会社設立時の事業目的はどう書く?業種別の事例集を紹介!

2023.09.12

事業目的は会社設立時に決めなければならない事項のひとつです。

事業目的を決めるのは一見難しそうですが、実は業種ごとに書き方のパターンがある程度決まっています。

そのため業種別の事例を参考にすれば、事業目的をスムーズに書けるでしょう。

また、事業目的を決める際の注意点についても事前に確認が必要です。

 

今回は会社設立時の事業目的の書き方や、業種別の事例・注意点を紹介します。

 

なお、事業目的は定款における絶対的記載事項のひとつです。

定款については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。

 

 

CONTENTS

会社設立時に書く事業目的の概要

はじめに、会社設立時に書く(決める)必要のある事業目的について、概要を紹介します。

事業目的とは

事業目的とは、会社が行う事業の内容や目的です。

設立する会社でどのような事業を行うかを明示する役割を担います。

 

事業目的を決める最も重要な理由として、「取引の安定性を確保するため」が挙げられます。

会社の事業目的が不明瞭では、取引先や投資家などの外部関係者はどのような会社であるか判断できません。

取引相手の信頼を得られず、結果として取引が不安定になる・社会的信用が低いという事態が起こり得ます。

事業目的は外部に自社の目的を明確にすると共に、自社が安定して取引を行うために明示が欠かせない要素です。

 

会社運営を続ける中で、事業目的に記載のない事業は行うことができません。

もし事業目的に未記載の事業を行いたい場合、定款への追記および目的変更の登記を行う必要があります。

 

なお、事業目的は定款における絶対的記載事項のひとつです。

絶対的記載事項とは、定款に必ず定めなければならない事項を意味します。

絶対的記載事項に漏れがある定款は、定款として認められません。

事業目的が絶対的記載事項である以上、会社設立に際して決めることは避けられません。

事業目的で押さえるべきポイント

事業目的を決める上で押さえるべきポイントは、適法性・明確性・営利性の3点です。

それぞれ詳しく解説します。

適法性

事業目的が法に反していないことです。

公序良俗や法律に反する事業目的の設定はできません。

適法性の観点から認められない事業目的の例として「麻薬売買」「詐欺行為」が挙げられます。

営利性

すべての会社は利益の実現を目的にする必要があります。

したがって非営利活動は事業目的にできません。

明確性

事業目的は誰が見ても内容を把握できる書き方にする必要があります。

世間一般に浸透していない言葉の使用や、曖昧な事業目的は認められない恐れがあるため注意が必要です。

会社設立時の事業目的 業種別の事例

それでは、会社設立時の事業目的について、業種別の事例を紹介します。

あくまでひとつの例であるため参考程度とし、設立する会社の目的や理想に合わせてご修正ください。

卸売業・小売業

  • ・各種商品の企画、製造、販売及び輸出入
  • ・日用品雑貨、化粧品、衣料品の販売及び輸出入
  •  ※設立する会社で扱う商品の種類を入れてください。
  • ・インターネット等を通じた卸売及び販売
  • ・古物営業法に基づく古物営業

 

扱う商品の種類や、企画~販売のどこまでを行うかを記載する点がポイントです。

飲食サービス業

  • ・飲食店の営業
  • ・飲食店の経営
  • ・喫茶店の経営
  • ・外食事業の展開
  • ・飲食店及び売店等の営業
  • ・酒類の販売及び輸出入
  • ・深夜酒類提供飲食店の営業
  • ・飲食店及び料理教室の経営

 

飲食サービス業の事業目的において、提供する商品のジャンルまでは明記しないのが一般的です。

ただし、許認可が必要な業種の場合は取得したい許認可にあわせた事業目的を記載する必要があります。

許認可が必要な飲食サービス業の例として、喫茶店や、深夜にお酒を提供するお店などが挙げられます。

不動産業

  • ・不動産業
  • ・不動産賃貸業
  • ・宅地建物取引業
  • ・不動産の売買、賃貸借、管理、仲介、保有及び運用
  • ・建築の現場管理業務
  • ・不動産の鑑定業務
  • ・不動産に関わるコンサルティング業務
  • ・ビルメンテナンス業

 

