赤字決算の時に法人税はどうなる?免除の有無について解説!

2024.07.17

法人が赤字決算の場合、法人の所得に対して課される税金が免除されます。

たとえば法人税は法人の所得に対して所定の税率を乗じた額が課されるため、赤字決算であれば法人税は免除されます。

反対に、所得に課される税金以外は赤字決算でも免除されません。

税務申告や納税を漏れなく確実に行うため、赤字決算の時に免除される税金とそうでない税金について正しい理解が必要です。

 

今回は法人が赤字決算の場合に免除される税金と、赤字決算でも課される税金それぞれについて詳しく解説します。

 

法人税申告書の書き方については以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

法人が赤字決算の時に免除される税金

法人が赤字決算の時に免除されるのは、法人の所得や法人税額に一定の税率を乗じて納付額を算出する税金です。具体例を紹介します。

法人税

法人税は、法人の所得に対して課される税金です。

法人税の納付額は以下の計算式で求めます。

法人税額=課税所得×税率-税額控除

 

中小企業の場合、適用される法人税率は以下の通りです。

  • ・年800万円以下の部分:15% ※適用除外事業者は19%
  • ・年800万円超の部分:23.2%

法人の所得が赤字であれば、課税所得×税率がマイナスになり納付税額が発生しません。

したがって法人が赤字の場合は法人税が免除されます。

 

なお赤字決算の場合、法人税について以下いずれかの選択肢をとれます。

  • ・赤字を繰り越して黒字と相殺し、翌期以降の法人税を減額する
  • ・前期に法人税の納税をしていた場合、欠損金の繰戻しによる還付請求を行う

どちらの方が適しているかはケースによって異なるため、自社の状況を考慮して判断しましょう。

 

また法人税とあわせて申告・納付を行う地方法人税も、赤字決算であれば免除されます。

地方法人税は地方交付税の財源を確保する目的で課される税金で、計算式は以下の通りです。

地方法人税=法人税×10.3%(地方法人税率)

 

赤字決算であれば法人税が発生しないため、法人税額をもとに計算する地方法人税も必然的にゼロとなります。

法人事業税・特別法人事業税

法人事業税は、「法人が事業活動を行うにあたって行政サービスを利用するため、行政サービスに必要な経費を負担するべき」という考えに基づく税金です。

法人事業税は以下の式で計算します。

法人事業税=課税標準額×税率

 

法人事業税は以下の3つによって構成されます。

  • 所得割
  • 所得を課税標準とする部分です。
  •  
  • 資本割
  • 法人の資本金等の額を課税標準とします。資本金が1億円を超える会社のみ発生します。
  •  
  • 付加価値割
  • 各事業年度の付加価値額を課税標準とする部分です。
  • 資本割と同様に資本金が1億円を超える会社のみ発生します。

資本金1億円以下であれば所得割のみが課されるため、赤字決算であれば法人事業税が免除されます。

 

特別法人事業税とは、地方法人課税における税源の偏在を是正する目的の税金です。

法人事業税の申告納付義務がある法人に課されます。

 

特別法人事業税額の計算式は以下の通りです。

特別法人事業税=法人事業税の所得割額または収入割額×税率

 

資本金1億円以下で赤字決算の会社であれば法人事業税の所得割額が0円で収入割額は発生しないため、特別法人事業税も免除されます。

赤字決算の法人で一部免除される税金「法人住民税」

法人住民税とは、会社の事業所が所在する自治体に納付する税金です。

都道府県と市町村それぞれに対して申告および納税が必要です。申告書も法人都道府県民税と法人市民税で分かれています。

※東京23区は区への申告は不要、都税事務所のみ

 

法人住民税は以下の2つから構成されています。

  •  
  • 法人税割
  • 法人税額に一定税率を乗じた額が納付税額となる部分です。
  • 赤字決算であれば法人税が免除されるため、法人住民税の法人税割部分も発生しません。
  •  
  • 均等割
  • 法人の資本金や従業員数等の規模をもとに定額を課される部分であり、赤字でも納付が必要です。

