みなし解散とは、一定期間登記簿に変更がなく経営実態がないとみなされる法人に対して強制的に解散の登記を行うことです。
みなし解散の対象となる法人には管轄登記所から通知書が発送されます。
みなし解散の通知が来た後でも、期日までに必要な手続きを行えばみなし解散は実行されません。
最も避けるべきなのが、みなし解散の通知が届いた後に放置することです。解散する、会社を継続する、いずれの場合でも何らかの対処を行う必要はあります。
今回はみなし解散の概要や通知後の対処方法、注意点について詳しく解説します。
法人登記については以下の記事をご覧ください。
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みなし解散とは
みなし解散とは、一定期間登記簿に変更がなく経営実態がないとみなされる法人に対して強制的に解散の登記を行うことです。
いきなり解散登記が実施されるわけではなく、対象の会社に対して事前に通知が行われます。
みなし解散の対象
みなし解散の対象になるのは以下の法人です。
- ・12年以上登記が行われていない株式会社および有限会社
- ・5年以上登記が行われていない一般社団法人および一般財団法人
上記の法人を対象に管轄登記所からみなし解散を行う旨の通知書が発送されます。
その後、期日までに必要な登記申請および「事業を廃止していない」旨の届出をしない場合、強制的に解散登記が行われる仕組みです。
12年以上登記が行われていない会社に経営実態がないとみなされる理由として、役員の任期に関するルールが挙げられます。
株式会社は役員の任期が最長10年であり、変更の際は登記が必要です。任期が切れた後に再任した場合でも役員変更の登記を行う必要があります。
つまり、株式会社は最低でも10年に1度は変更登記が必要となる仕組みです。
したがって、10年を超えて登記がない会社は実態がない可能性が高いとみなされます。
以上の理由から、12年以上登記が行われていない会社はみなし解散の対象になるのです。
なお合同会社などの持分会社は社員の任期がなく、長期間登記が行われていない場合でも経営実態がないとは限りません。
そのため持分会社はみなし解散の対象にならない仕組みです。
みなし解散の目的
みなし解散の目的は主に2つです。
1つ目は、商業登記という制度の信頼を維持することです。
そもそも商業登記とは、商号や会社等に関する一定の事項を広く公示し、信用の維持や取引の安全を確保することを目的としています。
しかし、経営実態のない法人が登記に残り続けた状態では、商業登記の目的が適切に果たされない恐れが大きいです。
商業登記という制度の信頼失墜につながるため、経営実態がないとみなされる法人を強制的に解散する制度が導入されています。
2つ目は、休眠会社の悪用による犯罪を防止することです。休眠会社の売買により、休眠会社が犯罪の手段とされるリスクがあります。
このような犯罪を防止するためにも、みなし解散の制度が必要です。
みなし解散が行われるタイミング
通知が発送されるタイミングは不定期で年によって異なります。また、通知と同時に法務大臣による官報公告が行われます。
通知および公告から2ヶ月以内に必要な手続きを行わなければ解散登記が行われる仕組みです。
【参考】みなし解散の推移
令和5年度までにみなし解散の登記が行われた休眠会社の数は約71万社です。
参考として、各年度においてみなし解散が実施された会社の数を紹介します。
※直近10年分
- 令和5年:27,887社
- 令和4年:28,615社
- 令和3年:29,605社
- 令和2年:31,516社
- 令和元年:32,711社
- 平成30年:24,720社
- 平成29年:18,416社
- 平成28年:16,223社
- 平成27年:15,982社
- 平成26年:78,979社
出典:法務省公式サイト「休眠会社・休眠一般法人の整理作業について」
平成26年は12年ぶりにみなし解散作業が行われた年であったため、他の年に比べて数が多くなっています。
みなし解散の通知が来た場合の対処法
みなし解散の通知が届いた場合、会社を継続させるためには以下2つの作業が必要です
- ・必要な変更登記
- ・事業を廃止していない旨の届出
- (通知書の下段に届出書が設けられています)
みなし解散の通知後に実施するべき登記の例として役員変更が挙げられます。
前述のように株式会社の役員任期は最長10年です。12年間変更登記が行われていない状態とは、役員について必要な登記を怠った状態ともいえます。