一口に不動産業といっても、不動産賃貸からビルメンテナンスまで幅広い業務が存在します。

設立する会社で行う予定のある事業を漏れなく記載するよう注意しましょう。

建設業

  • ・○○工事の設計、施工、請負及び監理
  • ・○○工事及び消防○○工事の請負
  •  ※上の2つは土木工事、建築工事、大工工事、電気工事など種類を入れます。
  •   後述のように、工事の種類を明記する方法もあります。
  • ・土木工事業
  • ・建築工事業
  • ・大工工事業
  • ・電気工事業
  • ・建築一式工事
  • ・建設に関するコンサルティング業務
  • ・一般廃棄物及び産業廃棄物の処分業

建設業ならではの注意点は、具体的な工事の業種を正確に読み取れるように書く必要がある点です。

 

建設業を行う会社において、請負代金が一定額を超える工事を行う場合は許認可が必要であり、業種に合わせた事業目的の記載が必要です。
建設業許可が必要なものは、29業種です。

定款からどの業種であるか読み取れない場合、許認可が下りない恐れがあります。

そのため紹介した事例のように、工事の種類を明確にする必要があります。

IT・インターネット関連

  • ・インターネットを利用した通信販売業
  • ・ハードウェア及びソフトウェアの企画、開発、制作、販売及び保守
  • ・各種情報提供・情報収集サービス
  • ・インターネットによる動画等の配信に関する企画、制作及び管理

 

一口にIT・インターネットといっても幅広いため、自社の事業内容に合わせて事業目的を書きましょう。

コンサルティング業

  • ・○○に関するコンサルティング業務
  • ・各種コンサルティング業務
  • ・コンサルティング事業

 

コンサルティング業の場合、どの分野に関するコンサルティングを行うのかを記載するのが一般的です。

金融・保険業

  • ・金融業
  • ・損害保険代理業
  • ・生命保険の募集に関する業務
  • ・少額短期保険事業

 

一口に金融・保険といっても様々な種類があるため、より具体的に書くのが安心です。

会社設立 事業目的を設定する際の注意点

会社設立時に事業目的を設定する際の注意点を3つ紹介します。

将来行う可能性がある事業も記載する

会社設立直後に幅広い事業を行うケースはそれほど多くないでしょう。

しかし、会社設立直後は実施しない事業でも、将来行う可能性があるものは事業目的に記載することをおすすめします。

 

すでに解説したように、事業目的に記載がない事業は行うことができません。

事業目的に記載されていない事業を行いたい場合、定款への追記や変更登記が必要です。

大きな手間になるだけでなく手数料もかかるため、会社設立の段階で記載しておくと効率的です。

 

なお、会社設立に事業目的を作る際は、最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」と記載しましょう。

この一文を記載することで、定款に具体的な明記がない場合でも、関連事業であれば実施できるようになります。

事業目的が多くなりすぎないよう注意

前項で「会社設立直後は実施しない事業でも将来行う可能性があるものは記載するのがおすすめ」と紹介しました。

しかし、事業目的が多くなりすぎるのも好ましくありません。

事業目的が多くなりすぎると、会社の目的や事業内容を判断しにくくなるためです。

社会的信用を得にくくなるだけでなく、実態がつかみにくい会社と判断され融資審査に通過しなくなる恐れもあります。

 

メインの事業に関連するものや、実施する可能性が高い事業のみに絞り込みましょう。

許認可が必要な業種の事業目的

許認可が必要な業種を行う会社を設立する場合、取得したい許認可にあわせた事業目的の記載が必要です。

すでに紹介した例でいうと、喫茶店・深夜にお酒を提供するお店・建設業などが挙げられます。

ほかにも、旅行代理店・マッサージ店・リサイクルショップなどは、許認可が必要な業種の代表例です。

 

定款認証や会社設立登記の段階では、取得したい許認可にあわせた事業目的の記載があるかはチェックされません。

そのため、会社設立後許認可の申請を行う段階で事業目的に不足があると指摘される可能性があります。

 

手間を最小限に抑えるため、事業目的への明記を忘れないよう注意しましょう。

まとめ

会社設立時に決める事業目的は一見複雑そうですが、ルールや注意点さえ押さえれば問題になることはほとんどありません。

また、業種ごとにある程度のパターンも決まっています。

そのため、事業目的についてのポイントを押さえつつ業種別の事例を参考にすれば、事業目的をスムーズに作成できるでしょう。

 

それでも事業目的の決め方について疑問や不安があれば、ぜひ専門家へご相談ください。

設立する会社の展望や事業計画等を伝えると、事業目的について的確なアドバイスを受けられます。


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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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