事業承継税制とは?制度概要とメリットをわかりやすく解説
事業承継税制とは事業承継で後継者に課される税金の納付猶予または免除を受けられる制度です。
事業承継で取得する事業用資産の価額や株価によっては多額の相続税や贈与税が発生するため、後継者の税負担が重くなる恐れがあります。
事業承継税制を活用すれば税負担を抑えられるため、事業承継のハードルが低くなるでしょう。
ただし、事業承継税制は税負担の大きな軽減効果が期待できる分、要件が細かく定められています。
事業承継を行う前に、事業承継税制について確認しておくのが安心です。
今回は事業承継税制について詳しく解説します。
事業承継やM&Aで活用できる補助金制度について解説した記事もぜひご覧ください。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士
CONTENTS
事業承継税制とは

事業承継税制とは、事業承継に際して後継者に課される相続税や贈与税の納税猶予または免除を受けられる制度です。
法人版事業承継税制と個人版事業承継税制の2種類の制度が存在します。
事業承継税制を利用するメリット
事業承継税制を利用するメリットは、後継者にかかる相続税や贈与税の負担を軽減できることです。
事業承継は事業用資産や株式の相続または贈与として扱われるため、相続税や贈与税が課されます。
承継対象となる資産や株式の合計額によっては、相続税や贈与税の額が数百万円、場合によっては一千万円を超える事態も起こり得ます。
後継者にかかる相続税・贈与税の負担が懸念となり、事業承継を進められないケースも珍しくありません。
事業承継税制を利用すれば相続税・贈与税の納税猶予や免除を受けられるため、事業承継の直後に高額の税負担が発生する事態を避けられます。
後継者にかかる負担を抑えながらも事業承継の実現が可能になるのです。
事業承継税制の期限
前述のように、事業承継税制は法人版と個人版があり、法人版はさらに「一般措置」と「特例措置」の2種類が存在します。
このうち、法人版の特例措置と個人版には以下のように期限の定めが存在します。
(法人版事業承継税制の一般措置に期限の定めはありません)
- 法人版事業承継 特例措置
- ・特例承継計画の提出期限:令和9年9月30日
- ・事業承継(相続・贈与)の実施期限:令和9年12月31日
- 特例承継計画の提出期限は税制改正により延長されました。
- 個人版事業承継税制
- ・個人事業承継計画の提出期限:令和10年9月30日
- ・事業承継(相続・贈与)の実施期限:令和10年12月31日
法人版事業承継税制の概要

