コーポレートファイナンスとは?企業財務の基本をわかりやすく解説!

2024.10.30

コーポレートファイナンスとは、企業価値の最大化を目的とした資金調達や投資などの検討・実行といった活動を指す言葉です。

 

一口に資金調達といっても様々な方法があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットは大きく異なります。

企業価値の最大化を実現するためには、自社の財務状態や必要な資金額などを把握した上で、適切な資金調達方法を選ぶことが大切です。

 

今回はコーポレートファイナンスの概要や企業財務で用いる指標、資金調達方法の具体例などを詳しく解説します。

 

企業のフェーズごとに適した資金調達方法については以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

コーポレートファイナンスとは

コーポレートファイナンスとは、企業価値の最大化を目的とした資金調達や投資などの検討や実行といった活動を指す言葉です。

企業の財務活動全般を指すこともあれば、財務活動のうち調達活動のみをコーポレートファイナンスと呼ぶ場面もあります。

財務活動全般を意味する場合、資金調達から事業への投資、資金提供者への返済・還元までの全プロセスを含みます。

コーポレートファイナンスと関係の深い用語

適切な資金調達および投資のためには、企業価値の正しい算出が必要です。

 

コーポレートファイナンスにおける企業価値の算出では主に3つの指標を用います。

この章ではコーポレートファイナンスと関係の深い用語として、企業価値の算出に用いる3つの指標について解説します。

NPV

NPV(Net Present Value)は、新規事業やプロジェクト等への投資判断に用いる指標です。

日本語では「正味現在価値」と訳されます。

 

NPVの求め方は以下の通りです。

  • NPV=PV-投資コスト

※PV=将来受け取れるお金÷{(1=利率もしくは割引率)^n年後}

 

PVとは将来獲得できるお金の現在価値です。

すなわちNPVは、事業によって諸頼獲得できるお金の現在価値から事業にかかるコストを引いて求められます。

NPVがプラスであれば、投資にかかる費用よりも得られる収益の方が大きい、すなわち投資価値があると判断されます。

 

NPVの計算で大切なのは、将来獲得できるお金を現在価値に割り戻す必要がある点です。

現在価値への換算をしなければ、将来お金の価値が変動する可能性について考慮できず、価値を高く見積もり過ぎてしまいます。

IPR

IRR(Internal Rate of Return)とは、NPVがゼロになる割引率です。日本語では「内部収益率」と訳されます。

 

IRRは投資するコストの現在価値と投資により得られるお金の現在価値の総和が等しくなる割引率とも表現できます。

たとえば投資コストが100万円、1年目に得られるお金が70万円、2年目に得られるお金が150万円の場合、計算式は以下の通りです。

70万円/1+IRR+150万円/(1+IRR)^2=100万円

IRRを求める式は複雑になりやすいため、Excelの関数等を使って求めるのが一般的です。

 

投資判断の際は、IRRがハードルレート(投資コスト回収のために最低限必要な利回り)を上回るか否かが基準となります。

DCF法

DCF(Discounted Cash Flow)法とは、企業が将来生み出すフリーキャッシュフローに一定の割引率を乗じて企業価値を求める方法です。

日本語で「割引キャッシュフロー」と訳されます。

DCFの計算方法は以下の通りです。

  • DCF=将来のフリーキャッシュフロー÷加重平均資本コスト(株主資本コストと負債資本コストを加重平均した値)

コーポレートファイナンスにおける資金調達方法

コーポレートファイナンスにおける主な資金調達方法を6つ紹介します。

資産の売却

文字通り、資産を売却して現金化することで資金を調達する方法です。

不要になった倉庫や機械装置、社用車など幅広い資産が対象になります。

 

自社での利用価値が低く不要となった資産を売却する方法は、資金調達以外にも以下のようなメリットを得られます。

  • ・資産の維持にかかるコストを削減できる
  • ・貸借対照表をシンプルにできる

株式の発行

株式を発行して投資家からの出資を募る資金調達方法です。

株式発行によって調達した資金は自己資本になります。

 

株式発行による資金調達の主なメリットとして以下の2つが挙げられます。

  • ・調達した資金に返済義務がない
  • ・自己資本比率が高くなる

 

