
予定納税とは、その年に納付する所得税の一部を前払いする制度です。
消費税や法人税にも税金の一部を前払いする制度がありますが、こちらは中間納付と呼びます。
予定納税や中間納付は、前年度の税金が一定以上の場合に対象となります。
予定納税・中間納付も納付が遅れた場合はペナルティを課される恐れがあるため、自身が対象であるか否かの確認が必須です。
今回は予定納税および中間納付について、やり方やメリット、注意点を解説します。
所得税の仕組みについては以下の記事をご覧ください。
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予定納税とは

予定納税は、その年に納付する所得税の一部を前払いする制度です。
基本的には確定申告と納税を同じタイミングに行いますが、税額が一定を超える見込みの場合は予定納税により一部を前払いします。
予定納税と似た言葉に「中間納付」が、こちらも同様に税金の一部を前払いする制度です。
予定納税と中間納付では対象税目が異なります。
予定納税の対象税目と対象者の条件
予定納税の対象税目は以下の3種類です。
- ・所得税
- ・消費税
- ・法人税
※消費税と法人税の納付税額の一部を前払いする制度は、厳密には予定納税ではなく「中間納付」に該当します。
それぞれの税目ごとに、予定納税や中間納付の対象者となる条件や納付額の計算方法を紹介します。
所得税
所得税の予定納税の対象になるのは、予定納税基準額(前年分の所得金額や納税額を基に計算した金額)が15万円を超える人です。
予定納税基準額の計算方法は以下の2通りあります。
1.後述する2に該当しない場合
原則として、その年の5月15日時点で確定している前年分の申告納税額
2.以下a~cのいずれかに該当する場合
前年分の所得税額から源泉徴収税額を控除して計算した額および当該金額の復興特別所得税額の合計額
- a.前年分の所得に分離課税の所得および譲渡所得、一時所得、雑所得、
- 平均課税を受けた臨時所得の金額が含まれている
- b.前年分の所得で外国税額控除の適用を受けている
- c.前年分の所得で災害減免法の規定の適用を受けている
予定納税額は原則として、予定納税基準額の3分の1の金額を計2回納付します。
納期はそれぞれ以下の通りです。
- 第1期分:その年の7月1日~9月30日
- 第2期分:その年の11月1日~11月30日
期日が土日祝と被る場合は翌平日に移ります。
消費税
消費税の中間納付が必要になるのは、前年(法人の場合は前事業年度)の消費税額が48万円を超える場合です。
中間納付の回数および中間納付税額は、直近の課税期間の消費税額に応じて以下のように異なります。
- 48万円超~400万円以下
- 回数:年1回
- 中間納付税額:直近の課税期間の消費税額の6/12
- 400万円超~4,800万円以下
- 回数:年3回
- 中間納付税額:直近の課税期間の消費税額の3/12
- 4,800万円超
- 回数:年11回
- 中間納付税額:直近の課税期間の消費税額の1/12
なお制度上は、消費税の中間納付とあわせて中間申告の実施も必要です。
しかし中間申告書を期日までに提出しない場合は、直近の課税期間の消費税額を基に算出した税額を記載した申告書を提出したとみなされます。
そのため中間納付さえ期日までに実施すれば、中間申告書の提出をしなくても実務上は問題ありません。
法人税
法人税の中間納付の対象になるのは、前事業年度の法人税額が20万円を超える場合です。
中間納付の額は前年の法人税額の2分の1で、事業年度開始から半年を経過した月から2ヶ月以内が納付期限となります。
法人税にも中間申告の制度がありますが、消費税と同様、中間納付さえ期日までに行えば実務上特に問題ありません。
予定納税・中間納付の納付方法
予定納税と中間納付は、いずれも納付額を通知書またはe-Taxのメッセージで確認できます。事業者側で計算する必要はありません。
記載された金額を、以下いずれかの方法で期日までに納付します。
- 窓口納付
- 金融機関または税務署の窓口で直接納付する方法です。
- その場で領収書を受け取れる・支払金額の上限がない等のメリットがあります。
- コンビニ納付
- QRコードもしくはバーコード付きの納付書を使いコンビニで納付する方法です。
- 利用可能額が30万円以下という制限があります。
- ダイレクト納付
- e-Taxを利用し銀行口座から引き落としにより納付する方法です。
- e-Taxおよび利用する金融機関のシステムが利用可能な時間であればいつでも実施できます。事前に税務署へダイレクト納付の届出が必要です。
- インターネットバンキングで納付
- e-Taxを利用しインターネットバンキングで振込により納付する方法です。
- ダイレクト納付と違い税務署への届出は不要ですが、対応しているインターネットバンキング口座を保有している必要があります。
- クレジットカード納付
- 国税クレジットカードお支払サイトからクレジットカードで納付する方法です。
- 決済手数料がかかります。
- スマホアプリ納付
- 国税スマートフォン決済専用サイトを経由し、Pay払いで納付する方法です。
- 利用可能額が30万円以下という制限があります。
- 振替納税
- 納税者名義の口座から納付額が自動引き落としされる方法です。
- 振替納税を利用する国税の納期限までに「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を提出する必要があります。
予定納税・中間納付のメリット

