不動産の状況によっては、相続税評価額がさらに下がる可能性もあります。
不動産の相続税評価額が下がるケースの1つが、対象の不動産が賃貸不動産である場合です。
他者に賃貸している不動産は所有者であっても自由には使えません。
所有者の居住用や事業用に使うことは難しく、処分もすぐにはできないでしょう。
このように不動産活用の選択肢が狭いという理由から、賃貸物件は不動産の相続税評価額がさらに下がります。
賃貸不動産の相続税評価額の計算方法は以下の通りです。
- 土地部分のみを貸しており、建物部分は他者が所有している場合(貸宅地)
- 自用地の場合の相続税評価額-(自用地の場合の相続税評価額×借地権割合)
- 土地と建物の両方を貸している場合(貸家建付地)
- 自用地の場合の相続税評価額-(自用地の場合の相続税評価額-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
- 建物のみを貸している場合(賃貸物件)
- 対象の賃貸物件の固定資産税評価額-(対象の賃貸物件の固定資産税評価額-借地権割合×賃貸割合)
借地権割合は各地域の倍率表で確認可能です。
借家権割合は全国一律で30%と定められています。
小規模宅地等の特例の適用を受けられる可能性がある
小規模宅地等の特例とは、相続等によって取得した不動産が一定の要件を満たす場合に相続税評価額を減額できる制度です。
対象となる宅地等および減額割合を紹介します。
- ・被相続人等の居住の用に供されていた宅地等:80%
- ・被相続人等の貸付事業以外の事業の用に供されていた宅地等:80%
- ・被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等:50%
- (一定の法人に貸し付けられ、その法人が貸付以外の事業に使っていた場合は80%)
減額割合が50%または80%と非常に大きいため、課税対象となる遺産総額を大幅に減らすことができます。
不動産購入時に利用したローンはマイナスの資産となる
被相続人の借入金などマイナスの資産は、相続税の課税対象額から控除可能です。
すなわち不動産購入時にローンを利用すればマイナスの資産が増えるため、相続税の課税対象を少なくできます。
前述のように、不動産の相続税評価額は原則として時価よりも下がるため、現金をそのまま相続するよりも節税が可能です。
その上で不動産購入時のローン残債があれば相続税の課税価格がさらに減り、税額を大幅に抑えられるでしょう。
不動産を活用した相続税の節税対策のポイント・注意点

不動産を活用した相続税の節税対策にはさまざまなメリットがあります。
しかし、不動産の相続が必ずしも最善とは限りません。
不動産の条件や相続人の関係性によっては、不動産の相続がかえってトラブルの原因になる恐れもあります。
この章では不動産を活用した相続税の節税対策のポイント・注意点を4つ紹介します。
流動性や利回りが高い物件を選ぶ
相続税の節税対策を目的に不動産を購入するのであれば、流動性や利回りが高い物件を選びましょう。
流動性が高い物件であれば相続後の現金化がしやすいため、物件を手放すまでの時間を最小限に抑えられます。
不動産を売却して現金化し、相続税の支払いに充てるといった方法もとりやすいです。
利回りが高い物件であれば、相続人がオーナーとして賃貸収入を得続けることができます。
流動性と利回りの両方が低い場合、処分する・保有し続ける、どちらの場合も負担になってしまう恐れがあります。
単に不動産を買えば良いわけではなく、使い勝手の良さも考えるのが理想です。
相続税対策のみを目的とした不動産購入は否認される恐れがある
相続税対策のみを目的とした不動産購入とみなされてしまうと、相続税評価額を用いた税額計算を否認される恐れがあります。
税務署から否認されてしまえば時価での計算および相続税申告が必要になり、不動産の活用によるメリットは全く得られません。
相続税対策のみを目的とした不動産購入とみなされるケースとして以下の例が挙げられます。
- ・高齢になってからの購入や、相続開始直前の購入であった
- ・被相続人の意思による不動産の購入ではない
- (意思決定ができる状態ではなかった、売買契約を他者が代筆や代理した等)
相続税対策か否かの判断基準に明確な基ルールはありませんが、上記のようなケースはリスクが高いと考えられます。
不動産を相続税対策に活用するためには、被相続人の意思に基づくのはもちろん、なるべく早めに購入するのが安心です。
相続人が複数いる場合は相続トラブルの原因になりやすい
不動産は分割がしにくいため、相続人が複数いる場合は遺産分割協議でトラブルの原因になりやすいです。
売却によって現金化した上で分割する方法もありますが、売却には時間と手間がかかります。
相続人が複数人いる場合は不動産を相続する相手について遺言書で定めておくか、売却を前提にする等の対策をするのが理想です。
小規模宅地等の特例の適用を受ける場合は要件に注意
小規模宅地等の特例は相続税評価額を大幅に軽減できる制度のため、要件を満たすのであれば必ず利用するべきです。
しかし、小規模宅地等の特例には細かな要件が定められています。
要件をしっかり確認しなければ誤って適用してしまい、後に指摘を受けることになる可能性が高いです。
注意するべき要件の1つとして、保有継続要件が挙げられます。
事業の用に供されていた宅地等について、相続税の申告期限まで有している必要があります。
申告期限よりも前に売却してしまった場合は特例の適用を受けられません。
居住の用に供されていた宅地等についても、取得者と被相続人の関係によっては、相続税の申告期限まで有している必要があります。
要件は宅地等の利用区分や被相続人の関係によって異なるため、自身のケースにおける要件を確認するのが大前提です。
まとめ
不動産が相続税の節税対策に効果的といわれる理由は、相続税評価額の計算方法や特例の仕組みにあります。
不動産の相続税評価額は時価の7割ほどになるのが一般的なため、同額の現金をそのまま相続するよりも税額を抑えられます。
ほかにも賃貸不動産の評価減や小規模宅地等の特例などの仕組みを活用すれば、大幅な節税が可能です。
相続税対策を前提とするのであれば、流動性や利回りが高い不動産を選ぶのが理想です。
相続税評価額での計算が否認される恐れや相続トラブルのリスクを抑えるため、事前に対策を行う必要もあります。
小規模宅地等の特例の適用を受けようとする場合は、要件を満たしているか入念な確認が必要です。
不動産を活用した相続税の効果的な節税対策を行うため、ポイントや注意点をしっかり押さえましょう。
節税に強い税理士によるオンライン無料相談受付中
法人・個人事業主の税務相談・節税対策はBIZARQ会計事務所にお任せください。
現在30分から1時間程度のオンライン無料相談を実施中です。

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士