
リゾート会員権を事業目的でのみ利用する場合、個人事業主や法人として購入可能です。
リゾート会員権は高額なものも存在するため「リゾート会員権を節税対策に活用したい」と考える人も多くいます。
結論として、リゾート会員権の購入時には節税効果を得られません。
一方でリゾート会員権の保有期間中や売却時には、上手く活用すれば節税効果を得られる可能性があります。
ただしリゾート会員権の会計処理には厳格なルールが定められているため注意が必要です。
今回はリゾート会員権を使った節税対策の可否や、会計処理における注意点について解説します。
富裕層向け節税対策については以下の記事で詳しく解説しています。
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CONTENTS
リゾート会員権を使った節税の可否

結論として、リゾート会員権の購入時に節税対策をすることはできません。
リゾート会員権には複数の種類がありますが、いずれも経費ではなく資産として計上する必要があります。
そのため購入時には経費計上による節税はできません。
なお、年会費などリゾート会員権の保有期間中に発生するさまざまな支出は経費計上が可能です。
ただし会計処理には細かなルールが存在するため注意する必要があります。
リゾート会員権の種類
リゾート会員権は2種類に大別できます。それぞれ詳しく解説します。
共有制
共有制とは対象の施設の所有権を複数の会員で共有するタイプです。
「オーナーズクラブ制」とも呼ばれます。
共有制の特徴として以下の3つが挙げられます。
- ・不動産を所有することになるため、不動産登記や固定資産税の支払いが必要
- ※共有制会員権でも登記が発生しないタイプも存在します
- ・建物部分にかかる減価償却費を経費計上できる
- ・会員権を所有する人数に応じて利用日(占有日)が割り当てられる
- 例えば10人で保有する場合、各人に割り当てられる日数は365日÷10人=約36日
共有制リゾート会員権の例として、「グランリゾート」「ベイコート倶楽部」「エクシブ」などが挙げられます。
なおリゾートトラストが運営するベイコート倶楽部やエクシブでは、共有制ではなくタイムシェア制という呼び方もしています。
預託制
預託制とは、所有権はなく使用権だけを与えられるタイプのリゾート会員権です。
「メンバーズクラブ制」とも呼ばれます。
預託制の特徴を3つ紹介します。
- ・購入時に預託金を支払う
- ・前述した共有制に比べてトータルでの費用を抑えられる
- ・利用日数に制限がある場合が多い、時期によっては予約しにくい等のデメリットがある
預託制リゾート会員権の代表例は「ラフォーレ倶楽部」です。
また「東急ハーヴェストクラブ」は前述した共有制と預託制の両方の会員権を運営しています。
リゾート会員権の会計処理
リゾート会員権の会計処理の方法について場面別に解説します。
購入時
共有制と預託制のどちらであっても、購入に際して初期費用の支払いが必要です。
発生する費用の内訳は種類によって異なります。
主な費用項目の例とそれぞれの勘定科目を紹介します。
- 入会金や登録料
- 共有制と預託制どちらの商品タイプでも発生する項目です。
- 「投資その他の資産の部」に、「会員権」や「施設利用権」等の勘定科目を作成して計上するのが一般的です。
- 保証金・償却保証金
- こちらも同じく「投資その他の資産の部」に該当します。
- 勘定科目「差入保証金」で計上します。
- 預託金
- 預託制タイプの商品のみで発生する項目です。
- 一定期間経過後または解約時に返還される部分は「投資その他の資産」、返還されない部分は「繰延資産」として計上します。
- 土地・建物
- 共有制タイプの商品のみ発生する項目です。
- 通常の不動産と同じように、土地部分は「土地」、建物部分は「建物」として計上します。
- 各種手数料
- 名義変更料や仲介手数料など、登録時に支払う手数料をどのように扱うかは商品によって異なるため個別に確認が必要です。
- 入会金や登録料と同じく資産計上を行うケースが多い傾向ですが、支払手数料として計上できる可能性もあります。
保有期間中
