
バーチャルオフィスとは、実際には入居せず、オフィスとして住所のみを借りることができるサービスです。
バーチャルオフィスの住所は、会社設立登記の際に本店所在地として利用できます。
そのため、自宅兼事務所の場合でも自宅の事務所を登録・公開する必要がありません。
このように大きなメリットがある一方でデメリットも存在するため、バーチャルオフィスの契約前にメリット・デメリットの両方を押さえる必要があります。
今回はバーチャルオフィスについて、会社設立の前に知っておくべき事項を解説します。
会社設立登記については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひこちらもご覧ください。
CONTENTS
バーチャルオフィスの概要

はじめに、バーチャルオフィスの概要を紹介します。
バーチャルオフィスとは
バーチャルオフィスとは、オフィスとしての住所のみを借りることができるサービスです。
オフィス形態の一種ではありますが、実際に入居するわけではなく、基本的に専用スペースの貸与はありません。
バーチャルオフィスのサービスとして、以下の例が挙げられます。
- ・オフィス住所の貸し出し
- ・郵便物の受け取りおよび転送
- ・電話番号の貸し出し
- ・電話受付
- ・電話の転送
- ・貸し会議室やセミナールーム
- ・ロッカーの貸し出し
多くのサービスでは基本プランに住所の貸し出し・郵便物の受け取りおよび転送が含まれています。
その他のサービスは追加料金が必要なオプションサービスの場合や、グレードが高いプランに含まれるサービスのケースが多いです。
運営会社やプランによってサービスの内容が異なるため、各サービスの公式サイト等で案内をご確認ください。
バーチャルオフィスのメリット
バーチャルオフィスを利用するメリットとして、大きく3つ挙げられます。
1つは、プライバシーを保護できる点です。
会社設立登記では本店所在地を登録する必要があります。
登記に限らず、会社の住所を書く必要のある場面は少なくありません。
自宅兼事務所の場合、会社の住所として自宅住所を記載する必要があります。
しかし、会社の住所は多くの人が閲覧できる情報であり、そこに自宅住所を記載するのはプライバシーの面でリスクが高いです。
バーチャルオフィスを契約すれば、自宅兼事務所でも会社の住所欄に自宅住所を記載する必要がありません。
そのため、プライバシーを守りつつ会社運営を行うことができます。
2つ目のメリットは、コストが低い点です。
サービスによって多少の違いはありますが、多くのバーチャルオフィスは月額数千円程度で利用できます。
オプションサービスを利用する場合でも5,000円~10,000円、特に高額なサービスでも1万円台で利用できるケースがほとんどです。
低価格で会社としての住所を借りられる上に、郵便物の転送といった各種サービスも利用できるため、非常にコストパフォーマンスが高いといえます。
3つ目のメリットは、会社住所を一等地にすることもできる点です。
バーチャルオフィスは都心部やオフィス街といった一等地に多い傾向です。
このようなエリアで実際にオフィスを借りる場合、賃料が非常に高額になってしまいます。
しかし、バーチャルオフィスであれば月に数千円程度の利用料で会社の住所を一等地にすることが可能です。
バーチャルオフィスのデメリット
バーチャルオフィスにはメリットだけでなく、デメリットもあります。
デメリットの1つは、バーチャルオフィスでは社会的信用を得にくい場合がある点です。
バーチャルオフィスのメリットとして、会社住所を一等地にできる旨を紹介しました。
確かに書類上の会社住所は一等地になりますが、利用しているのは住所だけであり、オフィスとしての実態はありません。
取引相手やバーチャルオフィスと知られる理由やタイミングによっては不信感を持たれてしまう可能性があります。
必要に応じて、事前にバーチャルオフィスと伝えておくのが安心です。
2つ目のデメリットとして、住所変更で手間が生じる可能性が挙げられます。
契約しているバーチャルオフィスの運営会社が倒産・廃業した場合や、バーチャルオフィスのサービスが終了した場合、住所変更が必要です。
