フリーランスの所得に対して課される所得税は、所得が一定を超える部分にはより高い税率が設定されています。
一方、法人に課される法人税は利益の額に関係なく一律となります。
所得が一定を超える場合は所得税よりも法人税の方が税額を抑えられるため、所得が大きい場合は会社設立をするメリットが大きいです。
ほかにも、フリーランスが会社設立をするメリットは存在します。
ただし、フリーランスの会社設立にはメリットだけでなくデメリットや注意点もあります。
デメリット等を考慮せず会社設立を進めてしまうと、会社設立がかえって損となる恐れがあるため注意しましょう。
今回はフリーランスが会社設立するメリットとデメリット、注意点について解説します。
フリーランスにおすすめの節税テクニックについては、以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
フリーランスが会社設立をするメリット
はじめに、フリーランスが会社設立をするメリットを3つ紹介します。
節税効果を得られる可能性がある
フリーランスの会社設立による最も大きなメリットが、節税効果を得られる可能性がある点です。
会社設立によって節税効果を得られる可能性がある理由として以下の3つが挙げられます。
所得税と法人税の税率の違い
フリーランスに課される所得税は超過累進課税制度を採用しており、所得が一定を超える部分にはより高い税率が適用される仕組みです。
税率は5%~45%の7区分で、所得が大きいほど税負担が重くなります。
法人に適用される法人税は年800万円までの部分は15%、800万円超の部分は23.2%です(中小企業の場合)。
利益が高くなっても税率が変わらないため、利益が出ているほど法人成りによる節税効果が大きくなります。
経費にできる支出の違い
個人事業主よりも法人の方が経費にできる支出が多いです。法人のみ経費計上できる支出の例を紹介します。
- ・自身への役員報酬
- ・生命保険の支払保険料 ※法人名義の場合のみ
- ・役員への退職金
- ・社宅家賃の一部
- ・出張日当
経費にできる支出が多い分、利益を抑えられる可能性が高くなります。
赤字の繰り越し期間の違い
赤字の繰り越し期間は、個人が最長3年、法人が最長10年です。
法人の方が赤字を繰り越せる期間が長いため、赤字を使いきれる可能性が高く、より大きな節税効果が期待できます。
決算期を好きなタイミングにできる
フリーランスや個人事業主の場合、決算月は12月に決まっています。
決算期と事業の繁忙期が重なってしまう場合も、自己都合で決算期をずらすことはできません。
法人の場合、決算期を好きなタイミングに設定できます。また、所定の手続きを行えば一度決定した決算期の変更も可能です。
事業が忙しい時期と決算月をずらせる点も、法人ならではのメリットといえます。
社会的信用を得やすくなる
フリーランスや個人事業主と法人を比較すると、法人の方が社会的信用を得やすい傾向です。
理由として以下の2つが挙げられます。
- ・登記事項が公開されており外部の人が会社の情報を確認できるため
- ・個人事業よりも会社運営に関するルールの方が複雑なため
- ※「厳しいルールを守って会社を運営しているため信頼できる」という考えにつながります。
社会的信用度が上がるため、金融機関からの融資を受けやすくなる・申請できる助成金が増える等の効果が期待できます。
また、取引先を法人に限定している事業者も少なくありません。取引先の選択肢が増える可能性が高い点も、会社設立の大きなメリットといえるでしょう。
フリーランスが会社設立をするデメリット
続いて、フリーランスが会社設立をするデメリットを3つ紹介します。
会社設立に手間やコストがかかる
フリーランスとしての活動を開始するのに特別なコストはかかりません。
事業に用いる備品等の用意や事業内容によっては許認可申請が必要になりますが、開業のために必要な手続きはコストをかけずに進められます。
一方、会社設立には以下のように様々なコストがかかります。
- ・定款認証手数料 ※合同会社の場合は不要
- ・定款用収入印紙代 ※電子定款の場合は不要
- ・謄本手数料
- ・登録免許税
これらの法定費用と呼ばれるコストだけでも、株式会社で20万円程度、合同会社で7~10万円程度です。
会社設立を専門家に依頼する場合、専門家報酬の支払いも発生します。
また、定款の作成や登記申請等、必要な手続きも多岐にわたります。
会社設立の完了後も社会保険の加入手続きや税務署への届出等、様々な作業が必要です。
フリーランスとしての事業活動と違い、会社は始めること自体にコストと手間がかかります。
赤字でも法人住民税の支払いが必要
フリーランスと違い、法人は所得が赤字でも税金の支払いが必要になります。
赤字でも支払いが必要な税金は法人住民税です。
法人住民税は法人税額を基に算定される法人税割と、法人の規模に応じて一定額が発生する均等割によって構成されています。
このうち後者の均等割は所得額が関係ないため、赤字でも支払いが必要になります。
なお均等割の金額は事務所の所在する自治体や法人規模によって異なるため、詳しくは自治体の公式サイト等をご確認ください。
社長1人の場合でも社会保険への加入が必須
法人は社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入が義務付けられています。
従業員を雇っておらず社長1人の会社でも社会保険への加入が必須です。
社会保険料は会社と被保険者が折半する仕組みで、国民健康保険料および国民年金保険料よりも金額が高く設定されています。
そのため会社負担分と個人負担分を合計すると、フリーランスの頃よりも社会保険料の総額が高くなります。
なお、一定の要件を満たす従業員を雇用する場合、労働保険への加入も必要です。
フリーランスが会社設立をする際の注意点
最後に、フリーランスが会社設立をする際の注意点を2つ紹介します。
設立のタイミングによってはかえって税負担が大きくなる恐れがある
フリーランスが会社設立するメリットとして「節税効果を得られる可能性がある点」を紹介しました。
しかし、会社設立によって必ずしも税負担が下がるとは限りません。所得が小さいときに会社設立をしてしまうと、かえって税額が増える恐れがあります。
法人成りを検討するべき目安の1つとして、事業所得が600万円~800万円を超えた・超えそうなタイミングが挙げられます。
法人成りによる節税効果を得られるよう、所得税と法人税の税額の大きさが入れ替わるタイミングに合わせて会社設立をするのが理想です。
会社設立後も必要な手続きがある
「会社設立に手間やコストがかかる」でも少し触れましたが、会社設立が終わった後も必要な手続きがあります。
会社設立後に必要な手続きの具体例は以下の通りです。
- 社会保険の加入手続き
- 法人は社会保険への加入が義務付けられているため、会社設立後に必ず社会保険への加入手続きをする必要があります。
- 税務署への届出
- 法人設立届出書や給与支払事務所等の開設届出書、青色申告の承認申請書等の提出が必要です。
- 自治体への届出
- 都道府県税事務所や市町村役場へ、法人設立届出書を提出する必要があります。
- 法人口座の開設
- 法人口座は必須ではありませんが、スムーズな事業活動のためには会社設立後なるべく早いうちに解説するのが理想です。
このように、法人はフリーランスに比べて運営するために必要な事務手続きが多く存在します。
まとめ
フリーランスが会社設立をする大きなメリットとして、節税効果を期待できる点が挙げられます。
法人税の方が所得税よりも税率が低いため、事業所得が大きい場合は法人成りした方が税負担を抑えられる可能性が高いです。
他にも決算期を好きなタイミングにできる、社会的信用を得やすい等のメリットがあります。
ただし、フリーランスの会社設立にはメリットだけでなくデメリットも存在します。
また、会社ならではの注意点もあり、必ずしも会社設立をするメリットが大きいとは限りません。
メリットだけでなく、デメリットや注意点も押さえた上で、会社設立をするか否か検討しましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士