続いて、リゾート会員権の保有期間中に発生する主な費用と使用する勘定科目について解説します。
- 年会費・管理費
- 年会費や管理費は経費計上が可能です。
- ただし利用目的によって勘定科目が異なる点にご注意ください。
- 接待目的であれば「接待交際費」、従業員の慰安目的であれば「福利厚生費」となります。
- 利用料
- 利用料も年会費や管理費と同じく、利用目的にあわせた勘定科目で計上が必要です。
- 減価償却費
- 共有制かつ登記が必要なタイプの場合は建物部分の減価償却費も発生します。
- ほかの建物にかかる減価償却費と同様に経費計上が可能です。
売却時
売却時の会計処理方法は、個人事業主と法人で異なります。
個人事業主の場合、売却益は譲渡所得として扱われます。
リゾート会員権の売却による譲渡所得は総合課税となるため、事業所得や給与所得等と合算して税額を計算します。
なお、売却損が発生した場合は譲渡損失として扱われますが、譲渡損失をほかの所得と相殺はできません。
法人の場合も個人と同じく、売却益は所得に加算する必要があるため課税対象になります。
一方で個人と違い、売却損は損金として計上可能です。
リゾート会員権を経費計上する際の注意点

リゾート会員権を経費計上する際の注意点を4つ紹介します。
福利厚生として活用する場合は利用規定を整備する
リゾート会員権を福利厚生として活用する場合は利用規定を整備しましょう。
リゾート会員権を活用した節税対策として一般的なのが、福利厚生として活用する方法です。
しかし福利厚生費として計上するためには以下3つの要件を満たす必要があります。
- ・全従業員が平等に利用できる制度にする
- ・全従業員に福利厚生制度としての存在を周知する
- ・福利厚生に関する規定を整備する
上記の条件を満たすために、リゾート会員権に関する利用規定の整備が必要です。
証憑書類の管理や詳細な記録を行う
リゾート会員権の経費計上が否認されないよう、証憑書類の適切な管理および詳細な記録を行いましょう。
リゾート会員権の活用は税務調査で重視されやすい要素です。
実際には適切な利用をしていた場合でも、書類や記録に少しでも不備があると経費計上を否認される恐れがあります。
指摘や追徴課税を避けるため、証憑書類や利用記録の管理を徹底することが大切です。
個人利用とみなされると給与扱いになる
法人契約で加入していても、個人利用とみなされてしまうと給与判定とされてしまいます。
給与扱いになれば給与収入・給与所得が増え、所得税の負担がより重くなります。
個人利用とみなされるケースの代表例が、役員や特定の従業員のみが利用できる状態であった場合です。
前述のように福利厚生費として計上するには全従業員が平等に利用できる制度にする必要があります。
個人利用とみなされないよう、「福利厚生として活用する場合は利用規定を整備する」で紹介したポイントを押さえる必要があります。
流動性が低く売却が難しい恐れがある
リゾート会員権は流動性が低く、売却が難しい恐れがあります。
特に共有制タイプの商品は買い手を見つけるのに膨大な時間や手間がかかる可能性が高いです。
手放すのが難しい点を押さえた上で購入するか検討するべきといえます。
なお預託制タイプの商品は有効期間が設定されているケースが多いです。
有効期間が設定されている商品であれば、期間満了時に自動で会員権を手放すことになります。
また中途解約が可能なこともありますが、その場合は高額の解約金が必要になるケースが多くみられます。
まとめ
リゾート会員権の購入にかかった費用は原則として資産計上をする必要があります。
そのため、リゾート会員権の購入時に節税対策をすることはできません。
ただし、リゾート会員権の保有によって発生する費用の多くは経費計上が可能です。
また、法人であればリゾート会員権の売却損を損金算入できるため、売却損の額によっては節税効果を得られる可能性があります。
リゾート会員権の会計処理には細かなルールが多く定められている上、税務調査で指摘を受けやすい要素でもあります。
リゾート会員権を適切に利用するためにも、会計処理について理解を深めましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士