外国人による日本での会社設立は可能です。海外に居住している場合でも、必要な手続きさえ行えば内国会社の設立・登記ができます。
しかし外国人が日本で会社設立をする場合、経営活動を行える在留資格(ビザ)の取得が必要です。
在留資格の取得以外にも会社設立においてハードルになる要素が多く存在します。
今回は外国人が会社設立をするための条件や手続き方法、注意点について詳しく解説します。
会社設立の基本的な流れは以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
外国人が日本で会社設立をするには経営・管理ビザが必要
外国人が日本で会社設立をするためには、経営活動を行える在留資格(ビザ)が必要です。
前提として、在留資格は居住資格と活動資格の2種類に分けられます。
居住資格は日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、永住者の4種類です。
居住資格を持っている人は日本人と同様に会社設立が可能ですが、要件が厳格かつ限定的な内容となっています。
そのため、会社設立のために居住資格を取得するのは現実的とはいえません。
居住資格を持っていない外国人が会社設立をするためには、経営・管理ビザを取得する必要があります。
経営・管理ビザを取得するための条件は以下の3つです。
- ・事業所が確保されている
- ・一定以上の事業規模がある
- ・事業に安定性・継続性があり、経営者本人に経営能力があると判断できる
それぞれ詳しく解説します。
事業所が確保されている
日本の経営・管理ビザを取得するためには、事業所が日本国内に確保されている必要があります。
単に拠点があれば良いわけではありません。事業所が確保していると認められるのは、以下の要件を満たす場合のみです。
- ・事業所としての実態がある
- ・法人契約、事業用途での契約である
- ・事業活動を行うための独立した区画が用意されている
- レンタルオフィス等で、単にパーテーションで区切られただけでは認められません
- ・事業所として機能するだけの設備が確保されている
- ・事業活動が継続して行われる事業所である(継続性の要件を満たす)
以下のようなケースは対象外となります。
- ・「専ら住宅として使用するもの」とされている自宅兼事務所
- ・短期契約の施設や移動可能な施設
- ・バーチャルオフィス
一定以上の事業規模がある
経営・管理ビザを取得するためには、一定以上の事業規模も必要です。
具体的には、以下のいずれかを満たす必要があります。
- ・資本金か出資の総額が500万円以上である
- ・2名以上の常勤職員を雇用している
会社設立の段階で2名以上の常勤職員を雇用するのは難しいです。そのため資本金要件の方を満たすケースが多くみられます。
資本金・出資金については以下の2点に注意が必要です。
- ・資本金の出所が審査されるため見せ金は認められない
- ・資金源が海外である場合、資金の送金方法も審査される
- 500万円以上の送金を行った事実を明確に示す書類も必要です
事業に安定性・継続性があり、経営者本人に経営能力があると判断できる
事業に安定性・継続性があり、経営者本人に経営能力があると判断できる必要もあります。
事業の安定性や継続性、経営能力を判断するために必須の書類が事業計画書です。
事業を継続的に安定して行える旨を示すため、事業計画書に以下の事項を記載する必要があります。
- ・該当の事業を行う理由や実現させるための方法
- ・収支計画
- ・営業活動の進め方
- ・組織体制
すでに見込み客や取引先がある場合、契約書を用意しておくのが理想です。
希望的観測ではなく、根拠に基づく説得力のある事業計画書を作成する必要があります。
外国人が日本で会社設立をする流れ
外国人が日本で会社設立をする流れは大きく7つの工程に分けられます。
- 1.商号・本店所在地・事業目的などの会社概要を決める
- 2.法人の実印を作成する
- 3.定款を作成し定款認証を受ける
- 4.資本金の払い込みを行う
- 5.法務局で登記申請をする
- 6.開業届など各種届出を行う
- 7.経営・管理ビザの申請をする
