創業計画書は事業計画書の一種ですが、単に「事業計画書」と呼ぶ場合は創業計画書以外を指すケースが一般的です。
創業計画書とそれ以外の事業計画書では、使用する場面をはじめさまざまな違いがあります。
目的に合う適切な創業計画書や事業計画書を作成するためには、それぞれを作成する上でのポイントを押さえることが大切です。
今回は創業計画書と事業計画書の違いや、書類を作成する上で起業家が押さえるべきポイントについて解説します。
創業計画書の書き方については以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
創業計画書と事業計画書の違いとは
創業計画書は、創業予定のビジネスに関する情報や計画をまとめた資料です。創業前や創業直後に作成します。
事業計画書は、現在行なっている事業の現況および今後の計画・見通し等を説明するための資料です。
創業計画書は事業計画書の一種です。どちらも事業についての整理や説明を目的に作成する資料であり、本質が大きく異なるわけではありません。
ただし、単に「事業計画書」と呼ぶ場合は創業計画書以外を指すケースが一般的です。
その点を考慮すると、創業計画書と事業計画書はさまざまな違いがあるといえるでしょう。
この章では創業計画書と事業計画書の主な違いを紹介します。
※以降の文章では「創業計画書以外の事業計画書」という意味で「事業計画書」という表記を用います。
作成する・必要になるタイミング
創業計画書と事業計画書の大きな違いの1つが、作成するタイミングおよび必要になるタイミングです。
それぞれ必要となるタイミングの具体例を紹介します。
創業計画書
創業計画書が必要になるのは、創業前もしくは創業直後です。
特に創業融資の申し込みに際して作成するケースが多くみられます。
創業融資とは、創業前後で実績がない時期でも申し込める融資の総称です。
通常、融資の審査では決算書等の実績・現況を証明できる資料を使いますが、創業期には実績等が存在しません。
そのため、代わりに経営者の現況や創業予定のビジネスの計画等をまとめた創業計画書を用いて審査を行います。
実際に多くの創業融資では、創業計画書が必要書類の1つとして定められています。
事業計画書
事業計画書が必要になる主なタイミングは、資金調達の必要性が出てきた場面です。
創業融資以外の融資を申し込む際に事業計画書が必要なケースが多くみられます。
融資申し込み以外に事業計画書を作成する場面として以下の例が挙げられます。
- ・補助金や助成金の申請時
- ・出資者へ情報共有を行う場面
- ・自社の現況や事業計画を整理する必要がある場面
記載内容
創業計画書と事業計画書は作成する目的や必要な場面が異なる以上、記載内容にも違いがあります。
創業計画書と事業計画書それぞれの記載内容について特徴的な部分を紹介します。
※記載内容は申し込む融資の種類によって異なる可能性があるため、必ず公式の案内をご確認ください。
創業計画書
創業計画書ならではの項目として以下の例が挙げられます。
- ・創業の動機
- ・申込者(経営者)の経歴
- ・すでに決まっている取引先や顧客の有無、詳細
- ・必要な資金の内訳
- ・資金調達の方法
- ・自己資金の額や貯め方
創業計画書で特に重視されるのが自己資金です。
あくまで1つの目安ですが、融資額の3割程度の自己資金を用意するのが理想といわれています。
なお、自己資金と資本金はイコールではない点に注意する必要があります。
自己資金については以下の記事をご覧ください。
事業計画書
事業計画書ならではの記載事項の例を紹介します。
- ・これまでの業績
- ・今後業績を左右すると考えられる要素
- ・資金調達が必要な理由、資金使途
- ・収支ごとの内訳
事業計画書は収支項目ごとの内訳が重視される傾向です。また、会計年度や四半期といったセグメントごとの詳細も求められます。
事業実績があるからこそ、客観的な事実や、実績から予想される現実的な予測を記載する必要があります。
創業計画書と違い、経営者の経歴や人となり、創業の動機等の記載は原則として必要ありません。
創業計画書・事業計画書を作成する際のポイント
創業計画書・事業計画書を作成する際のポイントを4つ紹介します。
作成する目的を押さえる
最も大切なのは、作成する目的を押さえることです。
ただやみくもに記載事項を埋めるだけでは、アピールポイントがなく全体的にぼんやりとした内容になってしまう恐れがあります。
また、書類を作成する目的を知ることで、書類の重要性や使われる場面をイメージしやすくなるでしょう。
結果として、ポイントを押さえた熱意のある創業計画書・事業計画書を作成できる可能性が高いです。
特に、創業計画書の必要な場面である創業融資の審査では、熱意も重要な要素の1つになります。
事業実績がない時点での融資申し込みだからこそ、事業にかける思いや力の入れ具合なども重視されるのです。
熱意は明確に数値化できるものではありません。
だからこそ、ポイントを押さえながらも自分の言葉で書かれているか等が重視されます。
根拠に基づく客観的な内容を記載する
創業計画書・事業計画書のどちらを作成する際も、根拠に基づく客観的な内容を記載することが大切です。
創業融資を申し込む時点では事業実績がなく、予測に基づく不確定な内容がほとんどになってしまいます。
それでも単なる予想や楽観的な考えではなく、公的な調査結果やデータ等、根拠と呼べる材料を使いましょう。
実績がない中でも妥当性のある創業計画を作成することで、事業についてしっかりアピールできるだけでなく、事業に対する熱意や力の入れ具合が伝わります。
事業計画書を作成する段階ではすでに事業実績が存在するため、創業計画書に比べれば根拠と呼べる材料が多いでしょう。
それでも今後の見通しや資金使途など、不確定要素を記載する必要もあります。
現時点では明確な数値がわからない部分こそ、根拠・客観的事実を重視して記載しましょう。
内容の矛盾を起こさない
創業計画書や事業計画書を作成する際は、書類内で内容の矛盾を起こさないよう注意する必要があります。
「創業計画書・事業計画書の内容に一貫性を持たせる」とも言い換えられます。
創業計画書や事業計画書は記載項目が多いものの、ある項目と別の項目が関連しているケースや、表現が異なるだけで同じものを指す項目も多いです。
項目によって記載内容が違う場合、事業に対する準備や理解が不足していると判断される恐れがあります。
同じ資料内での矛盾を起こさないよう、内容に一貫性があるか必ず確認しましょう。
専門家のサポートを受ける
質の高い創業計画書や事業計画書を作成するには、専門家のサポートを受けるのが効果的です。
創業計画書や事業計画書の記載事項は複雑で、評価基準や評価につながる要素が外部からは判断しにくいです。
その上、記載方法が個々の判断にゆだねられている部分も多く存在します。
にもかかわらず融資等の審査では非常に重要視されるため、質の高い資料の作成が求められます。
創業計画書や事業計画書に関する知識や経験のない人が、自力で高品質を実現するのは容易ではありません。
当事者のみで対応しようとすると、時間や労力を費やす割に、資料の質は高くないというケースが起こりがちです。
質の高さと効率の良さの両方を実現するため、専門家の力を借りながら創業計画書や事業計画書を作成しましょう。
まとめ
創業計画書と事業計画書の本質に大きな違いはありませんが、使用する場面や記載事項などの細かな部分が異なります。
その場に適した資料を作成するためには、創業計画書と事業計画書それぞれの違いを知ることが大切です。
また、創業計画書と事業計画書それぞれに共通するポイントも存在します。
客観的な事実を記載する、内容に一貫性を持たせる等のポイントをしっかり押さえましょう。
また、当事者のみで対応しようとせず、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
創業計画書と事業計画書それぞれについて理解を深め、より良い書類作りを実現しましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士