履歴事項全部証明書とは、法人の登記情報を証明する書類です。
会社に関する各種届出の提出時や許認可の申請時等、様々な場面で提出が求められます。
書類の用意をスムーズにできるよう、履歴事項全部証明書の必要シーンや取得方法を事前に把握しておくと良いでしょう。
取得方法は全部で3種類です。手続きの流れを大まかにでも把握しておけば、書類が必要になった際に慌ててしまうリスクを抑えられます。
今回は履歴事項全部証明書について、必要になるシーンや取得方法などを詳しく解説します。
履歴事項全部証明書の取得手続きは法務局で行います。
会社設立時や会社設立直後に法務局で行うその他の手続きについては、以下の記事をご覧ください。
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CONTENTS
履歴事項全部証明書とは
履歴事項全部証明書とは、法人の登記情報を証明する書類です。
そもそも登記とは、重要な権利義務や状況などを社会に向けて広く一般に公示するための制度です。
登記の主な目的として以下の3つが挙げられます。
- ・登記事項として登録された情報を保護し、権利や事実を主張できる状態にするため
- ・取引を行う人の安全性を確保するため
- ・不動産や組織等、登記対象の信頼を維持するため
履歴事項全部証明書は、登記事項を証明・確認するための書類です。
最新の登記事項だけでなく、請求日の3年前の日が属する年の1月1日以降に変更・抹消された情報も記載されています。
似た名称の書類との違い
履歴事項全部証明書と似た名称・性質の書類について解説します。
登記事項証明書
登記事項証明書は登記事項が記載された書類の総称です。電子データとして登録されている登記事項を証明します。
履歴事項全部証明書は登記事項証明書の一種です。
なお、登記事項証明書と似た書類に「登記簿謄本」があります。
登記簿謄本は法務局の登記簿という紙資料に記載された登記情報を複写したものです。こちらも同じく登記事項を証明する書類です。
登記事項を登記簿(紙)で記録していた頃に使われていた名称で、記載内容自体は登記事項証明書と同じです。
現在はほぼすべての登記事項をデータで保存しているため、登記事項を証明する書類は登記事項証明書に該当します。
昔の名残で今も「登記簿謄本」という名称を使うことはありますが、実際には登記事項証明書を指すケースがほとんどです。
現在事項全部証明書
現在事項全部証明書とは、請求日時点における登記事項を証明する書類です。
履歴事項全部証明書と違い、登記事項の変更・抹消履歴は記載されていません。
ただし会社の商号および本店所在地に限り、直前の情報も記載されます。
なお、現在事項全部証明書と似た名称の「現在事項一部証明書」という書類もあります。
現在事項一部証明書は文字通り現在の登記事項の一部のみを証明する書類です。
登記事項のうち、書類の請求時に選択した情報のみが記載されます。
閉鎖事項証明書
閉鎖事項証明書とは、閉鎖された登記事項が記載されている書類です。
閉鎖された登記事項のすべてが記載された「閉鎖事項全部証明書」と、一部の登記事項のみを証明する「閉鎖事項一部証明書」の2種類があります。
会社の登記事項が閉鎖される理由として以下の例が挙げられます。
- ・会社の解散や合併により法人格が消滅した
- ・合同会社から株式会社へ組織変更をした
- ・本店移転により管轄法務局が変わった
- (移転先の管轄法務局で登記が行われ、移転前の管轄法務局では登記が閉鎖されます)
現存する会社でも、履歴事項全部証明書に記載される3年分よりも前の登記事項を確認したい場合には閉鎖事項証明書が必要です。
代表者事項証明書
代表者事項証明書とは、法人の代表者に関する登記事項を証明する書類です。
記載事項として以下の内容が挙げられます。
- ・代表者の氏名
- ・代表者の住所
- ・代表者の役職
- ・会社の商号
- ・本店所在地
- ・法人番号
登記事項として証明が必要な情報が限られている場合に用いられます。
また、代表者の資格証明書として使うこともできます。
履歴事項全部証明書が必要になるシーン
履歴事項全部証明書が必要になるシーンの具体例を5つ紹介します。
各種届出の提出時
履歴事項全部証明書は、会社に関する各種届出の提出時に添付書類として必要なケースが多いです。
