オフショア法人とは、登記した国と異なる国で事業を行い、収益を上げる法人のことです。
オフショア法人を上手く活用することで、節税効果をはじめさまざまなメリットを得られます。
しかし、オフショア法人は手軽に設立・運営できるわけではありません。日本国内の法人や現地法人とは異なる、オフショア法人ならではの注意点が複数存在します。
今回はオフショア法人の概要やメリット、注意点について詳しく解説します。
なおオフショア法人とイメージを混同されやすい「タックスヘイブン」は、法人税や所得税等の税率が低い国や地域を意味する言葉です。
タックスヘイブンについては以下の記事で詳しく解説しています。
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CONTENTS
オフショア法人とは
オフショア法人とは、登記した国と異なる国で事業を行い、収益を上げる法人のことです。
日本国内の法人を親会社、海外に設立するオフショア法人を子会社として運営するケースが多くみられます。
オフショア法人の設立をおすすめできる国・地域の例
オフショア法人の設立をおすすめできる国・地域の例として以下の例が挙げられます。
セーシェル
オフショア法人を設立できる国際ビジネス法人制度(IBC)が導入されている国です。
法人の設立要件が厳しくない、税務申告の義務や従業員を雇用する必要がない等の理由から、オフショア法人を設立するのにおすすめできます。
ベリーズ
オフショア法人の設立ができる制度である国際商業会社法(IBCA)が制定されている国です。
決算や会計監査が不要、実名を伏せた会社設立が可能などのメリットがあります。
ラブアン島(マレーシア)
ラブアンはマレーシアの経済特区です。
アジア地域における最低法人税率が適用される地域のため、法人税の大幅な節税効果を期待できます。
ヴァージン諸島(イギリス領)
イギリス領のヴァージン諸島は法人税非課税、役員会議開催が不要、会計監査要件がないなどのメリットがあります。
しかし2019年の経済的実体法施行により、ファンドや持株会社は経済的実体を満たすことが求められるようになりました。
ケイマン諸島(イギリス領)
イギリス領のケイマン諸島は、法人税だけでなく個人の所得税も課されません。
株主と取締役の情報が非公開、会社設立の要件が厳しくないなどのメリットもあります。
フィリピン
フィリピンは英語でのコミュニケーションが可能、日本との時差が小さいなどの理由からオフショア先として人気があります。
ベトナム
ベトナムはIT・ソフトウェア開発事業を開始する場合に、法人税の優遇税制を受けることが可能です。
ほかにも日本語話者が多い、教育レベルが高く優秀な人材が多いといったメリットがあります。
現地法人との違い
現地法人は、登記した国で事業を行い、登記した国で収益を上げる法人のことです。
登記した国での製品・サービスの提供などにより収益を得るとも表現できます。
オフショア法人と区別してオンショア法人と呼ばれることもあります。
オフショア法人は前述のように、登記した国以外から収益を得る法人です。
たとえばセーシェルに、日本国内の法人と親子関係にあるオフショア法人を設立した場合は以下のようになります。
- ・法人登記をする国:セーシェル
- ・収益源:日本(セーシェル内ではない)
- ・適用される税制:セーシェルの税制
収益源は親会社のある日本になるものの、適用される税制は登記した国であるセーシェルとなる仕組みです。
オフショア法人を設立するメリット
オフショア法人を設立するメリットを3つ紹介します。
節税効果を得られる
オフショア法人の最も大きなメリットは、節税効果を得られることです。
日本の実効税率は約30%、つまり法人の収益の3割を税金として支払う必要があります。
オフショア法人は日本に比べて法人税率が低い、もしくは法人税が非課税の国や地域に設立するのが一般的です。
たとえばマレーシアの経済特区であるラブアンは法人税率が3%と、アジアで最も低い税率が設定されています。
日本とラブアンそれぞれで上げる収益額が同じであっても、ラブアンの方が手元に残る額が多くなります。
このようにオフショア法人を上手く活用すれば、法人税の大きな節税効果を得られるのです。
ただし、税率が低い国や地域にオフショア法人を設立すれば必ずしも節税効果を得られるわけではありません。
オフショア法人やタックスヘイブンを活用した租税回避が多発したことを受け、現在は厳しい取り締まりが行われているためです。
節税効果を得るためにはタックスヘイブン税制の対象にならないよう要件を満たす必要があります。
タックスヘイブン税制については以下の記事をご覧ください。
海外で法人口座を開設できる
オフショア法人を設立すれば、海外での法人口座の開設が可能です。
海外口座を保有するメリットとして以下の例が挙げられます。
- ・現地との取引が容易になる
- ・取引のたびにレートや為替手数料を気にする必要がなくなる
- ・日本よりも金利が高いケースが多い
また、オフショア法人を設立するのに人気の国や地域は、プライバシーの保護に優れているケースも多くみられます。
外国政府に口座情報が開示されない国や地域を選べば、資産保護の面でも大きなメリットを得られるでしょう。
プライバシーの保護ができる
オフショア法人での会社設立はプライバシーの保護にもつながります。
日本国内で会社設立をする場合、取締役の氏名や住所が登記事項として公開されてしまいます。
一方オフショア法人を設立できる国や地域の一部では、取締役の個人情報を記載する必要がありません。
すべての国・地域に適用されるメリットではありませんが、選ぶエリアによってはプライバシーを保護した状態での会社設立が可能です。
オフショア法人を設立する際の注意点
最後に、オフショア法人を設立する際の注意点を3つ紹介します。
海外移住の必要がある
オフショア法人の活用による節税効果を得るためには、オフショア法人を設立する国や地域への移住が必要になるケースがあります。
「現地法人との違い」で、オフショア法人で得た収益はオフショア法人を登記した国の税制が適用されると紹介しました。
しかし日本居住者が海外で得た所得は、原則として日本の税制が適用されてしまいます。
そのため日本に居住した状態ではオフショア法人による節税効果を得られない恐れが大きいです。
海外移住は、オフショア法人の国内課税を回避できる合法的な手段です。
しかし海外移住は非常にハードルが高く、得られる節税効果以上の負担が発生する恐れがあります。
会社設立や維持に費用がかかる
オフショア法人に限らず、会社設立や維持には費用がかかります。
オフショア法人の活用により節税効果を得られたとしても、会社設立や運営にかかる費用の方が高ければトータルはマイナスです。
利益があまり出ていない会社でオフショア法人を設立するメリットは少ないといえるでしょう。
現地の税制や会計に関する知識が必要
オフショア法人を適切に運営するためには、現地の税制や会計に関する知識が必要です。
情報不足が原因でルール違反やミスを犯してしまっても「知らなかった」では済まされません。
実際のところ、専門知識のない人が会計・税務について十分に理解を深めるのは容易ではありません。海外であればなおさらです。
そのためオフショア法人の設立や運営には現地税理士のサポートが必須といえるでしょう。
まとめ
オフショア法人は、登記した国と異なる国で事業を行い、収益を上げる法人です。
セーシェルやマレーシアのラブアン島、イギリス領のケイマン諸島などがおすすめのエリアとして挙げられます。
オフショア法人の大きなメリットが、法人税の節税効果を得られる点です。
ほかにも海外の法人口座を開設できる、プライバシーを保護できるなどのメリットがあります。
ただしオフショア法人による節税効果を得るためには、海外移住が必要になるケースがほとんどです。
また、会社設立や運営にはコストがかかる点や、現地の税制・会計に関する知識が必要な点にも注意する必要があります。
オフショア法人のメリットと注意点の両方を理解した上で、オフショア法人を設立するか否かを検討しましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士