
節税手法のひとつとして、高級時計を経費で落とす方法について見聞きしたことがある人もいるでしょう。
確かに高級時計は高額に設定されているため、取得価額を経費計上できれば大きな節税効果を期待できます。
しかし実際のところ、高級時計を使った節税対策は難しいのが事実です。
節税スキームとして有名な方法はあるものの、脱税に近い行為であり税務調査で指摘されるリスクが高いため決しておすすめできません。
今回は高級時計の経費計上の可否や、高級時計を活用した節税対策が難しい理由について解説します。
高級時計を時計として使用する場合の経費計上は非常に難しいですが、美術品として展示する場合は経費にできる可能性があります。
美術品の減価償却についての詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
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高級時計を使った節税対策は可能?

結論として、高級時計を使った節税対策は難しいのが事実です。
基本的に、自身が仕事中に着用する目的で購入した場合は経費計上ができないと考えた方が良いでしょう。
ただし、すべてのケースで否認されるわけではなく、要件を満たせば経費計上が認められることもあります。
高級時計を経費計上する場合は、適切な会計処理はもちろん、事業と関係ある旨を証明できるよう準備することも大切です。
高級時計を経費で落とせるケースの例
高級時計を経費計上できるのは原則として、時計の購入が事業と関係あり、売上につながる場合のみです。
該当するケースとして以下の例が挙げられます。
- ・時計専門店を経営している事業者
- ・時計を扱う、もしくは時計を含む装飾品との関連性が強いアパレル事業者
- ・高級時計をはじめとしたブランド品の買い取り業者
- ・高級時計をせどりや転売目的で購入しており、実際に利益が出ている
- ・時計に関するメディアを運営しており、購入した高級時計が収益につながっている
また、芸能人やYouTuberなどが宣伝目的で購入した場合にも経費計上できる可能性があります。
ただし宣伝に用いる商品等はクライアントから提供されるのが一般的であり、自身で購入するケースはあまり多くないでしょう。
高級時計を経費計上する場合の勘定科目
高級時計を経費計上する場合に使用する勘定科目は、使用目的によって異なります。
高級時計を販売目的で購入したのであれば仕入とみなされるため「仕入」「仕入高」等の勘定科目を用います。
期末時点の在庫については「繰越商品」勘定を用いた振替が必要です。
店舗のインテリア用など販売以外の目的で使う場合の勘定科目は取得価額によって変わります。
取得価額が10万円未満であれば消耗品費として購入した年に全額の費用計上が可能です。
取得価額が10万円以上の場合は備品として計上し、耐用年数にわたって減価償却を行う必要があります。
ただし、取得価額が30万円未満であれば、少額減価償却資産の特例の適用により購入した年の即時償却が可能です。
少額減価償却資産の特例については以下の記事をご覧ください。
時計の経費計上ができないケースとは
結論として、事業と直接関係がある旨を証明できない場合は経費計上ができません。
特に、自分で着用する場合は基本的に認められないと考えるべきです。
身だしなみ目的はもちろん、営業等の場面でビジネスツールの一部として活用する目的であっても時計の経費計上は難しいといえます。
芸能人のように身だしなみが売上に直結する場合でも、腕時計を含めて装飾品の経費計上はできないと考えた方が良いでしょう。
高級時計に限らず、メガネやスーツなど、日常生活でも着用できるものは原則として経費として認められません。
高級時計を美術品として購入した場合
高級時計を経費として計上できるのは、事業と直接関係がある旨を証明できる場合のみと紹介しました。
しかし高級時計を美術品として購入し、以下2つの条件を満たす場合は、事業内容に関係なく経費計上できる可能性があります。
- ・高級時計をエントランスや会議室、応接室など多くの人の目に触れる場所に飾る
- ・高級時計を展示目的でのみ使用し、一切身につけない