添付書類として履歴事項全部証明書が必要な場面として以下の例が挙げられます。
- ・税務署や自治体への法人設立の届出
- ・社会保険の加入手続き
- ・労働保険関連の手続き
許認可の申請時
設立する会社の業種によっては、営業活動を行うために許認可の取得が必要です。
許認可の申請時にも履歴事項全部証明書を提出する必要があります。
許認可申請をする業種と履歴事項全部証明書に記載された事業目的が一致しない場合、許認可が下りない恐れがあるため注意しましょう。
補助金や助成金の申し込み時
補助金や助成金の申し込み時、履歴事項全部証明書は必ず求められます。
なお、その他の必要書類は制度によって異なります。書類の過不足がないよう、公式サイトやパンフレット等の案内を必ず確認しましょう。
法人名義での各種契約時
事務所の賃貸契約や法人用クレジットカードの申し込み、法人名義の車の購入時などにも履歴事項全部証明書が必要です。
法人名義で新規の契約を行う際、履歴事項全部証明書が必要になるケースが多いといえます。
金融機関での口座開設、融資申し込み時
法人口座の開設や融資の申し込みなど、金融機関との取引の際も履歴事項全部証明書が必要です。
履歴事項全部証明書の取得方法
履歴事項全部証明書を含む登記事項証明書の取得方法は全部で3種類です。
それぞれ詳しく解説します。
法務局の窓口で請求
法務局の窓口に「登記事項証明書交付申請書」を提出し、その場で登記事項証明書を受け取る方法です。
申請書は法務局の窓口で入手する方法のほか、法務局の公式サイトでダウンロードもできます。
管轄の法務局以外でも取得可能です。
登記事項証明書の取得には必ず手数料が発生します。
窓口で請求する方法の場合、手数料は1通につき600円です。後述するオンラインで請求する方法よりも高額となります。
また、窓口での取得申請ができるのは窓口の受付期間に限ります。受付期間は原則として平日の午前8時半から午後5時までです。
※以前は午後5時15分までが業務取扱時間となっていましたが、働き方改革推進のため令和6年1月から受付時間帯が変わりました。
郵送で請求
「登記事項証明書交付申請書」を法務局へ郵送で提出し、郵送で書類を受け取る方法です。
手数料は交付申請書に収入印紙を貼付して支払います。金額は窓口で請求する方法と同じく1通あたり600円です。
郵送で請求する場合、切手を貼り付けた返信用封筒も用意する必要があります。
3つの方法の中でも最も費用と時間がかかる方法といえるでしょう。
オンラインで請求
「登記・供託オンライン申請システム」から交付請求を行う方法です。
指定した住所への郵送または指定した登記所等の窓口での受け取りができます。
1通あたりの手数料は受け取り方法によって以下のように異なります。
- ・郵送受取:500円
- ・窓口受取:480円
オンライン請求の大まかな流れは以下の通りです。
- 1.申請システムをはじめて利用する場合は申請者情報の登録をする
- 2.トップページの「かんたん証明書請求」を選択しログイン
- 3.請求書様式に必要事項を入力する
- 4.請求データを送信
- 5.手数料を電子納付により支払う
電子納付はインターネットバンキングやモバイルバンキングを利用する方法とATMを利用する方法の2種類があります。
オンライン請求の場合、支払い方法は電子納付のみです。窓口受取を選択した場合でも、窓口での支払いはできないためご注意ください。
まとめ
履歴事項全部証明書は、会社の登記情報のすべてが記載された書類です。
証明書の請求時点における登記情報に加え、請求日の3年前の日が属する年の1月1日以降に変更・抹消された情報も記載されています。
履歴事項全部証明書は届出の提出時をはじめ、様々な場面で必要となります。
各種手続きをスムーズに進めるため、履歴事項全部証明書が必要になるシーンや取得方法について知っておくのが良いでしょう。
履歴事項全部証明書を含む登記事項証明書の取得方法は3種類です。
取得方法によって手数料やかかる時間が異なるため、自社に適した方法を選ぶ必要があります。
履歴事項全部証明書について理解を深め、必要に応じて適切な対応を行いましょう。
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記事監修
BIZARQ株式会社代表公認会計士