
会社等に勤める給与所得者は勤務先で年末調整を受けることになります。
年末調整とは給与から源泉徴収した税額と実際の所得税額の過不足を精算する手続きです。
年末調整において、税額や過不足の計算、税務署等への書類提出などは勤務先が行います。
納税者本人が行うべき作業は必要書類の提出および情報の提供のみで、特別な作業はありません。
ただし、節税対策としては年末調整で控除を漏れなく適用する必要があるため、提出書類や報告に不備・漏れがないよう注意が必要です。
今回は年末調整について、節税対策の観点から詳しく解説します。
会社員が個人でできる節税対策については以下の記事もご覧ください。
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年末調整で適用できる控除の種類と手続きの方法

はじめに年末調整で適用できる控除11種類について、それぞれの適用要件や手続きの方法を解説します。
基礎控除
基礎控除とは合計所得が2,500万円以下の納税者全員に適用される控除です。
控除額は納税者本人の合計所得金額に応じて段階的に定められています。
基礎控除の適用にあたって特別な手続きは必要ありません。
勤務先で行われる年末調整の作業時に自動で適用されます。
なお、年末調整は年間の給与等の額が2,000万円以下の人を対象とした制度です。
前述の通り基礎控除は合計所得が2,500万円以下の人に適用されるため、年末調整を受ける人の全員が対象となります。
社会保険料控除
社会保険料控除とは、自己または生計を一にする配偶者・親族の社会保険料を支払った場合に適用される控除です。
実際に支払った保険料がそのまま控除額となります。
給与等から差し引かれる社会保険料については勤務先で自動的に集計・控除の適用が行われるため、特別な手続きは不要です。
ただし、国民年金保険料やなど自分で直接支払った分については、保険料等の金額がわかる書類を勤務先に提出する必要があります。
生命保険料控除
生命保険料控除とは、生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を支払った場合に適用を受けられる控除制度です。
支払保険料の全額ではなく、一定の計算によって算出した金額が生命保険料控除額となります。
年末調整で生命保険料控除を受けるためには、以下2つの作業が必要です。
- ・保険会社から送付される「控除証明書」の提出
- ・会社から配布される「給与所得者の保険料控除申告書」に必要事項を記入
地震保険料控除
地震保険料控除は、納税者が地震保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。
一定の計算によって算出された金額が控除されます。
前述した生命保険料控除と同じく、「控除証明書」の提出や「給与所得者の保険料控除申告書」の記入が必要です。
小規模共済等掛金控除
小規模共済等掛金控除とは、小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合に適用を受けられる控除です。
対象となる主な掛金として、個人型確定拠出年金(iDeCo)や小規模企業共済掛金が挙げられます。
小規模企業共済等掛金控除における控除額は、その年に支払った掛金の全額です。
生命保険料控除等と同じく、勤務先に控除を受けるための書類を提出する必要があります。
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除は納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に適用される控除制度です。
配偶者の控除額が58万円以下であり、かつ、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合に適用を受けられます。
配偶者特別控除は配偶者の合計所得が58万円超133万円以下の場合に受けられる控除です。
どちらの制度も、配偶者および納税者本人の合計所得金額に応じて控除額が決まります。
勤務先から配布される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の「源泉控除対象配偶者」欄に必要事項を記入して提出しましょう。
扶養控除
扶養控除は納税者に所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合に適用される控除です。
控除額は扶養親族の年数や同居の有無といった区分ごとに定められています。
「扶養控除等(異動)申告書」の「源泉控除対象親族」欄に必要事項を記入して提出することで、勤務先で控除の手続きが行われます。
勤労学生控除
勤労学生控除は、納税者本人がその年の12月31日時点で以下の要件を満たす場合に適用を受けられる控除です。
- ・給与所得など勤労による所得がある
- ・合計所得金額が75万円以下であり、かつ、勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下
- ・対象となる学校の学生、生徒である
勤労学生控除による控除額は27万円です。
控除の適用を受けるには、「扶養控除等(異動)申告書」の「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄に必要事項を記入します。
ひとり親控除
ひとり親控除は納税者本人が以下の要件をすべて満たす場合に適用される控除制度です。
- ・婚姻をしていないまたは配偶者の生死が明らかでない
- ・事実上婚姻関係と同様の事情にある人がいない
- ・生計を一にする子がいる
- ・合計所得金額が500万円以下である
ひとり親控除の控除額は35万円です。
「扶養控除等(異動)申告書」の「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」の欄に必要事項を記入し勤務先に提出することで、控除が適用されます。
障害者控除
障害者控除は納税者本人、同一生計配偶者、扶養親族のいずれかが所得税法上の障害者に当てはまる場合に適用される制度です。
控除額は区分によって以下のように異なります。
- ・障害者:27万円
- ・特別障害者:40万円
- ・同居特別障害者:75万円
「扶養控除等(異動)申告書」の「障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」欄に必要事項を記入します。
住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、住宅ローンの借入残高がある場合に適用される税額控除です。
控除の適用を受けるには、勤務先に以下2つの書類を提出する必要があります。
- 1.給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書兼住宅借入金等特別控除計算明細書
- 2.住宅ローンの年末残高証明書
1は勤務先から配布されるのが一般的ですが、国税庁のホームページ等でも取得可能です。
2の住宅ローン年末残高証明書は、金融機関が調書方式と証明書方式のどちらに対応しているかによって異なります。
手続きについての詳細は住宅ローンを利用している金融機関へご確認ください。
年末調整で節税対策を行う際の注意点

最後に、年末調整で節税対策を行う際の注意点を2つ紹介します。
手続きをしなければ控除は適用されない
所得控除や税額控除などの控除制度は、要件を満たす場合に自動で適用されるわけではありません。
基礎控除や社会保険料控除など一部の制度を除き、控除を受けるためには手続きが必要です。
勤務先からの指示に従い、控除適用のために必要な書類の提出や情報共有を忘れないよう注意しましょう。
ただし、年末調整で申請を忘れてしまった場合でも、確定申告を行えば控除が適用されます。
確定申告については以下の記事をご覧ください。
年末調整では適用できない控除もある
年末調整で適用できるのは、前章で紹介した控除制度のみです。
以下の控除制度は年末調整では対応できません。
- 医療費控除
- セルフメディケーション税制
- 医療費控除は自分や生計を一にする家族・親族のために支出した医療費が一定額を超える場合に利用できる制度です。
- セルフメディケーション税制はドラッグストアなどで自身が選んで購入した医薬品の合計額が一定額を超える場合に利用できます。
- 医療費控除とセルフメディケーション税制の併用はできず、どちらか一方の適用しか受けられません。
- 初年度の住宅ローン控除
- 年末調整で住宅ローン控除の適用を受けられるのは2年目以後の年分です。
- 初年度は確定申告を行う必要があります。
これらの控除を適用し所得税を最小限に抑えるため、要件を満たすのであれば必ず確定申告を行いましょう。
まとめ
年末調整の手続きの大部分は勤務先が行うため、納税者本人が行う作業は必要書類の提出程度といえます。
ただし、提出書類に不備や漏れがあると控除制度の適用を受けられない恐れがあります。
適用要件を満たす場合でも、控除が自動で適用されるわけではありません。
節税対策のためには、年末調整で控除を漏れなく適用できるよう必要書類について十分に確認するべきといえます。
なお、医療費控除や初年度の住宅ローン控除などは年末調整では対応できません。
これらの控除の適用を受けるには、年末調整を受けた場合でも確定申告が必要です。
税負担を最小限に抑えられるよう、控除制度の種類や要件、必要な手続きなどを把握しましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士