予定納税・中間納付のメリットは、高額の税金を一括ではなく分割で払えるため資金繰りがしやすくなる点です。
予定納税・中間納付は、いずれも前年度の税額が一定を超える納税者を対象としています。
もし予定納税・中間納付の仕組みがなければ、確定申告と同じタイミングで高額の税金を一括で払うことになる可能性が高いです。
短期間に多額の支出が発生すると資金繰りが悪化しやすく、後に影響を及ぼす恐れもあります。
1年間に支払う税額の合計が同じでも、分割で少しずつ納付できる方が資金計画を立てやすく、負担も軽く済むでしょう。
予定納税と中間納付は、納税による資金繰りへの影響を抑える効果が期待できる制度といえます。
なお、予定納税や中間納付で払った分がその年の納税額を超えていれば確定申告によって還付を受けられます。
予定納税や中間納付によって税金の払い過ぎになってしまうという心配はありません。
予定納税・中間納付の注意点

予定納税・中間納付の注意点は、どちらも納付期限がある点です。
期限を過ぎると延滞税が課されるため注意する必要があります。
そもそも予定納税や中間納付は、要件を満たす納税者に課される義務です。
要件を満たす場合は自動的に予定納税・中間納付の対象者になります。自身で選択できるわけではありません。
対象者であると認識していない場合、納付期限が近づいてから納税資金が足りないと発覚する恐れや、納付漏れを起こす恐れがあります。
所得税・消費税・法人税の納付額が高額な場合は、予定納税や中間納付について必ず確認しましょう。
なお、所得税の予定納税が困難な場合は減額申請をするのも1つの手段です。
本年分の申告納税見積額が予定納税基準額よりも少なくなると見込まれる場合等に減額申請ができます。
詳しくは国税庁の公式サイトをご確認ください。
まとめ
予定納税および中間納付は、その年に納付する所得税の一部を前払いする制度です。
所得税の前払いを予定納税、消費税および法人税の前払いを中間納付と呼びます。
予定納税・中間納付はいずれも前年度の税金が一定以上の場合に対象となります。
その年の申告納税額が高額になる見込みのある者を対象にした制度といえるでしょう。
予定納税・中間納付による納付税額は、いずれも郵送による通知書またはe-Taxのメッセージで確認できます。
予定納税・中間納付の制度により高額の税金を分割で支払えるため、資金繰りをしやすくなる効果が期待できます。
一方、予定納税・中間納付ともに納期限を過ぎると延滞税の対象になる点に注意が必要です。
所得税・消費税・法人税の納付額が高額であった場合、予定納税や中間納付の対象にあるかを必ず確認しましょう。
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記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士