同じ役員が再任している場合でも、役員変更の登記を行いましょう。
届出への記載事項は以下の通りです。
- ・商号(一般社団法人等の場合は名称)
- ・本店(一般社団法人等の場合は主たる事務所)
- ・代表者の氏名および住所
- ・まだ事業を廃止していない旨
- ・届出の年月日
- ・登記所の表示
届出のみ提出して登記申請はしない場合、その年の解散登記は行われないものの、翌年度も休眠会社・休眠一般法人の整理作業の対象になります。
会社を継続させる場合は必ず届出の提出と登記申請の両方を行いましょう。
みなし解散の注意点
最後に、みなし解散の注意点を4つ紹介します。
みなし解散後も清算手続きを行う必要がある
みなし解散で強制的に行われるのは、解散登記のみです。
みなし解散によって当該会社は「清算株式会社」になります。その後、清算結了登記などの清算手続きは自社で行う必要があります。
清算手続きの大まかな流れは以下の通りです。
- 1.清算人の就任および登記
- 2.財産目録や貸借対照表の作成
- 3.債権者保護手続き
- 4.債権回収および債務弁済
- 5.残余財産の確定、分配
- 6.清算確定申告
- 7.決算報告書の作成および承認
- 8.清算結了登記
なお、みなし解散後3年以内であれば会社継続登記によって事業再開が可能です。
3年を経過した後の復活はできません。
みなし解散後も法人税の納付義務がある
みなし解散によって行われるのはあくまでも解散登記のみと紹介しました。
みなし解散後も清算結了登記は行われず法人格は残り続けるため、法人税の納付義務があります。
解散登記後、以下のタイミングで法人税の申告および納付が必要になります。
- ・期首から解散の日までの分
- ・解散の日の翌日から1年ごと(残余財産が確定するまで)
- ・残余財産が確定した事業年度
消費税の課税事業者であれば消費税の申告および納付も必要です。
この期間も申告および納付を怠ればペナルティの対象になるためご注意ください。
解散登記から清算登記までの期間が年単位であれば、「解散の日の翌日から1年ごと」の申告・納付が複数回必要になります。
法人税の納付額を最小限に抑えるため、みなし解散が行われた後は早めに清算登記または会社継続登記を行いましょう。
登記を怠った事実は解消されない
株式会社の役員の任期は最長10年のため、最低でも10年に1回は登記を行う必要があります。
そして、みなし解散は12年間登記を行っていない会社が対象です。
みなし解散の対象になるとは、本来申請するべき時期に登記をしていないということを意味します。
みなし解散の通知後に届出や登記申請を行った場合でも、本来登記するべき時期に登記を怠った事実は解消されません。
そのため、登記を怠った事実に対して裁判所から100万円以下の過料に処されます。
みなし解散後に会社継続をする場合は手間やコストがかかる
みなし解散後3年以内であれば会社継続登記によって事業再開が可能です。
みなし解散後に会社継続をする場合は以下の手続きを行う必要があります。
- 清算人の決定
- みなし解散後、清算手続きをしない場合でも清算人の決定が必要です
- 株主総会
- 会社継続および取締役選任の決議を行う必要があります。
- 各種登記申請
- 清算人の就任登記、会社継続の登記、取締役就任登記の3つが必要です。
- 株主総会から2週間以内が期限となります。
清算人の就任や定款整備などさまざまな作業が必要なため、司法書士に依頼するのが一般的です。
手続きが多い分司法書士費用も高額になりやすいため注意する必要があります。
まとめ
みなし解散とは、一定期間にわたって登記申請が行われていない法人に対して強制的に解散登記を行うことです。
株式会社の場合、12年間登記が行われていない場合が対象になります。
株式会社の役員任期は最長10年のため、12年間登記が行われていない場合は経営実態がない可能性が高いためです。
みなし解散の通知が届いた後、必要な登記申請および届出の提出をすれば解散登記は行われません。
ただし、必要な時期に登記を怠ったという事実は解消されない点にご注意ください。
みなし解散の対象になることには多くのデメリットがあるため、対象になるのを避けるのが理想です。
もしみなし解散の通知が届いてしまった場合は、すみやかに適切な対処を行いましょう。
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BIZARQ株式会社代表公認会計士