株主名簿とは?記載内容や作成方法、必要シーンについて解説!

2024.07.17

株主名簿とは、株主に関する基本情報を記載した帳簿です。

株主名簿に所定の書式はなく、必要事項さえ記載していれば好きな書式で作成できます。

 

株主名簿はすべての株式会社に作成が義務付けられています。

作成や保管を怠る、情報が古い等の事実が発覚した場合は罰則の恐れがあるため注意しましょう。

今回は株主名簿について詳しく解説します。

 

株主構成については以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

株主名簿とは

株主名簿とは、株主に関する基本情報を記載した帳簿です。株主の人数や規模に関係なく作成および保管が義務付けられています。

 

株主名簿は株式会社の設立時に作成する必要があります。

また、株主の情報に変更が生じた場合は都度更新が必要です。

 

なお、以前は税務署へ会社設立届出書を提出する際に株主名簿の提出も必要でした。

平成31年の税制改正により複数の添付書類が不要になり、現在必要な添付書類は定款等の写しのみとなっています。

株主リストや株主名簿記載事項証明書との違い

株主名簿と似たイメージの帳簿との違いについて解説します。

株主リスト

商号や役員等の変更登記を行う際に法務局へ提出が必要な書類です。

株主名簿との主な違いは以下の3点です。

 

  • 作成が必要なタイミング
  • 株主名簿は会社設立時や株主に関する変更が生じた時、株主リストは変更登記申請の際に必要です。
  •  
  • 記載内容
  • 株主リストには議決権の数や議決権割合の記載が必要となります。
  • ※株主名簿の記載内容については後述します。
  •  
  • 作成を定める法律
  • 株主名簿は会社法に基づく帳簿です。一方で株主リストは商業登記規則で作成や提出が定められています。

株主名簿記載事項証明書

株券を発行しない会社で株式譲渡を行う場合に必要な書類です。

 

株券を発行しない会社では、株券の引き渡しによる株式所有の証明ができません。

したがって株券を譲渡する側が所有者である旨を証明するために発行する必要があります。

基本情報の記載に加え、代表者の署名および記名押印が必要です。

株主名簿の作成方法

株主名簿に規定の書式はありません。必要事項さえ記載していれば好きな書式で作成可能です。

法務局の公式サイトで株主名簿の記載例が公開されているので、こちらを確認することをおすすめします。

 

テンプレートも多く公開されていますが、テンプレートを使用する前に、記載項目に不足がないか確認するのが安心です。

前述した法務局の記載例とテンプレートを照らし合わせて内容に問題ないか確認するのが良いでしょう。

株主名簿の管理方法

株主名簿は原則として会社の本店で保管するよう定められています。

前述した株主リストは法務局へ提出する物ですが、株主名簿は基本的にどこかへ提出するわけではありません。

本店で保管し、必要に応じていつでも提示できる状態にすることが求められます。

 

例外として、株主名簿管理人を定めている場合は管理人や管理会社が保管することも可能です。

株主名簿管理人を設置する場合は以下の手続きを行う必要があります。

  • 1.株主総会で特別決議を行い、定款に定める
  • 2.取締役会で株主名簿管理人を選任する
  • 3.管理人と委任契約を結ぶ
  • 4.株主名簿管理人の設置の登記を行う
  •  

株主名簿は書面に限らず、電磁的記録も認められています。

ただし電磁的記録はe-文書法(電子文書法)に従う必要があり、細かな要件が定められている点にご注意ください。

見読性・完全性・機密性・検索性という4つの要件を満たす必要があります。

 