一方で以下のデメリットに注意が必要です。

  • ・株主構成が変動し、出資比率によっては経営の自由度が下がる恐れや経営権を奪われる恐れがある
  • ・株式の保有割合に応じた配当を支払う必要性が生じる

社債の発行

社債とは、会社が資金調達を目的に、投資家に対して発行する債券のことです。

投資家から資金を募る点で株式発行と似ていますが、以下のような違いがあります。

  • ・社債は投資家から資金を借り入れる手段、実質借金に該当する
  • ・社債の発行によって調達した資金は貸借対照表の「負債の部」に計上する
  • ・所定の期間経過後には元金とあわせて利子の返済(償還)が必要
  •  

なお、社債は少人数私募債とそれ以外に大別されます。

少人数私募債は49人以下の少数の投資家に発行する社債です。

通常の社債よりも手続きが簡便であり、無担保な点が特徴となります。

出資を受ける

出資を受ける場合、資金提供者として主に以下の2種類が挙げられます。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタル(VC)とは、未上場企業に対する投資を専門とする投資会社・投資ファンドのことです。

未上場の段階で出資を行い、投資先企業が上場した後に株式を売却して、高額のキャピタルゲインを獲得することを目的としています。

返済義務のない資金を調達できる、経営サポートを受けられる等のメリットがあります。

一方で自社株の譲渡が必要であり出資比率が変動する点や、経営面で干渉を受ける恐れがある点に注意が必要です。

 

ベンチャーキャピタルについては以下の記事で詳しく解説しています。

 

エンジェル投資家

エンジェル投資家とは、起業したばかりで実績の少ない企業に対して投資を行う個人投資家です。

ベンチャーキャピタルと同様に、投資先企業の成長による将来的なキャピタルゲインの獲得を目的としています。

個人投資家である以上ベンチャーキャピタルよりも規模が小さいため、出資額はあまり多くない傾向です。

 

エンジェル投資家については以下の記事で詳しく解説しています。

 

補助金や助成金の活用

補助金・助成金により調達する資金も返済義務がありません。

出資を受ける場合と違い配当金を支払う必要もないため、資金調達によるコスト面での負担が少ない方法です。

 

補助金と助成金の主な違いを5つ紹介します。

 

  • 交付主体
  • 補助金:経済産業省や自治体
  • 助成金:厚生労働省
  •  
  • 目的
  • 補助金:国や自治体の政策目的の実現
  • 助成金:事業活動の支援等を目的としています。
  •  
  • 審査の有無
  • 補助金:申請数が予算等を上回る場合は審査が行われ、審査に通過しなければ受給不可
  • 助成金:審査は行われない。要件を満たしていれば受給できるケースがほとんど
  •  
  • 受付期間
  • 補助金:期間は短めのため、手早く準備・申請をする必要がある
  • 助成金:随時もしくは長期にわたって受け付けている制度が多い
  •  
  • 支給額
  • 補助金:まとまった金額のケースが多い
  • 助成金:補助金に比べると支給額が少な目
 
補助金と助成金については、以下の記事で詳しく解説しています。

 

融資の利用

コーポレートファイナンスにおける資金調達方法として融資を選ぶ企業も多いです。

融資の特徴として以下の5点が挙げられます。

  • ・一度に多額の資金を調達できる可能性が高い
  • ・返済義務があり、調達した資金は「負債の部」に計上される
  • ・利息の支払いも必要なため、借り入れた融資額よりも返済額の方が高額になる
  • ・審査に通過しなければ融資を受けられない
  • ・日本政策金融公庫、民間の銀行、信用金庫など、運営主体によって特徴が大きく異なる

まとめ

コーポレートファイナンスとは、企業価値の最大化を目的とした財務活動を意味する言葉です。

財務活動の中でも特に資金調達を「コーポレートファイナンス」と呼ぶケースもあります。

 

一口に資金調達といっても様々な方法があり、それぞれ異なる特徴やメリット・デメリットを持ちます。

企業価値の最大化を実現するためには、自社の財務状態や企業価値等を正確に把握した上で、自社に合う資金調達方法を選ぶことが大切です。

 

コーポレートファイナンスを上手く活用するため、今回紹介した内容をしっかり押さえましょう。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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