赤字決算の場合は法人住民税のうち法人税割のみ免除されます。

均等割は所得の有無および大きさは関係なく、赤字決算でも納付が必要です。

法人が赤字決算でも免除されない税金

納付税額を求める際に所得額や法人税額を使わない税金は、赤字決算でも原則として免除されません。

赤字決算でも発生する税金の具体例を7つ紹介します。

消費税

消費税は、日本国内における商品の販売やサービス提供などの取引に課される税金です。

消費税の納付税額は以下いずれかの方法で計算します。

 

  • 原則課税
  • 名前の通り原則的な計算方法です。
  • 納付税額=売上に係る消費税額-仕入に係る消費税額
  •  
  • 簡易課税
  • 前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下の事業者のみ選択できる方法です。
  • 売上に係る税額に業種ごとに定められたみなし仕入率を乗じた額を、仕入れに係る消費税額として計算します。
  • 納付税額=売上に係る消費税額-売上に係る消費税額×みなし仕入率
  •  

消費税の納付税額に法人の損益は関係ないため、赤字でも納税義務が発生します。

固定資産税(償却資産税)

固定資産税は、不動産や償却資産などの固定資産に対して課せられる税金です。

固定資産税のうち償却資産にかかる税金を償却資産税と呼びます。

 

固定資産税・償却資産税は、対象の固定資産の価値に一定税率を乗じて納付額を計算する仕組みです。

対象となる固定資産を保有していれば、赤字決算でも納税義務が発生します。

登録免許税

登録免許税とは、登記や登録等を受ける際に納付が必要な税金です。登記等の種類ごとに課税標準および税率が定められています。

法人が納付する場面の主な例として、設立登記や本店・支店等の移転登記、不動産登記等が挙げられます。

所得の有無や金額は関係なく、赤字決算の場合も登記等を行う場合は登録免許税の納付が必要です。

自動車税

自動車税は、自動車を保有している場合に課される税金です。

税額は車の種類や総排気量に応じて定められています。

 

その年の4月1日時点で法人名義の自動車を保有している場合は自動車税の納付義務が生じます。

自動車税の計算に所得の有無や大きさは一切関係ないため、赤字決算でも免除されません。

印紙税

印紙税とは、課税対象の書類を作成した際に課される税金です。

対象となる文書の例として契約書や一定額を超える領収書が挙げられます。税額は対象の文書における取引額によって異なります。

対象の書類を作成することで納付義務が生じるため、赤字決算でも免除されません。

源泉所得税

源泉所得税とは、源泉徴収によって従業員や外注先から預かった所得税です。納付義務があるのは法人ですが、法人が直接負担する税金ではありません。

源泉徴収義務者となる要件を満たしていれば赤字決算でも納付する必要があります。

 

なお、源泉所得税の納付期限は原則として源泉徴収した月の翌月10日です。

ただし給与の支給人員が常時10人未満の事務所や法人であれば、源泉徴収した税額を半年分まとめて納付することもできます。

住民税

法人は原則として、従業員や役員の給与から住民税を天引きし、納税者に代わって納付する必要があります。

赤字決算の場合も住民税の納付義務は免除されません。

前項で紹介した源泉所得税と同様に、納付者と負担する人が異なる税金です。

まとめ

法人が赤字決算の場合に免除されるのは、法人の所得や法人税額をもとに納付額を計算する税金です。

法人税、法人事業税・特別法人事業税、法人住民税の法人税割が免除されます。

 

反対に、納付額の計算に所得額や法人税額を用いない、所得の有無や大きさが関係ない税金は赤字決算でも免除されません。

消費税や登録免許税をはじめ、多くの税金は赤字決算の場合でも納付する必要があります。

 

赤字決算の場合に免除される税金とそうでない税金を把握しなければ、納税漏れを起こすリスクや、資金計画に影響する恐れがあります。

納税義務が免除される要件や税額の計算方法をしっかり押さえましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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