このうち1~6は日本国内に居住する日本人が会社設立をする場合と同じ流れです。
基本的な会社設立手続きは、日本人と外国人で特に大きな違いはありません。会社設立の流れは以下の記事で詳しく解説しています。
居住資格を持たない外国人の場合、7の「経営・管理ビザの取得手続き」が必要です。
ビザの取得申請は事業活動ができる状態になってから行います。会社設立手続き前ではない点にご注意ください。
経営・管理ビザの取得手続きを会社設立前にしてしまうと、実現性に懸念をもたれてしまい、承認が下りないリスクが高くなります。
また、発起人全員が非居住者の場合、日本銀行を経由して財務大臣および事業所を所管する大臣へ会社設立の届出の提出が必要です。
財務大臣への届出は、外為法(外国為替及び外国貿易法)の定めによって必要とされています。
会社設立の前に届出が必要なケース(事前届出)もあるため、届出を行うべきタイミングについて必ず確認しましょう。
外国人が日本で会社設立をする際の注意点
外国人が日本で会社設立をする際の注意点を3つ紹介します。
資本金の払い込みに際して日本の銀行口座が必要
資本金の払い込み先として認められている口座は以下のように規定されています。
- ・内国銀行の日本国内にある本支店の口座
- ・内国銀行の外国支店の口座
- ※日本円以外の通貨で取引が行われている場合はレートを証明する書類が必要
- ・外国銀行の日本国内にある支店の口座
すなわち、資本金の払い込みに使えるのは日本国内に本店または支店がある銀行か、日本の銀行の外国支店のみです。
日本の銀行口座をもっていない場合、資本金の払い込みができません。
日本国内の銀行口座を開設するためには、日本国内に6ヶ月以上の滞在している、住民票を取得しているなどの条件を満たす必要があります。
国外に住んでいる外国人が日本国内の口座を開設するのは非常に難しいです。
日本の金融機関の現地支店で口座開設をするか、日本の銀行口座を保有する人を発起人とする必要があります。
法人口座の開設が難しい恐れがある
外国人による会社設立では、法人口座の開設が難しい恐れがあります。
前提として、法人口座を開設するには審査に通過する必要があり、申請しても必ず開設できるわけではありません。
そして銀行によっては審査基準の1つとして、日本国内での経営経験の有無をチェックするケースがあります。
経営・管理ビザを取得した後でも、日本での経営経験が乏しいという理由で審査に落ちてしまう恐れがあるのです。
金融機関にあわせた適切な対策をする、もしくは比較的口座開設しやすいネット銀行を選ぶ等の方法をとるのが良いでしょう。
日本人の会社設立よりも費用が高額になりやすい
外国人の会社設立は、国内に住む日本人の会社設立よりも費用が高額になりやすいです。
会社設立にかかる費用は、必ず発生する法定費用とそれ以外の費用に大別されます。
このうち法定費用は日本人・外国人どちらも金額は同じです。
外国人の場合、以下の費用がかかる恐れがあります。
- ・ビザ取得手続きに関する行政書士への報酬
- ・海外で発行された書類を日本語に翻訳する場合の手数料
また日本人は資本金の額に定めがなく、理論上は1円でも会社設立が可能です。
一方で外国人の場合、経営・管理ビザを取得するためには資本金500万円以上が必要になります。
このように外国人の会社設立は、日本人よりも金銭面でのハードルが高くなりやすいです。
まとめ
外国人も日本国内で会社設立をすることができます。
会社設立の基本的な流れ自体は、日本に住む日本人が会社設立する場合と大きな違いはありません。
ただし居住資格を保有していない場合、会社設立手続き後に経営・管理ビザを取得する必要があります。
また、発起人全員が非居住者の場合、外為法の定めによる届出の提出も必要です。
経営・管理ビザの取得以外にも、資本金の払い込みに日本の銀行口座が必要であったり、会社設立費用が高額になりやすいなどの注意点があります。
会社設立に不安や疑問があれば、当事者のみで対処しようとせず、専門家のサポートを受けましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士