会計参与とは、計算関係書類の作成や当該書類を利害関係者に開示する職務を持つ役員です。
会計参与がいる会社を会計参与設置会社といいます。
会計参与は一部の例外を除き設置は任意となります。
会計参与の設置にはさまざまなメリットがあるため、自社の状況に応じて設置を検討するのも1つの手段です。
ただし、会計参与を設置するには複数の手順を踏む必要がある点に注意する必要があります。
今回は会計参与について詳しく解説します。
会社設立時に必要な役員については以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
会計参与とは
会計参与とは、会社法で規定されている役員の1つです。株式会社の役員ではありますが、ほかの役員とは違い独立した立場を維持します。
会計参与の職務は以下の2つです。
- ・取締役や執行役と共同して計算関係書類を作成する
- ・作成した計算関係書類を会社とは別に備え置き、株主や債権者等の利害関係者に開示する
会計参与がいる会社を会計参与設置会社といいます。
会計参与の設置義務
会計参与の設置は原則として任意です。
ただし例外として、以下の条件をすべて満たす会社は監査役の設置義務があります。
- ・非公開会社(株式譲渡制限会社)である
- ・取締役会を設置している
- ・監査役がいない
取締役会を設置している会社には、最低3人以上の取締役と最低1人以上の監査役の設置が必要です。
ただし非公開会社の場合は監査役ではなく会計参与を設置することも認められています。
そのため、取締役会を設置している非公開会社において監査役を設置しない場合は会計参与の設置が必要となります。
なお、公開会社は監査役に代わって会計参与を置くことは認められません。
要件を満たす公開会社は監査役が必須となり、会計参与の設置は任意となります。
会計参与の仕事内容
会計参与の主な仕事内容として、以下の7つが挙げられます。
- ・取締役や執行役とともに計算書類等を作成する
- ・会計参与報告を作成する
- ・作成した計算書類等を会社とは別に備え置く
- 備え置きが必要な期間は5年間です
- ・取締役会や株主総会に出席する
- 必要に応じて発言をする必要もあります
- ・株主や債権者等の利害関係者から受ける開示請求に対応する
- ・取締役に不正行為や定款に反する重大な事実があった場合、監査役等に報告する
- ・財務データの収集や分析、意思決定の支援を行う
監査役との違い
監査役は、株式会社を構成する機関の1つで、会計参与と同じく会社法上の役員です。
取締役やその他役員の職務執行が適正であるかを監査する役割を担います。
監査役と会計参与の違いを3つ紹介します。
職務の焦点および範囲
会計参与の職務は、取締役や執行役と共同して計算関係書類を作成すること・当該書類を会社とは別に備え置き利害関係者に開示することです。
計算書類等の作成を取締役や執行役と共同して行う点が特徴として挙げられます。
取締役等のチェックというよりは、意思決定の支援や専門的なサポートが職務の焦点となります。
一方で監査役の職務の焦点は、取締役等の職務執行が適正であるか・不正がないかを確認することです。
企業のサポートというよりは、利害関係者の保護を目的としています。
必要な資格
監査人になるのに必要な資格は特にありません。当該会社およびその子会社の取締役等を除き誰でも監査人になれます。
会計参与になれるのは以下いずれかの資格保有者および法人のみです。
- ・公認会計士
- ・税理士
- ・監査法人
- ・税理士法人
任期
監査役の任期は4年、会計参与の任期は2年です。
ただし、非公開会社の場合は両社とも定款で10年まで伸長できます。
会計参与の欠格事由
会計参与の欠格事由として以下の3点が挙げられます。
- 会計参与を行う会社およびその子会社の取締役・執行役・監査役・使用人である
- これらに当てはまる場合は地位の独立性が認められないため、会計参与になれません。
- なお、顧問税理士は会計参与になれます。
- 業務停止処分を受けており、その停止期間が経過していない
- 税理士法第43条の規定により税理士業務を行うことができない