たとえ高級時計を展示している事実があったとしても、対象の時計を少しでも身につけている場合は経費計上が認められません。
なお、普段着用している高級時計を税務調査のときだけ展示用として装うのは絶対にやめましょう。
聞き取り調査や画像・映像証拠からほぼ100%バレる上に、脱税目的の悪質な行為として高額のペナルティを課される恐れがあります。
高級時計を利用したよくある節税スキームと注意点

前章で紹介したように、高級時計の経費計上が認められるのは限られたケースのみです。
ただし、高級時計を使って節税対策を実施しようとすることは多く、経費計上するためのスキームが存在するのも事実です。
実際のところ、高級時計を経費計上するスキームには高いリスクがあり、税務調査でほぼ確実に指摘されるといえるでしょう。
そもそも経費と認められない支出を、何らかの方法で目的を偽って経費計上する行為は厳禁です。
バレるリスクが高く明確な禁止行為であるため、高級時計の節税スキームは決しておすすめできません。
この章では高級時計を活用した節税対策として多くみられる手法2つについて、それぞれ大まかなやり方とバレる理由を解説します。
法人成りの直前に高級時計を購入する
法人成りの直前、すなわち個人事業主の段階で高級時計を購入し経費計上する方法です。
法人成りの直前に購入する方法が有名な理由として、個人事業主の方が税務調査を受けにくい傾向という考えが挙げられます。
税務調査を受けにくい個人事業主のうちに高級時計を経費計上すれば、税務署のチェックを逃れられる可能性が高いという考え方です。
当然ですが、「法人成りの直前であれば高級時計を経費計上しても良い」決まりは存在しません。
また、以下の理由から法人成り直前に高級時計を経費計上するスキームはかえってリスクが高いとも考えられます。
- ・法人成り直後の税務調査は、個人事業主として活動していた頃の帳簿書類も調査対象になる
- ・前年と比べて急に経費率が高くなると、個人事業主でも税務調査の対象になりやすい
基本的に、目立つ動きが発生した事業年度は税務調査の対象になる可能性が高くなります。
高級時計の経費計上は経費の割合が急激に大きくなり、利益率が低くなる要因のため、税務署の目が厳しくなりやすいでしょう。
法人成り直後に税務調査が入り個人事業主の頃の帳簿書類もチェックされ、経費計上が否認されるという恐れがあります。
領収書に「コンサルティング費」と記載する
高級時計の購入時に発行される領収書に「コンサルティング費」と記載してもらう方法です。
高級時計に限らず、領収書にコンサルティング費と記載する方法は脱税スキームとして多くみられます。
理由として以下の2つが挙げられます。
- ・対価として目に見えるものが残るわけではない
- ・コンサルティングの性質上、記載されている金額が高額でも不自然ではない
脱税目的で用いられやすい言葉である以上、税務調査では「コンサルティング費」と記載された領収書は厳しくチェックされる傾向です。
コンサルティングの目的や内容についての聞き取りや、領収書の発行元への調査も行われる可能性があります。
細かな部分まで調査されるため、いずれはコンサルティングではなく実際は高級時計の購入だとバレてしまうでしょう。
以上の理由から、コンサルティング費と記載する方法もバレるリスクが高いといえます。
まとめ
「節税対策として高級時計を活用する方法が効果的」という表現は誤りです。
高級時計を経費計上できるのは、時計の購入が事業と関係あり、売上につながる場合のみです。
自分で着用する目的での購入では経費計上が認められません。
ビジネスツールの一部として活用する場合や、身だしなみが売上に直結する職種であっても、高級時計の経費計上は難しいといえます。
実際のところ、高級時計の経費計上に関する節税スキームは存在します。
しかし税務調査で指摘を受けるリスクが高く、そもそも明確な不正行為のため絶対にやめましょう。
以上のように、高級時計を使った節税対策は難しいのが事実です。
税理士に相談した上で、自社に適した合法的な節税手法を選ぶことをおすすめします。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士