キャリアアップ助成金とは、非正規雇用者の正社員登用や待遇の改善を目的とした制度です。
制度を利用するには、全体に共通する条件に加え、コースごとに定められた条件も満たす必要があります。
申請要件が厳しいため、注意点について事前の確認が欠かせません。
今回はキャリアアップ助成金について詳しく解説します。
会社設立時に利用できる補助金や助成金については以下の記事もご覧ください。
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CONTENTS
キャリアアップ助成金とは
対象となる事業主
同助成金の対象になるのは、以下の条件をすべて満たす事業主のみです。
- ・雇用保険適用事業所の事業主である
- ・雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者が在籍している
- ・キャリアアップ計画を作成し認定を受けている
- ・賃金の算出方法を明らかにできるような体制を整えている
- ・計画書で定めた期間内に取り組みを実施した
上記は全体に共通する内容です。これらに加えて、コースごとの条件も満たす必要があります。
なお、前述の条件を満たしていても、以下いずれかに当てはまる場合は対象外です。
- ・労働保険料を支払っていない年度がある
- ・申請日の前日から1年以内に労働関係法令に反した
- ・除外対象となる営業に携わっている
- ・暴力団との関わりがある
- ・暴力主義的破壊活動を行った、もしくは行う恐れがあるとみなされる団体等に属している
- ・倒産している
- ・雇用保険適用事業所の事業主ではなくなった
各コースの概要
キャリアアップ助成金のコースは全部で6つです。それぞれ詳しく解説します。
※中小企業と大企業で要件が異なる部分もありますが、今回は中小企業の内容のみを紹介します。
正社員化コース
正社員化した場合に利用できるコースです。全6コースのうち最も多く利用されています。
助成額は取り組み前の雇用形態によって以下のように異なります。
- ・有期雇用労働者:80万円(40万円×2期)
- ・無期雇用労働者:40万円(20万円×2期)
なお、特定の要件を満たす場合は一定額の加算が発生する仕組みです。
障害者正社員化コース
障害を持つ非正規雇用者を正規雇用へ転換する場合等に利用できるコースです。
支給額は労働者の区分や措置内容によって細かく設定されています。
賃金規定等改定コース
非正規雇用者の基本給の賃金規定等を一定以上増額した場合に利用できるコースです。
支給額は企業規模および賃金引上げ率によって以下のように定められています。
- ・3%以上5%未満:5万円
- ・5%以上:6万5,000円
なお、職務評価の手法を活用した場合は20万円加算されます。加算を受けられるのは1回のみです。
賃金規定等共通化コース
正規雇用者と共通の賃金規定等を作成および適用した場合に受けられるコースです。
1事業所あたり1回のみ、金額は60万円となります。
賞与・退職金制度導入コース
非正規雇用者を対象とした賞与・退職金制度を新設し、制度に従って支給や積み立てを行った場合に受けられるコースです。
受給できるのは1回のみ、金額は条件によって以下のように異なります。
- ・賞与または退職金のうち一方を導入:40万円
- ・両方を同時に導入:56万8,000円
社会保険適用時処遇改善コース
短時間労働者を対象とした以下いずれかの取り組みを行う場合に受けられるコースです。
- ・新たに社会保険の被保険者となる要件を満たして被保険者となった際、賃金総額を増加させる取り組みを行う
- ・週の所定労働時間を延長する取り組みにより、対象の労働者が社会保険の被保険者になった
1人あたりの助成額は以下の通りです。
- ・1年目・2年目の取り組み:40万円(10万円×4期)
- ・3年目の取り組み:10万円
キャリアアップ助成金の申請方法
同制度の申請を行うには、事前に労働組合等の意見をきいた上で「キャリアアップ計画」の作成が必要です。
その後の流れは正社員化関係と処遇改善支援関係で異なります。
両者に共通するのは以下の2つです。
- ・計画書の内容を遂行する必要がある
- ・支給申請は賃金支払いを6ヶ月続けた後
手続きの詳細は公式サイトやパンフレット等をご確認ください。
