決算修正とは?修正が必要なケースと修正手順、注意点について解説!

2024.11.23

決算修正とは、過年度の決算の誤りを当期分で修正することです。

過去の誤りは原則として過年度遡及処理が必要ですが、中小企業の場合はより簡便な対処が認められています。

 

過年度の誤りを放置した場合や修正方法が誤っていた場合、税務署から指摘を受けペナルティを課される恐れがあります。

税務申告や納税を適切に行うためには、修正が必要になる理由および手順について十分な理解が必要です。

 

今回は決算修正について詳しく解説します。

 

決算修正は主に法人税申告に大きな影響を及ぼします。

法人税申告書の作成や提出方法については以下の記事をご覧ください。

 

 

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CONTENTS

決算修正とは

決算修正とは、過去の決算の誤りを当期分で修正することです。過年度修正とも呼ばれます。

すでに確定した過去の決算書は変更できないため、当期の決算書上で修正を行います。

決算修正が必要なケースの例

決算修正が必要になるケースの中でも特に多い事例を3つ紹介します。

売上の計上漏れ

売上の中でも、決算日の直前に発生した取引は以下のような理由から漏れが起こりやすいです。

  • ・発生日ではなく入金日で処理してしまい、翌期分としてしまった
  • ・請求書の発行や担当者間での共有が遅れ、そのまま対応を忘れてしまった

そのままでは利益の過少申告になってしまうため、すぐに対応を行う必要があります。

棚卸資産の計上漏れ

棚卸資産の計上漏れが起こる理由として以下の例が挙げられます。

  • ・実地棚卸をしていない
  • ・期末の評価を行なっていない、評価方法が誤っている
  • ・社外で保管している分の計上を失念していた

帳簿に計上されている額が実際の棚卸資産よりも少ない場合も、利益の過少申告になるため注意が必要です。

費用計上、処理方法の誤り

費用計上や処理方法の誤りで特に多いのが、前払費用への振替処理忘れです。

 

前払費用とは、すでに支払いが完了したもののサービスの提供が翌期になる部分の計上に使用する資産科目です。

たとえば決算日が3月31日の会社がその年の1月に1月分~12月分の家賃をまとめて支払った場合、当期の費用となるのは1月分~3月分の家賃のみです。

4月分~12月分に関しては前払費用として資産計上し、翌期に費用とする必要があります。

この処理を怠ると当期の費用計上が過大になり、本来納付するべき税額よりも少なくなってしまうため注意が必要です。

 

前払費用に限らず、未払費用・未収収益・前受収益等の経過勘定の処理は注意する必要があります。

会計基準における考え方

会計基準において、原則として過去の誤りを当期に修正することは認められていません。

過年度の決算書を再作成(修正再表示)し、以前から正しい処理が行われていたとみなす方法が前提です。

このような対応を「過年度遡及処理」といいます。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は「前期修正損益」勘定を用いた修正が可能です。

  • ・金額が少ない等の理由で重要性が低い場合
  • ・中小企業の場合

中小企業の場合は、「中小企業会計に関する指針」や「中⼩企業の会計に関する基本要領」の内容が優先されます。

したがって、当期の決算書で修正する方法で問題ありません。

決算修正の方法

続いて決算修正の手順を紹介します。

過去の損益計算に影響するか確認する

過去の決算に誤りが見つかった場合、まずは損益計算に影響するものであるか確認しましょう。

 

過去の損益計算に影響を及ぼす場合は決算修正が必要です。

一方、損益計算に重大な影響を与えない誤りは重要性が低く、特別な対応は必要ありません。

当期の決算書で正しく計上すれば問題ないとされています。

 

修正の必要がない誤りとして以下の例が挙げられます。

  • 勘定科目が誤っていた
  • トータルで計上される収益・費用や資産・負債に誤りがなければ問題ありません
  •  
  • 長期と短期の分類が誤っていた
  • こちらも当期に正しい内容に振替を行えば問題ないとされます

 

一方で前述のように、以下のような誤りは損益計算に影響を及ぼすため、決算修正が必要です。

  • ・売上の計上漏れ
  • ・棚卸資産の計上漏れ
  • ・費用計上や処理方法の誤り(経過勘定への振替漏れ)