非上場会社の株式等を贈与・相続等により取得した場合に適用対象となり得るのは、法人版事業承継税制です。
法人版事業承継税制の概要について、贈与の場合・相続の場合それぞれ詳しく解説します。
前提|一般措置と特例措置の違い
前述のように、法人版事業承継税制には一般措置と特例措置が存在します。
それぞれの違いは以下の通りです。
| 特例措置 | 一般措置 | |
| 事前の計画策定等 | 令和9年9月30日までに特例承継計画の提出が必要 | 特になし |
| 期限 | 令和9年12月31日までに事業承継を行う必要がある | 期限の定めはなし |
| 対象株数の割合 | 全株式 | 総株式数のうち最大3分の2まで |
| 納税猶予割合 | 100% | 贈与:100% |
| 承継パターン | 複数の株主から最大3人の後継者 | 複数の株主から1人の後継者のみ |
| 雇用確保要件 | 弾力化が必要 | 承継後5年間にわたり平均8割の雇用維持が必要 |
| 事業の継続が困難な事由が生じた場合の免除 | あり | なし |
| 相続時精算課税の適用 | 60歳以上の者から18歳以上の者への贈与 | 60歳以上の者から18歳以上の推定相続人・孫への贈与 |
特例措置は全株式で100%の納税猶予を受けられる分、特例承継計画の提出が必要・期限の定めがある等、要件が厳しいです。
贈与税の納税猶予及び免除
贈与による事業承継の場合、すなわち贈与税の納税猶予及び免除を受ける場合の主な要件は以下の通りです。
- 【会社側の要件】
- ・次のいずれにも該当しない
- 上場会社、中小企業者に該当しない会社、風俗営業会社、資産管理会社
- 【後継者側の要件】
- ・贈与時点で会社の代表権を有している
- ・贈与時点で18歳以上である
- ・贈与時点で、後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することになる
- 特例措置の場合は以下2つの要件も追加されます。
- ・贈与直前に会社の役員である
- ・後継者の有する議決権数が一定の基準を超える
- 【先代経営者の要件】
- ・会社の代表権を有していた
- ・贈与直前に、贈与者及び贈与者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有しており、かつ、後継者を除き最も多くの議決権を保有していた
- ・贈与時点で会社の代表権を有していない
また、納税猶予の対象となる贈与税の額および利子税に見合う担保の提供も必要です。
納税猶予を受け続けるには、報告期間中(原則として贈与税の申告期限から5年間)は毎年、その後は3年に1回税務署に継続届出書を提出する必要があります。
先代経営者または後継者が死亡した場合、納税が猶予されている贈与税の納付義務は免除されます。
特例措置の適用を受けた場合は免除されるケースがさらに多く存在しますが、細かな要件が定められているため事前に確認が必要です。
相続税の納税猶予及び免除
続いて相続による事業承継の場合、すなわち相続税の納税猶予及び免除を受ける場合の主な要件です。
- 【会社側の要件】
- 贈与の場合と同じく、以下の会社に該当しないこと
- 上場会社、中小企業者に該当しない会社、風俗営業会社、資産管理会社
- 【後継者側の要件】
- ・相続開始の日の翌日から5ヵ月の時点で会社の代表権を有している
- ・相続開始時点で、後継者及び後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有することになる
- ・相続開始の直前において会社の役員である
- 特例措置の場合は、後継者の有する議決権数が一定の基準を超える必要もあります。
- 【先代経営者の要件】
- ・会社の代表権を有していた
- ・相続直前に、贈与者及び贈与者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有しており、かつ、後継者を除き最も多くの議決権を保有していた
納税猶予の対象となる相続税の額および利子税に見合う担保の提供も必要です。
贈与の場合と同じく、納税猶予を受け続けるには、報告期間中は毎年、その後は3年に1回税務署に継続届出書を提出する必要があります。
後継者が死亡した場合、納税が猶予されている相続税税の納付義務は免除されます。
特例措置の適用を受けた場合は免除されるケースがさらに多く存在します。
個人版事業承継税制の概要