電磁的記録によって記録された情報等の閲覧方法については法務省公式サイト「会社法等の規定による閲覧等の方法について」でも案内されています。

株主名簿を作成しなかった場合の罰則

株主名簿は社長1人の会社でも作成が必要です。

義務を怠っていると発覚した場合は100万円以下の過料を科せられる恐れがあります。

また、情報が古いままの場合も罰則の対象になる恐れがあるため注意しましょう。

株主名簿の記載内容

続いて、株主名簿に記載が必要な内容について解説します。なお、各項目の順番について特に決まりはありません。

株主の氏名または名称

個人の場合は氏名を、法人の場合は名称(商号)を書きます。

株主の住所

個人の場合はその人の住所を、法人の場合は本店所在地の記載が必要です。

各項目の順番に特別な規定はありませんが、氏名または名称の次に住所を書くケースが多くみられます。

株主の保有する株式数と株式の種類

各株主が保有する株式数や株式の種類について記載が必要です。株式の種類として普通株式や優先株、劣後株等が挙げられます。

株式を取得した日付

対象の株主が株式を取得した日付を記載します。西暦・和暦どちらを使っても問題ありませんが、どちらか一方に統一しましょう。

一般的に、株式代金の払い込みが完了した日が株式を取得した日となります。会社設立時の場合は、会社設立日を記入します。

株券番号

紙の株券それぞれに記載されている番号です。株券を発行している場合のみ書く必要があります。

株券を発行していない場合は株券番号の欄に「-」等の記号を入れ、備考欄に「株券不発行」と書くのが一般的です。

その他ケースによって記載が必要な項目

これまで紹介した5つはすべてのケースで記載が必要な項目です。

その他にもケースによっては記載が必要な項目があります。

 

  • 株式に質権が設定されている場合
  • ・質権者の氏名または名称および住所
  • ・質権の目的である株式の数
  • ※質権は担保物権の一種です。株式を担保にお金を借りることを「株式に質権を設定する」といいます。
  •  
  • 株式が信託財産になった場合
  • 株式が信託財産になった旨の記載が必要です。
  •  
  • 株券の不所持を申し出た場合
  • 株券不所持申出があった株式にかかる株券を発行しない旨を記載する必要があります。

株主名簿が必要になるシーン

最後に、株主名簿が必要になるシーンの具体例を2つ紹介します。

株主等から閲覧謄写の請求があったとき

株主や債権者は、会社の営業時間中であればいつでも株主名簿の閲覧謄写の請求が可能です。

株主等からの請求にすぐ対応できるよう、帳簿を適切に管理する必要があります。

 

例外として、以下のようなケースに該当する場合は株主等からの請求を拒絶できます。

  • ・請求目的が権利の確保または行使に関する調査以外である
  • ・株式会社の業務遂行を妨げる目的、もしくは株主の共同の利益を害する目的である
  • ・閲覧謄写によって知った情報を、利益を得て第三者に通報する目的で請求をした
  • ・当該株主が過去2年以内に、閲覧謄写によって知った情報を利益を得て第三者に通報したことがある

株主の権利保護を把握・管理する必要があるとき

株主の権利保護を把握・管理する必要があるシーンでも株主名簿が必要です。

該当するシーンの具体例として以下の2つが挙げられます。

  •  
  • 株主総会の開催時
  • 株主総会の開催時は名簿に記載された全員を対象に召集をかけるため、株主名簿が必要となります。
  •  
  • 権利行使を求めている人物が本当に株主であるかを確認するとき
  • 配当金の受け取りを始めとした権利行使を求める人物がいたとき、その人が株主であるかを確認するために必要です。
  • 株主名簿がなければ誤った権利を主張された時に気づけず、トラブルの原因となってしまう恐れがあります。

まとめ

株主名簿は株主の氏名や保有株式数等、株主に関する基本情報をまとめた帳簿です。

社長1人のケースを含め、すべての株式会社に作成が義務付けられています。

 

株主名簿が必要な場面は複数存在します。株主名簿がなければ適切な対応ができず、トラブルにつながる恐れがあるため必ず作成しましょう。

また、株主名簿の作成や保管を怠ると100万円以下の過料を科されます。

 

今回紹介した内容を押さえ、株主名簿の適切な作成および保管を行いましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ合同会社代表公認会計士

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