誤りを当期の決算書に反映させる

続いて対象の誤りを当期の決算書に反映させます。

その際、本来の記帳で用いる勘定科目をそのまま使うわけではありません。

あくまで前期の誤りを当期に修正するための処理であることがわかるよう、特別な科目を使って処理する必要があります。

 

決算修正で使う勘定科目は「前期損益修正益(損)」です。

例えば前期分の売上高10万円の漏れがあった場合、以下のように仕訳をします。

 

  • 売掛金 100,000 / 前期損益修正益 100,000

 

損益計算書上、特別利益または特別損失として表示されます。

 

なお実際のところ、実務上は「雑収入」「雑損失」で処理するケースも多いです。

税務署へ必要な手続きをする

決算修正はあくまでも正しい会計処理を当期の決算書に反映させるだけであり、過去の税務申告を修正するものではありません。

申告および納税も正しい内容にするため、税務署に修正申告または更正の請求の手続きをする必要があります。

修正申告および更正の請求についてそれぞれ解説します。

修正申告

申告・納税額が実際より少なかった場合に必要な作業です。大まかな流れを紹介します。

  • 1.別表4および別表5(1)に修正事項を記入
  • 2.別表1次葉の「この申告が修正申告である場合の計算」の各項目を記入
  • 3.2の内容を別表1の「この申告が修正申告である場合…」に転記
  • 4.再計算した税額を別表5(1)および(2)に記入
  • 5.修正申告書を提出し、計算した税額を納付

なお、税務署で修正申告できるのは国税である法人税のみです。

自治体に対して法人住民税や法人事業税の修正申告も行う必要があります。

更正の請求

過去に納付した税金が過大であった場合に多く納め過ぎた分の還付を受けるための手続きです。

 

更正の請求は任意であり、税務署からの通知も行われません。

実施しなくても法的な問題はありませんが、税金の納め過ぎで損をしている状態のため、手続きをすることをおすすめします。

 

更正の請求では「更正の請求書」を作成し、税務署に提出する必要があります。

また、請求の理由の基礎となる事実を証明する書類も必要です。

事実を証明する書類として利用できるものとして以下の例が挙げられます。

  • ・修正を反映させた財務諸表
  • ・帳簿書類の該当箇所
  • ・修正によって計上した取引の請求書や領収書

 

税務署での確認が完了後、請求書に記載した口座に還付金の振込が行われます。

決算修正の注意点

最後に、決算修正の注意点を2つ紹介します。

追徴課税の対象になる可能性がある

過年度の誤りによって過少申告があった場合、追徴課税の対象になる可能性があります。

追徴課税は過去の納税額に不足があった場合や、申告・納税漏れがあった場合に発生する税金です。

本税の不足分とペナルティの性質を持つ附帯税が追徴課税となります。

過少申告で発生する附帯税として以下の2つが挙げられます。

  • 延滞税
  • 税金が期日までに納付されない場合に課される税金です。利息の性質を持ちます。
  • 納期限から経過した日数によって適用される税率が異なります。
  •  
  • 過少申告加算税
  • 納税額が本来の税額よりも少なかった場合に課される税金です。
  • 新たに納めることとなった部分に以下の税率を乗じた額が課されます。
  • ・原則:10%
  • ・新たに納める額のうち、申告税額または50万円のいずれか多い金額を超える部分:15%

追徴課税については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらをご覧ください。

 

税務署からのチェックが厳しくなる恐れがある

決算修正の回数が多いと、税務署からのチェックが厳しくなる恐れがあります。

決算修正が必要になるのは、過去の決算が誤っていた場合です。

つまり何度も行われている場合は、適切な会計処理が行われていないという判断につながります。

結果として、税務調査に入る可能性が高くなってしまうのです。

まとめ

決算修正とは、過年度の確定した決算に誤りがあった場合に、当期の決算書上で修正を行うことです。

対応が必要になる理由として、売上等の計上漏れや経過勘定の振替漏れなどが挙げられます。

 

あくまでも会計処理により過去の誤りを当期の決算に反映させるだけであり、税務申告の内容までは修正されません。

過去の納付税額が過少であれば修正申告を、税金を納め過ぎている場合は更正の請求を行う必要があります。

 

記帳や税務申告の誤りをゼロにするのは難しいとはいえ、起こるリスクを抑えるための対策は大切です。

会計処理を適切に行い決算修正の必要性を最小限に抑えられるよう、専門家である税理士のサポートを受けるのが安心です。

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吉岡 伸晃

記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士

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