キャリアアップ助成金の注意点
キャリアアップ助成金の注意点を3つ紹介します。
申請要件が厳しい
キャリアアップ助成金は、申請要件が厳しく受給ハードルが高い制度です。
全体に共通する条件に加えて各コースの条件も満たす必要があり、そもそも満たすべき条件が非常に多いといえます。
要件を満たしたつもりでも、実は対象外であったというケースも珍しくありません。
助成金の支給を受けられないケースとして以下の例が挙げられます。
- ・法令違反を犯していた
- 気づきにくい違反行為も存在するため、入念にチェックしましょう。
- ・実地調査を拒否した
- 申請後に行われる実地調査を拒否した場合も対象外になってしまう恐れが大きいです。
- ・会計検査へ協力しなかった
- 会計検査に協力しなかった場合も対象外となってしまうため注意しましょう。
- ・修正対応等の必要な作業をしなかった
- 書類の不備や漏れがあった場合に修正等の必要な作業を行う必要があります。
- ・過去5年以内に不正受給をしている
また、受給するには事前に計画の認定を受ける必要があります。
認定前に正社員化等をしてしまうと、ほかの条件を満たしても受給対象になりません。
受給までに時間がかかる
支給申請ができるのは、各種取り組みを実施し、それから6ヶ月間賃金の支払いをした後です。
受給に向けて活動を開始してから申請できるまで最短でも6ヶ月はかかります。
申請後に審査も行われるため、さらに時間を要します。
しかし、申請から支給実行までにある程度時間がかかるのは助成金の多くに共通する要素です。
助成対象となる取り組みを実施した後に支給という流れも一般的です。
それまでに発生するコストは一度自身で負担する必要があるため、「現在足りていないお金を補うために申し込む」といった使い方はできない点にご注意ください。
キャリアアップ計画の着実な遂行が必要
キャリアアップ助成金は、事前に作成・認定を受ける計画の内容を実施することで受給できる制度です。
計画書の内容を遂行しなければ申請要件を満たしていないとされ、支給を受けられません。
計画書を作成する際は、現実的に実行可能な内容であるかを十分に考慮しましょう。
他の制度を検討するのも1つの手段
助成金や補助金は細かな要件が定められているのが一般的です。
要件を満たしていなければ、申請しても審査に通過する可能性はほぼありません。
今回紹介した制度の要件を満たしていない場合は、別のものに申し込むのが良いでしょう。
別の制度であれば問題なく申請できるケースは十分に有り得ます。
要件を満たすために時間やコストをかけて対策するよりも、すでに要件を満たしている制度を探す方が効率的な可能性も高いです。
人事労務に関連する制度として他にも以下の例が挙げられます。
- 働き方改革推進支援助成金
- 労働時間の削減や年休取得促進に向けた取り組み等を行う事業主を対象とする制度です。
- 地域雇用開発助成金
- 雇用機会が不足している地域において事業所の設置や整備、雇入れ等を行う場合に利用できる制度です。
- 会社設立直後でも利用できる可能性があります。
- 職場適応訓練費
- 訓練生の受け入れおよび訓練を実施した事業主を対象とする制度です。
- ※職場適応訓練は、現場で作業訓練を行い、作業環境への適応を容易にすることを目的としています。
また、自治体が運営する独自の制度も存在します。基本的には当該自治体で事業活動を行うことが条件の1つです。
対象者の範囲が狭い分、自治体での活動という要件さえ満たせば利用しやすいものが多く存在します。
助成金や補助金について調べ、自社に適したものを探すことが大切です。
まとめ
キャリアアップ助成金は非正規雇用者の正社員化や待遇の改善を実施した場合に利用できる制度です。
全体に共通する条件に加え、コースごとに設けられている個別の条件も満たす必要があります。
同助成金の受給をするには、事前にキャリアアップ計画を作成し認定を受ける必要があります。手順を誤ってしまうと支給を受けられません。
また、計画書の内容を確実に遂行することも必須要件となります。
助成金を確実に受給できるよう、制度について理解を深めた上で手続き等を行いましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士