続いて、個人版事業承継税制について解説します。
贈与税の納税猶予及び免除
個人の事業承継において贈与税の納税猶予及び免除を受ける場合の主な要件は以下の通りです。
- 【後継者側の要件】
- ・贈与時点で18歳以上である
- ・円滑化法の認定を受けている
- ・贈与の直前に、特定事業用資産に係る事業に従事していた
- (特定事業用資産:先代事業者の営む事業の用に供されていた資産)
- ・贈与税の申告期限までに開業届の提出および青色申告の承認を受けている
- ・特定事業用資産に係る事業が資産管理事業および性風俗関連特殊営業に該当しない
- 【先代事業者等の要件】
- 贈与者が先代事業者である場合
- ・開業届を提出済み、または贈与税の申告期限までに提出見込みである
- ・贈与の日の属する年の前々年~贈与の日の属する年に青色申告をしている
- 贈与者が先代事業者以外の場合
- ・贈与および相続時点で先代事業者と生計を一にする親族である
- ・先代事業者の贈与または相続後に特定事業用資産の相続をしている
納税猶予の対象となる贈与税の額および利子税に見合う担保の提供も必要です。
納税猶予を受け続けるには、報告期間中は毎年、その後は3年に1回税務署に継続届出書の提出が必要です。贈与税の納付が免除されるケースとして以下の5つが挙げられます。
- ・贈与者または後継者が死亡した
- ・特定申告期限の翌日から5年を経過する日以後に、特例受贈事業用資産の全てについて「免除対象贈与」を行なった
- ・事業を継続することができなくなったやむを得ない理由がある
- ・破産手続開始の決定などがあった
- ・事業の継続が困難な一定の事由が生じた場合において、特例受贈事業用資産の全ての譲渡・事業の廃止をした
相続税の納税猶予及び免除
続いて、相続税の納税猶予及び免除を受ける場合の要件について解説します。
- 【後継者側の要件】
- ・円滑化法の認定を受けている
- ・相続の直前に、特定事業用資産に係る事業に従事していた
- ・相続税の申告期限までに開業届の提出および青色申告の承認を受けている
- ・特定事業用資産に係る事業が資産管理事業および性風俗関連特殊営業に該当しない
- ・小規模宅地等の特例の適用を受けていない
- 【先代事業者等の要件】
- 被相続人が先代事業者である場合
- ・開業届を提出済み、または贈与税の申告期限までに提出見込みである
- 被相続人が先代事業者以外の場合
- ・先代事業者の相続開始または贈与直前に先代事業者と生計を一にする親族である
- ・先代事業者からの贈与または相続後に開始した相続に係る被相続人である
納税猶予の対象となる相続税の額および利子税に見合う担保の提供も必要です。
納税猶予を受け続けるには、報告期間中は毎年、その後は3年に1回税務署に継続届出書の提出が必要です。
贈与税の納付が免除されるケースとして以下の5つが挙げられます。
- ・後継者が死亡した
- ・特定申告期限の翌日から5年を経過する日以後に、特例受贈事業用資産の全てについて「免除対象贈与」を行なった
- ・事業を継続することができなくなったやむを得ない理由がある
- ・破産手続開始の決定などがあった
- ・事業の継続が困難な一定の事由が生じた場合において、特例受贈事業用資産の全ての譲渡・事業の廃止をした
事業承継税制を利用する際の注意点

最後に、事業承継税制を利用する際の注意点を2つ紹介します。
事前に書類の提出が必要なケースがある
前述のように、法人版事業承継税制の特例措置および個人版事業承継税制は、事前に一定の書類の提出が必要です。
- 法人版事業承継税制の特例措置
- 令和9年9月30日までに「特例承継計画」の提出が必要
- 個人版事業承継税制
- 令和10年9月30日までに個人事業承継計画の提出が必要
期日までに上記書類の提出をしなければ、申請自体が認められないためご注意ください。
猶予期間中に取消事由が生じた場合は利子税の納付も必要
相続税や贈与税の納付猶予期間中に取消事由が生じた場合、納付猶予を受けていた税額だけでなく、利子税の納付も必要です。
取消事由として以下の例が挙げられます。
- ・事業を廃止した
- ・資産管理事業又は性風俗関連特殊営業に該当することになった
- ・会社の代表権を有しなくなった(法人版事業承継税制)
- ・青色申告の承認が取り消された(個人版事業承継税制)
取消事由は細かく設定されており、完璧に把握するのは難しいのが事実です。
納付猶予を受けている期間中は、専門家である税理士のサポートを受けることをおすすめします。
事業承継と税負担対策はBIZARQへ

事業承継は税金対策だけでなく、後継者選定や株価対策、経営体制の引き継ぎまで含めて進めることが重要です。税務・経営・将来設計を一体で考えることが、円滑な承継につながります。
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まとめ
事業承継税制は事業承継に際して発生する相続税や贈与税の納付猶予または免除を受けられる制度です。
法人版事業承継税制の一般措置は、事前に提出すべき書類や期限の定めはありません。
一方で、法人版事業承継税制の特例措置および個人版事業承継税制は、期限までに特例承継計画の提出が必要です。
事業承継を実施する時期についても期限の定めがあるためご注意ください。
事業承継税制は税負担の軽減という大きなメリットがある一方で、要件が厳しく、多くの注意点も存在します。ミスや漏れなく確実に税制の適用を受けるためにも、専門家である税理士のサポートを受けるのが安心です。
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