会計参与を設置するメリット
前章で紹介したように、会計参与は一部の会社を除き設置は任意となります。
会計参与の設置にはさまざまなメリットがあるため、会社のケースに応じて設置を検討するのも良いでしょう。
会計参与を設置するメリットを3つ紹介します。
計算関係書類の正確性が上がる
会計参与になれるのは、公認会計士や税理士など会計・税務のスペシャリストのみです。
会計参与の持つ会計・税務の専門知識を活用できれば、計算関係書類の正確性が向上します。
結果として以下のメリットを得られます。
- ・正確な計算関係書類を作成できるため、税務調査による指摘を受けるリスクが抑えられる
- ・正確な情報に基づいた戦略設計ができるようになる
- ・株主や債権者などの利害関係者から信用を得られる、ミスにより信用を失う恐れが小さくなる
取締役の業務軽減につながる
会計参与の業務の1つとして「取締役や執行役とともに計算関係書類等を作成する」が挙げられます。
つまり、会計参与を設置すれば、計算関係書類の作成にかかる負担の分散が可能です。
計算関係書類の作成にかかる負担を軽減できる分、ほかの業務に割ける時間が多くなるでしょう。
融資を受けやすくなる可能性がある
会計参与の設置により、融資を受けやすくなる可能性があります。
理由は以下の3つです。
- ・計算関係書類のミスという、金融機関からの悪印象につながる要素が起こりにくい
- ・「会計参与を設置している」という事実そのものが信頼につながりやすい
- ・会計参与の専門知識を活かした適切な財務戦略を立てられるようになる
会計参与の設置手順
会計参与の設置手順は大きく3つの工程に分けられます。それぞれ詳しく解説します。
株主総会の決議を行う
会計参与の設置にともない定款の変更が必要です。
定款の変更は特別決議の対象のため、まずは株主総会の特別決議を行う必要があります。
特別決議は以下の2つを満たす必要があります。
- ・議決権の過半数を持つ株主が出席する
- ・出席した株主の議決権のうち3分の2以上が賛成する
会計参与の選任においては、株主総会の特殊普通決議が必要です。
特殊普通決議は会計参与を含む役員の選任または解任の決議に関する方式です。通常の普通決議と違い、定足数について3分の1を下回る割合には設定できません。
就任の承諾を行う
会計参与を設置するためには、選任された者が会計参与への就任を承諾する必要があります。
就任の承諾を行う方法として、主に以下の2つが挙げられます。
- ・選任した者から会計参与の就任承諾書を提出してもらう
- ・株主総会議事録の中で、会計参与の就任承諾についての記述をする
登記申請を行う
会計参与の就任承諾後、本店所在地を管轄する法務局へ登記申請が必要です。
登記すべき事項として以下の3点が挙げられます。
- ・就任する会計参与の氏名または名称
- ・就任年月日
- ・会計参与による計算書類等の備え置き場所
添付書類として以下の例が挙げられます。
- ・定款
- ・株主総会議事録(株主リスト)
- ・会計参与の就任承諾書
- ・会計参与となる資格を有することを証明する書類
- 会計参与が法人の場合は当該法人の登記事項証明書、個人の場合は資格を証明する書類が必要です
なお、登記申請の期日は効力発生日(会計参与に就任した日)から2週間以内です。
まとめ
会計参与は、計算関係書類の作成や当該書類を利害関係者に開示する職務を持つ役員です。
公認会計士・税理士・監査法人・税理士法人のみが会計参与に就任できます。
会計参与の設置は基本的に任意です。一部の例外を除き会計参与の設置義務はありません。
しかし、会計参与の設置には、計算関係書類の正確性の向上をはじめとした複数のメリットがあります。
自社の状況を考慮し、会計参与の設置を検討してみるのも良いでしょう。
会計参与を設置するには株主総会の決議や就任の承諾、登記申請といった所定の手続きが必要です。
会計参与を設置するのであれば、今回紹介した内容を押さえて適切な手続きを行いましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士