登記した住所を変更する場合、管轄法務局が同じ住所への変更であれば3万円、管轄法務局が変わる場合は6万円かかります。
このように、本店所在地の住所変更はそれだけで支出を伴う行為です。
また、法人口座をはじめとした各所に登録している住所を変更する必要もあり、大きな手間が生じます。
3つ目のデメリットは、ほかの利用者と住所が被る恐れがある点です。
法律上、1つの住所に複数の会社の登記をすることに問題はありません。
(会社名が異なる場合のみ。同名の会社を同じ住所に複数登記するのは不可)
しかし、他の会社と住所が被っている状態では、取引先や顧客に誤解を与えてしまう可能性が大きくなります。
誤解を生まないよう事前に説明する、もしくは自社オフィスの説明・案内はしない前提といった対策が必要です。
バーチャルオフィスを使って会社設立をする際の注意点

既に紹介したように、バーチャルオフィスの住所は本店所在地として登録できます。
そのため、バーチャルオフィスを使った会社設立は可能です。
しかし、事前にバーチャルオフィスならではの注意点を押さえておく必要があります。
この章では、バーチャルオフィスを使って会社設立する際の注意点を3つ紹介します。
許認可が必要な業種では利用できないケースが多い
バーチャルオフィスの住所は、許認可が必要な業種では利用できないケースが多いです。
許認可申請にあたって、営業実態のある事業所を証明する書類を提出する必要がある業種が多く存在します。
業種の具体例として、不動産業・建設業・金融商品取引業・古物商・職業紹介業などが挙げられます。
バーチャルオフィスが貸し出すのは会社住所のみであり、事務所としての実態はありません。
そのため、許認可申請において事務所要件を満たす必要がある業種の場合、バーチャルオフィスの住所は利用できないのです。
許認可が必要な業種の会社を設立する場合、バーチャルオフィスでの登記が認められているか事前に確認する必要があります。
法人口座の開設に手間取る恐れがある
前提として、バーチャルオフィスの住所でも法人口座の開設は可能です。
ただし、事務所としての実態がある住所に比べて審査に時間がかかる場合があります。
審査に時間がかかる理由は、バーチャルオフィスが反社会勢力や犯罪組織に悪用された事例があるためです。
犯罪やマネーロンダリングといった違法行為を防ぐため、銀行口座の取り扱いは非常に厳しくなっています。
そして、バーチャルオフィスが悪用された過去が存在する以上、バーチャルオフィスに対する目はどうしても厳しくなってしまうのです。
法人口座の開設をなるべくスムーズに進められるよう、事業内容や将来性をしっかり説明し、信頼を獲得する必要があります。
自社の目的や理想に合うバーチャルオフィスを選ぶ
一口にバーチャルオフィスといっても、サービスによって費用や設定できるオプションは様々です。
複数のサービスを比較し、自社に合うバーチャルオフィスを選ぶことが大切です。
バーチャルオフィスを選ぶ上での判断基準の例を紹介します。
- 費用
- 月額費用だけでなく、初期費用やオプション料金もチェックしましょう。
- プラン・サービスの内容
- サービスが多ければ良いとは限らず、むしろ必要以上に費用がかかり損となる恐れがあります。
- 自社に合うサービス内容のプランがあるか確認する必要があります。
- 不安要素の有無
- 過去にバーチャルオフィスでトラブルがなかったか、清潔感のある外観であるか、似た名前の別会社が存在しないか等の確認も必要です。
まとめ
バーチャルオフィスの住所を使って会社設立をすれば、自宅住所を会社住所として公開する必要がないためプライバシーを保護できます。
低コストで一等地の住所を利用できるのも大きなメリットです。
一方で、社会的信用を得にくい恐れや他の利用者と住所が被る可能性等、デメリットも存在します。
会社設立に際してバーチャルオフィスの利用を検討している人は、事前にメリット・デメリット、そして注意点をしっかり押さえましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士